鈴木和師 1997年生まれ。東京都神津島出身。北海道・層雲峡のHOTEL KUMOIでのインターンを経て、2020年1月に入社。同年11月、ホテルスタッフからCHILLNNへ席を移し、セールス業務と水星プロデュース事業の案件のPMも担当。現在はレベニューマネージャーとして、事業計画の練り上げやSaaS事業の統括を行なっている。
CHILLNNのメンバーを紹介する社員インタビューシリーズVol.5の鈴木和師さんは、新卒のタイミングでHOTEL KUMOIのインターンに参加して、翌年1月に1.5新卒のようなタイミングで水星に入社。その後、ホテルの現場を経験後、プレローンチして間もないCHILLNNにジョインして、セールスとして、SaaSのビジネスモデルの確立に大きく貢献。現在は、レベニューマネージャーとして会社全体の成長を見ながら、事業戦略の立案や新規事業の企画などに挑戦しています。そんな鈴木さんに、これまでの経歴、お仕事の内容、CHILLNNで働くことの魅力や今後の組織としての展望について、お話をうかがいました。
伊豆諸島出身。おばあちゃんの旅館を再生したいという思いからホテルの住み込みインターンをはじめる ー水星に入社、そしてCHILLNNにジョインするまでの経緯について教えてください。
僕は伊豆諸島の神津島の出身で、中学を卒業するまで島で育ちました。島にはおばあちゃんがかつてやっていた旅館があって、将来その旅館を再生させたいと思い、この業界にはずっと興味は持ってました。 大学生の頃に、水星代表の(龍崎)翔子さんの存在を知って、同世代でホテル業界でめちゃくちゃイケてる人がいると思い、水星が当時運営していた北海道の層雲峡の温泉旅館「HOTEL KUMOI」の住み込みインターンに応募をしました。
約半年間のインターン後、そのままHOTEL KUMOI配属の社員として働いていて、当時は支配人を目指していました。現場の仕事をメインで行いながら、層雲峡温泉街のみなさんとイベントを企画したり、北海道の大手鉄道会社さんの新規のホテル開業の案件の企画などにも関わる機会をいただいたりと、充実した毎日を送っていました。そんな矢先、あるタイミングで地元に帰って親族に将来について相談したところ、自分にはおばちゃんの旅館を引き継ぐ権利がないことが判明したんです。世襲制ってやつですね。 約1年半、現場を経験する中で、オペレーションの流れは一通り頭に入ったというタイミングでもあったので、一度は会社を辞めることも考えました。
その時はコロナ禍で北海道のホテルは休館していて、何もやることがないという状態だったのですが、ちょうど会社の新規事業として、こだわりを持った中小規模の宿泊施設向けに新しい予約エンジン「CHILLNN」をつくるというプロジェクトが立ち上がった時期で、有志でプレローンチ後のセールスを手伝ってくれる人間を募っていたので、手を挙げました。それがCHILLNNとの出会いですね。当時、家=HOTEL KUMOIだったので、休館中はHOTEL SHE,OSAKAに住み込んでいたのもあり、ロビーで代表の永田さんが開発している姿を横目に、ひたすらCHILLNNの営業に打ち込んでいました。元々営業の仕事は学生時代にもやったことがあったので、楽しくて夢中になってやっているうちに結果も出てきていたので、現場とは別の業務に携われる刺激的な時間でした。そんな経緯からCHILLNNに声をかけてもらってチームにジョインすることになりました。
「未来に泊まれる宿泊券」で実感したITの可能性 ー当時、CHILLNNのどのようなところに可能性を感じたのでしょうか?
