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薬剤師よ、街へ出よう! 薬局の外で見つける薬剤師の可能性

薬局・薬剤師のコミュニティ「MusuViva!」で2ヶ月に1度開催されるオンライントークライブ「Viva! Cast 調剤室の小窓から」

2022年8月に開催された第3回では、前回から引き続き参加の会喜地域薬局グループの岡本さんに加えて、福岡県北九州市の「みんなの薬局」から詫間さんが登場。薬局の中だけに留まらない薬剤師の働き方について、熱い議論がなされました。

患者さんの自宅や小中学校へ足を運び医療や薬の知識を伝える場を設けている詫間さんと、薬局に図書館を併設し地域交流の場へしようとしている岡本さん。お二人が目指す、新しい薬剤師像とは?

<スピーカー>
会喜地域薬局グループ 管理薬剤師・グループリーダー 岡本直也さん
みんなの薬局NPO法人 地域医療連繋団体.Needs 薬剤師 詫間勇輔さん

<モデレーター>
株式会社メタルファーマシー 代表取締役 川野義光さん

目次

  1. 薬局の枠にとらわれない薬剤師たち
  2. “重症化”を防ぐために、薬剤師には何ができるのか
  3. デジタルを取り入れて、アナログの時間を増やしたい
  4. 薬剤師は、薬局の中だけに留まらなくてもいい?
  5. 子どもたちと接して気づいた薬剤師の可能性

薬局の枠にとらわれない薬剤師たち

川野:みなさん、こんばんは! ファシリテーターを担当するメタルファーマシーの川野と申します。本日対談していただくお二人をご紹介します。まずは「ナッツ食い憎」こと、会喜地域薬局グループの岡本直也さん。

岡本:あだ名のくだり、まだ続いてたんですね(笑)。

川野:気に入っているので、継続したいと思います(笑)。自己紹介をお願いします。

岡本:福島県会津若松市の会喜地域薬局グループが運営する「ひのき薬局」の薬剤師・岡本です。

川野:そして今回岡本さんが対談相手に指名したのは、この方です。

詫間:福岡県北九州市にある「みんなの薬局」の薬剤師・詫間です。開業してまだ半年ほどしか経っていないのですが、在宅を中心に外来の処方箋対応や零売などを通じて、地域に深く関わっていける薬局を目指しています。ご指名いただきありがとうございます。

川野:詫間さんのあだ名は「ディズニーワールド3周目」です(笑)!

詫間:え! 実は2週間前に家族でディズニーに行ったんですよ(笑)。なんで知ってるんですか?

川野:あだ名の由来については、次回説明させてください(笑)。では早速、岡本さんが詫間さんと話したいテーマを教えてください。

岡本:「薬局の枠にとらわれない新しいチャレンジ」です。前回もお話したのですが、私は今薬局に図書館を併設しようと思っていて。同じように新しいチャレンジをしている人と話をしたくて、詫間さんを指名しました。

詫間:ありがとうございます。先ほどお伝えしたようにできたばかりの薬局ですが、準備段階から自分のやりたいことを詰め込んで計画してきたので、今は非常に充実した毎日を過ごしています。ぜひ色々お話させてください。

“重症化”を防ぐために、薬剤師には何ができるのか

川野:詫間さんの具体的な取り組みについて教えていただけますか?

詫間:テーマは「薬や医療に関する知識を正しく伝えていくこと」です。たとえば高齢者の方たちに薬の正しい使い方や病院での受診の仕方を伝えたり、小中学校へ足を運び「救急車を適切に利用するためのポイント」などを教えたり。

私が所属しているNPOが医療×教育の分野に注力しているため、医療の知識を身につける機会を通じて、医療全体の最適化を実現したいと思っています。薬局に隣接している診療所の医師が私の学生時代からの友人なので、彼をはじめとする医療従事者たちと連携をとりながら地域の課題と向き合っています。

岡本:素晴らしいですね。NPOのWebサイトで代表の伊東さんのメッセージを拝見していたのですが、興味深かったのがアプローチするターゲットです。先ほど小中学校での取り組みの話もありましたが、「高齢者だけではなく病気になる前の人たちにもアプローチしたい」という話がありました。すごく本質的な部分ですよね。

