非常勤ファシリテーターのNaoB(ナオビー、佐藤直行)。教育キャンプで参加者に起きる出来事に魅力を感じたのが体験教育の世界に入ったきっかけです。現在は独立し、体験教育系のファシリテーターをしています。NaoBから見えるキャンプとPA(プロジェクトアドベンチャー)の共通点とは。
キャンプから学んだこと
キャンプの良さは「生活を共にする」というのがすごく大きいのではないかと思います。寝食を共にしてまさに「生活」なんですよね。もちろん生活は楽しいことばかりじゃない。ぶつかったら夜まで口きかないとか、すねてお昼ご飯いらない!とか毎回いろいろなことがあります。心が揺れたり、何かチクッときたり、感情の揺らぎなどが自然にある時間だからいいんでしょうね。
PAとキャンプは、共に時間を過ごすという意味ではニアリーイコールです。
PAは生活ではないけれど、共に時間を過ごすという意味では同じです。2時間なら2時間、1日なら1日なりの時間を仲間と一緒に過ごします。
共に生活することで、だんだん肩の力が抜けてきたり、油断する瞬間があったり、それをリカバーする時間があったりするのがいいんです。
PAとの出会い
2008年に企業研修の会社に所属していたときに業務の一環として初めてAP(アドベンチャープログラミング講習会)に参加しました。
PAをやってみて思ったのは純粋にキャンプをしてる感覚と一緒だということです。APの5日間、参加していた人たちと一緒にいて、楽しく生活できているなと感じている自分がいました。追われることもなく、焦ることもなく純粋に楽しんだんです。
APの中でやったことの一つひとつを鮮明に覚えています。ファシリテーターが作ったのか、僕らが作ったのかわからないけれど、やらなくてはいけないと思ってやったことはひとつもなくて、あの時間は今やっていることのベースになった気がします。やらされるのではなく、やりたい、やってみたいを大切にした時間でした。
輪の中に入る
私がファシリテーターとしてグループと関わるとき、一番難しいのは「参加しないあの子が悪い」となることです。そういうときは「参加しないというのはひとつの事実。でもそのことによってこの子が悪くなることは無いよね」「人と事(出来事)をちゃんと分けてね」と伝えます。
僕はその場にグループの一員としています。指示をするわけでもなく、導くわけでもなく一緒にいる。もちろん多少の交通整理はしないといけないけれど、作ろうとしなくていいんだと思ったときに、そこにいること自体が楽になりました。さまざまな心の動きが生まれてくるように、出来る限り見ています。放っておく部分もあるけれど、関わっていくこともずいぶんとやっているような気がします。
輪の中に入ってしていることは、誰かが話しているときは話をしている人の方をちゃんと見ています。誰かが意見をポーンと出しても誰も受け取らないときは意見を出した人を守るために、僕はあなたのこと聞いているよというメッセージを出すこともあります。
あとは「起こっていることの整理」をしています。何があったのか、どんな声掛けがあったのか、どん行動があったのかを整理します。「こういう状況だよね、僕はこう見ているよ」「僕はこの状況をこうだと思う。みんなはこの状況をどう思う?」と聞いたりします。
「僕はこれは嫌だ」と伝えることもあります。「3対1なんてフェアじゃないと思うよ」というようにちゃんと理由も話します。
目指している姿
目指している姿はひと言で言うと、「その場所に一緒にいても不思議じゃない人」です。何かあったときに見守る人ではなくて、喜んだり悲しんだり、そこに一緒にいて違和感のない人になりたいです。
そこにいてグループの人たちを裁いたり、導いたり、指摘するのではなくて、その人たちの輪の一部にいたいです。それは迎合するという意味ではなくて、違和感なく僕という存在がそこにいられるといいんだろうなと思っています。
昔はプッシュが強い人でした。「何か怒られそうな人」と思われていたと思います。そのことはこの3−4年、すごく考えてきました。押すタイプでいてもプログラムの時間内はそのやり方で済むんですけど、それがとても疲れる。自分がどんどん消耗していったり、傷ついていく中で、自分が心も体も健康にいられることが必要なのではないかと思い始めました。自分の状態を快に保つことが大切だと思ったんです。
ニュートラルな人
一緒にやるグループの人たちによって、押したり引いたりをしていますが、「ニュートラルな人」というのを意識しています。
立ち方にもあらわれるので、いつもここ(丹田)に力をいれてニュートラルにいようとしますが、ニュートラルは難しいですね。そのときのタイミングに合わせて、車のギアで言うと、ドライブなのかバックなのか悩みます。難しいとき、何か問題が起きているときこそ、ニュートラルな状態を保っていたいです。攻撃的な印象ではなく、かと言って斜に構えた印象ではなく、あくまで「安心感」をもってもらいたいということを意識しています。「安心感をもってその場に居れること」が大切だと思います。そうなるためには参加者、グループの様子、関係性、チームのあり方など様々な要素が複雑に絡みます。対峙するひとりのファシリテーターとして、ニュートラルな姿勢であることを心身ともに意識しています。自分として自然にあり、そこに自然と存在している状態を目指しているかもしれません。
プログラムの準備も結構します。焦ったり、何か悩んでいるとその姿勢が参加者に出てしまいます。それを出さないために、やることを頭の中でまとめると、逆にそのことを頭から外すことができます。その準備ではどのアクティビティをしようなどは考えないんですけど、どういう人たちが来るんだろう、どういう時間にしたいんだろうということをよく考えています。
プログラムでは自分の生活の中の一点が出るので、自分自身や生活を乱さないように心がけています。だから漫然と過ごさないようにしています。常に次に何をやろうかと考えています。
(20180711)