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はじめに
こんにちは。ナンバーナインの取締役CXO・小禄(ころく)です。
このストーリーでは、ナンバーナインがメイン事業として提供している電子コミックスのデジタル配信サービス「ナンバーナイン」の現場責任者としてサービスの成長に寄与している執行役員・工藤雄大についてご紹介させていただいたnote(2020年5月公開)を、ストーリーとして再掲させていただきます。
社歴も年齢も過去の実績も一切関係なく、ただ目の前のプロダクトにコミットした結果として、新卒2年目で執行役員にまで上り詰めた弊社工藤のインタビューを通して、少しでも弊社のカルチャーに触れていただけますと幸いです。
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ナンバーナインは、2020年4月に大きめのプロジェクトが一段落し、28日(火)にプレスリリースを発表させていただきました。それがこちら。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000027584.html
弊社のメイン事業となるデジタル配信サービスですが、これまでは原則として漫画家さんと何らかの手段で打ち合わせをしてから作品をお預かりしていたのですが、これからは、打ち合わせ不要でWeb上で漫画データの入稿から最大150ストアへの配信までを完結させられるようになります。
漫画家さんたちからも要望があった機能で年始から開発を進めていただのですが、手前味噌ながら良い機能追加ができたと思います。
そこで、今回はこのプロジェクト立ち上げからリリースまでリーダーシップを執って進めてくれた弊社の工藤雄大さんにインタビューを行いました。
ナンバーナイン初の新卒入社であり、入社から1年11ヶ月で執行役員まで上りつめた工藤くん。今回の「オンライン入稿システム(β版)」に込めた思いやこれからの展望などなど、たくさん回答してくれたのでぜひお目通しいただけますと幸いです。
どんなにいいプロダクトでも年間500人にしか布教できないつらさ
ーーデジタル配信サービスの新機能「オンライン入稿システム(β版)」のリリースお疲れさまでした。工藤くんは、もともとは漫画家さんから漫画をお預かりする仕事をしてましたけど、今回の新機能リリースに至った背景を教えてもらえますか?
工藤
はい。僕はデジタル企画編集部のメンバーとして、2年前からずっと漫画家さんと直接お話をして、権利をお持ちの漫画作品を預からせていただく交渉を続けて来ました。
2019年だけで500名くらいの漫画家さんとお会いしたと思います。一口に漫画家さんと言っても、商業作家さんはもちろん、同人作家さんやTwitterで漫画を投稿している作家さんなど、人によって状況や抱えている課題は全然違うんですよね。
漫画家さんたちと話していて見えてきたのは、漫画家として漫画を描いて稼ぐための選択肢が増えたことによって、良くも悪くもどこを目指したらいいか分からなくなってしまった、漫画家としてのロールモデルが見えなくなったことです。
以前は、漫画家さんが漫画を描く道として、出版社に持ち込んでデビューするのが一番分かりやすい道でした。それが今は、デジタル雑誌での連載やTwitterで自主的に連載をしたり、イラスト投稿サイトで漫画を投稿したり、電子書籍のみを配信したり、同人活動に専念したり、商業誌デビュー以外の方法でも収益を上げる方法が確立されてきたと言えます。
「じゃあどうしたらいいの?」というご相談もたくさん受けてきたんですけど、結論から言うと人それぞれです。
ーー分かる。
工藤
出版社と仕事するのも、Twitterで漫画を発信するのも、広告漫画を描くのも、自費出版するのも、メリット・デメリットを見極めて上手く活用するべきです。そして、どの方法がその人にとって最適な方法なのかを見極める唯一の方法は、とにかく一回やってみることだと思っています。
ただ、現状は選択肢はたくさんあるように見えるけど、取り組むための事前情報が少なかったり、それぞれの選択肢に取り組むハードルが高くスタートまでに時間が掛かったりと、なかなか動き出しづらいのが正直なところ。この点が、今の漫画家さんたちが抱える課題なんじゃないかなと思っています。
「個人で電子書籍化」を漫画家の”当たり前”にするための方法
ーー新しい選択肢があっても、正しいかどうかが分からず一歩を踏み出しづらい状況下で、ナンバーナインのデジタル配信サービスが新機能をリリースした背景には何があるんですか?
