「漫画で待ち遠しい未来(あした)をつくる。」というミッションのもとで、漫画IPの創出や漫画家の持つ漫画作品の収益最大化、漫画家の創作活動をサポートする事業を多角的に展開するナンバーナイン。
このnoteでは、ナンバーナインの事業の一つである、デジタル配信サービス「ナンバーナイン」に焦点を当て、これまであまり語られてこなかったプロダクトの開発秘話やエンジニアの働きぶりについて紹介します。
語っていただくのは、エンジニアの糟谷尚史さん。ナンバーナインには創業初期の2018年4月より一桁メンバーとして入社、今年で7年目という古参メンバーの一人です。ぜひ最後までお読みいただき、スタートアップでエンジニアとして働く醍醐味やデジタル配信サービス「ナンバーナイン」について興味を持っていただけたら嬉しいです。
デジタル配信サービス「ナンバーナイン」とは
漫画家自身が権利を持つ漫画を、取次を通して最大130以上の電子書籍ストアに配信し、ナンバーナイン入金額の最大80%を収益として漫画家に還元する国内最大規模のデジタル配信サービスです。( https://no9.co.jp/ )
入社3ヶ月後に待ち構えていた試練。事業の方向転換と憧れのエンジニアの退職
はじめまして。ナンバーナインで開発を担当しているエンジニアの糟谷です。
私はもともとSIerに新卒入社して、クライアントのシステム開発や運用・保守までを請け負う仕事をしていました。長く受託開発の仕事をするなかで、次第に事業会社でプロダクトを開発するエンジニアとしての働き方に興味を持ち、転職活動をスタート。また、「若いうちにベンチャーで働いてみたい」「エンタメ・出版業界は面白そう」という好奇心も相まって、当時エンジニア向け求人サイトで見つけたナンバーナインにエントリーしました。
ナンバーナイン入社の理由はいくつかあったのですが、一番の決め手は「人」の存在でした。当時ナンバーナインは「マンガトリガー」という漫画アプリを開発しており、私より先に入社していたエンジニアの方がいて、「このエンジニアの方の下で働くことができたら、自分自身も成長できる!」と確信したのが大きかったです。
しかし、私が入社して早々「これでは上場は目指せない」と経営陣が判断し、事業をピボット。ここまでは「まあスタートアップあるあるだろうな」なんて思っていたのですが、これがきっかけで、なんと、自分以外のエンジニア2名全員が退職することに。入社3ヶ月目にして、一番の入社の決め手でもあったエンジニアの方までいなくなってしまったのです。
驚きはしましたが、自分も辞めようとはなぜかなりませんでした。まだたった3ヶ月しかいないし、もう少し様子を見て、仕事がなくなったら辞めようと思い、とりあえず残ることを選択しました。まさかそこから7年も居続けるとは思いもせず……。
エンジニア目線で振り返る、デジタル配信サービス「ナンバーナイン」開発秘話
ピボットして始めた事業こそ、デジタル配信サービス「ナンバーナイン」なのですが、最初に構想を聞いた時は「エンジニアとしての仕事はないな」でした。絶版の本を電子で配信するというアイデア自体は面白いと思いましたが、エンジニアとしてワクワクするようなものとは思えなかったのです。紙の原稿をスキャンして、EPUBデータ(電子書籍のファイル形式)を作るというところに、システムが介在する余地があるようには見えませんよね。
最初はすべての作業を人力でなんとかやりくりしていました。しかし実際サービスを始めてみると、意外にも開発の必要性が生じました。
まず、最初に生じたのが支払い管理です。デジタル配信はありとあらゆるストアに流すので、一つの作品に対しておよそ20個の売上レポートが作成されます。初期はこれをスプレッドシートで人力で管理していたのですが、サービス規模の拡大を進めるうちに、当然限界がやってきます。そこで、この作業を自動化するためのシステムを実装しました。
次に発生したのが、作家さんへの支払い明細の開示です。明細書を郵送で一人ひとりに送るというのは、手間もお金もかかる。社内でもさすがにそれは無理だよね、となり、「じゃあ作家さんWeb上で売上を見られるようにしてあげるのはどうか?」というアイデアが生まれます。そこで、ご利用いただく作家さん一人ひとりにアカウントを付与することになり、少しずつ今のWebサービスとしてのカタチができあがっていきました。
ここまでがおよそ入社して2〜3年目の出来事です。そして、これらをちゃんとWebサービスとしてユーザーが自然流入する形を目指し、開発を進めることになります。
しかし、当時のサービスの仕組みは自然流入するには分かりづらいものでした。なぜなら、各部署それぞれで作家さんとのやりとりをしていたため、作家さんの情報を一括で管理する体制ができていなかったのです。また、当時は料金体系も複雑でした。そこで「(そもそもサービス自体の)仕組みを変えないと、Webサービスにはできません」と経営陣へ進言し、仕組みからの改善を提案しました。そんな試行錯誤を経て、ついにWebサービスとしてのデジタル配信サービス「ナンバーナイン」が誕生したのです。ここに至るまでが、入社3〜4年目でした。
