<Modelmap 事業内容解説 ~問題編~>

この記事では、創業ストーリーの記事で少し触れた、Modelmap が解こうとしている問題とその大きさについて解説をしていきたいと思います。結論だけ短くまとめると以下のような形になります。

① 金融業界、特に M&A 業界では、エクセル職人達がなんと毎回 0 から数式をポチポチ書いている！
② 世界中のエクセル職人は 200 万人以上いると推定され、人件費ベースで毎年 2 兆円以上のコスト！

<投資銀行と財務コンサルティングの人達のシゴト>

M&A や事業投資の世界は、基本的に秘密主義です。仮に、トヨタが日産自動車の買収を計画しており、そのことが意図せず情報が漏れてしまったりしたら大ニュースになってしまいます。投資銀行業務は、エンジニアの方と接触する機会も少なく、基本的にオフィスに篭ってシゴトをしているため、どのようなシゴトなのか働いてみないと非常に分かりづらい業界なのかもしれません。

彼らが具体的に行っているシゴトは主に 2 つあります。細かい説明は省略しますが、以下 2 つです。
①死ぬほど Excel を作る
②死ぬほど PowerPoint を作る

僕達は投資銀行で働いたことはありませんが、財務コンサルタントとして上記の 2 つを徹底的を行う現場を見てきました。エクセルとパワーポイントを用いて、日夜を問わず死ぬほど資料を作っています。僕達は、エクセルを用いた事業計画作成の専門部隊にいたため、毎日がエクセルとの戦いでした。これらエクセルで事業計画にシミュレーションを構築することを、「財務モデリング」(Financial Modeling) と呼びます。でも、恐らく、多くの人はこう疑問に思っていることでしょう。

「たかがエクセルでしょ？何がそんなに忙しいの？」

なぜ忙しいのか...その答えはこれです。

上記は、中東の発電所計画に係る事業計画のシミュレーションを行う財務モデルです。シート数は 35 枚、数式の数をカウントすると 272,750 個。ユニークな数式を解析すると、6,318 個でした。ファイルサイズは 28MB なので、エクセルで開くことすら 30 秒ぐらいかかったりします。ちなみに、シートの内のリンクをみると、以下のような感じです。麺がよく絡まっています。

ついでにセルに入力されている数式を1つ見ると、こんな風になっています。

=IFERROR(HLOOKUP (Return!G2,BS!$F$2:$Y$24,ROWS (BS!G2:G21),FALSE) ,0) *(Assumption!$F$227="investor") *(G2=DATE (YEAR (Assumption!$F$18) + Assumption!$F$13,MONTH (Assumption!$F$18), DAY (Assumption!$F$18)) -1)

これ、手打ちです。残りあと 6,317 個（ユニークな数式が）あります★

<なぜ忙しいのか>

1,113 個の数式を組み立てる人は大体 1 人です。なぜなら上に示したようなスパゲッティは職人の技巧であり、他人が入り込む余地がないからです。麺は 1 人で茹でねばなりません。しかし、チェックする時は少なくとも複数人でチェックします。6,318個あります。発狂ですね。

エンジニア「いや、そもそも何でこんなに複雑なエクセル作る必要あるの？シート 1 枚の範囲でシンプルに作ればええやん。」

部長「ダメだ。君のエクセルで1,000 億円が動く。ざっくり計算して10 億円間違ってたら、君が人生 5 回分ぐらい働いて返すのか？」

10 億円という規模の資金は、決して計算間違いで消滅してよい規模の額ではありませんし、サラリーマンが一生かけて返済できる金額ではありません。だからこそ、皆必死です。基本的に数式を作る人間は 1 人ですが、何人もの人間が、肉眼でつぶさに数式を確認し、大勢の関係者間でディスカッションしたりして、絶対に間違いがないかチェックを行います。また、この財務モデルを用いて、前提を変化させながら「本当に儲かるのか」を徹底的にシミュレーションします。こういった仕事だからこそ、投資銀行の人達は死ぬほどエクセルで忙しいのです。

しかし一部の人は、こうも疑問に思っていることでしょう。

「そんなやり方、一部のイケてない人だけでしょ？」

「ソフトウェアとか使って、皆もう少しモダンなやり方してるでしょ。」

すみません。僕達全員イケてない可能性は大いにありますが、少なくとも、

ゴールド○ンサッ○スの人も、この方式で絶賛エクセル稼働中です。

年収1,000 万 ~ 2,000 万円の人達もエクセルで日夜問わず、カタカタ手打ちで財務モデルを作成しています。ちなみに、ゴール○マン○ックスの人に加えて、下記のような会社の人もエクセルで稼動しています。

もっと言えば、下記のような会社の内部でも、同じ現象が起こっていたりします。

アップルやグーグル、アマゾン、マイクロソフトを含む、世界中の超一流企業の内部でも、事業計画を扱うエクセル職人が、同じ方法で絶賛稼働中です。

<エクセル作業の市場規模>

世界中でどのぐらいの規模のお金がこの不毛なエクセル作業に費やされているか試算してみましょう。

事業計画や財務分析に関連したエクセル職人 ... (推定) 200万人
エクセル職人達の給与 ... (グローバル平均) 500万円
エクセル作業に年間で費やす時間割合 ... (約) 20%

200 万人 x 500 万円 x 20 % = 2 兆円 (年)

いやぁ、すごい額です。トヨタ自動車が2018年3月期に、過去最高益の 2.4 兆円を記録しましたが、同じぐらいの金額が世界中でなんとエクセル作業の人件費で毎年のように吹き飛んでしまっています。

この 2 兆円が、環境保護費や教育費に毎年使えたらどれほど良いか。

これが Modelmap 設立の原点となる課題意識です。次回は、なぜ現場でこんなことになっているのか、問題の本質的な部分は何かについて、詳しく解説をしたいと思います！