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合言葉は「シランケド」「チョケる」ムードを高め、個々のクリエイティビティを発揮する場づくりのコツ

近年、ロフトワークでは、コミュニティが育まれる場の立ち上げや運営に関わるプロジェクトに伴走させていただく機会が増えています。複雑化する社会課題へのアプローチとして、行政や企業、NPOや自治体などが境界を超えて関わり合い、協働や共創を育むための場が求められるようになっているからかもしれません。

場づくりは、その土地や場に潜むカルチャーをキャッチして掬い上げ、言語化したり、ルールに落とし込んだりすることで、その場独自のムードをつくっていくことが肝要だと考えています。私、クリエイティブディレクターの服部が、主に大阪で取り組んできたプロジェクトの事例を交えながら、ムードを高め、個々のクリエイティビティを発揮する場づくりのコツをご紹介します。


Author:服部 木綿子(もめ)(クリエイティブディレクター)


企画・編集・執筆:服部 木綿子
編集:横山 暁子

大阪ともっと繋がりたい。まずは、間借りの拠点づくりから。

ロフトワーク プロデューサー 小島 和人(通称:ハモ):FabCafe Osakaの立ち上げに奮闘中。

ロフトワークは、本社のある東京・渋谷に加え、私が所属する京都にオフィスがあります。京都チームのプロデューサーである小島(通称:ハモさん)は、自身の出身・居住地である大阪で長年活動をしていましたが、ロフトワークとして拠点を持っていない大阪でも繋がりを増やしていきたいと考えていました。2022年春頃のことです。同時にハモさんは「FabCafe Osaka」(FabCafeについてはこちらから)の立ち上げの構想を始め、本格的に拠点づくりを始める前に、まずは場所の間借りから始めました。

場所は、心斎橋PARCOの中にあるコミュニティ型ワーキングスペース「SkiiMa(スキーマ)」。ただ入居させていただくだけでなく、SkiiMaを使ったイベントを一緒に企画することとなりました。そこで生まれたのが「喫茶シランケド」というイベントです。SkiiMaの入居者、心斎橋PARCOのカルチャーなど、ロフトワークとは異なるコミュニティが存在する場所に間借りし、共同企画を行うことで「ロフトワークとして拠点を持っていない大阪でも繋がりを増やしていきたい」という目的に対して、ググッと一歩近づくきっかけをいただきました。

場を持ちたい、と考えた時に、間借りからスタートするのはお勧めです。場を持っていて新しいコミュニティを生み出したい場合は、小さく活動を起こし始めることから、 です。

参加と継続のハードルを下げて設計したイベント
「喫茶シランケド」の誕生。

喫茶シランケドは2022年の冬にスタートし、これまで6回開催(2024年夏現在)、延べ200人を超える方々にご参加いただいてます。今後FabCafe Osakaを立ち上げるにあたって、ビジネスに直結するような企業人だけでなく、クリエイター、学生、サードプレイス的な居場所を求める会社員など、ごちゃ混ぜの属性の方たちとの接点を作りたかったので、参加のハードルが低く、参加者が気軽に発言しやすい空気感を目指しました。そのための仕掛けが、気軽に訪れておしゃべりが許される「喫茶店」というメタファーであり、関西人が使いこなす魔法の言葉であり共通言語でもある「シランケド」というネーミングでした。狙い通り、さまざまな方々が足を運んでくださっています。



大阪という地域で「シランケド」という言葉を用いて、「無責任な会話から何かが生まれる」と言ってしまえば、この場ではどう振る舞えばいいのか、ある種の「ルール」として即座に伝わります。「喫茶シランケド」では、とにかく大阪近郊にいるあらゆる属性の人が、出会い、ゆるやかに繋がっていくことが目的なので、大阪の文化を知る者なら脊髄反射で動いてしまう「シランケド」という言葉が効き、コミュニティのムードとして醸成されていきました

