sync.devで働くメンバーを紹介するメンバーインタビュー。今回は、テクニカルアーティストとして活躍するAyaさんにお話をお聞きしました。これまでにもプロジェクションマッピングやインスタレーションなどに関わってきたAyaさんは、sync.devでいったいどのような挑戦をしているのでしょうか。ぜひお読みください。
2Dから3D、そしてリアルタイムの演出へ
――AyaさんがリアルタイムコンテンツやCGを学び始めたのは、どのようなきっかけだったんでしょう?
もともとはモーショングラフィックスをメインにつくっていて、ツールはAfter EffectsやCinema4Dを使っていました。
そんな中で、ちょうど当時(2010年台前半)流行りはじめていたプロジェクションマッピングやインスタレーションに興味を持ち始めました。本場である海外に行って見てみたいし、英語の学習もしたいし、それならとりあえず行ってみよう!と。それで1年間カナダのトロントとモントリオールに留学し、TEDのインスタレーションなどを手掛けていた現地スタジオでインターンをしたり、現地の語学学校にも通って学びました。
――日本に戻ってからは、どのような仕事に就かれたのですか?
最初に就職した会社では、空間演出のディレクションやプロジェクションマッピング、インスタレーションの映像演出などをやりました。演出するものが2Dのモーションから3Dの空間へと変わり、考えることも大きく変わりました。どうしたらプロジェクションマッピングとして効果的な映像になるのかを考え、模型づくりから投影テストまで、毎日のように検証しては修正する日々を送っていました。
――その後、いくつかの会社で経験を積まれたそうですね。
仕事は面白かったのですが、海外のインスタレーションではリアルタイムが主流になってきていて、やっぱりそっちの方向に進んでみたいと思ったんです。インタラクションしたもののアクションがその場ですぐ見れるのが、体験としても楽しいですよね。
Webを中心に、インスタレーションや広告キャンペーンの制作などを手がけましたが、インタラクティブなものもあってとても楽しかったです。やっぱりCGをつくっていると、ビジュアルを作るだけではなく、それらがシステム内に組み込まれて使われるインタラクティブな表現はとてもおもしろく感じます。
ツールの進化が、自身の成長を牽引する
――この頃からUnreal EngineやTouchDesignerを使っていたとお聞きしました。どのような経緯で使いはじめたのでしょうか?
友人と趣味で行っていたVJ(ビジュアルジョッキー)や、実際に案件でも使用するために勉強しはじめたのがきっかけです。海外ではインタラクティブなシステム構築やリアルタイムの演出においては、特にTouchDesignerは必須のツール。趣味や仕事に関係なく、とにかく触りながら覚えていきました。
――もともとはAfter EffectsやCinema4Dを使用されていた中で、これらのツールにはすっとなじめましたか?
それがすごく難しくて。Cinema4DなどはUIも整理されていて、プログラミングの知識がないCGデザイナーでも簡単に使えます。でも、これらのツールにはアート的な思考から数学的な思考への転換が必要なんです。インタラクティブに動かそうとするとCGの知識だけでは足りなくて、とても苦労しました。
でも、学ぶことで分かったこともありました。例えば、これまで何気なく設定していたマテリアル。Unreal EngineやTouchDesignerを学んだことで、裏側の仕組み部分まで理解できるようになり、CGをより深く追求できるようになったと思います。それに、やっぱりできることが増えるのは楽しいですよね。
――Unreal EngineやTouchDesignerは、希望していた「リアルタイム」の演出が叶うツールですよね。「リアルタイム」に惹かれるのはなんでなんでしょう?
この業界に行きたいと思った一番のきっかけは、「Perfume」のライブ演出なんです。あんな風に、リアルでのイベントやライブなどの現実世界にリアルタイムでテクノロジーが落とし込まれた瞬間が一番楽しい!と感じます。
私もせっかくUnreal EngineやTouchDesignerを学んでいるし、R&Dもたくさんして知見を貯めているので、現実での演出と組みあわせていきたい。知っている景色がテクノロジーの力で別のものに変わる瞬間って、やっぱり面白いですよね。
リアルタイムのコンテンツは緊張しますし、これまでにはもちろん失敗もありました。でもUnreal EngineやTouchDesignerは常に進化し続けているツール。だから自分も勉強し続けなきゃと、次へ次へと進んでしまいます。それがこれらのツールの好きなところでもあり、ツールの進化に足並みを揃えていくような感覚が、モチベーションにもなっています。
ワークライフバランスをとりながら、R&Dで知識を拡張
――sync.devには昨年参加されましたが、決め手は何でしたか?
