2015年に設立したイチニ株式会社は、「選挙ドットコム」や「選挙ドットコムちゃんねる」などの選挙や政治に関わるWebメディアの運営やサービスの提供を行っています。
選挙メディア「選挙ドットコム」は年間2,500万人が利用し、公式YouTubeチャンネルの登録者も10万人を突破。日本最大級の選挙メディアとして成長を続けています。
今回は、これまでの10年の歩みを振り返り、この先10年のビジョンについて高畑卓代表取締役にインタビューしました。
プロフィール:高畑 卓(たかはた すぐる)イチニ株式会社代表取締役
インターネット黎明期からWeb制作事業・Webコンサルティング事業に取り組む。2005年に株式会社ジェイコスを設立し、800社を超える企業のWebマーケティングに従事し、2009年より政治家のネットマーケティングを支援する事業を始める。2015年にイチニ株式会社を設立し、選挙メディアやYouTubeチャンネルの運営などを通して、政治家と有権者をつなぐ様々な活動や行政・メディア向けサービスの展開を行っている。ネット選挙の第一人者として、各政党・政治関連団体・自治体での講演多数。
選挙に関わるきっかけは居酒屋での出会い
―イチニ株式会社は、どのような事業をしている会社ですか?
イチニでは、選挙や政治に関わるITサービスを提供している会社です。
選挙メディア「選挙ドットコム」、公式YouTubeチャンネル「選挙ドットコムちゃんねる」、政治家のネット発信をサポートするツール「ボネクタ」などを運営しています。
私たちの会社の真ん中にある想いは『日本を良くする人を前へ。』です。
もっとみんなが選挙に関心をもち、みんなが投票に行き、優れた政治家が当選して、日本が良い方向へ進むことを目指しています。
そのために有権者に選挙や政治の情報を提供するのが「選挙ドットコム」であり、政治家が情報を発信するのが「ボネクタ」で、この2つのサービスが事業の柱です。
―サービスの利用者数はどのくらいですか?
「選挙ドットコム」は、月間1,200万人ユーザーが利用し、2023年は年間1億PVを記録しました。
YouTube「選挙ドットコムちゃんねる」の登録者数は、2024年12月時点で14万人です。
政治家の情報発信ツール「ボネクタ」は、4,000人以上の政治家にご利用いただいています。
―高畑社長が、選挙や政治に関わるようになったきっかけについて教えてください。
2009年に地元の行きつけの居酒屋に行った時に、落ち込んでいる様子の男性と隣同士になりました。
マスターが「彼はこの前の選挙で落選したんだよ」と語った時に「えっ?選挙って何?」と聞き返すほど関心がなく、投票にも行ってませんでした。
当時、私は法人向けのWebマーケティングの会社を経営していたので、彼から「どうやったら若い人にPRできるかな?」と聞かれたんですね。
「新聞も読まないし、選挙カーが走っている昼間は家にいないし、駅で演説している政治家がいても急いでいるから話を聞く時間もないし。せめて、スマートフォンで情報にアクセスできないとダメですよね」と正直に答えました。
そこから、話が盛り上がって「せっかくの縁なのでアドバイスがほしい」と彼に言われたのが、私が選挙や政治に関わるようになったきっかけです。
彼が、次に選挙に挑戦することになった2013年は公職選挙法が改正されて「ネット選挙」が解禁された年でした。
選挙に関連する法律を勉強して、ネット選挙のルールを詳しく調べて、彼の選挙戦では、ホームページやPR動画の制作、SNS運用などをサポートしました。
相手の候補者は政党の推薦があったので、無所属で立候補した彼は「勝ち目がない」と言われていましたが、まさかの大逆転で勝利。
当選後は、ネットを駆使した選挙戦が話題になりました。
そのあと、ネット選挙をサポートした私のところに、全国の政治家から「選挙を手伝ってほしい」という連絡が続々ときて……。
気が付けば、企業向けのWebマーケティング支援から、政治家向けの支援に仕事の内容が変わっていましたね(笑)。
彼は、当選したあと、保育所の待機児童ゼロや、市内の全中学校に完全給食の実施などの公約を次々に実現したんです。
若い世代から感謝の声もたくさん届きました。
「選挙の結果で自分の身の回りの生活が変わる」ことを私も実感して、選挙や政治の力ってスゴイなと思いましたね。
コロナ禍でPV倍増!選挙とネットの新しいカタチ
―政治家のサポートから事業をスタートしたのですね。
最初は、政党に関係なく、依頼があった個々の政治家をサポートしていました。
でも、政治家のサポートをしていて「何かが足りない」と思ったんです。
日本の選挙の投票率の低さは、絶対に、解決した方がよい課題です。
でも、なかなか投票率は上がらないし、政治に参加する人も増えません。
そこで、みんながもっと選挙や政治に関心をもつために、政治や選挙をわかりやすく伝えるサービスを作ろうと、2015年に「選挙ドットコム」をスタートしました。
―選挙ドットコムはどのようなプラットフォームですか?
