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「日本のビジョンをデザインするワークショップ」参加レポート

はじめ

こんにちは。GVA TECH デザイナーの川上です。

8月23日に武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスで行われたソーシャルクリエイティブ研究所主催のワークショップに、GVA TECHからデザイナーの稲葉と川上の2名が参加しました。


ソーシャルクリエイティブ研究所とは?

ソーシャルクリエイティブ研究所 (以下 RCSC研究所) は、武蔵野美術大学が「よりよい世界を作るために、社会へビジョンとプロトタイプを研究提案する」ことを目的として、2019年7月に設立さた研究機関です。

RCSC研究所の拠点となる武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスは、1Fに共創スタジオの「MUJIcom 武蔵野美術大学 市ヶ谷キャンパス」が併設されており、無印良品初となる産学共創店舗として、商品販売だけでなくコミュニティ、コミュニケーション創出の場としても活用される、実践的・実験的な場となっています。

今回のワークショップについて

今回開催されたワークショップは、RCSC研究所発足記念で、いわゆる「こけらおとし」的イベントとして満を持して開催されたそうです。

ワークショップ概要

掲載元 : https://peatix.com/event/892663?lang=ja

講義

「未来のためのビジョン」山崎和彦教授

講義 PICK UP

  • ビジョンのデザインとは?→こんな風にビジョンを考えていったらいいのではないか、プロセスとツールを学べる内容にした
  • ビジョンのアプローチとは?
    • アラン・ケイ「未来を予測する最善の方法は、自らそれを創りだすことである」
    • バックキャスティング思考→未来を考える一つの手法
      • 現在の社会から、持続可能な社会へ
    • 書籍 [ 構想力方法論方法論 ]「日本の問題は構想力の欠乏」
      • 海外だとビジョン・構想が先にある
      • 構想力は3つのプロセスで考える
  1. 構想のデザイン(知識創造理論)
  2. 目的の想像 (目的工学)
  3. エコシステムの形成
  • ビジョンを考える上で…
    • 10年くらい前、アート思考の大事さ話題になった
    • 増村 岳史著 [ ビジネスの限界はアートで超えろ! ]
      • 行き詰まったビジネスの打開策に、アート思考を取り入れる
      • 「直感と理論を繋ぐ思考法」→実現できないかもしれないけど、まずは妄想する、そして実践することの大切さ
  • これまでの日本の主流は、効率的なPDCAだった→デザイン思考へ
  • ビジョン思考→0から1を生み出す大切さ。その上でのデザイン思考
    • 中でも、「妄想と直感」が鍵だと山崎教授は考える
  • 大学の世界に入ってから、美大には教科書というものがないことに驚いた
    • 様々な本を書くようになった
    • 著書の中でも、今回のワークショップに一番関係が深いのは、[ VISION ]という本
ビジョンに大事なことはアンパンマンの歌の歌詞にかくれている

ビジョン→愛と勇気のデザイン

著作権の関係で歌詞は載せられませんが、歌詞の中に以下のようなビジョン形成に関するヒントを見い出したそうです。

  • フィールドリサーチをする
  • ビジョンを描く
  • クリエイティブジャンプ
  • 人のため、社会のために
  • 人に対する愛、自分が勇気を持つ、一人で立ち向かう

まとめ

  • ビジョン形成への多様なアプローチ
  • ビジョンをつくること
  • エクスペリエンスビジョン
  • バックキャスティング
  • アート思考
  • 妄想とビジョン
  • 愛があるアプローチ
  • コンテクスト(状況)を考慮したアプローチ
  • ビジョンのストーリーが大事

「身体性から考える未来のビジョンデザイン」左右田智美さん

講義 PICK UP

  • ビジョン形成に重要なことは、クリエイティブに楽しいトーンで!ということ
  • 美しいもの、美しい体験を生み出すことがクリエイティブで想像力を沸かせる原点を刺激し、人の心に響くし創っている側も楽しいということを経験から実感してきた
  • ビジョンづくり= 未来のストーリーづくり
  • 自身の身体性が不在の未来像は人を惹きつけない→自分が感じたものは共感性を生みやすい
  • 身体性=自分が感じた、体験した、伝えたい
  • 今回のワークショップでも、身体性から始まるクリエイションを目指す
  • 心揺さぶる体験をして、人に伝えたいと思う→共感につながる→発展する
  • 今回のワークショップのテーマ、「日本未来ばなし」→面白い未来の話づくりで人の心をつかむには、、→絵本がいいかな?→紙芝居はどうか?→ 人形劇になった
  • ワークショップにおける日本のビジョン→一人一人の視点から、これからの目標をつくる

