泉 健介 | エムスリー株式会社 プロダクトマネージャー チームリーダー
エムスリーにおけるプロダクトマネージャーは、「プロダクトを通じた事業成果の最大化」を追求し、自らの意思決定によってその未来を実現していく存在です。事業を前進させるために必要であれば、市場開拓やマネタイズ設計、法的なスキーム構築から現場のオペレーション改善にも、深く踏み込みます。求められるのはアウトプットではなく、アウトカム。「成果の最大化」に向けて貪欲に思考のアップデートを続け、正解のない中で仮説を立て、疑い、決断し続けること。そのプロセスそのものが、私たちの価値になります。
エンジニアとしてキャリアをスタートしながら、「何を作るか」に向き合うためにプロダクトマネージャーへと転身した泉。複数プロダクトの立ち上げやグロースを担い、意思決定の最前線に立ち続けてきました。なぜエムスリーという環境で、思考の質と意思決定の精度が磨かれていくのか。そのリアルなプロセスと、この環境で得られる成長について聞きました。
「何を作るか」に向き合う。プロダクトマネージャーという選択
これまでのキャリアと現在の役割について教えてください
現在は、医療従事者・患者双方の診療体験をDXする「デジスマ診療」のプロダクトマネージャーを担当すると同時に、新規プロダクトの立ち上げも行なっています。
もともと大学では都市工学を専攻していて、街づくりや建築といった分野に興味がありました。そこからエンジニアのキャリアに進んだのは、学生時代に機械学習の論文を翻訳するアルバイトをしたことがきっかけです。
当時は技術的なバックグラウンドもなかったのですが、最先端の論文を読んでいく中で、「これを自分で実装できたら面白いのではないか」と思い、スタートアップのインターンに参加してエンジニアとしてのキャリアをスタートしました。
開発に関わる中で、徐々に関心が「どう作るか」から「何を作るか」に移っていきました。どれだけ技術的に優れていても、そもそも作るもの自体が間違っていれば価値は生まれない。その意思決定がプロダクトの成否を大きく左右することを実感したのが大きかったです。
もう一つ大きな転機になったのが、夜間のデザインスクールでの経験です。コンセプトを考え、それをもとにさまざまな人を巻き込みながら展示を作り上げていく。そのプロセスを通じて、「全体を設計し、方向を決める役割」に強く魅力を感じました。
プロダクトマネージャーは、単に仕様や機能を決める仕事ではなく、技術・事業・ユーザーを横断しながら、「何を作るべきか」という問いに向き合い続ける役割です。その構造が自分の志向と一致していたため、この道を選びました。
なぜエムスリーに入社を決めたのですか
プロダクトマネージャーとして成長するためには、意思決定の回数そのものが重要だと考えていました。前職では、少人数のチームで新規事業の立ち上げに関わり、プロダクトマネージャーとして一つひとつの意思決定に深く関わる経験ができていました。一方で、このまま自分一人で意思決定を続けていくだけでは、経験の幅や判断の引き出しが広がらないという課題感も持っていました。
一つのプロダクトに閉じるのではなく、複数のプロダクトや事業に関わりながら、成功も失敗も含めて経験していく。その量が、最終的に判断の質を高めると考えています。
エムスリーは、医療×ITという大きな市場の中で、新規事業が連続的に生まれている環境です。実際に入社後も、事業立ち上げと並走したプロダクト開発の経験があり、チャレンジの密度は非常に高いと感じています。
さらに決め手になったのは、プロダクトマネージャー同士の議論の質でした。ただの意見交換ではなく、思考プロセスそのものをぶつけ合う場になっている。その中で提示される視点の広さに触れて、「ここなら自分の思考を鍛えられる」と確信しました。
最初に突きつけられる「思考の深さ」。その差分をどう乗り越えるか
入社後に感じた難しさやギャップは何でしたか
一番大きかったのは、意思決定の前提となる「思考の深さ」です。
仕様を決める際に、A案とB案を比較するだけでは不十分で、C案、D案といった形でオプションを広げることが求められます。さらに、それぞれの案が実際の現場でどう機能するのかを、具体的なシーンまで落とし込んでシミュレーションする必要があります。
例えば医療現場であれば、受付のオペレーションがどう変わるのか、患者がどのタイミングで迷うのか、スタッフの負荷は増えるのか減るのか、といった「現場で本当に使われるか」の視点から「ビジネスとして成立するのか」「プロダクトの販路にはどう影響するか」「全社のエコシステムにはどう影響するか」など、複数の観点からシミュレーションを行う必要があります。
