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決めたのは1%の直感。目指すのはチームのインターフェース。“つなぐこと”がキッチハイクのデザイナー、私の役目

1日に何度も見ちゃうようなアプリを設計する

はじめまして。キッチハイクのデザイナーです。ユーザーのみなさんに「使って楽しい、次回も楽しみ!」と1日についつい何度も開いて使ってもらえるような Web サイトとアプリのデザインを担当しています。

( 上記写真 * ) 2018年9月にアプリのリニューアルを行いました

弊社ではメンバーが一丸となって「食でつながる暮らし」を実現させるために、「みんなでごはんを食べる」仕組みをつくっています。その仕組みこそが「キッチハイク」というサービスです。わたしの役割は、キッチハイク上での体験をより良くするための仕組みを考えることです。キッチハイクのプロダクト ( Webサイトやアプリ ) の軸には、必ずユーザーさんという「人」の存在があります。キッチハイクのサービスを使う上で、みんなが必要としていることって何だろう?逆に必要じゃないことって何だろう?どんな設計をすればいいんだろう?どうしたらもっと使いやすくなるんだろう?を考えるのがわたしの仕事です。

また、OSSの活動もしています。

▼6月12日~13日の2日間にかけて開催された、GitHub主催のカンファレンス、『GitHub Satellite Tokyo 2018』で登壇しました!

キッチハイクのデザイナーが持つ、もうひとつの顔。GitHub SatelliteでOSSコミュニティへの想いを語る。 | 株式会社キッチハイク
こんにちは!株式会社キッチハイクでエンジニアをしている泉美帆です。 6月12日~13日の2日間にかけて開催された、 GitHub主催のカンファレンス、『GitHub Satellite Tokyo 2018』。その初日に、弊社デザイナーの羽野めぐみが登壇しました!初日のテーマは『Community』。羽野のOSSコミュニティに対する熱い想いを、レポートさせていただきます! ...
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全ての始まりは「ホームページを作る係になって」から

学校から帰宅してすぐにパソコンに向かうほど夢中になった HTML

音楽が好きで、学生時代はバンドサークルに入ってライブ活動に明け暮れていました。

大学3年生になるとサークルを運営するポジションに。そこで、たまたまメンバーから「ホームページを作る係になって」と言われました。HTML という存在を初めて知ったのはこのときです。当時は、まだ自分のパソコンを持っていなかったので、家族共用の Windows のメモ帳で試行錯誤しながら作っていました。

自分が書いた HTML が反映されて画面の表示内容が変わる瞬間が、とても新鮮で、夢中になりました。大学から帰ってきたら、真っ先にパソコンに向かって作業していたのを覚えています。今でもそうなのですが、新しいモノに触れて試行錯誤しながらも何かを作っている時って、とてもワクワクします。

就職活動は2周やって、やめた

一方で大学3年ともあれば就職活動の波に乗る時期。みんなが次々と内定をもらっていくなか、わたしは内定をもらうどころか、エントリーシートや1次面接の時点で落ちる日々が続いていました。自分はそもそも何をしたいのか、という悩みを抱えながら就職活動を続けていましたが、とうとう休学してもう1年就職活動をする羽目に (汗)。音楽好きだったこともあって一時はピアノ調律師の道も考えたことがあります。

こうして就職活動2年目のある日、偶然見つけた Web 制作会社の説明会に行きました。その会社の社員の方が、ホームページ制作過程のデモを見せてくれた時のことです。バンドサークルのホームページ制作をしていたときの記憶が、突然フラッシュバックするかのように蘇ったのです。「あれは仕事になるんだ!」と自分のなかに雷が落ちた瞬間でした。同時に衝撃的だったのが、デザインするのに美大卒である必要がないということでした。実は、漠然とデザインに興味があったものの、「美大卒でなければ就職できない」先入観に囚われていたのです。ろくに調べもせず進路の選択肢から無意識に除外していた自分に気が付きました。

今振り返ってみると、「なにかを作る」ことが自分の性に合っていたんでしょうね。長い時間を経て Web 制作という手段を知り、漠然と興味のあったデザインが加わって Web デザイナーを目指すようになりました。当時は相談できる大人も身近にいなかったので、なんとか自力でやり抜こうと試行錯誤の日々が始まりました。

本を買って勉強したり、ためになりそうな SNS アカウントやメディアをたくさんフォローしました。単発の初心者向け講座をいくつか受けて、Web 系の勉強会にも積極的に足を運んでいました。そのおかげで、勉強会を通して知り合った人とのつながりは確実に増えていき、頼れる仲間もできてきました。その中には、キッチハイクと関わるきっかけになった出会いもありました。

運命の出会いが到来

1日で PV が1万超え、はてブ900超え!からの突然のメール

当初は、就職活動でどうして良いかわからないからという理由で休学をしていたのですが、振り返れば休学しなければ今の自分がいなかったと思うと、不思議な縁を感じます。

そして、大学卒業直前に、勉強会で知り合って意気投合した仲間たちと共著ブログを立ち上げました。アウトプットを通じて、経験や知識を共有して自分自身のスキルアップにつなげよう!という目的でスタートしました。私はデザインの入門記事を書いてみたところ......

