みなさん初めまして、チームラボの堺と申します。
今回は、チームラボの多岐にわたるプロジェクトにおいて行動原則とも言える「品質基準の揃え方」についてご紹介させていただきます。
目次
- チームラボのソリューションチームについて
- 拡大する組織における「クオリティの基準値」の揃え方
- チームラボでの「クオリティの基準値」の揃え方
- 原則: 唯一の行動原則は「時代で一番、クオリティが高いものをつくること」
- プロセス: 超具体の粒度でのジャッジの連続が、基準をつくる
- 組織体制: 独立性高く、職種を分断させない組織
- 独立性の高さを維持する
- 職種を分断させない構造
- 時代を代表するようなクオリティのアウトプットを、属人的でない形で出せるように
- ものづくりにとことん没頭できる集団として
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現在チームラボではアーティスト、デザイナー、エンジニア、建築家など多様なメンバーを抱え、組織全体の人数は1,000名を超えています。
チームラボには1,000名を超える人数が在籍、その9割以上がものづくりを担当
時代を代表するようなクオリティのアウトプットを提供することにこだわる、ものづくり集団として、2001年の創業から24年間、いくつものアウトプットを生み出してきました。
チームラボのアートチームとソリューションチームでのアウトプットの一部
今回は、その中でクライアントに対するソリューション開発を行う、ソリューションチームでの「品質基準の揃え方」についてまとめます。
チームラボのソリューションチームについて
チームラボには、アートチームとソリューションチームの2つの組織が存在しています。
アートチームの方では、世界中でミュージアムを作ったり大規模な展覧会を開催しており、これまでに全世界で累計3500万人以上が来場してくれています。(チームラボと聞いて、ご認識いただいている方が多いのはこちらの事業かもしれません。)
アートチーム
一方で、ソリューションチームは、クライアントから依頼を受けて、デジタルプロダクトや、空間デザインなどのコンセプト、デザイン、システム開発をサービスとして提供している、いわばクライアントワーク型の組織です。
ソリューションチーム
これまでに、りそなグループアプリ、郵便局アプリ、成田国際空港公式Webサイトリニューアルなど、国内を代表するようなクライアント様に対してソリューションを提供してきました。
私は、チームラボの創業から24年間、ソリューションチームの統括として関わってきました。
拡大する組織における「クオリティの基準値」の揃え方
ソリューションチーム、ひいてはチームラボ全体として最も注力しなければいけない課題の一つが「クオリティの基準値を揃える」ことです。
注力している課題
これは、私たちが「クオリティが高いものをつくる」ということにこだわっているからでもあり、お客さまごとにクオリティの差分を生んではならないクライアントワークの性質からくる課題でもあります。
少数のトップクリエイターだけで構成されている会社であれば、個人の裁量でクオリティをコントロールすることも可能ですが、チームラボには現在1,000名を超えるメンバーが所属しています。
これらのメンバーが、同時並行で複数のプロジェクトを進行していくため、チームラボ全体としてのクオリティの基準を揃えようとしなければ、必ずアウトプットの品質にはブレが生じてしまいます。
課題が生まれる構造
このような「拡大する組織におけるクオリティの基準の揃え方」は、どのような組織でも課題になってくるところだと思います。
チームラボでの「クオリティの基準値」の揃え方
結論として、チームラボのソリューションチームでは、原則・プロセス・組織体制の3点から、組織におけるクオリティの基準値を揃えています。
ソリューションチームにおける、クオリティの基準値を守る仕組み
これら3つの要素をどのように構築してきたか、私の言語化として簡潔にまとめます。
原則: 唯一の行動原則は「時代で一番、クオリティが高いものをつくること」
チームラボにおける、唯一の行動原則は「時代で一番、クオリティが高いものをつくる」ということです。
唯一の行動原則
