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アグレッシブ烈子シーズン4に見る「事務仕事」イメージのポジティブ化

昨年末、『アグレッシブ烈子』のシーズン4がNetflixで放送されましたね。

『アグレッシブ烈子』はサンリオのキャラクターで、商社の経理部で働くレッサーパンダのOLの烈子が、旧弊な上司豚のトン部長にお茶汲みをさせられたりと理不尽なセクハラ・パワハラを受けたり、恋愛関係で思う通りにならなかったりと、フラストレーションが溜まるたびに、カラオケで一人デスメタルを歌うという設定です。サンリオっぽくないと思うかサンリオらしいと思うかは人それぞれですね。

監督と脚本は『やわらか戦車』で文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」のエンターテイメント部門1位を受賞したラレコ氏。作中では烈子のデスボイスも担当しています。

元々は『王様のブランチ』内の短編アニメでしたが、その後Netflixでリメイクされて、世界的人気を獲得しました。特に海外人気はすごくて、サンリオの人気投票では、アメリカで3位、ブラジルで1位を獲得しています。

当社は海外出身のメンバーも多いので、社内でのアグレッシブ烈子の知名度は一般の会社よりも高めです。

そこで色々話しているうちに思うところがあったので、せっかくだから記録しておこうと思ってこの記事が完成しました。

烈子は元々商社に憧れを持っていましたが、入ってみたら予想以上の旧弊な体質で心がすり減っていきます。その中でも彼女が所属する経理部は特に日本の会社のダメな部分の煮凝りのように描かれています。

ビジネスの世界では、何年も前から効率化が叫ばれ、例えば商社のような「中間業者」はできるだけ避けるべきものと言われがちです。IT化やDXなど業務を見直すことで、価値をエンドユーザーまでできるだけ直接届けること(元々の意味での「中抜き」)が良しとされがちです。

また、経理部もIT化やDXの対象とされがちな場所です。今回新しく公開されたシーズン4でも経理部は「コストセンター」と指摘されています。コストはかかるものの収益は上げない、という意味です。そんな世情に反するように、烈子の上司のトン部長はIT音痴で算盤で経理を行おうとします(シーズン4ではこの算盤が結構重要なアイテムなので、ぜひ注目してください)。

ここから商社の経理部という設定が、『アグレッシブ烈子』において非常にうまく選択されていることがわかります。烈子のストレスをいやがおうでも高めるために計算された設定なのです。

この辺りが計算尽くであるもう一つの証拠として、シーズン2で登場した天才AIベンチャー社長の只野のキャラ造形が「AIベンチャーをやる頭のいい人」として非常に解像度が高いことが挙げられます。「こういうこと言う人いる」と結構感じられます。そういうリアリティの土台の上に、「そんな奴いねえ」と言う派手なアンリアルさを積み重ねているので、面白くスッとキャラクターが入ってくるのです。ITに関わる人にはぜひ見てほしいです。

このようにアグレッシブ烈子において、商社の経理部というのは元々は「日本の会社の古い体質」の象徴として機能していました。だからこそ、「AIベンチャー」という「新しいもの」との対比が際立ち、烈子がどちらを選ぶのか、というドラマが映えるのです(これがシーズン2の見どころでした)。

ところがシーズン3の「地下アイドル編」以降、少し流れが変わるのです。烈子の経理の経験が、会社の外で輝き始めます。

経理や事務仕事は、決して誰にでもできる仕事ではなく、向き不向きもあり、そして訓練が必要なスキルである、と言葉ではなくストーリーで示し始めたのです。

そもそも世の中には事務仕事すらまともにできておらず、そこにまともな事務を置けばスムーズに動くだろう組織はたくさんあるのです。

それまで古い体質を引きずったネガティブなものとして描かれていた経理などの事務仕事がここでポジティブなものとして反転を始めました。それがシーズン3でした。

そしてシーズン4において、経理などの事務仕事は(コストセンターと呼ばれるような) 削減すべきものではなく、会社の力であり、会社の魂なんだ、と歌い上げられているのです(半分は冗談ですが、半分は本気でこの文章を書いています)。

シーズン4においてももちろん、烈子の会社の事務仕事は、手作業が古く効率が悪いことは指摘されています。そしてそこにIT技術を使った自動化が導入されます。

この作品では、IT技術による自動化の功罪がしっかり描かれています。もちろん効率は良い方がよく、その意味で自動化は重要な道具です。しかし、自動化した分単純に人を減らしていいのでしょうか?本当に人が手作業で行っていた部分は全て無駄だったのでしょうか?その見極めはそんなに簡単でしょうか?

まだなかなか自動化できない経理の仕事とはなんでしょうか? それは実際にNetflixでシーズン4を見てのお楽しみにします。

弊社でもかつて「利益を産まない仕事」と事務仕事を表現した人に事務員だけでないプログラマーやデザイナーがみんな怒りを表明したことがありました。株式会社RAKUDOのプログラマーは割と事務ができない人が揃っているので、「事務できる人すげえ」という尊敬の念が高まりがちなのです。

今も事務をしてくれる総務の方を絶賛募集しています。どうか会社の魂を担ってくださいませんか?

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