あれよあれよと PV が伸びてその日のうちに1万超え、最終的にはてブ900超え (!) という予想外の結果になりました。記事公開から2日後の2014年3月11日に、偶然にも私の記事を読んだ CTO 藤崎から、突然メールが届きました。「あなたの記事を読みました。ぜひインターンとしてキッチハイクに関わってほしい」という内容でした。

メールを読んだときの正直な感想は、「キッチハイクって何?ちょっと怪しいなぁ......。大丈夫かな?」という感じでした (笑)。しかし、圧倒的にスキルもなく、業務未経験だった私にとってはまたとないチャンス。ひとまず、思い切って藤崎と会ってみることにしました。まさか自分の記事がきっかけでキッチハイクと出会うことになるとは思ってもいませんでした。偶然に偶然が重なった出会いです。人生何が起こるか分からないですね。

(上記写真*) 当時は渋谷にオフィスがありました

短期インターンとして関わりをスタート

こうして、ひょんなことからキッチハイクと出会い、大学卒業後の2014年4月から2ヶ月間だけ関わらせていただきました。デザイナーの卵でありながら、最初に学んだのがターミナルでの Git コマンドの使い方です。そして、「自分たちが実現したい世界のためにプロダクトを作る」目的のもと、HTML / CSS のコーディングやページのデザインを担当しながら実践を通してサービス開発のノウハウを身につけました。キャリアのスタート地点で、デザインだけでなくエンジニアと協業するワークフローも経験させてもらえたのは、本当に良かったです。今では、Git 無しの開発は想像できないくらい毎日使っています。

(上記写真*) 2014年当時のキッチハイクサイトのワイヤーフレーム案

就職せずに選んだ道は、フリーランス

短い期間でしたが、キッチハイクのインターンが終わったので、仕事を探さねばと思っていました。その後は知り合いの紹介でコワーキングスペースでの受付スタッフのアルバイトをはじめました。さらに、また知り合いの紹介で、派遣社員として会社に通いながら Web デザインの仕事を掛け持ちする日々がスタート。1年たった頃、知り合いの仕事を手伝う延長でフリーランスの Web デザイナーとして仕事をするようになりました。

ありがたいことに、キッチハイクの藤崎とはその後も一緒に仕事をすることがあり、スポットでサイトの開発を手伝ったりしていました。その中でも、特に印象に残っている案件があります。アプリと連携する、あるメディアサイトを制作する機会があったのですが、エンドユーザー向けの記事ページや、サイト運営者向けの管理画面などすべてのデザインを担当させてもらいました。

このときは情報提供のための伝えるデザインだけではなく、使うためのプロダクトデザインとしての側面も大きかったんです。プロダクトデザインの経験は、実はこのときがはじめてでした!上流工程から関わらせていただいたので、「どうあるべきか?」を一緒に考えながら要件定義していくプロセスはとても楽しかったです。決まったものをただ作るのではなく、情報設計から具体的なインターフェースに落とし込み実装までする一連の流れは、「一緒になにかを作っている」感覚でした。この感覚は自分の中で大きなインパクトがあり、今後の方向性を考えるきっかけにもなり、今の私にも大きな影響を与えています。

WordPress コミュニティでの活動

また、私の中で大きかったもののうちの一つが WordPress コミュニティでの活動です。2014年から2016年の3年間、 WordCamp Tokyo に運営スタッフとして参加しました。実は、今年もスタッフ参加をしています。WordCamp は世界中で開催されている WordPress の大きなカンファレンスで、半年間かけて準備を進めて、総スタッフ数は100名単位の規模になります。職種や社会的属性が様々な人たちとの関わりの中で、プロジェクトの進め方やコミュニケーション方法を学びました。ここでの失敗や経験が、チーム活動の基盤となっています。また、何よりコミュニティ活動を通して顔見知りが増えるのも楽しかったです。

今までのコミュニティ活動がきっかけで WordCamp Kansai 2016 で2つのプログラムに登壇することになりました。WordPress テーマにおける継続的インテグレーション ( CI ) の話と、GitHub Japan 主催の GitHub Patchwork in WordCamp Kansai でメンターも兼ねてオープンソースとの関わりの話をしました。

feathericon http://feathericon.com

WordPress のコミュニティ活動の他にも、いろいろな方とのつながりがきっかけで Web デザイン、WordPress の書籍を共著で執筆する機会をいただきました。

