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強烈なファンを生み出している会社とは
矢野:「替えが効かない会社」ってきっとファンが多い会社のことなのかなって思って、いろんな会社を調べたし、他の業界ってどうなんだろう?って思ったわけ。そこから俺の企業研究が始まったね。「自分は業界の古い慣習にチャレンジして、一番の会社を目指すんだから、他の業界にヒントを探そう」と考えてたくさんの本を読んだ。まずはファンの多い会社。セブンイレブン、Apple、スターバックスコーヒー、ディズニーランドなどなど。「類似品もあるのになぜ選ばれるんだろう?」って。セブンイレブンの鈴木会長の著書に「消費者は常に充足されている。不満や不安は無いけど、満足しているわけでもない」って書いててすごく腹落ちした。
モノ消費よりコト消費
矢野:つまりさ、モノ・サービス・情報が多すぎる世の中では選択肢が多すぎて「このお店の、このメニューを食べたい」とか最初からはっきり決められるユーザーは少ないってことやねんなってわかった。つまり定食屋にランチに行く人は、「サバ煮込み定食」とか「生姜焼き定食」を行く前からはっきりと決めてる人より、「定食屋にいけば、なんとなく自分がハッピーになれるからとりあえず定食屋を選んだ」って感じやねんなと。情報があふれすぎているので、機能性や価格面だけの差別化ではダイバーシティで勝ち残れない時代になっていて、モノ・サービス・情報を通じて、そういったすごく抽象的で曖昧なお客さんの幸福度を満たしていく会社にしなきゃいけないなって思ったわけ。
宮澤:まさにモノ消費ではなく、コト消費ですね。
矢野:この辺から「これからクジラはどんな組織を目指すべきか?」の輪郭がうっすら見え始めたよね。
経営者としての学び
新しい資本主義「公益資本主義」
矢野:そんな時に、経営者友達を通じて偶然にも「公益資本主義」っていうものに出会った。これは株価や時価総額ばかり気にする今の資本主義ではなくて、元々日本に古来からある「三方よし」などの利他の精神に基づいて事業運営をする資本主義のこと。
松田:その話大好きです!日本には100年以上続く老舗企業が世界で一番たくさんあって、そういう老舗企業には地域貢献や社員を大切にする家族経営があるって話ですよね!
宮澤:帝国データバンクによると日本には33,000社の100年以上続く老舗企業があるらしいね。
矢野:そう。松下幸之助翁も「会社は社会の公器」と言っていたのは有名だけど、昔の日本には当然のようにあった、「事業を通じて社会に貢献する」というような考え方や仕組みが公益資本主義。だから世界で一番老舗企業・長寿企業が多い。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p190101.pdf
困っている人を助ける不動産・建築
矢野:そこから「社会の困りごとを解決する会社になれれば、替えの効かない存在になれる」と考えるようになった。
宮澤:矢野さんと夜中のコンビニ前でコーヒー飲みながら「不動産・建築業界を変えれば、社会が変わる」って言っていたのを思い出すなぁ。
矢野:これが思った以上にしっくりきたわけ。なぜこんなに業界が信用されてないのか?っていう疑問へのダイレクトな答えになった。そもそもインフラでもある不動産・建築のイメージがどこか「お金持ち」に通じる商品イメージであることに気づいた。そうじゃなくて「困っている人のための不動産・建築」を目指そうって思った。
三輪:だから僕らの面接の時も「社会に貢献できる大人を目指せる?」っておっしゃっていたんですね!
なぜ世の中の企業は「大卒」にこだわるのか
インターンシップの受け入れ
三輪:インターンシップを開始したのも理由があるんですか?
矢野:公益資本主義を学んでいる時に、「優秀な学生ほど社会に意義のあるビジネス展開をしている企業に就職を希望している」っていう話が出てきて。
俺自身、大学に行ってないので20代の頃って大卒に負けたくない気持ちというか、どこか「俺の方が早く社会に出て、早く起業もしてるから大学なんて行く必要ない」と思ってたのよね。
宮澤:実際何のために大学行ってるかわからないような学生もいっぱいいるしなー。
矢野:でもこの辺のタイミングで自分の感情じゃなくて、事実を見てみようと思って。世の中の大きな会社や成長スピードが早いベンチャー企業はこぞって大卒を採用している。何か大きな理由があるのかな?って。
当時のクジラでは知人の紹介やハローワークとかでしか採用したことなくて、履歴書とかも生年月日と趣味と現住所を知るためだけのものでしかないみたいな。笑
三輪:それでインターンシップの受入を始めたんですか?
