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リーガルテック業界の中にいる人が妄想している実現したい未来のおはなしです
全ての法務パーソンに希望を!
9:00
木曜日はリモートDAYだ
法務は秘匿性の高いデータを扱うため、他の部署のようにカフェ等で仕事をすることは許可されていない
よって一日自宅勤務なのだが、Web会議が続くので戦闘準備をする
具体的には、きっちりメイクして髪も整える
PCのモニター越しにしか会ったことがない人も多いので、見た目の印象は大事だと思っている
通常業務に加えて来月末の株主総会の準備もあるので今の時期は何かと忙しい
でも夜に久々にロースクールの同期と会うので絶対遅れたくない
タスクを整理して巻きで片付けていく
まずは契約データベースを立ち上げる
ドラフト依頼が2件たまっているので、自動ドラフティング機能でポチポチしてプレーンなファーストドラフトを作成する。案件に応じた個別修正が必要な条項は、データベースの過去事例から関係する条項だけピックアップして参考にし、2件で30分きっかりでドラフト作業を終えた
あとはメンターである先輩のレビューに回す
前回データベース付属の雛型を使ったと言ったらほぼノーチェックで先方に回そうとしたので驚いた
ちゃんと見てほしいと伝えたが、「あの雛型は日本トップクラスの弁護士の監修済だし大丈夫」という返答
いや仕事しろよとその時は思ったが、たしかに生成されるパターンは全て問題ないことが確認されているものなので、問題ないのかもしれない。更に驚いたのは、先方が5分後にOKを出してきたことだ
先方も同じデータベースソフトウェアを導入していて、その中立的立場の雛型であれば基本的に即合意してきたという歴史をどうやらメンターは知っていたらしい。それなら最初に言ってくれればいいのに
12:00
ランチ休憩
同期のグループトークを見て、今夜の時間と場所を再確認しておく
今日のメンバーでも、法曹に進んだ人、自分と同じく企業法務を選んだ人、リーガルテック職に就いた人がおり、いまやロースクール生の進路は多様化している
それぞれの仕事の話を聞くのが楽しみだ
院を出ているとはいえ、法務は人気職なので就活は苦戦したが、去年大手メーカー法務の内定をもらったときは本当に嬉しかった
加えて上司にも恵まれたのはラッキーだったと思っている
直属の上司である法務部長A山さんは2児のママでもあり、仕事と家庭を両立している憧れの女性だ。社内でも一目置かれていて、彼女の直下で働けることをよく羨ましがられる
しかしA山さんはそれに驕ることなく、
「自分ももちろん頑張ってきたけど、両立できる環境が整ったことが大きい。10年ほど前は法務部の労働時間は社内でも長めで、特に月末には残業も多かった。子育て中の先輩達は皆、キャリアを諦めざるを得なかった。
しかし契約データベースを導入して情報・知見をそこに集約したことで、紙の山をひっくり返してリサーチしていた時間は短縮されたし、資料を探しに出勤する必要もなくなった。
この変化はあなたのこれからのキャリアにもきっとプラスだから、効率化によって生まれた時間をぜひ有効に使ってほしい。」
と話してくれた
自分は恵まれているんだなと感じた。がんばろう
先日の企画開発部や販売促進部との合同会議も印象深かった
新しく某人気キャラクターとコラボした商品を販売することになり、そのライセンス契約の内容検討が行われた回だ
先方のドラフトに対し、A山さんが許容できるリスク、できないリスクのラインをデータを元に分析して見せ、逆にもっと攻めてよい条項などを提案したことで、結果的に契約は当初より自社に寄せた形で締結もできたし、根拠が明確だったことで交渉もしやすかった、と各所から感謝されたと聞いた
自分もあんな風に話せるようになりたいとアドバイスを求めたところ、
・数字を求められる部署相手の場合は特に、経験則ではなくデータによる定量的な裏付けを用意しておくこと
・リスクを指摘するだけではなく、どのような選択をするのが会社にとって有益なのか、数字に貢献できるのかという方向性で話をすること
がポイントだと教わった
例えばM&A案件の場合、損害賠償額の上限は譲渡価格の何%に設定すべきか?雇用維持義務は呑むべきか?呑むとしたら期間はどのぐらいが適当であるのか?等の検討がなされるが、そのベースラインはデータベースの分析結果によって算出され、最終的には法務部が案件の特殊性を考慮して決めるらしい
データの大切さを学ぶとともに、自分はとにかく「それはリスクになるので難しいです」とストップをかけるだけだったなあと反省した
1年目ではまだ関わらせてもらえないが、自分も法務としていずれはM&A案件を経験したい
実はその時のために、少しずつデータベース内の過去案件を読んで勉強を進めている
16:00
本日のラストタスク、取締役会の議事録を準備する
役員リストの中には前任の法務部長Wさんの名前がある
いわゆる「2025年の崖」に先立って既存システムを見直し、リーガルテックを他社に先駆けて導入、社のDX化を推進した功績から法務初で役員登用されたと聞いた
出社日に何度かお話したことがあるが、とても理知的でスマートな方だ
しかし、自分が法務部長だった頃のエピソードを話し出すと止まらなくなるのには辟易している
曰く、「昔は毎日満員電車でオフィス出社していた」「過去資料は書庫で閲覧するしかなかった」「コロナ禍でも印鑑を押しに出勤していた」「とにかく何でも紙ベース」
入社してこの方、紙で契約を締結した事例など数えるほどしか見たことがない
まるでリアリティがないので、事実よりかなり大げさに話していると思われる
前述のM&A検討事項も、昔はベテランの勘と経験で決めていたというが、これは流石に冗談なのだろう
16:30
本日分のタスクを全て片付けたのでフレックス制度を活用して早上がりすることにした
待ち合わせまでに余裕があるので買い物もしていこう
今日集まるメンバーの中できっと今一番充実しているのは私だ
法務としてのキャリアは始まったばかりだが、未来は明るい
L子始め登場人物はもちろん実在の人物ではなく、文中のあらゆる事象はあくまでリーガルテック企業に勤務する一社員の理想に過ぎません。
しかし同時に現実になる可能性が極めて高い理想群(実現に必要な時間がリアルに10年単位であるものから、来年始めには実現できる見込みのものまで含んでいます。)でもあります。
個人的に、HUNTER×HUNTERが2030年までに完結するよりはL子の一日が現実になる確度の方が高いというのが筆者の実感です。
この中のどれがすぐにでも実現できることなのか気になる方、もしくは冨樫先生はきっと頑張ってくれるはずだという希望と、このまま最終回を見ることはないのかもしれないという諦観の間で揺れている方、ぜひカジュアル面談でお話しましょう。