私個人のプロダクトとして、feathericon ( ベクターアイコンセット ) をオープンソースとして GitHub に公開しました。フリーランス時代は充実した活動ができていたと思います。一方仕事では、だんだんと「このままでいいのかな」という気持ちが芽生えてきました。

今度は、自分から「運命の波」に乗る決意

「このままでいいのかな」と今後について悩み始めた

クライアントワークのいいところは多種多様な案件を経験できることなのですが、一方で自分の手から離れてしまう瞬間がやってきます。楽しかったメディアサイト案件も、納品後は私の手から離れてしまい、どうしてもその場限りとなってしまう受託スタイルにもやもやを感じている自分がいました。もちろん、チームの一員として、またはパートナーとして長くお付き合いできるケースもあります。でも、常にそういう機会に恵まれるとも限りません。

そんな風にモヤモヤし始めていた時、ふと Facebook に目をやると、キッチハイクが資金調達したこと、採用活動を開始したことがタイムラインに流れていました。最後に関わった日から3年が経っていました。

キッチハイクの募集をみて、この「運命の波」に乗ろうと決めた

さらに、なんとキッチハイクがデザイナーの募集もしていることを知りました。「実装もできる Web デザイナー募集」とあったので、今の私なら挑戦できるはず。もうこれは波に乗っかるしかない!と思い、3年ぶりにキッチハイクの藤崎にコンタクトをとり、まずは業務委託契約で再び関わることになりました。

世の中に魅力的なスタートアップはたくさんあるけれど、キッチハイクは、どこか他の会社とは違う!と感じていたので、当時は、キッチハイク以外の募集は目に入りませんでした。宗教的とも言える明確な思想を持った「強い」サービス、そして、知らない人とごはんを食べる、キッチハイクの唯一性が魅力なんです。

キッチハイクは、食という根源的なテーマに対して、答えを出しているサービスです。何を食べるかよりも、どう食べるか。わたしたちは、人間の根源的な行為である食体験そのものをデザインしています。キッチハイクという存在そのものが、社会への問いかけになっていると感じています。

社員になったのは、とてもシンプルな理由

フリーランス時代はリモートワークで仕事をしていたので、毎日オフィスに出社する習慣がありませんでした。当時のワークスタイルに慣れていたこともあり、社員としてコミットする自信がありませんでした。そのため、最初は業務委託からの参画でした。半年ほど毎日オフィスに出社してサービス開発をするうちに、私の中で、社員としてフルコミットしたい思いが溢れてきたのです。

この気持ちの変化には、共同創業者である藤崎と山本のキッチハイクで「絶対に世界を変える!」という狂気とも言える強い信念、誰よりもキッチハイクやそのメンバーのことを考える姿勢が言動や人柄から伝わってきたことが強く影響しています。自分自身が100%以上の力を発揮し成果を出せるために何よりも大事な環境だと思いました。

本当にこの人達と一緒に働きたいと思えたのは、初めての感覚でした。実は、1年ほど勤めた派遣社員の会社は、あまり自分の肌に合わなかったんです。フリーランス時代も基本的には1人で作業をすることが多かったですね。

人は、決断するときに、100%確信して決めることの方が少ないと思います。最後の1%は、「きっと大丈夫」という直感を信じて決断するのです。あるアニメーション作品のセリフを借りて、私はこれを「ゴーストの囁き」と呼んでいます。

私は、この二人となら、そしてこの二人の作ったキッチハイクでなら、フルコミットして、共にキッチハイクを成長させたいと心から思ったのです。

人生初めての上司は「道を示し、照らしてくれる人」

藤崎とは知り合って4年になります。そして、私のはじめての上司でもあります。コワーキングスペースのアルバイト時代や、派遣社員時代でも上司に相当するような方はいらっしゃったのですが、チームのマネージャーとしてメンバーをサポートしたり、物事の最終判断をする立場の人と毎日顔を合わせてコミュニケーションを取るという意味では、私の最初の上司です。

「怪しい人」から「一番尊敬できる人」へ

半年ほど前の話ですが、アプリのリニューアル開発で私がプロジェクトオーナーを担当することになった時のことです。チーム全員が同じ方向を向いて取り組めるよう、要件定義の前段階として、プロジェクトのコンセプトを決める必要がありました。私にとっては初めてのおおがかりなプロジェクトだったので、オーナーとしてどうファシリテートすればいいのか、迷いがあったり、ミーティングでは「今日は失敗したなあ」と感じることも。そんなとき、「ひのたん ( 私がみんなから呼ばれているあだ名 ) が上手く進められるようにサポートをしたい」と話しかけてくれたことがあり、すごく気持ちが救われたことがあります。

