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2023年7月、木下商会にプランナーとして入社したイイダさん。
今回は入社から1年という節目を記念して、学生インターンによるインタビューを実施しました。
空間デザインの仕事を志すようになったきっかけや学生時代の思い出、さらには「ポルノグラフィティ愛」に至るまで、詳しくお話を伺いました!
プランナー:イイダさん
新卒でリノベーションを得意とする不動産会社に入社し、既存の物件に新しい価値を付与できる楽しさを知る。
地方移住・二拠点居住という言葉を耳にするようになった2021年、「都市部にいながら地方のことを語るのってズルくない? それなら私がやろう」と、憧れのあった広島県尾道市へ単身移住し、地元の建設会社に転職。2023年、暮らし方・働き方を見直すべく帰京。建物を活用しながら働き方を問うため、プランナーとして木下商会に入社。
「空間デザイン」というか、「空間を通して人の生活になにか働きかけること」がしたかった
—まずは「オフィスの空間デザイン」の仕事に携わろうと思ったきっかけを教えていただきたいです。新卒で入社したのは不動産会社だったとお聞きしましたが、その頃から不動産や空間への興味があったのでしょうか。
新卒では大規模な都市開発やスクラップ&ビルド(老朽化した建物を取り壊して、新しく能率的な設備・機能を備えた建物を建て直すこと)への抵抗から、中古マンションのリノベーションを企画開発の段階から行っている不動産会社に入社しました。そこでの仕事を通して、既存の物件の付加価値を高めることや、物件を通じて誰かの人生に気付きを提供できることに魅力を感じたんですよね。
木下商会への入社を決めたのも、建物・物件を通じて働き方を問うたり、入居する会社の転機を盛り上げたりしたいと思ったからです。「空間デザイン」がやりたかったというよりは、「空間」を通して人の生活になにか働きかけたいなという思いがあって。
なので、「不動産のチラシの間取り図を見るのが好きでした」みたいな空間デザイナーっぽい経験は本当に無いんです(笑)
「建物」や「空間」と「人」の繋がりに関心を持った最初のきっかけは高校2年生のとき、東日本大震災でした。
関東在住だったので私の住む地域や通う高校に大きな被害が出ることは無かったものの、中には甚大な被害に遭われた方々がいることにかなりショックを受けました。
そんな中で、高校が名取市(宮城県名取市。津波による大規模な被害により、8団地910戸の仮設住宅が建設された。)にある自治会の町内会長を招いた講演会のような場を設けてくれて。
仮設住宅での生活を余儀なくされた住民が少しでも元気に過ごすために、自分たちがどういった働きかけをしているかを話してくださったんです。話によるとその地区では、避難所生活を終えて仮設住宅での生活が始まったものの、今度はそこに引きこもって外に出て来なくなってしまう高齢者の方が増えてしまったらしくて。
それを案じた町内会長さんが一軒ずつ声をかけて回ったり、外にベンチを出して簡易的な憩いの場を作ったり、あとは子どもたちの出し物的なイベントを企画して、お年寄りが見に来れるように図ったり……、といった活動をされているということを聞きました。
高校2年生の私でもその取り組みの価値やありがたみはよく分かりましたし、仮設住宅という限られた場を活用して、地域住民の生活や関係性を守ろうとしている姿にものすごく感銘を受けたんですよね。
なんというか、未曾有の災害を前にして、当時の自分はすごく参ってたんです。自分が津波だとか土砂崩れだとかに対応できるイメージが全くつかなくて。ただ、ふるさとを守ることや、人と人との関係を守ることなら、自分でもなにか力になれるんじゃないかって思えたんですよね。
大学時代には社会科学部で地方創生を学んだのですが、そういった分野に目が向いたのもこの講演会がきっかけです。
それから、スクラップ&ビルドへの抵抗が生まれたのもこの時期だったと思います。実家の前の大きなお屋敷が取り壊されて、その跡地に4棟の狭小住宅が建ったことがあって。そのときに「景色つまんなくなったな」と思ったんです。もともとのお屋敷が無くなってしまうことへの単純なもったいない精神もあったんですけど、なにより人が住んでいた場所、そこで営まれていた生活、あたりの景色全てが突然失われて、何事もなかったかのようにツヤっとした同じようなものが4つ並んだことが結構嫌だったんですよね。このときになんとなく都市開発やスクラップ&ビルドへの違和感みたいなものが芽生えました。
—空間そのものというより、空間とそこで営まれる生活や、そこで育まれる人間関係への興味や関心が強かったんですね。
そうかもしれない。人の繋がりが根付いている場所に関心があったんだと思います。