はじめはコロナ禍で、ゲストは自由に旅行をすることが出来ない、宿は予約が埋まる見通しが持てず資金的に苦しいという状況の中、ゲストが応援したい宿の未来に宿泊する権利を買うことが出来る「未来に泊まれる宿泊券」というプロジェクトを立ち上げて、全国の宿の方々に販売を提案していました。
元々地元のために何かしたい、観光業界を盛り上げたいという思いがありながら、これまでの自分には宿を運営することや足を運んで対面で何かを提案するという発想しかなかったのですが、「未来に泊まれる宿泊券」が日本全国の宿泊施設に広がっていくのを目の当たりにする中で、純粋に「ITの可能性ってすげぇな」って実感したんです。そこから観光・宿泊×ITの領域で新しい挑戦がしたいと思い、CHILLNNというプロダクトに惚れ込みジョインしました。
ーCHILLNNが今のSaaSのビジネスモデルを確立するまでの経緯を教えてください。
CHILLNNは、元々水星が運営するホテルが抱えていた課題、集客をOTAに依存せざるを得ないという問題を解決するために開発されたサービスでした。ホテルがこだわりを持って、空間とサービスをつくりブランドを確立したら、最終的に自分たちだけで集客できる世界を実現したいと考えていました。
元々は販売手数料のみを収益の軸としていたので、シンプルに予約が生まれないと収益が得られないというビジネスモデルでした。コロナ禍により旅行需要が低迷している市況の中、このモデルで安定収益を得ることは当然難しく、組織や開発に投資をすることも出来ないという限界が見えてきていたので、CHILLNNへ異動して1年目のタイミングでSaaSのビジネスモデルに転換する運びとになりました。
当時の僕は「SaaSって何?」という状況だったのですが、ビジネスモデルを転換してから、積み上げれば安定収益が見込めるようになり、あらゆる投資ができる体制を構築できる兆しが見えてきました。はじめに、安定して積み上げられることが重要だったので、当時完全に属人的になってしまっていた営業のメソッドを体系化して、セールスのスキームを構築していくことに努めました。
「SaaSとは何か?」ということについて日々大量のインプットをしながら、組織の中で、SaaSビジネスを運営する上で必要なKPIの設定やPMFの定義、ターゲティングやカスタマーサクセスに何が必要かは?などを議論するためのあらゆる土台を整えていきました。仮説を立てては実践して、かたちを変えて、人を採用して検証しなが、試行錯誤を繰り返していく中で、今の組織カルチャーが創られてきました。
カスタマーサクセスにコミットすることがマーケティングの成功に繋がる面白さ ーこれまで順調に※契約施設数を増やしているCHILLNNですが、成長の過程で壁やブレイクスルーを感じたポイントはありましたか?※2023年12月時点で約800施設
これまで爆発的に伸びたタイミングはなくて、右肩上がりに地道にコツコツ積み上げながら成長をしてきました。
「中小規模のこだわりを持った宿」をCHILLNNではメインターゲットとしており、例えば奈良のume,yamazoeさん、東京蔵前のNui. HOSTEL & BAR LOUNGEさん、サウナが有名な長野のLAMP野尻湖さんなど影響力のある宿にご利用いただいています。興味を持っていただいた事業者さまに、CHILLNNを知ったきっかけを伺うと「XX(宿泊施設)さんが使っているのを見て興味を持ちました!」という返答が凄く多く、そうやって認知が広がっていったという印象です。影響力の有る無しはフォロワーなどの定量的に計測できるものばかりではなく、あらゆる地域のお宿さまがそれぞれにコミュニティを持たれているので、一つ一つの宿に寄り添い、丁寧にサポートを行い、理想の宿泊体験を実現することが新たなお客様を呼ぶことに気付きました。「これまでにつくりあげてきたネットワークが新しい施設の獲得に繋がっている」このことに気づいたタイミングがブレイクスルーだったのかもしれません。
そこに気づくまでは「施設が独自に持つ世界観を表現するデザインやオプション機能を提供しています!」といった機能訴求ばかりをしていたのですが、それだけではなく「この宿が使っている」「この宿が満足している」というカスタマーサクセスを可視化することが新規獲得に繋がっているのだと気付けたのは大きかったですね。それからは、カスタマーサクセスを軸に今利用している施設が何に喜んでいるんだろう?という部分を徹底的に考える戦略にシフトしました。
あらゆる成果や現状を定量的に示せる状態をつくる重要性 ー今期からレベニューマネージャーに就任して、会社全体の売上の数字を追いながら、戦略の企画やマネジメントに取り組んでいると聞きました。役職を担当することになった背景や意気込みについて教えてください。
根っからの文系ですが、自分のセールスなどのアクションがチームの売上や利益にどれだけ貢献しているのかなどの成果に繋がる数字を見ることが好きでした。ビジネスモデル等に気を配らず、がむしゃらに営業をしていた時期もあったのですが、自分の成果によって、どの程度事業のグロースに起因しているのか伸びているのかが繋がらない状態は不健全でした。単純にそこに違和感を持ったことが今の役職に至るまでの始まりだったと思っています。自分だけでなく、事業や組織を育てたいという思いが強かったので、健全な状態を作りたい一心で、徹底的に数字に向き合おうと思いました。
また、同時期にインターンの採用に関わるようになって、CHILLNNで働いてくれる人たちに「あなたがやってくれたことが、これだけ事業の成長に貢献してくれたんだ」ということを伝えてあげられるようにしたいと思いました。折角、学生の貴重な時間を費やしてくれるの、定量的な成果を持ち帰ってもらわないと「これだけやった」という達成感や就活で使える実績には繋がらないだろうなと。