詫間:「川の流れ」を疾病の推移に例えて考えてみましょうか。上流から下流にかけて病気が悪化していくとしたら、もし川に落ちてしまったら早いうちに救うことができれば負担は少ないですよね。しかし、今の日本の医療システムでは、難しい。ちょっとずつ流されながら、いつの間にか大きい病気になってしまうことは多くあります。

だったら、これからの薬局は軽症のうちに助け出す方法を考えるべきです。具体的にはドラッグストアでのOTC(Over The Counter)医薬品販売や零売などが該当するのではないでしょうか。

川野:その部分に着目したきっかけは?

詫間:医療費の高騰です。学生時代から「このまま医療費が高騰していくと、いつか日本の医療全体が破綻してしまう。そうならないためにも軽症のうちに救い出すことが大事だ」と考えていました。結果、薬剤師として処方箋の取り扱いもしつつ、未病の方へのアプローチをするため、前職ではドラッグストア併設の調剤部門で働いていました。

川野:なぜ、零売に関心を?

詫間:ドラッグストアの取り扱うOTC医薬品に、薬剤師の限界を感じたからです。2類、3類まで含めれば確かにバリエーションは豊富ですが、医療用の効果が期待できる医薬品をおすすめできないことがもどかしかった。

その後色々調べた結果、零売という仕組みを知りました。医師の了承が得られていることが大前提ではありますが、零売によって扱える医薬品のバリエーションが広がることを知ったことが最初のステップです。

岡本:零売を導入して変化はありましたか?

詫間:先日ヒアレイン点眼液を零売しました。少しずつですが、認知は広がってきている感覚はあります。ただ、1日に1件きたら「お!」と感じる程度ですので、母数としてはまだまだこれからですね。

いずれにしても、隣接する診療所の医師の存在は大きいです。導入以前より「零売を希望する患者さんが来局されて、もし『ちょっと零売で対応するのは違うかも?』と感じたらすぐに連絡してほしい」と提案してもらっていて。「零売として対応していいか、医師への受診勧奨か」を臨床のプロである医師と相談できるのは非常に心強いです。

川野:なかなかないスタイルですよね。岡本さん、すごいことですよね?

岡本:さらっとお話されていますが、すごいことですよ。私たちも先日近隣の医療機関で働く医師たちと糖尿病用医薬品の減薬基準についてすり合わせたところ、実際の患者さんへの提案がすごくスムーズになったことを思い出しました。改めて、薬剤師の職能を広げていく上で、医師と打ち合わせできる環境づくりは大切ですね。

詫間:すごく助かっていますよ。通常の処方箋でも変更があった場合、「血圧がちょっと低いので、オルメサルタンを20mgから10mgに」と理由をコメントで残してくれるので。薬剤師としては非常にありがたいです。

デジタルを取り入れて、アナログの時間を増やしたい

岡本:詫間さんといえばITツールも多く活用されている印象を受けます。そのあたりもぜひ詳しく教えてください。

詫間:私がもともとデジタル機器が好きなこともあって、薬剤師が本来の業務に専念できるような仕組みを色々と導入しています。

たとえば自動レジで会計は薬剤師がタッチせずとも患者さんご自身でできるようにしたり、処方箋の入力もスキャナで自動化したり。

ポイントは「テクノロジーによって服薬指導の時間をどれだけ生み出せるか」。処方箋入力を担当するスタッフが別にいるのであれば問題ないと思いますが、薬剤師が入力しているのであれば患者さんとのコミュニケーションに使うべきですよね。

岡本:コミュニケーションといえば、みんなの薬局は全て個室ですよね。Webサイトを見て気になっていたんですよ。

詫間:感染症対策の狙いもありますが、メインはプライバシー性の高い内容でも話してもらうことでより踏み込んだ服薬指導をするためです。カウンターだと隣の方に聞こえてしまうため、話すことを躊躇してしまっている患者さんを何人も見てきたので。患者さんが喋りやすければ、薬剤師にはより多くの情報が集まるため、監査の質向上にもつながりますし。

川野:セルフレジについても教えてください。

詫間:レセプトコンピュータに入れた会計情報が自動転送される仕組みです。患者さんは発行された二次元QRコードをリーダーにかざし、表示された金額を支払います。現金やカード、QR決済などどんな支払い方法にも対応できるようにしています。

岡本:素朴な疑問なのですが、そういうツールはどこで見つけるんですか?

