ニットで営業を担当している久保智さんは、リモートワーク中心のワークスタイルで働き、ホテル暮らしをしているアドレスホッパー。なぜアドレスホッパーをしているのか? なぜ宿泊先にホテルを選んでいるのか? そんな素朴な質問に対する久保さんの本音から、自分らしい生き方や働き方を実現するヒントが見えてきました。
〈目次〉
・定住することに、ずっと疑問をもっていた
・ホテルは僕にとって最適な「仕事場兼住居」スペース
・理想の生き方に合わせて働き方を選ぶ
定住することに、ずっと疑問をもっていた
―久保さんは、毎日ホテルで暮らすアドレスホッパーということですが、いつからホテル暮らしをしているんですか?
2019年7月25日、30歳の誕生日からです。
実家は愛媛にあるんですが、現在のようにホテル暮らしをする前は、福岡と東京を行き来するデュアルライフを送っていました。そんな生活をしているうちに、いっそ固定の住居を持たないほうがいいんじゃないかと思うようになったんです。それで、30歳になったらアドレスホッパーをしようと決めて、誕生日の夜に台湾に飛び立ち、その日から“365日ホテル暮らし”を始めました。
―ということは、もともと1カ所に定住していたわけではなかったんですね。
そうなんです。飽き性ということもあるんですけど、中学生の頃から、「なんで、ずっと同じところで生活しなきゃならないんだろう?」みたいな疑問をもっていました。「たまたま日本に生まれてここに住んでいるけど、ここが自分にとってベストな生活環境なんだろうか?」とか。決まった住居を持たず、いろんな場所を転々とする“ホームレス”みたいな生活もアリだなと思ったりして(笑)。そう考えるのは多分、「場所にも時間にも縛られたくない」という気持ちが強いからだと思います。
将来的には、居心地のいい場所をいくつか選んで、そこを転々とする生活を送りたいと考えています。そのために今、アドレスホッパーをしながら、いろんな場所での生活を体験しているところです。
―どのくらいのペースで、滞在する場所を変えているんですか?
1カ月くらい日本にいたら、次は海外に1カ月くらい滞在して、というのを繰り返しています。日本にいるときは、同じエリアにいても1週間ごとにホテルを変えていて、海外にいるときは、1週間ごとに都市も変えています。
―海外では、どちらの国に?
今のところ、日本との時差が少ない台湾、韓国、マレーシア、フィリピン、ベトナムを回ってきましたが、今後はヨーロッパ方面にも行って、時差が大きい国での生活も体験してみたいですね。
―移動することが増えると、時間の使い方もかなり変わってきますか?
そうですね。営業という仕事柄、クライアントさんから電話がかかってくることも多いですが、新幹線や飛行機で長距離を移動している間は、それに対応できなくなります。でもその間、一人で集中して思考することができるので、全体的に時間の使い方にメリハリができたと思います。
ホテルは僕にとって最適な「仕事場兼住居」スペース
―そもそも、どうしてホテルを宿泊先に選んでいるんですか? 人と交流しやすいゲストハウスなどを選ぶアドレスホッパーの人も多いですよね。
単純に、僕にとってホテルの部屋が最適な空間だからですね。僕はもともと、プライベートでは人と積極的に交流するほうではないので、仕事に集中できて、くつろぐことができるということで、ホテルを選んでいます。クライアントさんとオンラインで商談することも多いんですが、ホテルの部屋だと静かだし、秘密情報なども安心して話せます。
―ホテルの部屋は、久保さんにとって「仕事場兼住居」なんですね。
そうですね。商談やミーティングが続くときは、一日中ホテルの部屋にこもっていたりします。でも、そうでなければ、外に出ていることが多いですね。カフェやコワーキングスペースに行ったり、ニットのオフィスに行ったり。
―いろんな場所で仕事をする久保さんにとって、ニットのオフィスはどんな場所ですか?
ニットのオフィスは遊びに行く場所、メンバーと交流する場所ですね。メンバーたちとワイワイしながら仕事をするので、僕にとっては生産性が下がる場所なんですけど(笑)。コミュニケーションの量が増えちゃうので。その日中に終わらせなきゃいけない仕事が片づかなくて焦ったりすることもあります。でも、僕にとってニットのオフィスは、笑いと刺激をもらえるとても大切な場所ですね。
―これまで約半年ホテル暮らしを経験してみて、感じている変化はありますか?
はじめのうちは、非日常感がありました。でもだんだん、ホテルでの生活に馴染んできて、ホテルの部屋にいることが日常になって、今は違和感がないですよね。逆に、固定の住居を持つほうが、違和感があるかも。
理想の生き方に合わせて働き方を選ぶ
―久保さんが理想としている状態とは?
「仕事」と「プライベート」で実現したいことを、それぞれ「一人でやりたいこと」「仲間とやりたいこと」で4つに分けたとき、それらのバランスがとれている状態が、多くの人にとって幸せな状態なのかなと思っていて、僕にとってもベストな状態ですね。やりたいことの中からどれかを選ぶというよりも、すべて実現させたいです。
―そういう状態にするために、ニットで働くことを選んだということですね。
そうですね。場所や時間に縛られたくない、やりたいことを実現させたいという希望が先にあって、それを妨げる物理的な制限を外していった結果、ニットにたどり着いたという感じです。
こうして自由度の高い働き方を選んで思うのは、その分、きちんと結果を出さなくてはならないという責任や厳しさもあるということです。ニットでは、働く場所や時間を各自で自由に決めることができますが、それは、自分に合った環境で働くことで、パフォーマンスを最大限に発揮するためなんです。だから、結果を出さなくてはというプレッシャーを、いつも感じていますね。
〈ライター後記〉
「当たり前」のことに疑問や違和感をもったとき、「当たり前」から外れるのは大きなエネルギーのいることです。そんな中で、久保さんのように「当たり前」に流されず、自分にフィットする場所や生き方を探し求めて行動する人たちがいるから、新しい価値観が生まれるのではないでしょうか。
HELP YOUライター:小笠原綾子