最近、本採用にも本腰を入れていますが「数字こそ正義だな〜」という認識がより強くなりました。入社を検討してくれている方に対して、CHILLNNの魅力を伝えたいと思ったら「グロースに向けて頑張ってます」だけでは当然ダメで、セットでどれだけのグロースの可能性があるのかを今の実績と展望を定量データで語るしかないと考えています。当たり前の話かもしれませんが、社会的な本質的な信用や期待は数字でしか得られない部分が大きいと常々感じていますね。
レベニューマネージャー就任前後でメインで行うタスクは変わっておりませんが、予実管理と来期予算の策定に加えて「中長期的な視点でこのプロダクトがどうなっていくべきなのか?」という問いに対して、事業推進とビジョン実現の観点から事業計画ありきで未来について考えることも多くなったと感じています。
組織としてミッションを掲げながら、これまでのネットワークを最大限に活かして事業の多角化に挑戦していきたい ー現在事業の多角化に取り組んでいるとのことですが、今後の事業戦略について教えてください。
これまでのCHILLNNは「ARRX億のプロダクトをつくる」という目標のもと、動いてきていましたが、会社のメンバーと議論を重ねる中で、何をつくるかの方が大事じゃないかと思ったんです。
僕のキャリアはホテリエからはじまり、CHILLNNという宿泊事業者に価値を提供しているプロダクトに恋をしたという背景で今に至り、観光・宿泊業界の中で自分たちがどんな価値を生み出せるかに興味がありましたし、今も同じ思いです。他にも観光・宿泊業界に強い思い入れをもっているメンバーがいる中で、ひとつのチームとして新しい価値を生み出していくためには、数字の目標だけじゃないものが必要だと思いましたし、何よりこの会社に興味を持ってくれた人はプロダクトや会社に惹かれないなと思いました。多くの企業がビジョン・ミッション・バリューを定義していますが、その必要性を身に染みて感じたタイミングが今年の8月です。
「Enrich X’s life./「特定の誰か」の人生を豊かにする。」 というミッションを掲げました。 このミッションを踏まえて、ホストに対してはこだわりのあるオーナーが宿の世界観を最大限に表現できる世界、ゲストに対しては今まで出会ったことがない素敵な旅に出会える世界を描きたいと考えています。 具体的な事業戦略としては、これまでSaaSのビジネスモデルで築いてきたネットワークの価値を最大化させるために、今までの世の中にはない新しい価値を提供するOTAをつくることに挑戦しています。
併せて、水星のプロデュース事業部との連携を強化することで、宿の開業支援や運営支援などのコンサルティングメニューなどもスムーズにCHILLNNのクライアントがアクセスできる環境を作りたいです。水星プロデュース事業部では、ハード(建物)の設計やHPの制作などのディレクションなどクリエイティブな面の運営開始前の土台作りに強みがあるのに対して、僕らの強みは運営開始後のデジタルマーケティングのナレッジが蓄積されているので、相互に補完し合うことで、宿の企画→開発→運営までを、滞りなく一貫して支援する体制を水星グループ全体でつくっていけると思っています。 CHILLNNへのジョイン当初、CHILLNNのセールス業務と共に「未来に泊まれる宿泊券」の営業がきっかけでご縁があった小笠原諸島の宿の案件でプロデュース事業部のリブランディングプロジェクトのPMを担っていたので、その経験も活かしながら、水星プロデュース事業部とお互いの強みが掛け算されたシナジーを可視化することで、より強固なBtoB基盤を築けていけると考えています。
この辺の背景をまとめたnoteも書いたので、よかったら見てみてください。
ー将来の展望について教えてください。
将来的には宿の経営資源全体(ヒト・モノ・カネ・情報)にアプローチしていきたいと考えています。 これまで水星やCHILLNNでは、モノとカネの部分にアプローチをしてきましたが、今後は人材やコミュニティ創出など、ヒトや情報の分野にもアプローチしていけるといいなと思っています。
特に人材資源へのアプローチは是非やっていきたいなと。自分自身がホテルの現場出身で、ホテルでの仕事そのものは好きだけど、金銭面やワークライフバランスなどの様々な事情から続けることが難しくなるという状況を実体験したし、他のスタッフも見てきたので、そうした業界全体の課題解決にも取り組んでいきたいです。 情報の部分でも、例えばCHILLNNを利用しているゲスト同士やホスト同士のコミュニティーをつくっていけたらと考えています。土地の情報や宿の運営方法、CHILLNNの活用方法などについて相互にナレッジを共有できるプラットフォームをつくることが目標です。 個人としては、祖母の旅館の再生は難しい状況でしたが、島の空き家や土地を活用して、いつか宿をやりたいと思っています。CHILLNNで中小規模の宿オーナーのコミュニティーが出来たら、僕もそこに所属しながら、地元の伊豆諸島の遊休資産を活用するような取り組みができたらなと考えています。ビジネスだけをただ持ち込むのではなく、そこに住む人たちの生活を脅かすことがない持続可能な観光のかたちや空き家の活用や跡継ぎ問題などの課題にトライしていきたいです。
TEAMMATE VOICE 山田菜美 CHILLNN マーケティング/CS 永田さん、落合さんとともに強靭な3本柱のような存在です。事業戦略や新規事業などの事業開発業務をを行う傍らで社員やインターンの育成も行っているため、人より3倍密度濃い時間を走り続けているマネージャー兼スーパープレイヤーだと思います。その成長への貪欲さがメンバーの士気昂揚を促してくださっているのだと常々感じています。CHILLNNの企業成長を語る上で不可欠な鈴木さんと共に走り続けられるよう、私たちも邁進していくのみです。
執筆/写真:金井塚 悠生