ミクシィにはデザイナーやディレクターをはじめ、様々なクリエイターが所属しています。「現場クリエイターのシゴト術」では、事業会社のインハウスでクリエイターを務め、現場で奔走するメンバーに話を聞くシリーズ。今回は、ディレクターとイラストレーターの両方で、『モンスターストライク(以下モンスト)』のキャラクターデザインに携わる手島に実際の働き方やそのやりがいなどを掘り下げて聞いてみました。
実力を試したくてフリーランスからミクシィへ
──早速ですが、手島さんはどのような経緯でデザイナーになったのでしょうか。
専門学校でグラフィックデザインを専攻し、卒業後に広告制作会社に入社したのがデザイナーとしてのキャリアの始まりでした。細かい文字がビッチリの説明書のようなものの改定やデザインの整えなどから、写真やイラストを利用した広告デザインの提案、会社の名刺やロゴの制作など、制作物のタイプや業種も様々でした。
──テーマが幅広いですね。制作会社と言えば忙しいイメージもありますが…
そうですね。所属していた広告制作会社も非常に忙しくて、アシスタントデザイナーとして先輩の制作物の細かい部分を任せてもらったり、入稿データの確認を緊張しながら何度も見直す作業や入稿の手配をしたり、デザイン提案の案出しなどもあって、絶対に選ばれるぞ!と意気込んで参加させてもらったりと新人なりに手探りかつかなりドタバタではありながらもいろんな経験をさせてもらいました。でも、そんな中で心の中でイラストレーターとして仕事をしたいという気持ちも捨てきれず、個人的に仕事の依頼も受けてはいたのですが本業との両立がだんだん難しくなり、当時携帯ゲームのイラスト制作の機会がとても多かったのもあり、駆け出しの絵描きでも仕事を取れるチャンスがありそうだと、フリーランスの道にチャレンジしたわけです。
──グラフィックデザイナーからイラストレーターに転向されたのですね。フリーランスとしての仕事はいかがでしたか。
それが、仕事をどう増やしていけばいいのかわからず、2年で辞めてしまったんですよ(笑)。生活はギリギリしていけましたが、フリーでキャリアを積み上げていく自信があまりなかったんだなと二年経ってようやく自覚して。それでも個人として受けている仕事は続けたくて、前職ではゲーム事業を展開する企業にアルバイトと入社しました。
──前職ではどのような仕事を担当されていましたか。
入社当初はスマホゲームのイラストを描いていました。担当したのは、かわいいマスコットキャラクターから美麗系のイラストまで様々。そこでも色々な部署で多種多様な仕事を経験させてもらい、その中で生まれて初めてイラストのディレクションも経験しました。
──ミクシィに転職されたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
母校の先輩の紹介で話を聞くことになったのですが、これまでに培った経験を活かして、どのように活躍できるのか試してみたいと思い入社を決めました! 入ってみてわかったのは、モンストの制作にはトップクラスのクリエイターが大勢、物凄い熱量を持って携わっていることです。いつかは自分もこの物凄い熱量の人たちの中で「このキャラを手掛けたんだ」と肩を並べられるように、キャリアを積んでいきたいと思ったことを覚えています。
デザインとディレクション、それぞれのやりがい
──現在はどのような業務を担当されていますか。
アートチームとキャラクタープロデュースグループ(以下キャラプロ)を兼務しています。業務内容としては、外部制作パートナーのディレクションが6割と内製でキャラクターをデザインするのが4割程度です。
──キャラプロは具体的にはどのような役割を持っているのでしょうか。
キャラプロの業務は多岐にわたっています。キャラクターのテーマやモチーフをテキストに落とし込んだ資料を作るチームや、セリフを考えるチーム、キャラクターがゲームの外で登場する際、例えばグッズやタイアップ商品への使用の際に監修するチームなどで構成されています。働いていて感じるのは、ゲームを盛り上げるために真摯に向き合っている人が多いことですね。モンストのように、ゲームの中で具体的なストーリーを明示していないのに、ここまでキャラクターに深みを持たせようとたくさんの人が熱量を持って議論し作り上げていくようなタイトルはほかにないのではと思っています。キャラクターテーマや設定に、どんな工夫を凝らしたら、より面白く、驚きのあるゲームづくりに繋がるのかここまでじっくり考えられていると、絵描きとしてもチャレンジしがいがあります!
