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「テクノロジー×人材紹介」でHR業界を変えていく。元リクルートの企画部長がsincereedで目指すもの

2021年にsincereed(シンシアード)株式会社を設立した南雲。元々リクルートでマーケティング企画や事業企画/プロダクトマネジメント/DX推進、更には新規事業開発などのキャリアを歩んできた中、なぜ起業に至ったのか、経営に対する思いなど、様々な角度からインタビューを行っています。

ーはじめにご経歴を教えてください。

2008年に新卒で株式会社リクルートエージェントに入社しました。リクルートエージェントは当時のリクルートグループにおける人材紹介事業を展開するグループ企業でした。私が入社した後、リクルートキャリアに社名変更し国内のHR事業をすべて統合、直近は株式会社リクルートとなり事業統合されています。
入社後は人材紹介事業の現場を3年ほど経験した後、社内の公募制度で企画の部署に異動し、マーケティングやシステム開発の企画、プロダクトマネジメント、事業企画マネジャー、新規サービス企画部長といった、企画や事業戦略でのキャリアを10年間歩んできました。その後2021年に共同代表の藤井を誘い、sincereedを創業しました。


ーリクルートで長年働かれている中で、起業という決断に至った背景を教えてください。

きっかけとなったのは、リクルート時代の「リクナビHRTechシリーズ(スカウトサービスや、採用管理システム等)」の立ち上げの取り組みです。当時話題を集めていたHRTechの領域に対してリクルートの中で新しい取り組みをする際に、SmartHRさんやカオナビさんなどHRTech系スタートアップの経営者の方々とやり取りする機会がありました。実際にカオナビさんは、リクルートと連携してアライアンスサービスも一緒に行いました。純粋にその時に「スタートアップの経営者ってすごくやりがいがありそう、かっこいいな」と思ったことが、ずっと記憶に残っていました。

転機となったのはリクルートが統合した2021年です。コロナ禍で世の中の働き方が大きく変わったタイミングでした。その時は完全にリモートワークだったので、会社と物理的な距離ができたこともあり、今後のキャリアについて検討しはじめました。皆さんも一度はその時期に考えたことがあると思うのですが、私もそうでした。

当時は35歳でしたが、改めてリクルートのHR領域では本当に様々なことをやらせてもらったと感じました。今後は外に出て、私の培った経験や知識を活かして事業を立ち上げ、まだ多く存在するHR領域の負を解決していく経験をする方が、自分のキャリアとしては最もチャレンジングであり、成長実感があると考えたのが起業に至った最大の理由です。

スタートアップの経営者は、明確なビジョンを持ち、やりたいことを起点に起業するというタイプと、まず会社や事業を立ち上げたいという起業すること自体が先行するタイプとがあると思いますが、私は完全に後者でした。


ーその時、転職という選択肢はありましたか?

転職活動もしており、スタートアップや大手企業からオファーをいただいていました。もちろん、オファーをいただいた企業に転職した場合でもやりがいは感じることができると思うのですが、リクルートで新規事業を担当していた頃と変わらないのでは、というのが正直な感想でした。レイターフェーズのスタートアップや上場企業からのオファーが多かったので、シード期のスタートアップに行くことも検討しましたが、それであればむしろ自分で会社を立ち上げた方がチャレンジングだと思いました。

また、転職活動の中でベンチャーキャピタルのパートナーの方とお会いする機会もありました。複数回面談をさせていただきましたが、起業を応援してくれたことも大きかったです。結局出資は受けなかったものの、私のアイデアややろうとしていることはとても良いと思う、と背中を押していただき、最終的に起業を選びました。



ー南雲さんお一人での起業ではなく、藤井俊介さんを一緒に創業者として迎えた背景や理由を教えてください。

まず起業するのであれば、私にないスキルや考え方を持っている人と起業するということが必須だと考えていました。加えて、人柄も誠実で信頼できるような、人間性の面でも共感できる人を誘いたい、という想いがありました。

もちろん一人で起業することも可能ではありますが、オーナー会社やフリーランスの延長のような会社を作るようなイメージではなかったですし、社会貢献性が高い事業をしたいとなると一定のスケールが大事だと考えると、初期から一緒に会社を創れるパートナーを探した方が絶対に良いと思っていました。