それこそ商店街コミュニティみたいなものにも興味があって、学生時代は地元の商店街の一角にあるお団子屋さんの「アルバイト募集」っていう手書きのチラシに惹かれてアルバイトをしていたこともありました。
店番してると「私の顔見て誰かわからないのかしら」って注文に来るお客さんがいたり、定期的に信用金庫とか銀行とかから営業が来たり、駅前に建ったピカピカのマンションの管理組合の人が、マンションで開催する餅つき大会のためのお餅を頼みに来たりしてました。
「信金って地域の経済にけっこう重要なんだな」とか、「あんなツヤツヤのマンションでもマンションコミュニティみたいなものを大事にするんだな」とか思ったのはよく覚えてます。人と人との繋がりを間近で感じられる機会でしたね。
他にも学生時代はよさこいサークルに所属していて、活動の一環で全国行脚もしてました。よさこい発祥の地である高知県は毎年行ってましたし、大阪、神戸、新潟、静岡、あとは海を越えて中国にも行きました。今思えば、人と関わり、まちというものに目を向け、色んな地域を見た学生時代でした。
「好き!かっこいい!」を夢中になって追いかけた学生時代
—「商店街コミュニティが気になって、お団子屋さんでアルバイトを始める」、この熱量の高さ・行動力がイイダさんらしいです。近しいところで「好き!」への情熱も「イイダさんらしさ」のひとつだと思います。例えば「ポルノグラフィティ愛」は社内でも有名ですよね。
たしかに、「好きなものへの熱量」は比較的高いかもしれないです。
ポルノグラフィティとの出会いは小学生のときですね。お兄ちゃんがいる子と仲が良くて、その子経由で当時中学校とか高校で流行ってたポルノグラフィティを聴くようになりました。もともと好きなものにはとことんのめり込むタイプだったので、ライブだけじゃなくてラジオの公開収録とかもよく行ってましたね。
そのあとヴィジュアル系バンドにハマったんですけど、それもポルノの公開収録がきっかけで。
私が行ったイベントにたまたまシドっていうバンドが出ていたんです。で、当時のシドのファンってほんとにすごくて! メンバーのコスプレしてる人とか、めちゃくちゃロリータの人とか、中学生の私からしたらまるで見たことのない世界。
メンバーのこと、その日のイベントのことはなんにも覚えてないんですけど、ファンのお姉さんたちの熱量と完成度の高さに一気に惹き込まれました。 その後すぐにシドがミュージックステーションに出て、「あの時のお姉さんたちの!」てなって追っかけ始めましたね。
ポルノグラフィティとシドの二つは中学生からずっと好きです。あの時期に「好き・かっこいい」にのめり込めたからいまだに冷めないんだと思います。
—バンドそのものより先にファンに魅了されたんですね。 休日はよくライブに行っている印象ですが、リアルで見ることは大事にしていますか?
「好きになったら直接観たい、聴きたい」のタイプです。 ハマった当時からグッズを買うより「リアルで観る・聴く」方が好きだったし、それは今でも変わってないです。
音楽って自分の世界で自分一人で楽しみたい人もいるじゃないですか。私も学生時代は「部屋で一人歌詞カードを繰り返し読む」みたいな時間もたくさん過ごしましたが、「リアルで観る・聴く」ことでの感動は特別なものでした。気になったものはとにかく自分の目で観たいし聴きたいし感じたい。
一方で、ライブに行くたびに「あー楽しかった!明日からも頑張ろ!」だけじゃなくて、彼らと比べて自分はまだまだだなと思って劣等感を抱くのも事実なんです。
—「劣等感」を抱くのは、自分の仕事やその成果と重ねてしまう、比べてしまって、ということですか?
そういうことです。なんというか、「自分が良いと思って世の中に提供したものが誰かに刺さって、価値を感じてもらえる」、果たして自分は、そういう価値のある仕事ができているのかなと。
それこそ「『空間』を通して人の生活になにか働きかけたい」という入社当時の思いも、正直まだまだ実現できていないと思ってます。 この1年は空間デザインという新しい領域に足を踏み入れて、とにかくそこでもがくのに精一杯だったというか……。
もちろんいただいた案件ごとに、空間とそこで過ごす人にどういったアプローチができるかを自分なりに考えてきたつもりです。ただ、まだ「私だからこそできる価値提案」ができている実感があまりなくて。私自身の経験の浅さや、案件の特徴上仕方のないこともあるとは思いつつ、それでも結構しょげることがあります。
これからはもっと、大学で学んだ地方創生だとか、過去に中古マンションのリノベーション事業に携わってた経験だとかを何かしらの形で仕事に繋げて、「私にしかできない価値提案」、「自分が関わる意味があったなと思える仕事」をしていけたらなと思っています。
—ストイックさもイイダさんらしいです。まだまだ現状に満足していないとのことですが、担当する案件がどんどん大きくなっていく中で、どんなところに仕事のやりがいや喜びを感じていますか?