ワークショップの進め方

  1. 思い入れのある場所を選ぶ
  2. その場所についての未来のビジョン(ストーリー)をつくるにあたり、起承転結を考える
  3. 起承転結を考えて集まったストーリーの素材となる出来事・要素をつなげ、ストーリーをつくりあげる
  4. できたストーリーを人形劇にする
  5. 発表

ワーク1. 思い入れのある場所を選ぶ

与えられたツール:

山と旗の素材

  • まずは個人プレーで、思いつく限りの「思い入れのある場所(日本限定)」を付箋に書き出す
  • 書き出した中から、一つに絞って、思い出山(勝手に命名)をつくる
  • 山の素材は運営サイドが用意→組み立ては自分で(身体的ワクワク)
  • 運営サイドで用意してくれた日本地図に、思い出山を該当場所付近に置く


関東開催だからか、関東近辺を選んだ方が多かったです。旗に思い出の場所、山のお腹にエピソード等が書かれています。

やはり地元などを書く方が多く、あとは旅行で訪れた印象的な地や、現在関わりの深い場所などが多く挙げられていた印象です。

ちなみに弊社稲葉は地元の茨城県の波崎海岸と書いており、川上も地元京都の三条大橋のスタバと書きました。

地元の印象はやはり強いのですね。

ワーク2 . 「起」

与えられたツール:

「起」のワークシート。「場所」「雰囲気」「名産物」「地元民」「有名人」「現状の街のスケッチ」を書く欄がある。

一度各自の山を持ち帰り、チーム内で一つの場所に絞る。(決め方はチームによって様々)

ちなみに私のチームでは、「富山県射水市 新湊」が選ばれました。

チームメンバーの地元ですが、他のメンバーはその場所行ったことがありません。ただ、その場所の話を聞いたり写真を見た際に、その場所自身というより、【 日本の漁港、港町の風景 】にノスタルジーや共感を覚え、未来に残したい場所として選ばれたように感じました。

その場所について、チームで話し合い、ストーリーの種となる要素を洗い出しますが、

基本はその場所に行ったこのない人、知らない人が多いので、その場所を書いた発起人へのインタビューをしたり、ネットで情報を集めたりしました。


ワーク3 . 「承」

与えられたツール:

「承」のワークシート。「いい点」「悪い点」「ニュース」を書く欄がある。

「起」と同様、シートを埋めていきます。各工程は5分や10分など、割と短い時間で区切られるので、とりあえず出た意見は付箋に書き出してから取捨選択をしました。


中間発表

「起」と「承」のワークシートで出来た、選んだ場所とその場所にまつわるストーリー(の要素)について、各チーム発表しました。


ワーク4 . 「転」

与えられたツール:

  • 未来のキーワードカード
    • このカードを使って、「承」で出てきた問題についてのアイデアを考える。
  • 「転」のワークシート
    • 「新しいテクノロジーや社会の変容」「街への街への影響」を3セット書く欄、とアイデアスケッチを描く欄がある。


未来のキーワードカードとは?

  1. AI
  2. IoT
  3. 新しいライフスタイル
  4. 水・資源
  5. MaaS
  6. Biotech
  7. 温暖化・環境問題
  8. 国際社会・人権・LGBT
  9. Robotics
  10. 過疎化

問題についてどんな視点・方法論でアプローチするかという手助けとして与えられたキーワードカードをランダムに引き、引いたカードに書かれたキーワードから思いつくアイデアをチームメンバー各自(6人分)で考えるというワーク。

6回カードを引くので、1回につき6人分×6回で36個のアイデアが出るというお得なシステムです!


