ポジティブドリームパーソンズ(以下PDP)の「ウェディング マーケティング&ブランディング室 」ゼネラルマネージャーの中村 亮太は、withの姿勢を念頭に、コロナ禍でのオンライン結婚式の商品設計を主幹してきました。彼の結婚式に対する信念に基づく施策設計とそれに乗せる想いとは──
“with”の姿勢を基本に、コロナ禍でもポジティブなものを提供したい
ウェディング マーケティング&ブランディング室のゼネラルマネージャーを担う中村はWebや広告を通じ、集客施策を担う部署を統括してきた。
中村は入社してからこれまでに、ウェディングプランナーや、集客から施工まで一気通貫した部署のマネージャーを経験してきた。それらの経験を生かし、コロナ禍のウェディングの施工における安心・安全な運用ガイドラインの策定や、ニューノーマルな結婚式の商品開発に尽力している。
では、PDPの安心安全に関する基本的な考え方はどうなっているのだろうか。
中村 「誰にとっての安心・安全を考えるべきなのか、結構社内で議論しました。ご新郎ご新婦、列席されるゲストの方々は当然ですね。
とくに親御様やご高齢の方もいらっしゃるであろうご親族、そしてご来賓の方々です。一方で、やっぱりスタッフも大切です。結論として、結婚式に関わるすべての人たちにとっての安心・安全を考えることにしました。
そのために、どういう方針で、具体的に何を打ち出すのか、ということを今回のニューノーマルにおける基本的な考え方として大事にしました」
その際に重視したのは、お客様に向き合うスタンスだという。
中村 「とくに、新郎新婦とは絶対に対抗しないんです。VSじゃなくて、withでありたいね、と。しっかり一緒になって解決策を考えるっていうスタンスを心掛けています」
一方、安心・安全なだけの結婚式はお客様の期待に応えきれていない、と中村は思っていた。
中村 「僕の表現でいうと、結婚式ってプラスでポジティブな商品だと思っているんですね。“安心・安全で過ごせます“っていう言葉通りの理解だと、“マイナスじゃないです“って言っているだけで、決してプラスではないんです。
マイナスじゃないこと自体は、ものすごく大事ですし、やらねばなりません。ただ、こういう状況でもあくまで絶対にプラスなものでありたいし、ポジティブなことにしたいと思いました。やっぱり追求するのは、感動なんです」
結婚式を結婚式たらしめる“相互コミュニケーション”を念頭に
コロナ禍でも結婚式ができるよう編み出されたのが、オンラインで披露宴を中継する、という商品。中村が“感動“にこだわったというオンライン披露宴は、どのように設計されたのか。
中村 「設計は5月くらいから走り出しました。最初に、一番時間を要したのは『この商品でどんな感動をお客様に届けるべきなのか』っていう議論です。どうすべきか考えたり、いろんな所を見に行ったりと、2カ月くらいかかりました」
その際に中村が大事にしたのは、社内用語で“ウェディングフォーゲスト“という概念。
中村 「弊社でご提供する結婚式って、他社の結婚式よりも列席者であるゲストに対する働きかけが多いんですね。そこには、やっぱり結婚式って新郎新婦だけでするのものではないという考えがあるんです。
結果、新郎新婦だけでなく、ゲストにも感動してもらおうということになりました。“ゲストとの相互コミュニケーション“が結婚式の本質だろうと結論づけたのです」
目指したいことが明確になり、その後はスピーディに進んだと振り返る。
中村 「ここからは結構早かったんです。どうやってオンラインで参加するゲストの方たちに感動してもらうか、考えました。目標がはっきりしたことで、どう実現するかという手法の取捨選択も、スムーズにできましたね」
以前より無料で提供していた、オンラインで結婚式を視聴できるサービスもあったが、さらに、クオリティの高いオンライン結婚式の商品を開発した中村。ゲストがオンラインで参加しながらも、新郎新婦とのインタラクティブなコミュニケーションが楽しめる商品だという。
中村 「オンラインでも、もっともっと楽しめるんです。むしろオンラインスタイルじゃないと、かなわなかった体験ができるところが、すごく僕たちPDPらしくていいなと思っています。
列席者がすごく減って、せっかくやろうと思ったのに、新郎新婦のモチベーションが下がって、ただこなすだけになっちゃたっていうのは絶対に避けたいんです。この商品で新郎新婦や列席者の気持ちをぐっと惹きつけて、新郎新婦にやって良かったと言ってもらえるよう取り組んでいます。プラスを目指してやっていることですね」