漫画家のための電子書籍配信サービス「ナンバーナイン」ナンバーナインは、漫画家のための電子書籍配信サービスです。電子出版に関する知識がなくても、ナンバーナイン上で作品を入稿できno9.co.jp
その後はUI変更をはじめ、会社の規模やユーザー数の拡大に応じて、サービスアップデートや売上計算、印税計算を効率化するための便利ツールを作るなど、業務効率化のための改善を繰り返してきました。
とくに、サービスを提供するうえで至上命題とされてきたEPUBデータの自動作成も、解消することができたのは最近です。このお陰で、EPUBデータ制作のほとんどの工程を自動化することができ、当初の75%の時間削減を達成することができました。
開発室長である僕のミッションは、「システムによる自動化を通じて、社内のメンバーが人間にしかできない仕事をする」こと。まだまだ道のりは長いですが、着実にその道に近づいている実感がありますね。
ナンバーナインのエンジニアは、コードを超えて業務全体に関与することが可能
入社して今に至るまでを振り返ると、ここには書ききれないエピソードも多々あります。そんな紆余曲折を経て、現在は開発室の室長として、社員3名、学生インターン5名程度の体制で開発・運営を行っています。ナンバーナインの他部署と比較するとゆるい雰囲気ですが、「いいものを作ろう」という気持ちは人一倍強いチームだと思います。
ナンバーナインにおけるエンジニアは、一般のエンジニア以上に”エンジニア自身”が技術的裁量を持ち、自由に挑戦できる環境が整っています。コードを書き、サーバをいじるだけではなく、業務プロセス自体をいじってもいいのが一番の特徴です。
私は本来コードと業務は繋がっていて、いくらシステム技術が良くても、業務がクソだとクソなシステムしか生まれないと思っています。特に開発責任者は、ナンバーナインが目指す「日本一の漫画IPパブリッシャー」としての基幹システムがどう在るべきなのか、経営陣と密にコミュニケーションを取りながら、ともにナンバーナインの未来を考え、形にしていく重要な役割を担っています。自らが会社の土台となる基幹システムを企画・開発することで、事業成長を支えている実感とやりがいを感じることができるポジションです。
実は、この7年の間で私も何度も転職を考えたことがありました。でも、ある時から転職活動をしても他社に魅力を感じられなくなってしまいました。なぜなら、今の環境以上にエンジニアとしてゼロから100まで考えていい環境が存在しないから。エンジニア人生の中で「何を作るか」以前に、「なぜ作る?」という段階から考えられる環境はそう多くはありません。
今、当社は主に二つの開発を手掛けています。一つはデジタル配信サービス「ナンバーナイン」という作家さんのためのSaaSの開発。これも自動化がだいぶ進んだとはいえ、まだまだサービス認知に課題があります。使っていただいている作家さんの数は6300名を超えましたが、目指すべきwebサイトからの自然流入にはほど遠い状況です。
イラストレーターがpixivに登録するように、漫画を描いたらナンバーナインに登録しようと作家さんに思っていただけるプロダクトに成長させるべく、今後もアップデートを実施していきます。
もう一つ、手掛けているものがあります。それが、独自の業務システムの開発です。今後海外出版やメディアミックスなど、出版社としての機能拡張・スケールアップにも対応できるシステム構築を目指しています。
というように、やりたいことは山積していて、まだまだ道半ばです。ここまで辿り着くのに7年かかったので、このままだと理想をカタチにするには7年以上かかるかもしれません。今の達成度は肌感2割ぐらいで、つまりまったくリソースが足りていません!!
だからこそ、コードを書くのが好きで「いいものを作りたい」という思いを持ったエンジニアにこのnoteが届き、興味を持っていただけたら嬉しいです。大事にしたいのは、いいものづくりをしたい気持ちがあること。小手先で解決しようとすると、そのツケがいつか3倍で返ってくることをこれまでの経験上強く感じています。根本から問題を解決したいと思えるエンジニアの方々に、当社はとてもベストな環境だと思います。
でもエンジニアってnoteやこういう読み物をあまり読まないと思うので、このnoteを読んだ方々、ぜひ周りにいるエンジニアの方々にもシェアしていただけたら嬉しいです。ぜひ、よろしくお願いします。
私たちと一緒に、出版事業の基幹システムを企画・開発してみませんか?
ナンバーナインでは、一緒にはたらくメンバーを募集しています! 特に本連載にも登場している糟谷と同じく、エンジニアとしてプロダクト開発を推進するメンバーを求めています。興味をお持ちいただける方はぜひご応募ください!