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社会事業コーディネーターが見つめる、半歩先のミライ。(4)被災者になる覚悟はありますか。これから起こる災害へ向けた備えのこと

こんにちは。一般社団法人RCF代表理事 社会事業コーディネーターの藤沢烈です。

東日本大震災から7年が経ち、今年の3月11日で8年目です。改めて犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災され今なおご苦労をされている皆様、大切なお身内や仲間を亡くされた皆様へ、心よりお見舞い申し上げます。

私も復興の仕事をこれまで中心でやってきていましたので、たいへん思いがあります。今日は復興の話ではなく全国の皆さんにも関心が大きいと思われる「防災」についてお話しいたします。

"ローリングストック"で「1週間分の食料」を家に備えよう

まず、災害が起きたときのために、家に食べものをどうためておくかという「備蓄」。備蓄というと、乾パンなどを中心に3日分くらいしているかな、という方が多いと思います。

3日間=「72時間」とは、人命救助の現場では「生存率」の分け目とされている数字です。つまり、行政や消防はこの72時間は徹底的に人命救助にリソースを集中投下しますから、助かった方向けの物資のケアは、通常この72時間は後回しになります。ですから、3日間は自分でなんとかしてくださいねっていう意味で、3日間は備蓄してくださいね、っていう話になっているんですね。

ところが。では、3日経ったら、果たして確実に物資は届くのか。

確かに3日経ってから、物資に関する救援が始まってくるんですけれど、特に大きな災害になるほど、なかなかものを届けるための交通や物流、道路が損傷していたりするわけで、ものが行き渡るにはとても時間がかかります。ですから、今後発生予測がされている首都直下地震や南海トラフ地震が起きるときには、3日ではなかなかものは届かない、1週間くらいはかかるかもしれませんよ、というふうに行政のほうも発信するようになってきています。ですから、「3日」というのは最低限でしかなく、できればもう少し備蓄が必要です。

ただ、3日分の災害食の備蓄をしようと思うと、家庭では意外と大変ですよね。例えば水、皆さん1日何リットル必要かご存じでしょうか。正解は1人あたり3リットル。「普段毎日3リットルも飲んでいないよ」っておっしゃる方もいるかもしれませんけれども、普段は食事を通じて水分を摂取しているので、水だけを3リットルも飲む必要はないんです。ところが災害が起きますと通常の食事に事欠いたり、災害食の中には乾パンなど水分が乏しいものも多いので、水はとても必要。とはいえ、ひとり1日3リットル、家族人数分を3日分ないしそれ以上の日数分、というのは、なかなか大変ですよね。

ここで知っておくと便利な備蓄の知恵があります。「日常備蓄」や「循環備蓄」という言葉はご存知でしょうか。「ローリングストック」「スマートストック」といった呼ばれ方もされます。

これは何かというと、ストックしている食料や飲み物を、賞味期限がくる前に消費し、消費した分を新しく補充して、常に一定量の備えがある状態にしておくという方法です。例えば、3日分は長期保存食を備蓄しておき、残り4日分は普段から冷蔵庫に少し多めに買い置きをしておく、あるいはレトルト食品など普段時々食べられるような長期保存がきく食品を買い置きしておく、など。家の中にある食べ物を普段から総合的に多くしておくことで、1週間くらい何とかなるようにしよう、という考え方です。これならば簡単ですし、各家庭ごとに柔軟な備蓄方法が検討できるのではないでしょうか。

こんな方法なども取り入れながら、改めてご自分の家庭の備蓄についても、もう1回、大丈夫かな、ということを考えてみてほしいなと思っています。

自分にとっての「避難場所」と「避難所」はどこか正確に知り、常に自分の頭で判断しよう

もうひとつお話ししたいのは、避難について。

皆さんは「避難場所」と「避難所」の違いを正確に説明できますでしょうか。「避難場所」とは、震災が起きたときに一時的に安全を確保する場所のことです。「避難所」とは、何日も、場合によっては1週間、2週間といった中・長期間、家の代わりに生活する場所のことをいいます。