詫間:ひたすらググりました(笑)。開業までの1年間は、自分の理想を実現するための方法をひたすらリサーチしました。GoogleだけではなくTwitterなどSNSでも調べましたね。結果、やりたいことを全部詰め込んだらすごいことになっちゃいましたけど(笑)。

岡本:ビジョンみたいなものがあったということですよね。

詫間:そうですね。前職で「もっとこうした方がいいんじゃないか」と感じたことを全て詰め込みました。

岡本:詫間さんのように明確なビジョンを持てない薬剤師もいると思うんですよね。詫間さんはなぜビジョンを持てるようになったと思いますか?

詫間:仲間の存在は大きいですね。「気心の知れた仲間と一緒に開業する」ことは大きな原動力になっていました。友人の医師と医療に向き合えることが楽しみで仕方なかった。

川野:さまざまなITツールを駆使されていますが、根幹にある想いは“人”なんですね。

詫間:間違いないですね。ITを導入する目的は「デジタルを取り入れることでアナログの時間を増やすため」ですから。

岡本:なるほど……すごく素敵な言葉ですね!

詫間:矛盾して聞こえるかもしれませんが、薬剤師の仕事はアナログじゃないですか。結局は、人と人とのコミュニケーションですから。2020年にはアメリカで「Amazon薬局」がスタートしましたが、薬剤師の仕事はアナログなので、まだまだ私たち地域の薬局に勝ち目はあるはず。当然頑張らなければいけませんが、完全に覆されることはないと思います。

岡本:確かに、仕事をしていて一番気持ちが熱くなるのは患者さんとコミュニケーションしている瞬間ですからね。弊社も先代社長の頃から薬剤師の人間性を重視している薬局なので、詫間さんの話にはリンクする点がたくさんあって勝手に嬉しくなっています。

詫間:それはよかったです。いくら薬の知識が豊富で高度な服薬指導ができる薬剤師でも、関係性がなければ患者さんには響きませんからね。ITツール導入による効率化も、患者さんとの関係性を構築するための時間の捻出が目的です。

岡本:結局、効率化は手段に過ぎないんですよね。私たちも色々とITツールは導入していますが、「『おらが町』を支える薬局」というミッションを実現するためです。

薬剤師は、薬局の中だけに留まらなくてもいい?

川野:岡本さんは薬局に図書館を併設しようとしていますよね。図書館併設の狙いについて教えてください。

岡本:処方箋がなくても入りたくなる場所にしたいから」ですね。薬局をもっと日常に溶け込ませたい。世間話感覚で薬の相談ができてもいいと思うんですよね。薬局に来た地域の方たちがフラットにつながれる場所にしたいと考えています。

詫間:いいですね。薬剤師が身近にいることの価値を知ってもらいたいですよね。薬局にいる薬剤師は相談料がかからないので、どんどん頼っていただきたい。時代に逆行した表現に感じるかもしれませんが、昔ながらの町薬局のような存在になれたら、まだまだできることは増えそうです。

岡本:すごくわかります。カウンター越しに話すのではなく、もっとフラットにやり取りできるような空間が今の地域には必要ですよね。

詫間:薬局の中だけに留まる必要もありませんよね。実は、隣の診療所と「屋台のように活動していきたい」と話して「モバイル屋台プロジェクト」をスタートしました。地域医療の質向上に貢献していくために看護師さんたちと街中を巡って健康相談を通じてあらゆる悩みを吸い上げていく活動です。看護師目線に薬剤師目線も加えて、地域の医療に向き合っていきたいと考えています。

岡本:詫間さんたちは「外に出ていく」という思いが強いですよね。薬局の外で活躍する薬剤師のロールモデルという印象すら受けます。

詫間:たとえば、外来の患者さんが在宅に移行したとき、薬局と自宅で見せる表情が全く違うんですよね。自宅の方がリラックスして本音で話してくれているように感じて、「あ、在宅、可能性あるかも」と感じました。

岡本:確かに全然違いますよね。自宅へ行くと、新たな発見があります。ちなみに、在宅で便利なITツールはありますか?

