森の国Valleyで、ゆきおさんが仕掛けていること
愛媛県松野町、滑床渓谷のふもと。四万十川源流の目黒川沿いに、森の国Valleyがあります。
宿泊施設としてゲストを迎えながら、それだけでは言い表しきれない拠点でもあります。森・農・食・医・育という5つの視点から、人と自然が調和する営みを育てていく場所です。
今回お話を聞いたのは、“森”の領域を担いながら、水際のロッジの運営にも関わるゆきおさん。2024年春から、自然ガイドや森・川・海のつながりを体感できる企画づくりに携わってきました。
宿の現場を支えながら、ツアーを企画し、森のあり方を考え、これからの暮らしや産業の形まで見据えている。いくつもの役割が重なっている仕事でした。
森の国Valleyで、ゆきおさんは何をしているのか
ゆきおさんに今の仕事について聞くと、まず返ってきたのは「ベースは森担当ですね」という言葉でした。
「森部門を広げるというか、深めるというか。森のあり方を考えていくのがひとつあります」
そのうえで、実際の仕事はかなり幅広いです。
森・川・海のつながりを体感できるツアーをつくること。水際のロッジで宿泊者を迎え、ガイドや体験を提供すること。
こうして聞くと、自然豊かな場所でいろいろなことをしている人、という印象を持つかもしれません。けれど、ゆきおさんの仕事の核は、もう少し奥にあります。
それは、森そのものをどう育てていくか、という問いです。
ツアーの奥にある、「千年の森」という時間軸
印象的だったのが、「千年の森をつくる会」の取り組みです。
細羽さんが代表を務め、ゆきおさんは事務局長として関わっています。
「千年の残り974年間をどうつくっていくか、っていうことを今やってます」
言葉のインパクトとは裏腹に、内容はとても実務的です。
去年は植林を約3000本実施し、森の将来像を考えながら、間伐や手入れの方針を整えています。
「どういう森づくりをしていくのか、その部分を今つくっているところです」
ツアーだけでなく、この場所で暮らし続けるための土台として、森をどう守り育てるか。
森の国Valleyの仕事には、長い時間軸の営みが重なっています。
県庁から現場へ。変わったのは立場で、目指すものは変わっていない
ゆきおさんは、愛媛県庁で10年間、森に関わる仕事をしていました。
森林管理や教育、人材育成、政策づくりなど幅広い分野を経験しています。
その中で、少しずつ次の選択を考えるようになりました。
「県庁は仕組みをつくって支える立場なんですけど、プレーヤーがいない中で仕組みをつくる難しさもあって」
「僕がやりたかったのは新しいあり方を見つけることだったので、現場で事例をつくる側に入ろうと思いました」
支える側から、つくる側へ。
立場は変わっても、目指している方向は変わっていません。
「“森林と共生する文化の創造”というコンセプトに共感していて、今はそれを現場でやっている感覚です」
鮎×ピッツァは、森川海を“食”から伝える挑戦だった
ゆきおさんの仕事を、初めての人にも分かりやすく伝える具体例が、「鮎×ピッツァ」の企画です。
このワークショップは、流域の食材を使い、自然と食のつながりを体感する2日間。川漁師とピッツァ職人、そしてゆきおさんがナビゲーターとして関わる構成になっています。
ゆきおさんの話を聞くと、この企画は、もともと考えていた森川海のツアーを、より届きやすい形に再編集したものだと分かります。
「前提として、森川海はつながってますよ、っていうことを体感してもらうツアーを考えていたんですけど、食を切り口にして再編集したらもっと届くんじゃないか、というコメントをもらったんです」
「もっと川に絞って、もっと鮎に絞って、食っていう文脈にするにはピッツァがあったので、そこをつないだって感じですね」
森と川と海がつながっていることは本来とても身近ですが、言葉だけでは少し遠く感じてしまうこともあります。
だからこそ、まずは“食”から入る。
食べることなら、自分ごととして捉えやすいからです。
「一番自然とつながってる行為って、食べることなんですよ」
「実感が湧くギリギリのラインが食なんだと思います」
森の国Valleyは、知れば知るほど奥行きのある場所です。
その一方で、初めての人には少し分かりにくい部分もあります。
だからこそ、「鮎×ピッツァ」のような体験が、ひとつの入口になります。
考え方や背景にある思想を、実際の体験として伝えられるからです。
morino-kuni.com/news/四万十川源流域で「鮎xピッツァ」ワークショッ/
五感で自然を感じる。その体感が、ゆきおさんの強みになっている
以前の記事でも印象的だったのが、ゆきおさんの自然との距離の近さでした。
鹿のフンの匂いを嗅いでみたり、川の説明をする前にまず入ってみたり。
少し驚くようなエピソードもありますが、それがゆきおさんの感覚をよく表しています。
頭で理解するだけではなく、まずは体で感じる。
そんなスタンスが、自然と行動にも表れているように感じました。
今回のインタビューでも、その延長にある言葉がありました。
「頭で理解するだけじゃなくて、やっぱり体で感じてもらいたいんですよね」
「僕の強みを考えると、森川海を五感で感じてきた体感値の蓄積なのかもしれないです」
この“体感”という感覚は、この記事を読む人にとっても大事な入口だと思います。
森の国Valleyでの仕事は、知識を伝えることだけではなく、
自然や人との関係を、自分の身体で受け取っていくことに近い。
ゆきおさんの言葉は、そのことをとても分かりやすく教えてくれます。
家族ができた今、この場所で暮らす意味も少し変わってきた
今回のインタビューでは、お子さんが生まれたことにも少し触れました。
ここは採用記事なので大きくは扱いませんが、
この話は森の国Valleyらしさをよく表しているように感じました。
「やっぱり、この環境で子どもが育つっていいなって思いますね」
宿を運営すること、体験を届けること、森を育てること、地域で暮らすこと。
それぞれが切り分けられているのではなく、地続きになっている。
「ここは、仕事とプライベートが分かれてない状態で働くことが楽しいと思える場所なんです」
この感覚に惹かれる人にとっては、とても面白い環境だと思います。
森の国Valleyで求めているのは、完成された人ではなく、ここで仕掛けたい人
最後に、どんな人と働きたいかを聞いてみました。
「熟練された人である必要はないと思うんです」
「若くても、ここで仕掛けたい、勝負したい人がいいですね」
大切なのは、スキル以上に、この場所を“自分のフィールド”として捉えられるかどうか。
決まった役割がある職場ではありません。
だからこそ、自分なりの関わり方をつくっていく必要があります。
自然や地域に関わる仕事を、もう一歩深くやってみたい方。
余白のある現場で、自分の役割をつくっていきたい方。
そんな人にとって、森の国Valleyはきっとおもしろい場所です。
森の近くで働く、ではなく、森とともに生きる
森の国Valleyの仕事は、一言では説明しきれません。
宿や体験の奥に、もっと長い時間軸の営みがあります。
「ツアーは一部で、本当に大事なのは森をつくることだと思っています」
森の近くで働くのではなく、森とともに生きる。
そんな働き方に少しでも惹かれる方は、ぜひ一度のぞいてみてください。