実は東日本大震災のとき、津波が起きて、逃げ込んだ場所が避難場所ではなく「避難所」だったがために、津波で流されてしまった方がいます。「避難所」は「仮に生活する」というための設備ではありますが、必ずしも「避難場所」として適した場所ではないこともあります。言葉の混同がもたらした悲劇と言わざるを得ません。

東京では、都市部だと「避難場所」はだいたい公園が多いです。地震などで建物などが倒れたり、あるいは火災から守れる場所として用意されています。また「避難所」は学校や公共施設などが多く「避難場所」とは別の場合がほとんどです。改めて、皆さんの家の近くで、自分にとっての「避難所」「避難場所」がどこなのか、もう一度確認しておいてほしいと思います。

それから「避難場所」と「避難所」がわかったとして、それだけでは足りません。東日本大震災で起きたことは、ここに行けば100パーセント、絶対安心、という場所はひとつもなかったということなんです。

いざ地震が起きたとき、その場所が本当に安全なのか、ということは自分の頭でも必ず考えること。「行政が決めた避難所や避難場所にいさえすれば、自分はもう絶対安全だ」と根拠のない思考停止に陥らないこと、自分にとっての避難所、避難場所を考え続けることが大切です。

スマホが無い状況で、待ち合わせできますか?非常時のために「待ち合わせ力」を磨いておこう

避難についてはさらに「家族との連携」も時に生死を分けます。家族と、いざというときどんなふうに連絡を取り合うのか、どこで会うのか、ということを決めてほしいです。

昨今、携帯電話・スマートフォンが普及し、電話番号を覚える必要がなく、なんとなくいつでも連絡が取れてしまいます。ですから待ち合わせも、事前に待ち合わせ場所を細かくはっきり決めずとも、例えば◯◯駅とだけ決め、あとは当日なんとなくその場で、といった待ち合わせかたも珍しくないですよね。

ですが、災害が起きると、そういった通信手段が使えなくなることが十分考えられます。東日本大震災のとき、被災地含め全国的に電話がなかなか通じにくくなり、家族と連絡が取れなくて困ったご経験の方も多いはずです。また、携帯電話やスマートフォンも壊れたり無くしたり、電池が切れたりするでしょう。おまけに現場は混乱しています。建物が被害に遭い平時と全く違う光景になっているかもしれません。

ですから、仮に家族それぞれがんばって避難所で待ち合わせよう、と決めた場合「◯◯小学校で会おう」だけでは足りません。その「◯◯小学校の西側玄関にある時計の前で会おう」というくらい、しっかり細かく決めておかないと、なかなか出会えないといったケースが十分起こり得ます。そのために平時に皆で下見しておくことも有効でしょう。そう、問われるのは「待ち合わせ力を高めること」なのです。

東北での経験を次の時代に残す。そのために防災の大切さの発信、万全の備えをつくる

東北での経験を、次の時代に残したいと思っています。私が出会ってきた東北の皆さん、日本中、世界中からたくさんの支援を受けて、本当にありがたいと皆さん感謝されて、そういう中でやはり聞くのは、東北での経験が自分たちだけにとどまらず、ほかの地域で何か起きたときも教訓にしてほしいし、何かあったら自分たちも助けに行きたいって、皆さんおっしゃるんです。

ですので、もしかしたら20年後、30年後以内には、首都直下地震や南海トラフ地震が起きるかもしれませんが、その時に東北と同じことが再び起きてしまったら、東北の皆さんにとってもつらい。ですので、ぜひ少しでも多くの方に東北の地震の経験を知っていただき、自分で備えるようになってほしいのです。

RCFとしても備えの大切さ、物資支援体制、避難所運営や事前防災など、東北の教訓を活かした少しでも効果的な防災に、取り組んでいきたいと考えています。

社会事業コーディネーターの藤沢烈でした。

*本記事は、2018年2月25日放送「サンデーエッセー」(NHKラジオ第1)出演時内容をもとに構成しています。 記事の情報は全て放送当時の内容です。今回が最後の出演となりましたため、本連載も今回で終了です。お読みいただき、ありがとうございました。

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