藤井は、リクルートの次世代リーダー研修で一緒になったことが出会いでした。実際にリクルートで一緒に仕事をしたことはなかったのですが、その場で仲良くなって定期的に食事に行くようになりました。藤井は私のことを「現場のことをすごく考えている企画」と話してくれていて、一方で藤井は私から見ると「企画組織のことをすごく考えている現場の人」という話をしていました。そのような関係性や考え方の面で、良いコンビになれるんじゃないかなと思ったので、ちょうどお互いにネクストキャリアを考えていることもあり、私から誘いました。


ー社名のsincereed(シンシアード)の由来を教えてください。

本当にいろいろと考えたのですが、sincere(誠実)という言葉とspeed(速い)という言葉をかけあわせた造語で、『sincereed(シンシアード)』という社名にしました。

先ほどお伝えしたように、まず起業するということを目的としていたので、どんな事業にするかは決まっていなかったんです。自社のサービス名を社名にすることが割と一般的だと思いますが、それがまだなかったので、”我々が立ち上げた会社を顧客や社会からどういう風に認知してもらいたいか”を、藤井と一緒に議論しました。

その中で出てきたのは、やはり「誠実」や「丁寧」、顧客から「信頼」をいただきたいという点だったので、「sincere」という言葉を入れようということが先に決まりました。一方で、丁寧にやっていても拡大ができない、スピードが遅い、となるとあまりチャレンジングではないなと思ったので、あえて二律背反するような言葉を掛け合わせた造語にしようということで「speed」という言葉を足しました。そのため『sincereed(シンシアード)』という社名は、会社のスタンスや姿勢を表しています。


ー現在の事業展開はエージェント事業とプロダクト事業(Resumee)の2つですが、この2つの事業を同時に行うに至ったのはどのような経緯でしょうか?

起業するからには、社会的インパクトや貢献度が高い事業をしたいと思っていたので、そうなるとやはりテクノロジーを活用することは必須だと感じていました。

また、私と藤井はリクルートのHR事業の中でも転職エージェント事業に長年従事しており、外に出てみると改めてこのマーケットはユーザーや企業からの期待が大きい反面、業界の構造的な課題も多々あると感じました。

その課題の根本は、転職エージェント業界における「情報の非対称性」、そして「業界全体が属人的で仕組み化やDX化がまだ進んでいないこと」だと感じました。

日本ではまだまだ転職自体は一般的ではなく、特に20代や30代の方は、初めての活動で右も左もわからない中で、まずは転職サイトに登録をしてみたという方も多いと思います。そういった中でたまたまスカウトをもらったエージェントに何をどう相談すべきか、どういったエージェントが自分に適しているのかがわからない方も多いでしょう。転職サイトのスカウト数は多い方では一日に200通以上届くこともあり、この中から自分自身に合うエージェントを探すことは困難であり、「エージェントガチャ」という言葉も最近では聞いたことがあります。

また、エージェント業界はまだまだシステム活用やDX化が遅れています。いわゆるブティックエージェントといわれる、業種・職種専門型の中小規模のエージェントにおいては、顧客管理や業務においてはExcel等の活用にとどまっていることも多く、場合によっては紙や記憶ベースで行っているエージェントもあります。

そして、不動産業界のREINSのような土地や住宅の物件が業者間に公開されているデータベースも存在していないため、必然的にブティックエージェントは人材紹介契約を結んで、求人紹介できる企業数は限定的になり、その限定的な求人に合う求職者を探すという「求人起点の求職者探し」がメインとなり、「求職者起点の本質的なキャリアカウンセリング」に時間をかけていられないという課題もあります。

こういった業界の課題を解決するためには、まずは私たち自身でも質の高いエージェントサービスを提供し、またその中で感じた負や知見をプロダクト化していくことが業界全体の貢献に繋がるのでは無いかと考え、同時に2つの事業を立ち上げました。

実際に2023年6月にローンチした「Resumee(レジュミー)」という、ブティックエージェントと採用企業をシームレスに結ぶBtoBのプラットフォームサービスは、我々自身がエージェント事業を営んでいる中で感じた課題をプロダクト化したサービスとなります。

今後も、UIが洗練された人材紹介業界向けのSaaSや、求職者の方が本当に相談すべきエージェントに出会えるメディア等も立ち上げていきたいと考えています。



ーこの3年間経営者として会社経営する中で、南雲さんが大事にされていることや、こだわられていることはありますか?