それ以外に、ビジョンやミッション、ひいては売上目標のようなものも存在していません。全ては、その時代において一番クオリティが高いものをつくるという、ただ一点に向けて全員が行動しています。
ビジョンやミッション、売上目標はあえて存在させていない
これは、ものをつくる上で、非常に重要なことです。ビジョンやミッションといった曖昧な言語情報は、どうしてもクオリティに対する判断にブレを生んでしまいます。
具体的には後述しますが、クオリティが高いものをつくるには「誰が考えても絶対にそうだと言えるような。超具体の粒度での基準を揃えていくこと」が必要です。
例えば「素晴らしい銀行アプリをつくろう」というテーマだけ掲げられていたとしたら、アウトプットされるUIは無数に存在するはずです。これは前提情報が揃えられていないためです。
一方で、このプロジェクトを進めていった先の「この登録ボタンのインタラクションはどういう挙動であるべきか」という具体の粒度の意思決定においては、(スキルが高いデザイナーで、顧客のリサーチを十分に行い、体験の想定を詳細に詰めているならば) 出てくるアウトプットのブレは限りなく少なくなるはずです。
アウトプットのブレを少なくするために、基準を曖昧にしない
つまり、クオリティを高めることに対して邪魔になる要素は、すべて排除し、常に超具体の粒度での意思決定を繰り返し、とことん良いものをつくることに没頭することが必要です。
そのため、多くの会社組織ならば普通に置かれるようなビジョン・ミッション・売上目標などの概念すらも、チームラボでは不要としているということです。
プロセス: 超具体の粒度でのジャッジの連続が、基準をつくる
先述したように、クオリティの高いものをつくるためには「超具体の粒度での基準を揃えていくこと」が必要だと考えています。では、チームラボのように数十人ものデザイナーが所属する組織において、どのようにこの基準を揃えていけば良いのでしょうか。
チームラボでは「超具体の粒度でのジャッジを繰り返す」ということが、クオリティの基準を揃えるための唯一の方法だと考えています。
基準を揃えるためのプロセス
例えば「チームラボらしいデザイン」ができるルールやガイドラインのようなものをつくったとして、これはいくつものプロジェクトをカバーできるように想定され、必ず抽象的なアウトプットになってしまうはずです。
そうではなく、実践の中で、コードで表現できるくらい明快な場面において、超具体の意思決定をチームの中で繰り返し行うことで、「これはイケてるよね」という不文律のような基準値ができていきます。
「超具体の粒度でのジャッジを繰り返す」ことで基準が生まれていく
具体に落として議論するためには、解像度の高いコミュニケーションが求められるので、フィードバックは対面ミーティングで行ないます。
フィードバックの様子
さらに言うと、これはプロセスの中でしか身につきません。なので、私自身もアートチーム側のアウトプットを出せと言われたら、判断に迷うはずです。そのくらい緻密で、繊細で、没頭している人たちにしか分からないような基準での意思決定を繰り返していきます。
組織体制: 独立性高く、職種を分断させない組織
クオリティを追求し、個々人のジャッジの数を高めていける組織にするため、独立性の高さと、職種の分断を生まないことにこだわっています。
基準を揃えるための組織体制
独立性の高さを維持する
クオリティを追求するための組織体制として、一つのこだわりは「独立性を高くしておく」ということです。
チームラボでは外部資本を一切入れておらず、完全にチームラボ内だけで経営的な意思決定を行えるような組織体制を取っています。
チームラボ内で経営的な意思決定を行える、独立資本の体制
仮に外部資本を入れていたとしたら、クオリティを追求する他にも「売上を高める」「そのために営業組織をつくる」などの外圧が発生していくはずです。
前述した通り、チームラボの唯一の行動原則は「クオリティが高いものをつくる」ことで、これが何より優先されるように、このような独立性の高い経営にこだわっています。(実際、チームラボでは、創業から24年間ずっと営業をしたことはありません。何よりも、ものづくりにこだわることが重要だと信じてやってきました。)
職種を分断させない構造
