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【JOIN×テラドローン対談(後編)】「世界の中核企業になってほしい」官民ファンドが語るスタートアップの海外展開に求める期待感
こんにちは、テラドローン広報チーム(@TerraDrone_JP)です。
前回に引き続き、テラドローンと官民ファンドの海外交通・都市開発事業支援機構(以下、「JOIN」)による対談をお届けします。
⏬プレスリリースはこちら⏬
両者が出資するベルギーを拠点に置くUniflyは、UTM(ドローン運航管理システム)の分野におけるリーディングカンパニーとして欧米を中心にこれまで8か国の受注実績があります。
今後、ドローンが無数に飛び交う時代が訪れ、「空のインフラづくり」が急務となる中でどんな期待感や課題があるのでしょうか。
今回は、Uniflyやテラドローンの今後の成長に向けた絵姿や日本のスタートアップの海外展開における官民ファンドとしての支援のあり方に話が及んでいきます。
《対談者プロフィール》
●宗村奈保(むねむら・なお)
米大学卒業後、総合商社にて金属資源投資業務を担当。経済産業省傘下の官民ファンドへ転職後、夫の海外転勤に帯同しチリ大学でMBA(経営学修士)のプログラムを修了。帰国後の2021年に国土交通省傘下の官民ファンドであるJOIN(海外交通・都市開発事業支援機構)に入社、テラドローンが出資するUniflyの支援を担当。
●植野佑紀(うえの・ゆうき)
慶應義塾大学法学部卒業後、伊藤忠商事(株)で本社組織と事業会社の予実管理、ライセンスビジネスなどを担当。2017年にテラドローン(株)に入社し、現在は執行役員、および、ベルギーに拠点を置くUniflyの取締役COOとしてUTM(ドローンと空飛ぶクルマの運航管理システム)事業を統括。
ー前回は紆余曲折を経てUniflyへの支援に至った話を中心にお聞きしました。2022年3月の支援決定以降、JOINは現在までUnifly、テラドローンに対して率直にどんな印象を抱いていますか?
宗村:Uniflyへの支援開始以降、テラドローンが組織としてどんどんしっかりしている印象を受けています。海外での事業展開や子会社運営など我々も一緒に考えながら進めさせて頂いておりますが、テラドローンが見違えるように成長していると感じています。
一方で取締役会に参加すると毎回いい意味で挑戦していると感じています。「また●●の会社を買収した」「●●の国の案件が出てきた」といった具合にいい意味でのサプライズで成長を貪欲に目指す姿が印象深いです。
植野:私は2017年8月に入社し、最初の1年間は日本、それ以降はずっと海外で過ごしてきました。国内外共に課題もまだ多く、会社の基盤をしっかりさせることと伸びる事業を作ることのバランスをまだ見極めているフェーズだと感じています。これは上場後も続いていくことだと思いますが、50人、100人、300人の壁を地道に乗り越え、各方面からの支援に対してROI(投資利益率)を高めることが大事だと考えています。
宗村:現在のテラドローンを見ていると社員がどんどん増えているので、今後、組織がさらに一歩ずつ成長する姿に期待しています。
植野:会社の基盤を整えつつ、挑戦するスピリットを忘れてはいけないと常々思っています。アメリカ・シリコンバレーや中国・深圳の企業が世界を席巻していますが、日本のスタートアップの世界での成功事例はまだ少ない状況です。テラドローンが目指すべきところからしても、まだ小粒で終わっています。視座を上げて現状の10倍、100倍、1000倍と成長しなければならないと思っています。
ーUniflyへの出資を決めた際の期待感に対し、ギャップは感じましたか?