──キャラクターへのこだわりの強さは、どのようなところに現れていますか。
モンストでは、見た目がただ綺麗なだけのキャラクターは作らないことをモットーにしています。それが本当にキャッチーなのか、驚きがあるのか、モンストで出す必然性があるものなのかにこだわっているからです。一見、かっこいい、あるいは美しく感じるキャラクターでも、ストーリーを感じさせる要素を入れたり、ただかっこいいだけではないユーモアや、設定に肩の力を抜いたところをあえて用意し、キャラクターの人間性により面白みや深みを持たせようと工夫するのがモンストの持ち味です。綺麗やかっこいいものばかりではすぐに綺麗さやかっこよさのインフレを起こしてしまい、キャラクターたちに多様性の広がりを作れませんから。
──キャラクターのデザインを外部制作パートナーに依頼するか内製するかはどのように決められていますか。
社内リソースの兼ね合いもありますが、題材に対する熱量と技術力のバランスを見て、あるいは題材を見てこのスタッフに任せたいと決めるなど様々です。この題材はどうしても自分で手掛けてみたい!という思いがあれば自己申告で、責任持って任されることも任せることもあります。もちろん、任されるには必ずしっかりしたクオリティが出せることと、自分自身できちんと仕事を進められると言う信頼ありきですので、自分でこのキャラクターに携わりたい、と言ったがためにプレッシャーは大きいこともしばしばですが。また、独りよがりなデザインにならないよう、手を動かすのは一人でも必ず何人かでデザインの良し悪しについて議論しながら進める体制が敷かれています。
──自分から手を挙げられるんですね。一体のキャラクターが生まれるまでにはどのくらいの期間がかかるんですか。
イベントで発表されるキャラクターなどは、獣神化することが決定してから完パケまでにおよそ半年かけてることもあります。そう言った長期の製作の時には私の場合、まず、デザインにせよラフにせよパターンをたくさん出します。関わる人々が思い描いている方向性を探り出し、イメージをだんだん定めていくスタイルを取っています。心掛けているのは一番最初の案だしの時は最初からドンピシャなものを出そうと気負わず、多分これっぽいものなんだけど「これじゃなくてもっとこういうやつ」と言ってもらうことです。最初からドンピシャを当てるのは難しいですが、「近い気がするんだけどもっとこうしたい」「こうすればイメージ通りになりそうなんだけどなあ」という要望を引き出します。ぼんやりと思い描いているイメージに手探りでだんだんピントを当てるようなつもりで意見を引き出しては絵にし、この繰り返しでだんだんしっくりくるドンピシャなものにしていきます。
──想定表に対して、「こうすれば良いかも!」と手島さんからアイデアを出すことはあるんですか。
もちろんあります! どうすればキャラクターをより面白くできるかアイデアを出して、キャラクターの設定を作った人とリアルタイムで意見交換ができるのは、インハウスデザイナーとしてキャラクターをデザインする強みはまさにこれです。
──では、ディレクションを担当される際に、外部の作家さんとデザインを進めるうえで心掛けていることはありますか。
私の指示を100%全部実現していただくだけでは、作家さんの持ち味を活かせず起用する意味がなくなってしまうので、デザイナーとして依頼する以上は作家さんの意思や作風は尊重したいと思っています。なにか調整指示をお伝えする際も、ただ一方的に指示するのではなく、作家さんはどうしたいのか、どう言う意図を持って描いているのか、をしっかり汲み取るよう心がけています。
──著名な作家さんに意見するのに、引け目を感じてしまうことはありませんか。
めちゃくちゃあります(笑)。でも、もしも私が逆の立場だったら、アイデアや意見は忌憚なく伝えてほしいのではないかなと思います。一人で出せるアイデアには限りがありますから。三人寄れば文殊の知恵というか。たくさん出た意見やアイデアの中から一つでも作家さんの中でそれを取り入れてみたい!と思えるような意見交換や会話を重ね、結果的にお互いが良いと思えるものを作りたいです。そういった思いもあって、作家さんのスタイルを考慮したうえで、意見は忌憚なく伝えちゃっています!緊張はしながら伝えさせていただいておりますが。皆さんプロなので、私からお伝えした内容についてじっくり真摯に考えて素晴らしいデザインに落とし込んでくださり、いつもとても助けられています。
──イラストレーターとしてデザインするのとディレクションは、感じるやりがいも違いますか。
全然違います。イラストレーターである以上は、自分で描くことがまず第一の目標なので、絵を描けること自体がやりがいです。それがユーザーさんに好評だともっと最高ですが、そもそもキャラクターをデザインしてイラストを描くこと自体が、“やりがいの塊”と言えます。ディレクションでは、例えば作家さんが行き詰まってしまったときに、意見交換を重ねながら進め、作家さんからも「良いキャラが作れました」とお声を頂いたり、あとはお伝えしたアイデアを想像のずっと上をいくような素晴らしいデザインで応えてくださった時など、お互いが納得できるものが作れたりしたときにやりがいを感じます。
──手島さんは社内外の多くの方と連携して業務を進められているかと思いますが、コミュニケーションで困ることはないのでしょうか。
私はもともと人見知りなんですが、キャラクターやデザインというお互いの共通の話題があるので、困ることは特にありませんよ。むしろ仕事では絵を通して、様々な方と繋がれています。社内には私と同じように内製の案件を担当しているデザイナーがいるので、同じ悩みを共有できて心強いです。仲間が「あんなに良い絵を描いている!」と気付けば、自分も負けられない、という気持ちと、こんな新しいチャレンジがあるんだ、と発見させられ、より頑張れます。
仲間とこだわりの“1体”を作り続けたい
──担当したキャラクターがリリースされたときはいかがでしたか。
YouTubeのコメントやTwitterの投稿でユーザーさんの反応を見ることが多いのですが、やはり良い反応がくるとまたこの時に負けない良いキャラクターを作ろう、と次へのやりがいに繋がります。リアルイベントで発表したときは、ユーザーさんの様子も見られたんですが、もう熱量がスゴくて…!
──あんなに多くの人が自分のイラストを見てくれていることを実感できるのは、普通のイラストレーターだとなかなかできない経験ですよね。
そうですね。さらに嬉しいのは、イラストが続きはこちら