「喫茶シランケドという名称で、毎回異なるゲストを招いて何か飲みながらトークセッション+参加者同士のネットワーキングさえできればOK」…と、企画と運営方法には自由度を持たせています。ロフトワークが主催の企画ですが、参加者の中から有志の運営メンバーも生まれてきているので、コーヒーが大好きな人がコーヒーを淹れてくれたり、DJ機材を持っている人がプレイしてくれたり、それぞれが得意なことを持ち寄りアクティビティを提供しています。また、ロフトワークの企画担当も、4回目からは入社したての若手社員が交代して担っています。

持続可能なかたちで、場やコミュニティを育てていには、立ち上がり時の想い、つまりコンセプトを熱量と共に引き継ぎながらも、担い手へ自由度も渡していくことが大切だと考えています。

「喫茶シランケド」を立ち上げた私自身も、2021年から担当している中央復建コンサルタンツ株式会社のオフィスリニューアルプロジェクトにて、若手の社員を巻き込むワークショップに「喫茶シランケド」を活用しました。

「喫茶シランケドーすべては無責任な会話から始まるー」という合言葉にすべてを込めていて、携わる人たちそれぞれの「喫茶シランケド」として使ってもらいたいと願っています。

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本音を話すことからはじめよう。 部門を超えた同世代の繋がりづくり。U35ワークショップ「喫茶シランケド」 ※中央復建コンサルタンツ株式会社Webサイト(企画編集:ロフトワーク)

創造性を発揮する共通言語を見つけ、ムードをつくる

同じく舞台は大阪。2023年1月から南海電気鉄道株式会社と共に、街の担い手を育むことを目的にクリエイターインレジデンスプログラム「Chokett(チョケット)」を立ち上げました。「Chokett」の場合、このプログラム内での合言葉が「なんばで正々堂々とちょける!」です。「チョケる」は、関西ではお馴染みの表現で、ふざけたり、おどけることを指します。固定概念に縛られず、クリエイティブの力で、なんばという街の新しい使い方を生み出していくために「チョケる」ことが、このプログラムに参加する人、運営する人の共通の合言葉となっていくわけです。「チョケ度が足らんなあ」は、ダメ出し、「チョケてるな」は褒め言葉。

「Chokett」は、南海電鉄が主催し、ロフトワークが企画をしていますが、立ち上げ段階から担当者が変わっても、自分たちの手から離れていっても育つプログラムづくりを意識してきました。街を変えていくためには、単発ではなく、長い時間軸で運用され、愛されるプログラムであるべきだからです。仕組みの工夫として、立ち上げ段階は南海電鉄とロフトワークが担っていた運営の役割の一部を、複数名アサインしたコミュニケーターに移譲し、担い手を増やしていこうとしています。そこでも、コミュニケーターの間で「チョケる」が浸透しているため「Chokett」に関わるコミュニティのムードが育まれていっています。

余談ですが、プログラム設計時に、南海電鉄とロフトワークチームのチームビルディングとムードづくりとして実践していたことは、テーマソングの設定。プログラム名から連想した、とあるロックバンドのヒットソングで、個人的に好きで思い浮かんじゃったから口ずさんでしまっただけですが、同世代の南海電鉄担当者もノってきてくれたため、ことあるごとに曲を流しながらミーティングや作業をしたりして、ムードを高ながら「Chokett」の骨格を作っていったのでした。

事例詳細はこちら

南海電鉄が大阪・なんばに仕掛ける 街の担い手を育む、レジデンスプログラム

いよいよ始まるFabCafe Osaka。

さて、本記事の冒頭に、2022年春頃から「FabCafe Osaka」を立ち上げる構想を始めたと書きました。去年の秋には、大阪・中津エリアの西田ビルを間借りして、FabCafe Osaka (仮)Popupを実施。そしていよいよ機が熟し、オープンに向けて具体的に動き始めました。どこでどんなFabCafe Osakaをつくるのかは、また別の機会に。「喫茶シランケド」や「Chokett」の実践で獲得してきた場づくりのコツを、我々自身の事業として大いに試していくタイミングです。また情報を公開していくので、ぜひ仲間になってくださいね。乞うご期待!

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