宗村:我々が支援を決定するくらいのタイミングで、当時のUniflyの社長が退任して内部でコスト削減のため、経費の見直しやリストラなどの動きがありました。我々の委員会でも、欧州企業にアジア人が入ってPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を進めることがそもそもできるのか、またリストラやコスト削減の実行によって事業が立ち行かなくなる可能性があるのでは、などの懸念がありました。
ただ、実際に計画を遂行される姿を見ていると見事だったと感じています。今年の7月、ようやくベルギーに行き、社員たちと話をして感じたのが、植野さんに対する現地メンバーの信頼の厚さでした。あれだけ「外国企業/経営陣が入っても大丈夫なのか」と言われていた状況から真逆の世界観になっていることは嬉しく思います。
植野:当時、Uniflyに出資する他の株主も、リストラやコスト削減を進める当時の動きに不安を抱いていました。一方で「誰かがやらなければならない」というのも薄々感じていて、同じく株主のドイツのDFSはこういった施策の必要性を以前から何度も訴えていました。
そこから実際に実行に移して現状では徹底したコスト管理と利益率の継続改善ができており、売上規模も前年比で2.5倍程度に伸長しています。ですが、今後は事業を伸ばしていくことが課題となっています。本来は欧州以外にもアジアやアフリカなどにも展開する姿を描いていましたが、業界自体がまだアーリーステージな状況です。各国の規制への準拠や規制自体の整備に時間がかかっていますが、今後はもっと加速して期待に応えなければならないと思っています。
ー今後、JOINとしてテラドローンやUniflyのどんな部分に期待をしていますか?
宗村:国交省は毎年、「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画」を発表しています。今年6月に発表された令和5年度版においては、スタートアップ、中堅・中小企業、地方企業による海外展開の支援を1つの戦略として掲げています。我々としては、テラドローンのようなスタートアップの支援を続けたいと考えています。これまでの重厚長大な分野での日本企業での海外展開だけではなく、インフラシステムといった新しい分野での海外展開が進んでいくことは今後重要だと思います。我々としては、インフラシステムの分野で日本発のグローバルな企業としてテラドローンが世界のドローン市場における中核企業になることを期待しています。
植野:日本のスタートアップだと、インフラ関連分野で海外にチャレンジする企業がそもそも少ない現状があります。また、そうした企業があっても、実際にJOINに支援を依頼しようと思い立つところも少ないと思います。どうしても、他のファンドと比べて官民ファンドのJOINをそもそも知らなかったり、支援を受けるハードルが高いと感じたりすることもあるかもしれませんが、日本のスタートアップによる海外展開において、私たちの取り組みが良いきっかけになれば嬉しく思います。
ーJOINによるスタートアップに対する支援の認識はどんな状況ですか?
宗村:以前はスタートアップへの投資に関する枠組みすらありませんでしたが、一件一件積み上げてきたことにより、今後よりスムーズな形での支援ができると思っています。
植野:スタートアップへの支援の枠組みが整ってきたとはいえ、我々もきちんとROIを高め、JOINにしっかりとリターンを作らないといけません。JOINもあくまで官民ファンドとして一定のIRR(※1)を期待されています。事業展開や内部統制を含め会社を成長させていくことで企業価値向上に貢献して、ご支援いただいたことに対して恩返ししたいと考えています。
宗村:官民ファンドとしては、投資に対するリターンと政策意義の二兎を追う形となりますが、本件政策意義に加え、リターンにも期待していければと考えております。
※1 IRR(Internal Rate of Return、内部収益率)とは、投資の意思決定を行う際の重要な判断基準の1つであり、投資案件の正味現在価値(NPV)をゼロにする割引率のこと。簡単に言うとお金の時間的な価値を考慮して計算した利回りのことです
まとめ
政府がスタートアップ支援を強化する動きが進む一方、日本のスタートアップによる海外展開はまだ活発ではない状況といえます。海外展開の形態が多様化する中、官民ファンドとスタートアップの接点を作り、突破口となる先行事例を生み出せたことは大きな意味を持ちます。
テラドローンとJOINによるUniflyへの出資は、官民ファンドとスタートアップとのタッグによる新たな海外展開の形を作ったといえるかもしれません。今後も我々の動きにぜひご期待ください。
最後に
いかがでしたでしょうか。2回にわたってテラドローンとJOINの対談を通して、官民ファンドとスタートアップのリアルなやり取りをお届けいたしました。
グローバルでの挑戦は前途多難なことが多く、私たちも幾度となく挫折を経験しています。だからこそ、世界で勝つスタートアップへの道を諦めたくはありません。JOINの皆様にはテラドローンがアーリーステージの時期からご支援をいただき感謝しかありません。その期待に応えられるよう今後もグローバルでの空のインフラ構築に努めてまいります。
しかし、このミッションを実現するためには、共に進むメンバーが必要不可欠です。少しでもテラドローンのこと興味がある方、ぜひカジュアル面談でお話させてください。