(上記写真*) カスタマージャーニーのシート

ユーザーさんがキッチハイクを使うまでのプロセスをチームで整理した「カスタマージャーニー」を、事前に作っていたのでエッセンスはある状態でした。しかし、あと一歩というところで方針となるコンセプトをたてられないでいたのです。

藤崎とカスタマージャーニーを見ながら、リニューアルで大事にすべきことは何か、もう一度整理をしました。キッチハイク体験をユーザーさんに楽しんでもらうためには、予約をしてもらう必要があります。でも、キッチハイクは「知らない人とみんなでごはんを食べる」という今までにないサービス。いかに納得感をもってアプリを使ってもらえるかが大事なのでは?という結論が出ました。ずっと決めたかったコンセプトのキーワードとして「納得感」というワードが出てきたのです。実は、シートの中にもこのキーワードが書いてあります。答えはそこにあったんですよね。

藤崎は、この方針決めに関して、決して私に指示をするということはせずに、重要なところでスッと入ってきて道を示し、照らしてくれるような形で、私が自分自身でアウトプットができるようリードをしてくれました。

藤崎は常に、悩みを共有できる場や、問題があっても「チームの課題」として「一緒に考える」場を作ってくれる人です。否定をせずに、話を聞き、その上で意見を言ってくれる。何よりもチームのことを常に一番に考えてくれている人で、これほど強いチームは他にはないんじゃないかと思うほど誇りに思っています。

チームのマネージャーである藤崎と一緒に働けることは、私にとってとても意味があります。4年前いきなりメールを送ってきた怪しい人から、今は、一番尊敬できる人へと変貌を遂げました。

私が考える「デザイン」

メンバー同士のコラボレーションがデザインの鍵

デザインも、コンテンツも、そしてコードも、ひとつとして独立して存在することはありえません。すべては織物のように織り込まれていて、誰かひとりの力によって作り出されたものではないのです。それはキッチハイクのプロダクトや、サービスにおいても同じことだと考えています。なぜなら、ユーザーさんには「キッチハイク」というサービスはひとつですが、そこに関わっている人はたくさんいるからです。

そして、私の最近の関心事は、キッチハイクチームのメンバーとどうコラボレーションしていくかということにあります。

私が尊敬するデザイナーの1人である、Saul Bass ( ソール・バス ) がこんな言葉を残しています。「思考の密度が高ければ高いほど、デザインの密度も高くなる。」「思考」は目に見えないものですが、デザインを考える上でとても重要なものです。デザインは、そんな「思考」の上に成り立っています。

私が考える「思考」には、ふたつあります。ひとつめはデザイナー自身の思考ですが、もうひとつは、「コミュニケーション」という名の思考もあると考えています。

最近は、まだ何も決まっていない「0 → 1」の段階からプロジェクト関わることもしばしば。日々のミーティングなどのコミュニケーションをリードしていく機会も増えました。


(上記写真*) プロダクトマネジメントトライアングルにキッチハイクチームを当てはめる

エンジニア、マーケティングや CS を担当するグロースチームのメンバー、そして共同代表である山本・藤崎との対話を通して思うのは、「視点」は置かれている状況や立場によって変わるということです。それぞれの専門分野で背負うものや、見ているものは様々。メンバーの一言にはっとさせられることも多く、より俯瞰的に物事を見るスキルや意識の大切さを痛感しています。キッチハイク全体の中長期目標や KPI への意識、そしてコストやスケジュール感覚。実装への理解も欠かせません。キッチハイクのデザイナーが考えなければいけないことはたくさんあります。

アイデアの拡散や収束を繰り返しながら「どうあるべきか」をチームで議論し、要件を固め、設計をしていきます。思考は目に見えないものであるため、言葉にすることではじめて形となり、対話によるインタラクションによって思考は絶えず変化していきます。私の経験上ですが、「本当にいいアイデア」というのは対話によって生まれます。

この一連の流れをリードし、最終的に UI まで落とし込むのが、デザイナーとしての私の本当の役目です。コミュニケーションの密度が高ければ高いほど、デザインの密度も高くなります。

インターフェースを設計するデザイナー自身が、チームメンバーやユーザーをつなぐインターフェースであるということ。インターフェース ( interface ) は「二者間の境界、接点」という意味です。サービス開発や運営は、チーム戦。私自身がインターフェースとなって、メンバーとのコミュニケーションを通して「視線」を合わせながら、キッチハイクの未来に繋がるデザインをしていくこと。

それが、私のキッチハイクでの役目なのです。

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