矢野:実際はインターンシップ受入までに2年くらいは、とにかく大学生と遊んだり、バイトを雇ったりしてみた。その大学生たちがどんなときに喜んで、どんなときにイラついてて、どんなときに困惑してるかをとにかく観察した。そして、並行して準備していたマンションの空室をリノベーションしてデザイナーズウイークリーマンションとして運営する「Otomari」をリリースするときに一気に大学生をインターンシップとして受入れて、一緒に新規事業を運営したから、ますます「大学生」っていう生態系について理解が深まった。
松田:っていうか僕らインターン始めた頃、矢野さんほとんどの時間大学生と過ごしてましたよね?会議して、みんなでご飯行って、帰りは車でみんなを送って。
矢野:笑。あの頃はけっこう睡眠時間も少なかった。笑
宮澤:僕もそのころに矢野さんに出会いましたね。お互い違う会社のインターンのメンター役として。「こんなに大学生に時間使う社長いるんだ」って思いました。
矢野:とにかく大学生と働いて、遊んで、気づいたことは
・目的意識の高いコが多い
・勉強することに慣れている
・貴重な情報をあたえてくれる大人が周囲にいる
矢野:俺は「独立起業すればカッコいい」みたいな目的意識だったので、すぐにお金を稼げる方法ばかり模索していたし、「勉強や読書に力を入れる人は、仕事で結果を出すことにコミットできない人がすること」みたいな勘違いもしてた。
そんな中、周囲には早いうちから自営業している先輩ばかりで、たとえば大学の教授や、大手企業のサラリーマン、公務員、士業の人なんかほとんどいなかったから、世の中全体のしくみを知ったのはクジラを設立してからだった。
大学生全てが優秀とかでもないし、大学に行ってない人が優秀じゃないとかでもないけど、会社を経営して「採用」する側とすれば、「大学生に評価される会社」をしっかり目指す必要があるなってわかった。
大学生に人気の企業
三輪:よくみんなに「就活どこ受けるの?」って聞いていますよね。
矢野:どこが大学生にとって人気のある企業をとにかく調べた。そこでたどり着いたのがリクルートとサイバーエージェント。サイバーエージェントはクジラでアルバイトしていた大学生がサイバーエージェントに就職したから、すごく興味が湧いてきて。
松田:会社にもたくさん本置いていますもんね。
矢野:本もたくさん読んだし、サイバーエージェントに就職した元アルバイトからもたくさん話が聞けたので、本当に刺激になった。「社員がこんなにイキイキと働く会社ってあるんや!」って。そこからは、そういう会社の「企業風土」が知りたくなって、とにかくたくさんの企業を調べた。
若者に人気のある企業の人事戦略
矢野:当然、人気のあるベンチャー企業には独自の工夫があるわけやん?ほんでまたどんどん本を読み漁るわけ。
松田:僕も会社にある本を結構読みました。サイバーエージェント、サイボウズ、DeNA、リブセンス。。。
矢野:大手企業もいろいろ読んだね。P&G、無印良品、トヨタ、星野リゾートなどなど。
三輪:徹底して他の業界なんですね。
宮澤:サイバーエージェントは人事戦略でも相当有名ですよね。藤田社長以外のメンバーの本もすごく売れてるし。
矢野:キャッチーな名前での様々な人事コンテンツに俺自身もワクワクした。そこでわかったことは人気企業は「新しいチャレンジに積極的」ということ。そしてベンチャー企業はとにかく新規事業への意欲が高い。
宮澤:採用戦略としても「新規事業」のキーワードは強いですよね。
クジラの組織戦略
矢野:この辺でクジラの将来が見えてきた。社会の困りごとを解決する不動産・建築のベンチャーとして新規事業にチャレンジする。そこに若い世代がどんどんチャレンジする環境を用意すれば、おのずといい人材が採用できるし、大学生から好かれる会社にもなれる。
松田:僕らもインターンとしてクジラにジョインしてからいろいろチャレンジさせてもらいましたよね。学生だけの会議でいろいろ決めたり、トラブル起きた時のグループLINEの悲壮感とか本当にリアルやった。笑
三輪:自分たちの企画が形になるのも楽しかったです。もちろんそんなキラキラしたことばかりじゃなくて、地道に電話営業とかして企画を具現化していく大変さも今となっては貴重な財産になったって感じです。
※2016年 インターン会議にて
イノベーションを起こすために
矢野:こうやってだんだんと俺自身、世の中のことがわかりだして、クジラがイノベーションを起こすためにやらなきゃいけない大きな課題が見えてきた。それが、
大学生に好かれる企業になること
世の中にまだない新規事業を生み出すこと
そして何より
社会の「困りごと」を解決する事業を行うこと
矢野:この3つを通じて、「社員の自己実現」という幸福を追求できれば、おのずと「社会に必要とされる替えの効かない会社」になれるって考え出した。だから、この3つを達成するために組織についても全く違うチャレンジをした。
第3章に続く。