はじめに
クリエイターとして活動していると、よく「どんなスキルを身につければいいですか?」「どれくらい経験を積めば一人前になれますか?」という質問を受けます。
確かに、技術力や経験は重要です。でも、長年この業界にいて気づいたことがあります。本当に価値のあるクリエイターは、スキルや経験以上に大切な何かを持っているのです。
それは「つくりたいものがある人」であり、「つくらなきゃいけないものが集まる人」であることです。
技術だけでは足りない時代
今の時代、技術的な敷居はどんどん下がっています。AIツールの普及で、コードを書いたことがない人でもアプリを作れるし、デザインの知識がなくても美しいビジュアルを生み出せる。動画編集も、音楽制作も、かつてないほど手軽になりました。
つまり、「つくりかたを知っている」だけでは差別化が難しくなっているのです。
同時に、「つくった経験がある」ことの価値も相対的に下がってきています。なぜなら、誰もが気軽にアウトプットできる環境が整い、経験の蓄積スピードが格段に上がったからです。
では、何が本当に価値を持つのでしょうか。
「つくりたいもの」を持つ強さ
答えの一つは、「つくりたいものがある人」であることです。
技術は手段でしかありません。経験も、過去の積み重ねでしかありません。でも、「つくりたいもの」は未来への推進力です。それがあるからこそ、新しい技術を学ぶ動機が生まれ、困難にぶつかっても諦めずに続けられるのです。
「つくりたいもの」を持つ人は、目が違います。日常のあらゆる場面で「これをもっとよくできないか」「ここに新しい価値を生み出せないか」と考えている。その思考の蓄積が、やがて独創的なアウトプットにつながります。
また、「つくりたいもの」が明確な人は、学習効率も圧倒的に高いです。目標が具体的だから、何を学ぶべきか、どこまで深く掘り下げるべきかが自然と見えてくる。無駄な遠回りをしません。
「集まる人」になることの価値
そして、もう一つ重要なのが「つくらなきゃいけないものが集まる人」になることです。
これは単に技術力があるということを超えた、信頼と期待の証です。「この人になら任せられる」「この人なら課題を解決してくれる」と思われる存在になることで、自然と面白いプロジェクトや挑戦的な依頼が舞い込んでくるようになります。
こうした「集まる人」には、いくつかの共通点があります。
相手の課題を自分事として捉える力があります。依頼者の表面的な要求だけでなく、その背景にある本当の課題を見抜き、より良い解決策を提案できる。
約束を守り、期待を超える結果を出す実績があります。小さな信頼の積み重ねが、やがて大きな信頼につながっていく。
柔軟性と創造性を兼ね備えていることも重要です。決められた枠組みの中で最大限のパフォーマンスを発揮しつつ、時には常識を疑い、新しいアプローチを提案できる。
実践的なアドバイス
では、どうすれば「つくりたいものがある人」「つくらなきゃいけないものが集まる人」になれるのでしょうか。
1. 自分の「なぜ」を明確にする
まず、なぜクリエイターとして活動しているのか、何を実現したいのかを深く考えてみてください。技術的な興味だけでなく、社会に対してどんな影響を与えたいのか、どんな課題を解決したいのかを言語化することが大切です。
2. 日常から課題を見つける習慣をつける
普段の生活で「これ、もっとよくならないかな」と思う瞬間を大切にしてください。小さな違和感や不便さの中に、次につくるべきもののヒントが隠れています。
3. 小さな信頼を積み重ねる
どんなに小さなプロジェクトでも、全力で取り組み、期待を超える結果を出すことを心がけてください。その積み重ねが、やがて大きな信頼につながります。
4. 異分野の人とのつながりを大切にする
クリエイター同士のコミュニティも重要ですが、全く違う分野の人との交流も積極的に持ってください。そこから新しい視点や、思いがけないプロジェクトが生まれることがあります。
5. 失敗を恐れずに挑戦する
「つくりたいもの」を実現するには、時には失敗も必要です。完璧を求めすぎず、まずは形にしてみる。その過程で学んだことが、次のステップにつながります。
最後に
技術は時代とともに変わり、経験は時間とともに古くなります。でも、「つくりたいもの」への情熱と、「この人になら任せたい」と思われる信頼は、時代が変わっても色あせることがありません。
これからのクリエイターに求められるのは、単なる技術者や作業者ではなく、ビジョンを持ち、人とのつながりを大切にする「創造のパートナー」です。
あなたは今、何をつくりたいと思っていますか?そして、どんな人から「お願いしたい」と思われる存在になりたいですか?
その答えが見つかったとき、きっと新しいクリエイターとしての道が開けるはずです。