詫間:Musubiは本当に役立っています。やはり、出先で薬歴を見れることはとても便利です。

岡本:一応お聞きしますが、忖度しているわけではないんですよね(笑)?

詫間:もちろんです! あと、ITツールとは少し毛色の違う話ですが、在宅の支払いについては結局銀行口座の引き落としが間違いないですね。クレジットカード決済ができる端末も使用することはありますが、高齢の方が多いので、使用率はそこまで高くないです。

岡本:確かに、引き落としは最強です。

子どもたちと接して気づいた薬剤師の可能性

岡本:最後にお聞きしたいのが、子どもへの教育についてです。

薬剤師の仕事を「同じことの繰り返しでつまらなさそう」と感じている人も少なくないと思っていて。でも、詫間さんたちの活動を聞くと、魅力的な存在に見えるような気がしています。

先ほど「小中学校へ足を運ぶ」というお話がありましたが、子どもたちにはどのようなアプローチをしているのでしょうか?

詫間:正直、手探りです。ただ、まだまだ可能性はあると思っています。

2017年に沖縄の中高一貫校へ行って授業したときのことです。中学3年生を相手に「フェロミア顆粒をお茶で飲んだらダメですよ」という実験形式の授業をやりました。

「薬は水で飲んでね」という話をするために、フェロミア顆粒をお茶で溶かすと黒く濁るところを見せたところ、すごく目を輝かせてくれた生徒がいて。「薬剤師さん=理科が得意な人ぐらいの印象しかなかったのですが、本当にいろいろ知ってるんですね」と声をかけてくれたことがありました。

当時は私自身も「薬剤師の仕事って面白くないのかも」とくすぶっていた時期だったのですが、ハッとしましたね。「あ。薬剤師の知識を、地域の方々に還元できるかも」と。今は薬剤師の可能性を広げるために活動しています。

岡本:授業しに行ったはずなのに、逆に教えてもらったわけですね。やはり外に出て行くことには意味がありますね。

詫間:そうですね。外の世界に飛び出すことは勇気がいることかもしれませんが、すごく面白いです。たとえば薬物乱用の授業なども薬剤師が実施すると重みが違いますからね。

川野:詫間さんが所属するNPO代表の伊東さんからコメントが届いています。「『休日の部活動を地域に移行する話』と今後の薬局役割について話してください」とのことです。詫間さん、これは?

詫間:「薬剤師が部活動の後方支援を担うことができるのではないか」という話です。今は学校の先生が土日に部活動の練習に付き合っており、休みのない勤務状態が問題視されていますよね。文部科学省が中心となって学校の先生の労働状態の見直しが進められているのですが、その中で「土日の部活動を地域に移行させる」という案が出ています。野球部であれば、地域にある野球のプロチームやアマチュアチームの選手に指導をお願いする案です。

もちろん薬剤師が何かしらの競技を指導することは難しいですが、健康増進や体調管理をテーマにセミナーを開催することはできる。活動を通じて学校との関わりができれば、平日の授業などもしやすくなるはずです。

2025年までに厚生労働省が地域包括ケアシステムを実現しようとしていますよね。システム実現のために市町村に設置されている地域包括ケアセンターの規模は、中学校の学区とほぼ同じです。ここからは完全に妄想ですが、今後国が中学校の学区単位で整備していくとなると、薬剤師が中学校と接点をつくっておくことは意味があると思うんですよね。

岡本:うんうん、非常に納得です。

詫間:できるかどうかは別ですけど、地域に飛び込むチャンスは増えてくるはずなので、学校側に電話でアプローチしてもいいかもしれませんね。

川野:とても素敵な妄想です。でも、妄想がなければ、実現はできませんので。これからも引き続き妄想していただきつつ、薬剤師の可能性を追求してほしいと思います。ということで、このあたりでお時間です。今日はありがとうございました!

岡本&詫間:ありがとうございました!

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