アイデアを3つに絞る

チームメンバー個々で出したアイデアについて、チーム内で発表し、何となく似たものやジャンル分けなど、カテゴライズしたりアイデアを掛け合わせたりして、3つのアイデアにまとめるディスカッションをしました。


「転」のワークシートにまとめる

前述の3つのアイデアをまとめ、アイデアスケッチとともに「転」のシートに書いていきます。


ワーク5 . 「結」

与えられたツール:

日本未来ばなしの巻物。

いよいよ起承転結のまとめ、「結」です。結ぶと書くだけあって、これまでのストーリーを結んでいく大事な作業です。

ここに来てツールがなぜ巻物なのか?それは、作り手・聞き手の「ワクワク」を大事にした左右田さんの渾身の作だそうです。

開くときもどきどきワクワク。ワークショップの至る所で、身体性・共感を参加者にきちんと提示してくださっています。

作り手の身体性から始まるクリエイションは受け取る人に伝わるという大事な要素を今まさに体験しようとしているのですね。


いきなりストーリーを作ると言ってもハードルが高いので、巻物にもきちんとガイドとなるワードが書き込まれています。


例えば、配役を書く表があるので、説明されなくても、「あ、配役を決めなきゃいけないんだ。ていうか、配役を決めるほどの登場人物を出さなきゃいけないのか。」とやるべきことがわかります。

また、ストーリーの冒頭には、「起」「2019年8月23日、ここは〜、私は〜、この街に住んで30年。〜な場所です。街の人は〜で、この街では〜が有名です。」

などが印刷されており、こちらもまた自然と、「あ、この空白を埋めるんだな。」と分かります。そうしたらまた、一から考えるのではなく、今まで作ってきた「起」「承」「転」のシートから書き起こしていけばいいこともわかります。

そうして巻物の空白を埋めていくと、自然と一つのストーリーが出来上がっていきます。


ワーク6 . 人形劇をつくる」

与えられたツール:

人形劇制作キット 「木製人形型×3」「木製建物×1」「木製車×1」「木製丸型×1」

「人形につける棒×複数」「タイトルを描く紙」「選んだ場所を背景として描く紙」

「その他画材」

「結」で出来たストーリーをもとに、人形劇の素材をつくります。

今回も用意されたツールは至れり尽くせりな内容です。ここにも、素材を作ることで「身体性」の体験が加わります。


発表

各チームの力作がドーンと揃いました。

いよいよ発表…の前に、夜の部として再び講義セッションがあったのですが、主催者側も認める、「本来なら数日かけてやるような内容を凝縮」したワークショップで疲れ果て、だいぶ意識が飛んでしまいました (ごめんなさい!)。

という訳で、夜の講義は割愛し、発表に飛びます。発表は各チーム素晴らしく、人形制作も用意された木型以上にたくさん作られていたり、背景も1枚想定だったのに2枚使ってBefore Afterを表現しているチームがあったり、スマホから音楽を流して音響を付けたりetc… 創意工夫に限界などないのですね。

▲稲葉のチーム 「前半の波のシーンまでが印象的すぎて後半を忘れた」というのが私のチームメンバーのコメントでした(笑) まさかの本人役で稲葉が登場していました。

▲私のチーム メンバー力作のドローンが魚を運ぶシーンがお気に入りです。

まとめ

GVA TECH で活かしたい経験

  • ワークショップはワクワクしてやる
    • ちょうど社内でも直近で自社サービス「AI-CON」についてのワークショップを行う予定があります。何か参加者が身体を使い、感覚に残る手法が取れたらいいなと思いました。
  • 未来のビジョンを描いてみる
    • 今回は「日本の(特定の場所の)未来」について考えましたが、これを自社や自社サービスに置き換えた時にも、そのサービスがユーザーや世の中にもたらす未来のビジョンを試しに描いてみることも価値があるのではないかと実感しました。
    • ワークの中で2度、「スケッチ」があったことにも意味があると感じていて、現状と未来像について、様々な言葉を定義してもなんとなく人それぞれバラバラな解釈になることもあるけれど、一つの視覚的なイメージがあれば何となく「あんな感じの世界」を共通認識として浮かべやすいのかなと感じました。
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