ウェディングフォーゲストで、オンラインでしか提供できない感動の領域へ
8月初旬、新商品のオンライン披露宴が実際に催された。まず、臨場感を届けるために、定点のカメラではなく、いわゆる生放送のようなカメラワークが取り入れられた。
新郎新婦の席には専用のタブレットがあり、ゲストはまるで近くにいるような感覚で新郎新婦に話しかけるようになっている。さらに、常に披露宴会場内にオンライン参加のゲストも投影された。
中村 「大成功でしたね。実際にご列席されている方々はもちろんのこと、オンラインで参加したゲストの人たちにも楽しんでもらえました。自分たちの想定以上の満足度でした。
こんなことが起こるんだと驚いたのが、中にはお知り合いじゃない方同士も入っているんですけど、オンライン同士でコミュニケーションを取り始めているんですね。
新郎と新婦の大切な人たちっていうカテゴリで集まったこともあって、挙式が終わった後から披露宴が始まる前の間には、“はじめましてっ”みたいな感じで自発的にコミュニケーションを取りながら盛り上がってくださっていました」
もちろんやってみるまでは、心配している部分はたくさんあったという。
中村 「たとえばオンラインで参加する方と実際のゲストとの温度差がおきて、途中退席して帰ってこないゲストとか出てきちゃうんじゃないかなとか、大事なタイミングでマイクをあけて急にしゃべり出したりしちゃったら困るなとか(笑)。
挙げると切りがないです。でも言ってみればリアルな結婚式も同じなんですよね」
今後はどのような展開を予定しているのだろうか。
中村 「次のフェーズを用意中です。具体的には、オンライン参加の方に婚宴料理とあわせて乾杯酒と一緒にデリバリーして、同じお食事までお楽しみいただけるようにしていきます。
弊社が毎年ご提供している「KANDO NIPPON おせち」のノウハウを生かしています。また、引き出物にもサプライズの仕掛けを考えているんです」
実際足を運んでみて対面で同じ空間を過ごしていることが当たり前だった結婚式。今回のコロナをきっかけに新しいスタイルに変えられるんじゃないか、と中村は考えている。
人生を豊かにする唯一無二の機会を継承していくために
オンライン披露宴の商品設計を進めてきた中村。しかし今後、リアルな結婚式に替わってすべてオンライン化を図っていきたいわけではないという。
中村 「コロナ以前から、結婚式の存在する意味を考えていたんです。理屈だけで考えるとちょっと文化的に謎な部分もありますよね。
なんでわざわざふたりが夫婦になるタイミングで、関わっている人たち全員呼んで、一カ所に集まってもらって、ご祝儀っていう暗黙のルールにしたがって払ってもらって、お食事をとるのか。僕たちがそこにすごく価値を置くのはなんでだろうな、と考えたんですね」
その答えはデジタル化が進み、無駄が省かれてどんどん合理的になっていく社会にある、と中村は考えた。
中村 「そうなっていくと、当然コミュニケーションはコストなので、どんどん減っていくと思います。
ただ、さっき『結婚式の本質は相互コミュニケーションだ』と言いましたけれども、もうちょっと大きく言うと、人間の豊かさとか幸せみたいなところって、人と人のコミュニケーションの間でこそ生まれると思うんです。
なので、対面で話すとか、一緒に食事をする時間を過ごすっていう手間のかかるアナログなシーンは絶対に必要なんです」
世の中がデジタル化していけばいくほど、アナログな結婚式の価値がどんどん高まっていくと考えていた中村。今回コロナウイルスの影響で、時代の傾向としてすべてがオンラインで解消できるという考えも出てきているが、中村の想いは変わらない。
中村 「やっぱり、人生を豊かで幸せにするために、人と人との関わりとかコミュニケーションのつながりは絶対永遠に存在すると思うんです。だから、自分の想いとしては、非合理的なアナログ機会として結婚式を大事にしたいんです」
オンライン結婚式の目的も、結婚式をデジタル化することではない。お客様に寄り添いながら、この非合理的で、でも人生の豊かさを感じられる唯一無二の文化を決してなくさないためでもあるのだ。
こんなときだからこそ、相互コミュニケーションの場としての価値や機会を提供し続けていきたい
──そんな想いで、中村は今後も取り組んでいく。