やっぱり自分が描いたものが形になる喜びは大きいですよね。何ものにも代え難い感動だなと思います。
やりがいでいえば「利益の出る仕事をしている」感覚かな。「利益を出す」っていうのは、私が仕事に対する向き合い方として大事にしてるところでもあって。利益のような目に見える成果が好きな性格や、新卒で入った会社が利益で評価する側面が強かったことも少なからず影響しているとは思いますが、仕事をする上でやっぱり利益の持つ価値、インパクトは大きいなって思うんです。
正直、気が付く人がいるかいないかわからないような微細な部分の美しさをどこまでも追求するようなことはあんまりしたくないんです。 デザイン的に優れていることはもちろん重要ですが、予算や機能の面で無理や妥協をしてまでこだわることよりも、しっかりとプロジェクトをおさめて利益を出すことにやりがいを感じます。
進行中の案件に関して言えば、アニメの制作会社さんのオフィス移転に携わらせていただいているんですけど、たまに「私がポルノグラフィティに救われたように、この制作会社さんのつくった作品に救われてる人もいるんだろうな」って思うんです。誰かの心に刺さるような素敵な作品が生み出される過程に、オフィス移転という形で間接的に関われているのは幸せだなと思います。
「都市部にいながら地方のことを語るのってズルくない?」尾道で過ごした贅沢な時間
—イイダさんは木下商会に入社される前に一度、広島県の尾道に移住されてますよね。そのときの話もお聞きしたいです!
2021年頃の「地方移住」や「二拠点居住」という言葉を耳にするようになったタイミングで「都市部にいながら地方のことを語るのってズルくない? 」と考えるようになったんです。だったら私がやってやろう! と、過去に訪れて気に入った尾道への移住を決めました。
移住するために新卒で入った会社を辞めて、尾道の建設会社に就職。プライベートでは交流会に参加して、そこで友達を作って、月に数回はテニスして……、みたいな生活を送ってましたね。
交流会には移住者だけじゃなくて地元の方もいました。facebookの告知を見て、仕事も年齢も性別も異なる、ただ同じ地域に住んでいるだけの人たちが10〜15人くらい集まるんです。
平日の19時ぐらいから2時間、毎回トークテーマを持ち寄って、ただディスカッションするだけみたいな回もあって、それだけ聞いたら「え?」って感じだけど、いい大人が結構盛り上がるんですよね。
「尾道の美味しいご飯屋さん教えてください」みたいな軽めのテーマから、「犬が死んで辛い」とか、「こういう遊具が〇〇公園にできるらしい、それについての市の取り組みをどう思うか」とか、いろんなトークテーマに沿って話しまくるっていう(笑)
会話をすることに面白さを感じる人がいて、それだけで交流が成立するんだみたいな、不思議な時間でした。大人になってからの友達も良いななんて思いましたね、今も尾道に戻ったら遊んでくれるし。
ただ仕事の面では、女性がフロントに立って仕事する機会が極端に少なかったんです。東京でがっつり働いていた身としては物足りなくて。東京で再就職して、たまに尾道に遊びに行けるくらいの生活をしようと思って戻ってきました。
—東京に戻ってきてからの仕事、生活はどうですか。
うーん、充実はしてるけど、仕事と生活のバランスがうまく取れていないなとは思います。自分の体力の限界も分かってきたので、今後はうまく調整しながら納得のいく生活を送りたい。生活が崩れて、体調が崩れて、仕事もうまく進められなくなったら多分、仕事をやり切れなかった自分を許せないので(笑)
結局は心と体の健康が大事だと思うので、取捨選択がうまくなって、仕事も生活も気持ちよく進められるようになりたいなと思います。
それから、せっかくスーパーフレックスでリモートワークができる職場を選んだし、もう少し頻繁に尾道に行けるようにしたいです。最近あんまり行けていないんですけど、できれば月一くらいで行きたい。
東京のせわしない生活も充実していて好きですが、尾道で流れるゆっくりとした時間も大事にしたいんですよね。それこそ「ただ話し合うだけ」、「ただテニスするだけ」の時間ってものすごく贅沢ですよね。
先のことを言えば、さっきの話と重なりますけど、いつか自分も誰かに感動を提供したいです。自分が良いと思って世の中に提供したものが誰かに刺さって、価値を感じてもらえる。自分が関わる意味があったな、そういう風に思える仕事がもっともっとできたらなと思っています。
☆ヤング人生相談☆
せっかくなので、今後の就活・就職に向けて個人的に気になること・聞きたいことを相談させていただきました!(イイダさんらしい回答になんだか救われた……。ありがとうございました。)
—インターン・新入社員にはなにが一番大切・必要だと思いますか?
何かを猛烈に頑張った経験と、挫折した経験、自分で選択したことによって上手くいったりいかなかったりした経験が、働くにあたって必要な脳味噌を作る。 私は社会人になるまで派手な挫折をしてこなかったので、仕事へのスタンスが間違っていることに気づくまで随分かかった。大切なのは、傷つくことや失敗を恐れないことじゃないだろうか。
—大学生活、これだけはやっておけ!/やっておけばよかったということはありますか?
これだけはやっておけってことは無い。その時興味を持ってないのに、大人が言うからってやっても刺さんないよ。
—「いい大人」って……?
知らん。人の幸せな形はそれぞれや。