一方で、医療業界はユーザーに遠いという印象を持っていましたが、実際には現地でのヒアリングや見学の機会が多く、むしろ非常に近い距離でプロダクトを作れる環境でした。この点は良い意味でのギャップでした。
その壁をどのように乗り越えてきましたか
この環境では、思考そのものをさらけ出して議論することが求められます。経営層やシニアメンバーと直接ディスカッションする中で、自分の考えたオプションや前提をぶつけると、「その前提は違うのではないか」「もっと広い視点があるのではないか」といったフィードバックが返ってきます。
時には自分の考えが根本から覆されることもありますが、それを否定として捉えるのではなく「ここまで考えられる可能性がある」と受け取ることが重要だと思っています。同じ人間である以上、到達できない思考ではない。その差分を学びとして吸収し続けることで、オプションの広さやシミュレーションの深さは確実に変わっていきました。
実際に議論を重ねる中で、自分の考え方そのものが更新されていく感覚がありました。思考は才能ではなく、環境の中で鍛えられるものだと実感しています。実地での議論こそが、そのトレーニングになっていると感じています。
正しさは市場で決まる。意思決定のリアル
意思決定はどのように行われていますか
プロダクトを作っていく中では、ユーザーにとって何が最適かという観点で、チーム内で異なる意見が出ることは自然に起こります。その上で、最終的な意思決定はプロダクトマネージャーが担います。ただし、その判断の基準は明確で、「市場で決める」というものです。
どれだけ議論を重ねても、実際にユーザーに届けてみなければ正解は分かりません。机上での正しさではなく「使われるかどうか」「価値が生まれるかどうか」で判断する。その前提がチーム全体に共有されています。
そのため、まずリリースして、フィードバックを得て、改善する。このサイクルをいかに高速で回せるかが鍵になります。判断のポイントは、誰が正しいかではなく、どの仮説を先に検証するかです。売れるかどうかを基準に意思決定する。このシンプルな原則があることで、意思決定が止まらない構造になっています。
自分のアイデアに固執するのではなく、ユーザーの反応をもとに判断を更新し続ける。その繰り返しこそが、この仕事の本質だと思います。
プロダクトマネージャーの難しさはどこにありますか
100%うまくいく意思決定が存在しないことだと思います。どれだけ考えても、結果は市場に出してみるまで分からない。その状態で判断し続けなければならないのが、この仕事の難しさだと思います。誰かが正解を持っているわけではないので、その時点で持っている情報と仮説をもとに、自分が責任を持って判断するしかありません。
ただ、それは同時にやりがいでもあります。その時点で考え得るベストを尽くして意思決定しているのであれば、結果がどうであれ、それが最適な判断だったと言える。少なくとも、その時の自分、チームには最善手だったと思える状態まで考えきることが大事だと思っています。
プレッシャーがないわけではありませんが、それ以上に「自分が決めている」という実感の方が大きいです。不確実性の中で迷いながらも意思決定し続けること自体に価値がある。その感覚が、この仕事の面白さにつながっています。
社会に残るプロダクトをつくる。その先にある挑戦とメッセージ
今後取り組みたいテーマや、プロダクトマネージャーとしての展望を教えてください
デジスマ診察券は、全国民の方に使っていただける可能性を持つプロダクトだと考えています。医療は誰にとっても避けられない体験であり、その分、まだ多くの非効率や課題が残っています。その体験を変えることができれば、社会的なインパクトは非常に大きいと思っています。
また、自身としては、代表作と呼べるプロダクトを複数生み出していきたいと考えています。エムスリーでは、単なる改善ではなく、事業として大きな価値を生み出すプロダクトを作ることが求められます。その中で、自分自身も継続的にインパクトを出し続けていきたいと思っています。
最後に、これから入る方へのメッセージをお願いします
医療業界は一見遠い存在に見えるかもしれませんが、実際には誰もが関わる領域です。だからこそ、自分ごととして課題に向き合いやすく、プロダクトマネージャーにとって非常に面白いフィールドだと思います。
この環境では、考え続けることが求められます。考えて、試して、学んで、また考え直す。そのサイクルを回し続けられるかどうかが重要です。
未知の中で判断し続けること自体を面白いと思える人にとっては、これ以上ない環境だと思います。一緒にそのプロセスを楽しめる人と働きたいです。
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