突き詰めるとバリューに掲げている「四方良し」という言葉になります。これは、近江商人の経営哲学で「三方良し」という言葉からつくった言葉です。「三方良し」は、売り手、買い手、世間、を示していますが、売り手は法人としての自社が良いというニュアンスにも聞こえ、私達はこれに「仕事に従事する個人としての自分自身」も良し、ということも大事にしていきたいと考え「四方良し」という言葉にしました。自分たちが行っている事業が顧客にとっても良いことになっているし、自社や社会にとっても良いことになっているし、従業員や個人としての自分自身にとっても納得感があるか、幸せになるか。そういったことを、一番大事にしたいし、今後も会社がどうなろうが一番大事にしようと思っているところです。

そういった想いから、誰かが自己犠牲を払ってしまうようなことは極力なくしていきたいと思っています。日本の企業は「お客様が神様」になりすぎて、従業員にしわ寄せがいくということがよくあると思いますが、そういうことはないようにしたい。私は一番それを重視していますね。


ー経営戦略について、今までとこれからという観点でどう考えられているのか教えてください。

これまでは中長期の事業戦略やビジョンの解像度を上げていくよりも、まず我々のチームの強みで貢献できることをがむしゃらに行った2年間でした。また、最初の経営の意思決定として、シード期にベンチャーキャピタル等の出資は受けない、ということを決めていました。理由は、いくらリクルートで2人とも部長職を担っていたからといっても経営に関しては完全にど素人なわけなので、株式による資金調達をするということは少し経営上級者の方法だと感じました。そのため、まずは自分の足でちゃんと稼いで、利益を生み出す、ということをしないと経営者・商売人としての足腰が強まらないと感じました。

そのため、起業してからの2年間は人材紹介事業で得た利益から、採用やプロダクト、マーケティングに投資を行い、プロダクトを開発しながら、コーポレートの基盤づくりも行うということに四苦八苦していました。正直、中長期の戦略やVisionよりも、まずは目の前で沈まない船を造るということに集中していた2年間だったと思います。

会社全体で一丸となって頑張り、たくさんの方々の支えもあってこの2年間で一定の基盤は構築できたと感じています。人材紹介事業は日本を代表する多数の大手企業と契約させていただき、実績を出せた中で独占で発注いただけるお客様も増えてきました。また、2023年の春にリリースした「Resumee(レジュミー)」もすでに数十社の有料契約をいただき、成約も多数生まれており、手応えを感じています。メンバーも藤井と2人で始めた2年前から、入社予定者も含めると30名の規模になりました。

この2年間で、我々の強みや、業界の課題、目指すべき方向がようやく見えてきたこともあり、今まさに社内でMission・Visionや中長期戦略を再議論しています。

「テクノロジー×人材紹介」という手法で今までにないサービスを提供する、ということの具体的なマイルストーンが見えてきたので、それを今後の大きな事業戦略にしていきたいと思っています。メンバー数は2024年中に50名を超える規模にし、数年後に上場を目指すということも決めました。正直、起業してから今が一番ワクワクしています。


ー最後に、sincereedにこんな方に入社してほしい、こんな方と働きたい、という点を教えてください。

sincereedで掲げている6つのValue(四方良し、協働共創、大胆になる勇気、Learn & Unlearn、最適解の追求、with Speed)における共感性が高い方と一緒に働きたいと思っています。

Valueの意味においては弊社のHP(https://sincereed.com/)をご覧いただければと思います。

もちろん、現在展開している事業への共感性やスキル的に即戦力としてご活躍いただけるかという点も大切ではありますが、社会課題や事業の方向性、その際の人材のスキル面での要件は変化していく可能性があることとも思っています。一方で、Valueは普遍的な概念と感じており、Valueへの共感性や合致度が高ければ、どのような苦難も一緒に乗り越えて行けると思っています。

我々にとっても、本人にとっても、sincereedという場が素晴らしい機会になる、と感じられる方と一緒に良い事業を創り上げていきたいです。



■PROFILE

南雲 亮 代表取締役社長

1985年生まれ、明治大学商学部卒業。
2008年株式会社リクルートキャリア(現リクルート)に入社。
キャリアアドバイザー、マーケティング企画を経た後、リクルートエージェントの事業企画/プロダクト/DX推進マネジャーを経験。
その後、新規事業開発に携わり、HRテクノロジーSaaS「リクナビHRTech」の新規事業開発/エージェントサービス企画部長を歴任。
2021年にsincereed株式会社を創業。


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