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難解な経理の入力作業をひとつずつAIに置き換えていく、「STREAMED」のチャレンジ。

こんにちは、クラビス広報です。
株式会社クラビスについて、クラビスが提供する「クラウド記帳サービス STREAMED」について。
その裏側にある、私たちのストーリーをお伝えしていきます。

今回はSTREAMEDの特長でもある「AIと人力の融合」について、CEOの菅藤、CTOの横井、エンジニアの宮川に聞いてみました!

語り手:
菅藤 達也:代表取締役・CEO(写真中央)
横井 朗:取締役・CTO(写真左)
宮川 健吾:機械学習チーム チーフエンジニア(写真右)

「STREAMED」について:
クラウド記帳サービス STREAMED」は、経理の現場の課題である「紙からのデータ化」を解決するサービスです。領収書や通帳のコピーをスキャンするだけで、手書きの領収書でも99.9%正確にデータ化され、仕訳データを作ることが可能です。


記帳業務を細かく分解することからスタートした「人力とAIの融合」

菅藤:「STREAMED」の進化の歴史から話そうかな。会計の記帳業務って「簿記の資格を持っている日本人」しか出来ないと言われていたんですね。せっかく資格を取った全国の経理スタッフや会計事務所の職員たちが、毎日領収書の入力作業を行っている。「STREAMED」はこうした日本中の中小企業が抱える生産性の課題をやっつけようと思って作ったサービスです。
まずは入力作業を分解して、日本語が分からない外国人でも入力出来るようにしました。今はベトナムと中国のオペレーションセンターで、常時100名ぐらいのスタッフが稼働しています。

横井:最初は一枚の領収書に対して一人のオペレーターが、日付も金額も全部入力してたんですよね。それだと色んなことを覚えなきゃいけなくて、教育コストがかかってしまう。なので日本語人材と非日本語人材で業務を分けて、さらにベテランとビギナーで分けて、細かくプロセスを分解したんですね。そうすると、トレーニングも人材の調達も簡単になるし、生産性の計測も単純化されて、科学的にオペレーションを組めるようになる。

菅藤:ただ、オペレーションする「人」を増やし続けるのはきっと限界があるだろうと。どこかのタイミングで「完全な自動化」を目指そう、そのためにまず部分的にAIを取り込んでいこう、という感じで「人力とAIの融合」がスタートしました。

最初はどうやって効率的な人力オペレーションを組むかという発想だったのが、「良質な教師データを貯めるためにどのようなオペレーションを組むべきか」というプロセスのデザインに逆流したんだよね。

横井:そこからも試行錯誤して、作ったデータをAIに学習させて、どれぐらいの精度が出るのか見るわけです。会計のプロに使ってもらうことが前提で「99.9%の精度」というのをコミットしているので、領収書の数ある工程の精度を見ながら、「この工程は大丈夫」「この工程はもうちょい頑張らなきゃ」みたいに、徐々に置き換えていってるんですね。”AIの精度が足りないときにオペレーターが拾う”というのが仕組み化されているから、日々の運用の中で教師データが貯まるというサイクルが回せているっていう感じです。

菅藤:この試行錯誤のプロセスはめちゃくちゃ面白い。そして、今となってはクラビスの独自性って、この「人力とAIの融合」ですよね。一番の差別化でもあり、エンジニアにも面白いと思ってもらえる要素なんじゃないかな。AIの仕組み化って、業務フローを理解していないと設計出来ないんですよね。その全体のアプローチをCTOの横井さんが考えて、技術的に実現していくのが宮川さんが率いる機械学習チームですね。


(CEOの菅藤)

機械学習を、ダイレクトにビジネスに適用できている面白さ

宮川:初めてSTREAMEDの話を聞いたときは、「工程を分割することで、作業を担う人が簿記人材に限定されなくなる」というのが驚きでした。あとは「仕事がこんなに減るのか」という喜びですね。作業がどんどんテクノロジーに置き換わっていく今の過程は、すごく面白い瞬間だと思っています。

