入社2年目にして株式会社エスプールリンクの関西営業支店の責任者に抜擢された中村 もも。研修時からその片鱗を見せていた彼女には、仕事に対する信念があった。仕事に邁進しつつもプライベートを大切にする中村のキャリアを追う。
支店の責任者に大抜擢。臆さずに貫く自分の価値観
2020年6月、株式会社エスプールリンクは大阪に営業拠点をつくった。支店の責任者となったのは、そのわずか1年前の2019年に、新卒としてエスプールグループに入社した中村 もも。入社2年目としては異例の大抜擢だった。
中村 「独り立ちや目標達成のスピードが評価してもらえた結果だと考えています。エスプールリンク自体が2019年の12月にできたばかりの新しい会社なので、若手にもどんどん任せてもらえる環境があってこその抜擢だったともいえると思います」
関西営業支店での主な業務は、エスプールリンクで提供している採用支援サービスの営業だ。中村はそれに加えて、責任者としてのマネジメント業務全般も任されている。立ち上げ当初には、一緒に働く社員の採用にも携わった。
中村 「私自身も、入社して2年目で同僚の面接をしているなんて考えてもみませんでした。結果的に関西支店で採用したのは2人です。営業経験のない方を採用したので、東京本社の協力を得ながら研修や教育も一から担当しました」
新規営業でさまざまな会社にアプローチしつつ、既存営業、マネジメント業務の責任者をひとりで務める彼女は、それだけたくさんの仕事と大きな責任を背負っている。支店の中で、営業の仕事に関して受注までを完全に把握しているのは中村ひとりだけ。プレッシャーに押しつぶされてもおかしくない。
しかし中村は、決して仕事一色の日々を送っているわけではない。
中村 「仕事とプライベートは分けたいですね。平日に『土日の間にこの仕事を片付けよう』と考えることはあっても、いざ休日が来るとしっかりと休んでいます。自分の時間を確保することは、モチベーション維持のためにも大切だと思いますし」
自分の価値観を大切にしながらも、異例のキャリアアップを実現している中村。たった1年の間で支店を任せられるまでになった彼女は、入社からどんな軌跡を辿ってきたのだろうか。中村のこれまでを遡ると、入社時の研修からすでにその頭角を現していたことが分かった。
不得手な競争にも挑戦をやめない。入社当初に心がけたこと
▲入社時コンテストの優勝チームでの1枚。前列一番左が中村
エスプールにグループ採用で入社した社員には、数カ月に渡る研修が課せられる。中村も研修を受けることになったが、その内容は入社時の彼女にとって不得手なものだった。
中村 「最初はいくつかのグループ会社を巡って現場での経験を積みました。同期でチームを組んで研修に臨むところまでは良かったのですが、この研修で求められるのが『他のチームと競争して1位になること』だったんです。社会人としては必要な姿勢ですが、当時の私にとって競争することは苦手なことでした」
そんな研修にも中村は前向きに取り組んだ。というのも、彼女には「できるという確信がなくともチャレンジする」という信念があった。
中村 「何度かチームのリーダーに挑戦しました。初めて行う業務ばかりだったので、まずは尊敬できる人の行動を真似することから始めましたね。難しいと感じる局面では、研修担当の先輩にロープレをお願いすることもありました。人を引っ張ることにはこだわらず、良いと思ったアイディアは積極的にチーム内でシェアするなどして取り組みました」
こうして積極的に動いた結果、中村のチームはほぼすべての研修で1位の成績を収めることに成功。中村は、エスプールリンクの前身であった当時の採用支援事業部に配属された。
採用支援事業部では新規営業を担当することになった中村。ここで彼女は、数歩先を見据えた働きを心掛けた。
中村 「採用支援事業部は、まだエスプールリンクとして組織ができる前の状態でした。新規事業なので、新卒であろうと即戦力が求められましたし、自分の働きが売上に直結する環境でした。そのため、少しでも早く独り立ちができることを考えて動いていましたね。自分のレベルアップのためにはすごく良い環境だったと思います」
営業も、先輩に同行してもらっているうちは一つの会社に二人分の時間を割くことになる。それは非効率だと考えた中村は着々と準備を進め、わずか2カ月足らずで一人で営業に赴くようになった。
中村 「初めて一人で行く営業は本当に緊張しました。先輩にロープレをお願いする、提案の内容を何度も確認するなど、万全の準備をして臨みました。ただ、プレッシャーよりも、信頼して任せてもらえる喜びの方が大きかったのを覚えています」