sync.devは、「CGデザインをするけどUnreal Engineを使っているところ」という軸で探している中で見つけました。私はUnreal Engineを使っているけど、CGがメインでがっつりしたエンジニアではないので、マッチする会社や求人が少ない中でのめぐり逢いです。
sync.devは、バーチャルプロダクションをやっていたり、CGWORLDなどいくつかのメディアでも代表の岡田さんが取材や登壇をされていたり、求人の内容もしっかり書かれていたのが印象的でした。
代表の岡田が登壇したCGWORLD JAM のセッションレポート
https://cgworld.jp/feature/202105-cgwjam-shinkavfx.html
――面談の過程で、印象に残っていることはありますか?
就業時間がとてもクリアで、しっかり守られていることに衝撃を受けました。激務になりがちな業界なので、何度も「本当ですか!?」と聞いてしまって…(笑)。現在はsync.devの仕事をしながら、平行して別の仕事もしているのですが、就業時間がちゃんと見えているので両立させやすいです。何時までsync.devの仕事をして、その後は別の仕事をして、と自分でコントロールできるのがいいですね。
――sync.devで、これまでに担当した案件について教えてください。
2022年2-5月に国立新美術館で開催された『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』のデジタルコンテンツ制作が印象的でした。この案件では、岡田さんがテクニカルディレクターとしてベースのシステム設計を担当し、私はデータをビジュアライズしていく部分を担当しています。
――岡田さんとのお仕事はいかがでしたか?
岡田さんはとても真面目で、きっちりされている方。システム設計がしっかりしていて、チームでやることを前提としたデータのつくり方をしてあって、とてもやりやすかったです。それができるのは、岡田さんも苦労された経験があるからかもしれません。機能毎に作業を分担するようなイメージで、業務のワークフローもとても整っています。
――最近の業務としては、どのようなことをされているのでしょう?
現在はUnreal Engineを使ってシステムを作ったり、R&Dをメインに行っています。内容としては、sync.devでもともと持っていたもののアップデートや、代理店さんからの依頼を踏まえた検証、あとは岡田さんの「これを試してみよう」というアイディアを実験してみたりと様々です。検証したことはScrapboxにまとめられているので、過去のR&Dの結果もすべて見ることができます。このScrapboxも整理されていて、とてもわかりやすいです。
また、オフィスのスタジオにモーションキャプチャーやグリーンバック環境が整備されているので、検証ではこれらを使います。TouchDesignerやUnreal Engineなどを使ってカメラデータを転送し、特殊なプロトコルを読み込めるように変換して、Unreal Engine内のカメラを動かしてみたりしています。
もちろんR&Dには失敗もつきものですが、そうしたらみんなで調べて、共有して、もう一度トライして、知識が増えて、その知識も共有して…その工程がとても楽しいです。sync.devでやっているR&Dは難易度が高いので、かなり知識が増えてきました。
技術の進歩の流れに乗りながら、興味の向くままに柔軟に
――最後に、これから携わっていきたい領域や、キャリアのイメージについて教えてください。
私はCGを軸としているので、CGに触れられる案件にどんどん携わっていきたいですね。メトロポリタン美術館展のような、データをビジュアライズしていく案件も楽しそう。また、R&Dでは実用できることもけっこうやっているので、それらを活かせる案件が増えていったらいいなと思います。
自分自身としては、実は明確な将来像やキャリアについてはあまり気にしていません。大切にしているのは、日々進歩していく技術についていって、学び続けること。その範囲は、自分が興味があるものだけでもいいと思います。試してみて居心地、やり心地が良いものを見つけたら、それらを吸収しながら、その方向へと進化していくのがいいのかなと。
そのためにも、気になる技術が出たらまずは触るようにしています。私はデジタルでのファッション表現にも興味があるんですが、最近Unreal Engineにクロス(布)シミュレーションができるプラグインが出たのでそれを検証しているところです。そういったR&Dや検証の中から自分にとって楽しいことをみつけて、その方向性を自分の力にしていくようなイメージ。どの方向にも面白い技術が出てくる可能性があるので、明確に「これになりたい」というものは決めず、ずっと柔軟でいたいですね。
TEXT & EDIT by Shiho Nagashima