2012年、「オーガニック」という概念と出会った。
当時の僕は、その考え方そのものよりも、まず数字に衝撃を受けたことを覚えている。
日本の食品市場全体におけるオーガニック食品の割合は、約0.3%。
規模で言えば、1,300〜1,500億円程度だった。
「え、そんなに少ないのか」
それが、最初の感想だった。
当時、世界平均は約1.0%前後。
アメリカは約4.0%。
ちなみに、お隣の中国ですら約0.5%。
数字だけを見ると、日本には伸び代しかないように思えた。
1%に伸ばすだけで、1兆円規模。
だから純粋に、これはビジネスチャンスだと感じた。
あれから10年以上が経過した2025年。
日本のオーガニック食品比率は約0.5〜0.6%。
確実に市場規模自体は成長している。
ただ、世界平均は約2%前後、アメリカは約6〜7%。
ほぼ同じ水準だった中国も、約1.5〜2%まで拡大している。
*出典:IFOAM Organics International
数字だけを見れば、日本は世界と比較して大きく遅れている。
僕たち大泉工場も、2010年代に大きな方向転換を行った。
当時、右肩上がりだったポップコーン事業を、完全にオーガニックへ切り替えるという決断をしたのだ。
結果として、売上は激減した。
本当に、ほぼゼロに近いところまで落ちた。
当然、多くの問題も発生した。
その判断に愛想を尽かし、多くのスタッフたちが、大泉工場を去っていった。
今振り返っても、あの時の進め方には反省がある。
ビジネスを進める以上、数字から目を背けることはできない。
一方で、リスクを取り、新しい価値を社会へ提案していくこともまた、企業の役割だと思っている。
ただ、当時の僕は、後者に対する考え方が本当に甘かった。
冒頭で書いた通り、僕がオーガニックに惹かれた理由の一つは、数字と可能性だった。
でも、もう一つ理由がある。
オーガニックという考え方を深く知っていけばいくほど、当時僕たちが扱っていた商品に対して、強い違和感を抱くようになったのだ。
この商品は、本当に未来の子どもたちのためになるのか。
地球環境にとって、良いものなのか。
もちろん、世の中に“完璧”なんて存在しない。
でも少なくとも、自分たちが作るものくらいは、胸を張れるものでありたい。
そんな想いが、少しずつ強くなっていった。
リスクを取る。
新しい価値を生み出す。
ここまでは、なんとかできていたと思う。
でも、その価値を社会へ届ける、伝えるアクションが、圧倒的に足りなかった。
今の時代、発信する手段はいくらでもある。
このコラムもそうだし、SNSもそう。さまざまなコミュニティに足を運ぶことで、直接伝えることだってできる。
それなのに当時の僕たちは、「なぜオーガニックを選ぶのか」という思想や背景を、ほとんど伝えられていなかった。
会社として、新しい価値を提案し、社会を少しでも良い方向へ動かしていく。
その覚悟も理解も、まだ弱かったのだと思う。
もしかしたらそれは、会社としても個人としても“生き方”に紐づいていなかったからかもしれない。
オーガニックを選択するということ。
それを、自分自身の人生、会社の存在理由として理解しきれていなかった。
今、僕たちが扱っている商品<_SHIP KOMBUCHA>や営業しているカフェ<1110 CAFE/BAKERY、BROOKS GREENLIT CAFE>は、100%オーガニックではない。
けれど、以前よりも遥かに、胸を張って届けられるものになった。
数字だけを見れば、まだまだ成功とは言えない。
むしろ、効率だけを追い求めるなら、もっと別のやり方もあると思う。
それでも、僕たちの考え方を理解しようとしてくれる仲間やお客様は、確実に増えている。
最近、ふと思う。
もしかしたら、最初に数字が来てしまった時点で、少し違ったのかもしれない。
本来大切なのは、市場におけるオーガニック比率ではなく、自分自身の中に、どれだけオーガニックという概念を持って生きているかということなのではないか。
もちろん、100%である必要なんてない。
というか、そんな生き方は現実的ではない。
コンビニにも行く。
移動もする。
便利なものにも頼る。
でもその中で、
少しだけ自然なものを選ぶ。
少しだけ環境を意識する。
少しだけ未来のことを考える。
それだけでも、世界は少しずつ変わっていく。
結局、「何%のオーガニックが必要なのか」という問いに、共通の正解なんてないのだと思う。
それぞれのその割合が、それぞれの生き方を決めている。
ありがたいことに、僕の周りにいる素敵な人たちは、確実にその割合が大きい。
だから僕は、素敵な未来は創れると本気で思っている。
もし少しでも、そんな未来を一緒に創りたいと感じていただけたら。
ぜひ一度、大泉工場に遊びに来てください。