苦手だった電話。意義の理解とエスプールの未来
少しずつできる仕事が増えていく中で、仕事についての捉え方が入社当初から大きく変わったという中村。
中村 「目の前の業務だけに集中するのではなく、その仕事がどう次につながるのかを考えるようになりました。たとえば、私は電話がすごく苦手で……。学生の時は、飲食店に予約の電話をするのも躊躇するくらいでした。でも仕事をしていく中で、目先のアポイントが目的ではなく、その会社に価値を提供するために電話をかけるのだと理解してからは、だんだんと電話をかけることへの抵抗がなくなっていきましたね」
商談先の企業は、課題に対する解決策があることを知らない場合が多い。だからこそ、こちらからアプローチをかけて価値を提供する。営業としての役割に意義を見出した中村は、仕事に邁進した。そんな彼女が関西営業支店に抜擢されたのは、当然の成り行きだったのかもしれない。
中村 「エスプールには、年齢や性別に関係なく実力を評価するという風土が根付いていると思います。信じて任せてもらえている以上、結果を出したいというモチベーションにもなります」
「女性だから」という理由で働きづらさを感じることはまったくないという。
中村 「一般的に、女性は産休をとる可能性があるから昇進させないという考え方もあるようですが、そんなことは全然ないです。仮に自分が産休を取ることがあったとしても、エスプールではさまざまな事業を展開しているからこそ、できる仕事をできる範囲で続けていけるだろうなという安心感があります。ただ、エスプールでは役員以上の職に就くほとんどが男性であるという現状があります。これに関しては幹部層も意識しているようで、変えていこうというポジティブな空気と取り組みが社内にありますね。グループ全体で責任者を務めている女性は多くいますし、つい最近、エスプールリンクにも女性役員が誕生しました」
将来について明るく語る中村。年齢や性別で評価しないからこそ、若い社員が会社の未来を自分ごとで語れるのかもしれない。
ともに働く仲間のためにも。自分を犠牲にしない自己実現の方法
▲エスプールリンクキックオフ時の写真
中村は、エスプール入社時に抱いていた初心を変わらずに持ち続けている。
中村 「私はもともと、ソーシャルビジネスのしくみに惹かれてエスプールに入社しました。というのも、社会問題を解決するビジネスを当事者として学びたかったからです。今は学びの過程にいると思っていて、いずれ自分で取り組みたい問題が現れた時に、学んできたことを活かせたら良いなと思います」
ソーシャルビジネスとは、社会問題の解決に取り組みつつも利益を上げるビジネスモデルのこと。学生時代に国際問題や紛争解決に興味があった中村らしい出発点だ。
実は、中村の「仕事とプライベートは分けたい」という考えはソーシャルビジネスとも関連があった。
中村 「正直、まだ出来たばかりの支店なので仕事に関してやるべきことが無限に出てきます。でも、責任者の私がそれを仕事外の時間に持ち込みすぎてしまうと、一緒に働いている人にも同じことを強いることになるかもしれない、と感じます。社会問題の解決につながる仕事で働き手が自分を犠牲にするのは違うかなと思い、この考えを大切にするようになりました」
ソーシャルビジネスの手段を学ぶという目的を持ちつつ、周りの人のことを考えながら仕事に取り組む中村には、優れたバランス感覚がある。そんな彼女は、一歩でも前に進むために目標を立てながら仕事をしている。
中村 「直近になってようやく支店として数字を出せるようになってきました。まずはこれを安定して出せるようにすることが目標です。そこから先は、仕事において自分で対応できる範囲を広げていきたいです。たとえば、お客様にとってプラスになるような全く新しいご提案をして、自分自身の手で受注までつなげられたらと思います」
進歩を続ける中村にとって、仕事とはどんな存在なのだろうか。
中村 「私にとって仕事は、自己実現の手段です。何かしら実現したいことがあったときに、自分の力だけではなく、組織のリソースを武器にしながらチームで取り組めるのが会社だと考えています。もちろん、生きていくために仕事をするという側面もあります。しかし私は、それよりも仕事を通して実現できる価値に重きをおいて取り組んでいきたいですね」
仕事に打ち込めば打ち込むほど、やりたいことが増えていく。支店の責任者になってから、自分の価値観をもっと発揮したいと感じるようになったと話す中村。中村の「自己実現」が、会社全体に更なる影響を与える日は遠くないだろう。