実際に機械学習をビジネスに応用しようとすると、色んなステップを踏まなきゃいけなくて、時間がかかるんですね。STREAMEDの場合は、プロセスの大半がオペレーション作業として完成されているので、分析に取り組み始めるハードルがものすごく低いというのもポイントでした。

横井:世の中的に、作ったモデルがすぐにサービスインしないことってけっこうあるもんね。普通は、そのための環境を作らないといけないですからね。

菅藤:膨大なデータをどうやって分析可能にするか、データ基盤を作ること自体が一大事業なんだよね。AIを活用するまでの道のりってけっこう長いもんね。STREAMEDではその基盤が整えてある。

横井:サービスを世の中に出してからも、数値化して計測して、次の改善に活かすのってなかなか難しい。それを常にモニタリング出来ているから、生産性という数値化でフィードバックが来て、次の改善のためにはどういうデータをためるといいか、そのデータで作り直したらどうなるのかみたいな。そのPDCAを高速で回せるようにしているんですよね。

宮川:オペレーターさんの作業時間ベースや、単価と掛け合わせた金額ベースで、「これぐらい効率化されたよ」っていう効果が分かるんですね。これが週次単位でフィードバックされるっていうのは、エンジニアとしてすごく面白いと思ってます。

あとは機械学習が、ビジネスの関心事にダイレクトに適用できているのがいいですよね。例えばどれぐらいコストがかかっているのか。その解決策として、例えばUIを改善するとか、オペレーションを変えるとかがある中で、選択肢のひとつに機械学習もあって、それがものすごくハマってる。

僕自身は、機械学習がなくてもサービスが回っていることが重要だと思ってるんですよ。「機械学習がビジネスの主軸になってはいけない」とまでは思わないですけど、それはあまり強いビジネスじゃないはずで。機械学習がなくても回っているところに、機械学習を”効率化のエッセンス”として追加出来ているっていうのが強みですよね。

菅藤:「人間の仕事は将来AIに奪われる」ってよく言われるけれど、そもそも人間が何をやっているのかを定義しなきゃいけないよね。因数分解して明確にしない限り、AIの教師データは作れない。つまり業務を標準化するプロセス自体が、そもそもすごく生産性を高める効果があって。全体は複雑に見えるけど、実は”単純作業の分岐と繰り返し”にすぎないんだよね。だからそこにAIがキレイにハマるという。


(全体のアプローチを設計しているCTOの横井)

99.9%の精度が必要な、STREAMEDにおける機械学習の苦労

横井:STREAMEDの固有の難しさは、領収書のコンディションが様々なところですよね。きれいにスキャンされたものもあれば、スマホで撮影してピンぼけしてたり、お財布にしばらく入ってて文字が薄かったりするものもある。理想的な領収書だったらけっこうやっつけられるけど、全部をテクノロジーで解くのはまだ先なんですよね。

精度のしきい値が高く設定されてるから、それを達成しない限り本番にAIを入れられないわけですね。意外と90%ぐらいまではすぐ行くんだけど、それって100枚あったら10枚間違えるってことだから、我々はそれじゃサービスイン出来ない。その中でどうやってAIをきれいに組み込んでくか、みたいな難しさがあるよね。

宮川:その課題を切り分ける部分も、無視できないぐらい難しいですよね。例えばデータ化する時に、まず領収書の種別を分類して、必要な領域を囲って、ひとつひとつ人間が打ち込んでいく。この切り分けの単位次第で、テクノロジーに置き換える難しさが決まると思うので。

横井:あとは、AIってすごくマネジメントが難しいよね。アプリは日々開発していけばやがて完成するけど、AIって全然出なかった精度が、ある日突然出たりするじゃない。事前に人員計画を立てなきゃいけないオペレーションマネジメントと、いつ結果が出るかわからないAIの効率化の組合わせが、まあ難しい(笑)最初はAIに期待過多だったところから、だんだんお互いの期待値の調整が出来るようになっていった感じです。

菅藤:最初、もがく時期がすごいありましたよね。AIエンジニアが言う「できる」と、顧客が求めてるサービスクオリティにすごく隔たりがあって。そこをどう埋めていくかを宮川さんがずっと見てくれてます。