チームラボのソリューションチームの組織構造は、カタリスト・デザイナー・エンジニアの3つから構成されています。
本当にユーザー体験を変えるためには、ユーザーインターフェースだけでなく、システムも合わせて提供する必要があります。我々はデザイナーだけを抱えたデザイン会社ではなく、カタリストやエンジニアなどの職種も同じプロジェクトに入り、コンセプトから開発まで一貫して一つの組織で提供することができます。
それに加えて重視している考え方が、デザイナーなどの各職種をさらに細かく分けることはしない、ということです。
必要以上に職種を分けない
例えば、リサーチ・UX・UI・グラフィック・モーション・空間デザイン・・と細かく職種を分けてしまうと、各プロセスをまたがるタイミングで必ず情報量が落ちてしまいます。
一つのソリューションに関わるデザインを、同じデザイナーたちが一貫して意思決定の責任を持つことで、複雑なプロジェクトでも高い解像度でアウトプットまでつなげていくことができるはずです。
スキルで分断させず、ソリューションに関わるデザイン全体のジャッジに責任を持つことで、クオリティが一貫して高まっていく
そして、このような広い責任範囲で、超具体の意思決定を繰り返し、最終的なソリューションの提供まで担うからこそ、ジャッジの数が増えていく。プロジェクトを経験すればするほどに、デザイナーのクオリティへの基準値は高まっていきます。
感覚値ではありますが、1人のデザイナーがチームラボに入ってから、大体2〜3年の期間を経て、チームラボが出すべきクオリティの基準値を理解し、アウトプットをしていけるようになると観測しています。
時代を代表するようなクオリティのアウトプットを、属人的でない形で出せるように
2001年の創業時から、一貫してこのような体制で続けてきました。結果として、時代を代表するようなクオリティのアウトプットを、属人的でない形で出すことができています。
例えば、りそなグループアプリ。
これまでデジタルの接点がなかった、りそな銀行でのアプリをチームラボで開発し、今ではりそな銀行全体でも最も多くの顧客接点を持てている場所となっています。
このプロジェクトが皮切りとなって、他の銀行組織でもデジタル化が推し進められていきました。他社のアプリでもUIや体験は踏襲していただいているところも多くあるように観測しています。
りそなグループアプリ
例えば、acure pass (アキュアパス) 。
スマホ対応自販機「イノベーション自販機」のプロダクトデザインのプロデュース、自販機サイネージアプリケーション企画・開発・デザインを行っています。
また、連動したスマートフォンアプリ「acure pass(アキュアパス)」の企画・デザイン・開発、プロモーション用動画及びWebサイト、オペレーターの業務フロー改善、ビジネスプランニングなどを担当しました。
まだ世の中にない自動販売体験を実現でき、それが世の中に普及しています。
acure pass
例えば、成田国際空港の公式Webサイトのリニューアル。
システム開発も含めて、日本最大規模の空港に適したユーザー体験を提供し、過去にないユーザーエンゲージが起こっています。
成田国際空港の公式Webサイトのリニューアル
ものづくりにとことん没頭できる集団として
チームラボは、ものづくりにとことん没頭できる集団です。前述の通り、24年間、本当に営業活動というものをしていない。紹介とお問い合わせのみでやってきました。
「アウトプットにこだわれば、必ず分かってもらえるはずだ」と思って。ひたすらにものづくりをやってきました。その結果、今、信頼や実績が積み上がってきています。
最後に
私たちの組織のあり方を少しでも参考にしてもらえると嬉しいですし、私たちにしか出せないクオリティのアウトプットがあると思っているので、支援の相談もぜひいただきたいです。もちろん、一緒に働きたいというデザイナーやエンジニア、ディレクターやコンサルタントの方々なども大歓迎しています。
チームラボとしては、今後もこのような時代を代表するクオリティのものづくりに没頭できる環境を、さらに追求していきます。
お読みくださりありがとうございました!
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