選挙ドットコムは、「食べログ」や「ぐるなび」のような飲食店検索サイトの発想から生まれました。
選挙に行く人は、投票所に貼ってあるポスターを見て、その場で投票先を選ぶ人も多いのが実情です。
それでは、有権者が投票先を選ぶための情報も少なく、政治に興味を持つ人も増えません。
食事に行く際にレストランを検索して選ぶように、投票に行く時に候補者の情報を「わかりやすく、公平に」比べられるサービスを選挙ドットコムは目指しています。
―これまでの10年の歩みで、大きな転換期となったのはいつですか?
10年前、インターネットでの選挙や政治の情報発信は、そこまで重要視されていませんでした。
将来、社会に必要なサービスになるのは想像できたので、自分がやろうと思ってスタートしました。
大きな転換期は、2020年の新型コロナウイルスの流行です。
コロナ禍の選挙では、インターネットで選挙や政治情報を集める人が増えて、アクセスが殺到。
コロナの前後で、選挙ドットコムのユーザーは倍以上に増えました。
今年の東京都知事選や衆議院選挙では、YouTubeやSNSを活用した選挙戦が話題になりました。
これから選挙で、インターネットを活用する人は、もっともっと増えていくと思います。
―この先の10年は、どのように成長していきたいですか?
選挙ビジネスのスケールを拡大していきたいです。
これからは、選挙でインターネットを使うのが当たり前になる時代に変わるでしょう。
選挙に行く時には、選挙ドットコムで検索するのが普通になり、「社会にとって、なくてはならないサービス」にまで成長させていきたいですし、それができると思っています。
また、選挙の時だけではなく、普段から政治に関心がある人を増やしたいです。
みんなの関心が集まる政策は、政治家や政党も無視できず、公約に入れて実現していかないといけない。
そうすると、世の中が良い方向に進んでいくと思うんですね。
政治に興味をもつきっかけは、政治への怒りなのか、面白い動画なのか、何がきっかけになるかはわからないです。
投票率を上げるにも、近道もないと思います。
だから、今やっている努力をコツコツと続けながら、まだ情報が届いていない人たちが政治を知る機会が増えるように、多角的な挑戦もしていきたいです。
ITで社会課題の解決に取り組む職場
―会社の雰囲気はどのような感じですか?
選挙や政治というと「お堅い」イメージがあると思いますが、会社の雰囲気としてはITベンチャー企業に近いと思います。
社員それぞれが、自分に合った働き方が可能です。
年齢や経験を問わず、仕事を覚えたら、新しいことに挑戦できる環境が整っています。
―どのような方が向いている仕事だと思いますか?
いろいろな人の話を先入観なく聞けて、世の中がいろいろ変わっていくことを面白がれる人は、仕事も楽しめると思います。
素直な性格の人は、成長するのが早いなという印象です。
よく「選挙や政治に詳しくなくても大丈夫ですか?」と聞かれますが、まったく問題ありません。
私もそうでしたし、社内の他のメンバーも仕事をしながら、必要な知識を身につけました。
現時点の政治知識は問わないです。
―最後に、応募を検討している方に一言お願いします。
私たちは、選挙や政治の課題をITで解決することに挑戦する仲間を募集しています。
「社会を良くしたい」、「政治家を応援したい」、「なんか面白そう」など、
少しでも興味を持ったら、気軽にエントリーしてください。