はじめまして。EC事業者向けの発送代行サービス「STOCKCREW」を運営するKEYCREWで、Operationチームに所属している小林史佳です。千葉の物流センターの自動化プロジェクトでは、取りまとめ役を担当しました。
2026年2月、そのセンターで自動化設備の本格稼働が始まりました。構想から稼働までにかかったのは8カ月弱。同じ規模の設備導入なら、2年以上かかることも珍しくありません。稼働から半年以上がたった今、この「次世代標準物流センター構築プロジェクト」がなぜ始まり、どう進んだのかを振り返ります。
出荷を伸ばしたくても、人が集まらない
導入前の千葉物流センターでは、多い日で1日約1万件の荷物を出荷していました。朝9時から夕方6時まで、商品を集めるピッキングや出荷前の検品などに、毎日平均137名があたっていました。
出荷をさらに増やすには人を増やすしかありませんでしたが、採用にも人の管理にも限界が見えていました。お客様が増えても、出荷件数を伸ばす余地がない。それがSTOCKCREWの成長の足かせになっていたのです。
400人体制か、機械か
転機は、このプロジェクトに共同で参加してくれた、物流施設を手がけるパートナー企業からの提案でした。国の補助金を活用して自動化に取り組んではどうか、というものでした。代表の中村は補助金の活用を前提に、自動化設備への投資を決めました。KEYCREWにとって、これまでで最大の投資です。
千葉の物流センターは4階から6階までを使う前提で借りています。これらのフロアを自動化設備なしで運用すると、当時の平均137名の約3倍、およそ400名が必要になると試算していました。それだけの人を集め、配置を組み続けるのは現実的ではありませんでした。さらに補助金の条件は「2月13日までにすべての設備が稼働していること」。設備は少しずつではなく、一度にすべて動かすことになりました。
動き出してから稼働までの道のり
導入したのは、小さな荷物を緩衝材付きの封筒に詰めるライン、大きめの荷物を箱で送るライン、自動梱包機、そして配送方面ごとに荷物を振り分ける仕分け機などです。あわせて、すでに使っていた商品を運ぶ自動搬送ロボットも、50台から110台に増やしました。
2025年6月に設備メーカーと仕様の検討を始め、7月に発注。秋には資材の仕様決めや電気工事、冬には設備の設置とネットワーク工事を進め、1月下旬に稼働テストを終えて、2月の本稼働を迎えました。
一度は、計画そのものが止まりかけたこともありました。7月の発注の段階で、設備メーカーから製造を辞退したいという申し入れがあったのです。部材の調達に時間がかかり、補助金の期限に間に合わないおそれがあるという理由でした。ほかのメーカーに頼めば、納品まで1年以上かかる見込みでした。代表と営業の責任者が先方と話し合いを重ね、発注の進め方を見直し、ようやく合意にこぎつけました。
並行して社内では、設備とデータをやり取りする制御システムを新たに開発し、大手配送会社2社に対応した共通の送り状も一から設計して、各社の審査を重ねて完成させました。稼働前には、設備の機能や人の配置をOperationチームに説明して課題を洗い出し、現場スタッフ向けには、テストを兼ねた使い方の説明会を1週間開きました。
稼働初日の朝
本稼働の初日。朝いちばんに設備の電源が入り、私は操作マニュアルを手に、正しく起動できているかを何度も見て回りました。注文を数十件ずつに分けて流し、メーカーの担当者と手順を照らし合わせながらの操作でした。
まずは封筒のライン、続いて箱のラインで検品と包装を始め、自動梱包機での箱詰めと送り状の貼り付け、仕分け機での方面別の振り分けまでを、一つずつ見届けていきました。最初の荷物が仕上がったときは、社員全員で囲み、出来栄えを確かめました。ただ、正直に言えば、感慨に浸れたのはそのときだけ。そのあとは手順や人の配置、機械のデータのチェックに追われ、気の休まらない一日で終わりました。
動かしてみて、初めて分かったこと
最初の1カ月は、設備の力を実感するより、慣れない作業に戸惑う時間のほうが長かったというのが正直なところです。
たとえば、機械での検品と手作業での検品の切り替えです。同じ荷物を二重に出荷しないための制御が、手作業に切り替えたい場面では手間になり、操作できる人も限られていたため、出荷の遅れにつながりました。これはシステムを改修し、機械と手作業を簡単に行き来できるようにして解消しました。
仕分け機は、出荷する荷物を方面ごとに振り分ける作業では問題なく使えています。一方、入荷した商品の仕分けにも使う計画でしたが、機械の仕様が実際の運用に合わず、現在も活用できていません。ほかにも、包装の熱でQRコードが読めなくなる、段ボールとの相性で包装に失敗するといった問題が出て、温度や資材を見直しながら一つずつ改善してきました。
半年たって変わった働き方
自動化で人の仕事がなくなったわけではありません。設備の資材交換やメンテナンスといった新しい役割が生まれました。機械を止めずに能力を出し切るための進捗管理や、自動搬送ロボットに出荷の指示をどれだけ、どのタイミングで出すかといった判断も、新たに求められるスキルです。
うれしい誤算は、設備ごとに扱いが得意な人がはっきり分かれたことでした。「この人、この機械を動かすのがうまいな」という発見が、人の配置を考える新しい手がかりになっています。
計画時に立てた処理能力の目標と、ピーク時の1時間あたりの処理件数を比べると、結果は設備によって分かれています。小さな荷物を封筒に詰めるラインは計画1,000件に対して1,300件、袋で包む自動包装機は計画288件に対して約310件と、目標を上回っています。一方、箱のラインは小さい箱用が約650件(計画750件)、大きい箱用が約200件(計画480件)、小物の仕分け機は約2,500件(計画約3,800件)で、まだ計画に届いていません。どの工程で能力を出し切れていないのかを見極めながら、運用や人の配置の調整を続けています。
短期間で走り切れた理由と、次への宿題
8カ月弱で稼働まで持っていけた理由は、大きく2つあると考えています。ひとつは意思決定の速さです。補助金の期限という動かせない条件もあり、設備の選定も仕様の確定も、その場で決めていきました。もうひとつは、システムを自分たちでつくっていることです。開発もメーカーとの調整も、間に別の会社を挟まず直接進められました。
一方で、その速さの裏側にある課題も見えました。仕分け機がうまく使えなかった背景には、仕様を詰める段階でOperationチームが検討に加われず、機械の機能を知る機会もなかったことがありました。使う人の目線で意見を出せないまま、納期を優先して基本機能のまま受け入れるしかありませんでした。次に同じ規模のことに取り組むなら、実際に使う人を早い段階から巻き込む。それが、このプロジェクトから得たいちばんの学びです。
次の改善を一緒に考えたい人へ
何でも最新の機械に置き換えるのでも、他社のやり方をそのまままねるのでもなく、どこを機械に任せ、どこを人が担うのかを適材適所で考える。初期投資がかかっても、日々の運用コストをどう減らすかを長い目で考える。そして、実際に使う人の声を聞きながら、仕組みを少しずつ良くしていく。今回の経験を通じて、私たちはその大切さを改めて実感しました。そんな改善を一緒に進めていける方と働けたらうれしいです。
このプロジェクトには、ここでは書ききれなかった話がまだたくさんあります。大きな投資を前に経営陣がどう腹をくくったのか。資金をどのように集めたのか。初めて機械に触れた現場スタッフは、何を感じたのか。いつか、それぞれの当事者の言葉でお伝えできればと思っています。