スタイルポートのクラウド型VR内覧システム「ROOV」。そのVRコンテンツ制作を行っているのが、モデリンググループです。「エンタメ系のCGは人々に幸せを届けるという意義がありますが、当社はその手前の段階である、人として生活をするために必要不可欠な「住」の領域で、世の中の生産性向上を図っている会社です」。そう話すのは、モデリンググループのグループマネージャーで、3DCGデザイナーの三浦成人です。VRクリエイターやディレクターとしてスタイルポートで働く魅力や意義について、話を聞きました。
社会的インパクト大のプロジェクトに、3DCG×ゲーム制作のスキルを活かして参画
——三浦さんがスタイルポートに入社するまでの経緯を教えてください。
学校を卒業後、札幌市にあるCGプロダクションでCGデザイナーとして勤めていたんですが、実家の父が病気を患った関係で退社して地元に戻り、フリーランスになりました。
フリーランスになってからは、交流のあった札幌市界隈の仲間たちと、個人的な趣味でUnityを使ったゲームを制作していました。
そうしているうちに、札幌にあるスタートアップの開発支援を行っているBULB株式会社の社長から「ゲームが作れるなら一緒に仕事をしませんか?」とお声がけいただいて、その流れで現在の「ROOV」のプロジェクトに参画することになったんです。
実際にROOVのプロジェクトに関わってみるとすごくおもしろかった。それまで私がやってきた3DCGとゲーム制作のスキルを掛け合わせて力を発揮できそうだと思っていたところに、スタイルポート側から「正式にメンバーになりませんか?」と打診があり、社員として入社しました。
——フリーランスから社員に戻ることについて、違和感などはなかったんですか?
フリーランスから社員に戻ることで1つのプロジェクトにしか参画できなくなって、スキルが一極化してしまうのではないか? とは考えました。
一方で、前職のCGプロダクションにいたとき、お客様に対してゼロから製品を生み出して届けたいという思いがあって。当時は販促用の広告映像を作っていたんですが、個人的にはそれがあまり楽しいと思えなかったんです。
それよりも、誰かのために自分で考えて、手を動かし、ゼロからモノづくりができるような仕事がしたいと考えていました。
ROOVはまだまだサービスとして成長途上にある段階で、正にこれから自分たちで作っていくフェーズにあると感じました。社会的インパクトも大きそうな仕事だし、自分がやりたいことにつながりそうだと思ったので、入社を決めました。
——フリーランスとして参画していた頃と社員になった今とで、変化はありましたか?
フリーランスとしてプロジェクトに参画している頃は、どうしても請負受託制作という関係性を意識していました。発注者の意向に沿って仕事を進めていくだけになりがちだったんです。たとえば、「このCGを作ってくださいね」と言われたものを受託して作る、あくまでも受け身の立場での仕事の進め方をしていました。
もちろん自分ができる範囲での提案はしていましたが、それ以降の意思決定には あまり積極的に関われていませんでしたね。
しかし、入社後にその意識が変わったきっかけになる出来事がありました。リクルートさんのSUUMOとの提携の話が出たときです。それまでそんな大きな会社と直接取引したことはなかったので、なんだか大きな話になってきたぞ、ヘマはできないぞという思いが芽生えたんです。
それからは私一人だけで出来る範囲を超えて、コンテンツ制作の組織をどう設計するべきかであったり、制作コストを抑えるためにどんな打ち手があるかを、主体的に考えて提案をするようになりました。
生産性を上げる工夫で個人に依存しない組織体制を構築
——モデリンググループにはどんなメンバーがいて、普段どうコミュニケーションを取っていますか?
現在メンバーは全部で23人で、年齢は20代〜40代中盤ですね。男女比は半々くらいです。
全員フルリモートで働いていて、コミュニケーションにはSlackを、タスク管理にはTrelloを使って、基本的にはテキストベースのやり取りをしていますね。必要に応じてオンラインミーティングですり合わせを行います。
それ以外では、メンバーとマネージャーが1カ月に1〜2回、1on1のような形で面談をしています。
グループ内は制作チームと開発チームにわかれています。制作チームには実際に手を動かしてVRを制作するクリエイターと、お客様とコミュニケーションを取りながら案件を動かしていくディレクターが在籍しています。
開発チームには、テクニカルアーティストと呼ばれるメンバーが在籍しています。クリエイターとエンジニアの中間職種のようなイメージです。
クリエイターとディレクターはそれぞれで小さなチームを作り、週に1〜2回、割とこまめにミーティングをして、ナレッジシェアやトラブルシューティングをしています。縦割りの組織ではなく、良い作品作りのために、この2つの小チームは日々連携しています。
プロジェクトの性質にもよるんですが、不動産のCGを作る場合、納期がものすごく短いうえに、変更が多いんですよ。
たとえばゲームCGの制作現場であれば、ハイパーカジュアルゲームを除き、よほどの事情がなければトータルで1週間以上の開発期間がありますが、不動産業界のCGパースは1-2日で完成まで持っていくことに加えて、最終完成に至るまで数回、時には10回以上の修正や変更が生じます。その指示もかなりアナログで、お客様の図面が変更になると、その連絡が口頭で来たり、紙に印刷したCGの絵に対して赤入れしたものがスキャンして送られてきたりするんです。
そのような情報をディレクターが中心となって整理して、お客様と密にコミュニケーションを取って、間違いがないようにプロジェクトを進めています。
品質管理を行うのも、ディレクターをはじめとした品質管理担当の重要な役割です。
他には、どのプロジェクトに誰を割り当てるといった、詰め将棋のような作業もしています。
あとは、当社は個人に依存しない組織体制を整えています。たとえばAさん、Bさん、Cさんのチームで、制作工程が0から10まであるとします。0から5までをAさんがやったところで休みを取る必要が生じた場合、6から10までをBさんかCさんが引き継がなければなりませんよね。当然ですが作業者が交代しても、期日を守って完成作品の品質を保つ必要があります。
当社は品質を保ちながら引き継ぎをスムーズに行えるように、そしてどんなクリエイターでも一定品質が出せるように、制作のルールを決めているんです。たとえば、CGデータの命名やパラメータの設定もそうですし、単純作業をやらなくても済むようにスクリプトを書いて自動化するなど、生産性が上がる工夫をしています。
このような仕組みづくりは、CG制作の知見とエンジニアの技術を併せ持った開発チームが主体となって取り組んでいます。
「CGが本当に好き」な人と、高い完成度を突き詰めながら働きたい
——スタイルポートのモデリンググループには、どんなタイプの方が向いていると思いますか?