工藤
ナンバーナインが展開するデジタル配信サービスは、個人で権利を持っている作品を、取次を通して最大150のストアに配信するサービスです。
ただ、さきほど伝えた通り、多くの漫画家さんたちにとって「自分で電子書籍化する」という手段がそもそも当たり前じゃない、まだまだ知られていない、もしくは知ってるけどどうすれば電子書籍化できるか分からない状況にあることに課題意識を持っていました。
ーー特に、属人的な営業活動だけだと、首都圏と地方などで情報格差は生まれやすいですよね。
工藤
それならいっそ、サービス自体を全部オンライン完結できるようWebサービス化するのが早い。Webサービスとして、今まである程度ブラックボックス化されていたデジタル配信サービスの細かいサービス内容や情報をオープンにすることで、全員がいつでもどこでも気軽に使えるようにすればいいじゃんって思ったんですよね。
もっと言うと、漫画家さんが実際使ってみて素直に感じるメリット・デメリットや実績なども、できるだけオープンにしたいと思っています。
まぁ、全員がいつでもどこでも気軽に使えるようにするとめちゃくちゃ簡単そうに言いましたけど、これがなかなか大変で……。課題は大きく2つありました。
1. 作品単位で変わる印税率の複雑さ
2. 作品登録に必要な情報の複雑さ
1については、デジタル配信サービスの仕組みとして、お預かりする作品の状態によって漫画家さんに還元する印税率が異なることが課題でした。この部分については、漫画家さんの収益に直結するポイントなので適当にすることはできません。
どの状態だと何%なのか、何をすると印税率が上下するのか、この辺りを弊社のエンジニアに協力を仰いで直感的に伝わるように仕組み化したのは今回のWebサービス化に踏み切れた大きなポイントでした。
2については、弊社が預かった作品を複数ストアに配信を促すために、複数の取次会社さんと提携しているため、一度の入力で各社に作品の正しい書誌情報を提供できる仕組みを開発することで解決しました。
この2点が解決し、後は社内で作品のクオリティを審査する体制づくりや対応窓口を強化すれば、まずはβ版としての機能は整います。最後は社内でのテストと、実際に漫画家さんにサービスを触っていただいて微調整を行い、4月28日に晴れてリリースさせることができました。
漫画家さんが色んな事情で眠らせてしまっている原稿はたくさんあると思いますし、それは資産だと思っているからこそ、できるだけ多くの漫画家さんに利用してもらいたいです。
ーー構想からリリースまでどれくらいの期間で実施したんですか?
工藤
構想自体は2019年の年末くらいからですね。正直な話、最初は今年の夏頃にリリースする予定でした。
ただ、新型コロナウイルスの影響で春の同人誌即売会が軒並み中止になったことを受けて、リリースを早めたんです。理由は、弊社のデジタル配信サービスを利用してくれている約500名の漫画家さんのうち、5割くらいは同人市場で活動されている漫画家さんだったから。
ーー同人作家さんたちにとって即売会の中止は年間の収益に大きな損失が出ますしね……。
工藤
そうなんですよね。それなら、β版のシンプルな機能でもいいからまずはリリースしよう、と開発チームや役員と相談して、スケジュールを前倒しする形で開発を進めました。
人にもよりますが、電子配信の売上は同人イベント1回分と同じくらいやそれ以上になる方も多くいらっしゃいます。だからこそ、サービスのことを利用してもらって、今回の未曾有の状況の打開策になればと考えました。
今回リリースしたオンライン入稿システムは、あくまでβ版です。ここから実際に漫画家さんたちに使用してもらって、改善を重ねてより良いサービスにしていきたいです。
個人で漫画を描き続けるための大きな収益源を目指して
工藤
僕は、デジタル配信サービスを漫画家さんの中で出版社と同じくらい当たり前に取るべき選択肢にしたいんです。
今後、個人で作った漫画から数千万円を売り上げるような大ヒット作と呼ばれるようなものは今以上に出てくると思います。
最近でも、きくちゆうきさんがTwitterで毎日投稿していた漫画『100日後に死ぬワニ』がめちゃくちゃバズりました。かっぴーさんが個人的に描き始めた『原作版 左ききのエレン』では、弊社がプロデュースしたクラウドファンディングで5300万円の支援金額を集め、名だたる商業漫画のプロジェクトを抜いて日本一のプロジェクトになりました。
上記のように、商業連載を経て大ヒットする道は漫画家さんたちにとって最も収益性の高い選択肢であることは間違いありません。一方で、漫画を描いて発表する選択肢が増えたからこそ、その次のステップとしての「個人で電子書籍化(収益化)する」という選択肢も確実に増えてきています。
この「個人で電子書籍化する」という行為がもっともっと当たり前になれば、今以上に漫画家さんたちの収益源として無視できないものになると信じています。
だからこそ、ナンバーナインではデジタルファーストな漫画制作・拡散方法を模索しながら新しい漫画を生み出していきたいですね。
ーー最後に一言メッセージをお願いします!
ここまで読んでいただきありがとうございました。自分自身の気持ちをここまで言語化したのが初めてだったのでどこまで伝わるか分かりませんが、シンプルに漫画業界をもっと良くしていきたいという気持ちで取り組んでいます。
まだまだできたばかりのWebサービスですが、分からないことあればぜひTwitterのDMでお気軽にご質問ください!