宮川:もちろん期待を大きく持ってもらうっていうのは嬉しいことなんですけど、ちゃんと出来ないことを明確にするっていうのは重要なことですよね。

横井:毎年2月の確定申告シーズンに向けて、オペレーションの人員計画は11月ぐらいには決めてないといけない。AIの効率化の結果で、これぐらいの人員でいけそうだって見積もるんですね。そこの見積もりが毎年ぴったりはいかなくて、急にもっと人が必要になっちゃったとか、逆に全然いらなくなっちゃったとか、精度が全然達成できなくてオペレーターからすごい詰められたりします。

菅藤:そこは、機械の敗北ですね(笑)


(機械学習チームを率いるエンジニアの宮川)

「無駄な作業は、その人の人生を毀損している」トヨタの生産管理から学んだオペレーション

宮川:先日、ベトナムのオペレーションセンターを初めて見学したんです。オペレーターさんの作業は効率化の賜物で、人間の凄さを見ましたね。入力が超早いし、覚えきれないほどのショートカットを使いこなしていて。「入力の効率化」と、自分が取り組んでいる「テクノロジーでの効率化」っていうのは競争関係にあるわけです。テクノロジーの効率が人力よりも悪かったら、そもそも自分がやってる意味がなくなってしまうので、頑張ろうって思いました(笑)

横井:STREAMEDのオペレーションを組むときに、トヨタの生産管理がどういう思想で設計されてるのかを勉強したんですよね。ひとつひとつの工程を単純化・標準化して作業者によるバラツキを無くし、柔軟にタスクが割り当てられるよう多能工化していて。それがすごく勉強になって、STREAMEDにはけっこうトヨタの生産管理エッセンスが入ってます。

トヨタの生産管理の面白いところって、効率性をとことん突き詰めていくんですけど、でもそれは”無駄な作業をやらせるのは、その人の人生を毀損している”みたいな価値観がベースにあるんですね。効率化されてないというのは、無駄なことをやらせてるわけじゃない?AIは人間の作業を奪う側面もあるんですけど、でもやらなくていい作業をずっとやるほうが、不幸な状態であるとも言えるんじゃないかなって思いますね。


エンジニアがこの先避けては通れない、”AI"のアプローチに触れられる環境

横井:データサイエンティストにならなくても、この先もエンジニアとして生きていくんだったら、やっぱりAIは避けて通れないですよね。そういう意味ではクラビスはいい環境なんじゃないかな。

もともと私はアプリケーションを作るエンジニアだったので、最初はAIエンジニアと何をテーマにディスカッションすればいいか、どうお願いしたらいいか分からないわけです。そこで宮川くんに講師になってもらって、半年ぐらいかけて、AIの小難しい本をみんなで読み込む輪読会をしてもらいました。そこでAIが得意なことや、どういうアプローチがあるのか、精度をどう見ていくのかみたいな基礎知識を共有してもらって、すごくディスカッションの土台が出来たんだよね。

宮川:クラビスのエンジニアほぼ全員参加して、毎週二時間ぐらいでやりましたね。機械学習がブームになったおかげで、少し棘のある言い方ですが機械学習”だけ”できるエンジニアっていっぱいいるんですよ。でもそれだと、システムに組み込むフェーズで、組み込む側か機械学習側にしわ寄せが来て、とても辛いことになります。なので、機械学習エンジニアも従来のエンジニアリングを知ることで機械学習導入が遥かにスムーズになる。実際に本体にどうやって組み込み運用するかという経験ができるのはありがたいです。

菅藤:アプリケーションエンジニアは、機械学習をとても身近に感じながら開発できるし、機械学習エンジニアは実際に事業に組み込まれた結果から学べるって感じですよね。うまくいくかどうか分からない実験や研究的なテーマじゃなくて、実際のサービスを一緒に作れる。どういうアプローチしてるのかを肌で感じられるし、機械学習に触れるすごくいいチャンスは提供できているんじゃないかなって思います!


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