メンバーはみんな職人気質ですね。たとえば、設計図に基づいてCGを精密に作っていく。そうした1つひとつの作業や工程自体に楽しみを見出せる人は、すごく向いているんじゃないかと思います。
もう1つ、これは私も実感していることなんですが、「美しいものが好き」という人にも向いています。
たとえばマンションのCGを作るとき、「壁が何ミリ」「床が何㎡」というように、ただ設計図にあわせてきれいに作るだけなら、図面が読めてCGソフトが使えれば誰でもできると思うんですよ。
そこからさらに踏み込んで、人の感性に刺さるようなもの、極端に言うと、感動して涙を流すようなものを作れるかどうかまで磨き込める人はなかなかいません。
エンタメだろうが不動産CGだろうが、「人の目で見て体験するコンテンツ」を作る点には違いはありません。ただそのなかでも特に求められるベクトルが、建築の正確性であり、緻密にものを作っていくことにある。それを基礎として、画作りも求められます。
もちろん費用や期間に限りはあるんですが、そういった制約がある中でどう工夫してきれいに作っていくか、最終的に「絵」としての完成度を突き詰めていくのが楽しいと思える方には、魅力的な環境だと思いますね。
——モデリンググループはクリエイターチームとディレクターにわかれていますが、面接などでは、それぞれどういったところを見て適性を判断していますか?
まずクリエイターに関しては、そもそもCG制作が好きかどうか。図面が読めて、それらを正しく3Dモデリングして、フィニッシュ(レンダリング、レタッチ)の状態まで仕上げられることは最低限のラインです。
CGが好きかどうかは質問を深掘りすればわかることです。たとえば、プライベートで自主制作のCG作品を仕上げている人などは、「本当にCG制作が好きなんだな」とわかります。
ディレクターに関しては、コミュニケーション能力や、仕事に対してコミットメントする力が強いかどうかを見ています。
ディレクターは自らCGを作るスキルよりも、住宅に関する知識や情報に精通している人のほうが向いていると感じますね。お客様との交渉業務や調整業務、あとは制作の進行管理に必要な技術や知識をもっているかどうかといった点も確認しています。これらは基本的な要素ですが、加えて最も重要なのは、最終成果物の「絵」やインテリアをどのように作ることで魅力的なものに仕上げられるか、これを自分自身で判断できる必要があります。これが分からないとクリエイターへ指示を出すことが出来ません。
エンドユーザーの「住」に関わる意思決定に携われる仕事
——スタイルポートのような不動産以外にも、CGクリエイターを必要としている会社はたくさんあります。その中で敢えてスタイルポートを選ぶ人は、どこに魅力を感じているのでしょう。
CGクリエイターはアニメやゲームなどエンタメの世界に多いんですが、中にはそういった制作現場に限界を感じて他業種に転職したいと考える方がいます。
大きな制作会社さんだと、CG制作部門があって、そのなかでも細かく「モデリング班」「テクスチャ班」などと役割が分かれていたりします。そこに配属されると、ひたすら3Dモデリングだけをやり続けたりと、日々同じ仕事ばかりになってしまう。そのなかで、今の会社以外の現場を見てみたいと思うようになり、不動産CGを扱っている当社のような会社を選ぶことがあります。
それとCG制作の現場って、体育会系の会社も多いんです。業務効率化の提案をしても「それを作っている暇があったら作品が作れる」などといった理由で一蹴されてしまう事もあります。私も過去にその様な経験をしました。実際に運用できたら非常に合理的な取り組みであったとしても、試す機会すら貰えないのです。
モデリンググループでは、VR作品の品質もさることながら「全体最適化」や「合理性」も重視しています。どのような意見であってもまずは聞き入れて、チャレンジする機会を作るようにチーム全体で意識しています。
先ほどの制作ルールというのも完全に決まっているわけではなく、ビジネスでVR作品に求められる要件がどんどん変化するので、それに合わせて調整しています。意欲さえあれば、自分で変えられる余地がたくさんあるんです。
あとは、「何かを成し遂げることで社会的インパクトを残したい」という思いから当社を選ぶ方もいます。
エンタメ業界にはエンタメの持つ力で、人々に幸せを届けるという意義がありますが、当社はその手前の、人として生活をするために必要不可欠な「住」の領域で、世の中の生産性向上を図っている会社です
我々は直接住宅を建てるわけではないんですが、住宅などの販売現場にVRコンテンツを届けることで、お客様の悩みを解決し、業務効率を上げていく。そして、お客様を通して最終的に住宅を買おうとしている人の意思決定に携わることができます。
私たちの仕事は、ただ単にVRやCGを作ることではありません。生み出した作品がエンドユーザーの「住空間選択」を直接手助けできていると考えると、おもしろさの度合いが変わってくるかもしれないですね。