30代の頃、シャープで電子書籍配信サービスの開発に携わっていた松山哲也。40歳を迎え「一度の仕事人生、せっかくなら好きなことをやりたい」とベンチャーの世界に飛び込みました。そして2016年、彼はカケハシを選んだのです。エンジニアとしてはベテランの域。このタイミングで、なぜ松山はカケハシを選んだのでしょうか。心の内に秘めた想いに迫ります。
<プロフィール>
株式会社シャープで、電子書籍配信サービスの開発に携わる。2015年、一念発起し退職。株式会社サイカへ入社し、広告効果分析ツールの開発を担う。2016年、株式会社カケハシへ。主力サービスである薬局体験アシスタント「Musubi」の開発をテックリードとして担当する。
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エンジニアとして、世の中を少しでもよくしたい
—— まず、カケハシに入社するまでの経歴を詳しく教えてください。 すごく思い切ったチャレンジをしている印象を受けるのですが……。
確かに当時のシャープは安定していましたからね(笑)。
ただ、30代後半ぐらいに業績が急降下して。「大企業=安定」の時代ではなくなってきていることを痛感しました。もともとベンチャーで働きたい気持ちがあり、自分なりにエンジニアリングを学んできていたので、思い切って退職。ベンチャーの世界へ飛び込む決断をしました。
その後、入社したのは広告効果分析ツールの開発を手がけるサイカです。とくにサイカは当時CTO(現・カケハシCTO)の海老原の印象が強くて。なんというか……一人の人間としての信念を感じられたんですよね。「どんなことがあっても、気分が良くても悪くても、同じ質問には同じ回答をします」というような、そこまで自分の軸を保てる人ってなかなかいないじゃないですか。完全に個人の好き嫌いの問題ですが、僕はそういう人がすごく好きなんですよね。「この人と働きたい」と思い、入社しました。
ところが、僕がサイカへ入社して半年後に海老原が辞めちゃったんです(笑)。僕は僕で任されていたプロダクトのリリースを半年後に控えていたので、それだけはやり遂げた上で、改めて自分のキャリアを考えることに。
「自分が生まれたことで少しでも世の中がよくなったら嬉しいなぁ」なんてことを考えていてたら、海老原が声をかけてくれて。それがカケハシでした。医療や教育の領域には関心がありましたし、海老原ともまた一緒に働ける。入社に関して、ほとんど迷いはなかったですね。
—— とはいえ、2016年といえばカケハシは創業したばかり。不安はなかったんですか?
なかったですね。自分は割と少人数の組織が向いているんですよ。
自分がオールラウンダー的に領域を横断してカバーできるタイプのエンジニアだからだと思います。それぞれ各領域の専門家には及ばないのですが、それこそCSSのデザイン崩れからデータベースのチューニングまで平均点以上はとれる自信もある。だから、小さい組織であれこれやっているほうが性に合っているんです。大きい組織だと細分化されて、自分の強みを発揮できないので。
—— そのスタイルはどのように身につけたんですか?
まぁ、好奇心ですね。エンジニアとしてつくることも好きだけど、初めてのロジックを理解する瞬間がすごく好きなんですよ。仕事しているといろいろな問題に直面するじゃないですか。「どうしてこんなことになったんだ?」と調べているうちに、エンジニアとしての守備範囲が広がっていきました。
「日本の医療を変えたい」という想いから生まれた夢のプロダクト
—— 入社当初「Musubi」はどういうフェーズだったのでしょう?
入社段階でコードは1行もなかったと思います。プロダクトの構想だけがあって、「これからつくるぞ」というフェーズでした。正直なところ、僕自身もあまりイメージできてはいませんでした。薬局の業務に関する知識もありませんでしたし。ただ、経営陣3人が口を揃えて「日本の医療を変えたい」と言っていて、「彼らと一緒に同じ夢を見たい」と思ったのを覚えています。
—— その後「Musubi」との向き合い方は変化していきましたか?
もちろんです。最初は人数も少ないし、関与も大きい。バグがあったら大抵自分の責任でした。だから、自分の子どもと言ったらおかしいかもしれないけれど、関わるようになって一気に愛着が生まれましたね。
ただ、リソースが圧倒的に足りなかったので、チーム化することを自分のファーストミッションにし、優先順位を決めていました。いま目の前にある全てのバグを自分で解決するよりも、いち早く優秀な方を迎えて、恒常的にバグの発生が抑えられるようなチームを作ることのほうが重要だと。結果として、その後の資金調達につながったときは、最低限の義務が果たせたことに安心したのを覚えています。
—— そこから徐々に「Musubi」のユーザー数が増えていきました。そのときはどんな気持ちでしたか?
それは、嬉しいですよ。基本、プロダクトは使われてナンボ。いくらきれいなコードで負債がなくても、使われていなかったらプロダクトとしての価値はないと思いますしね。だから「Musubi」が使われてユーザーの数が増えていくのは、エンジニア冥利に尽きる思いです。
—— 開発段階で、海老原さんとはどういったコミュニケーションがあったんですか?
「頑張ってくれていますね」と、基本的に信頼して任せてもらっていたように思います。ただ、「若干最後のツメが甘いですね」と。僕は「抜ける手は抜く」という信条なので、「あ、バレてる」と思った記憶があります(笑)。
もしかしたらエンジニアらしくない部分かもしれないのですが、どちらかというと常に全体やユーザーを見ておきたいんですよね。エンジニアとしてのこだわりよりも、とにかくユーザーを優先したい。チームが増えて、いろいろな案件が同時並行で流れていくとひとつの部分をじっくりときれいに仕上げることはできませんから。そのこだわりのなさが海老原に「ツメが甘い」と言われるところなんだと思います。ポジティブに解釈すれば「もっとできるでしょ」ということかもしれませんが(笑)。
いつか自分の人生を振り返ったときに、胸を張れる仕事を
—— 創業期から在籍している松山さんだからこそ感じるカケハシの魅力を教えてください。
そうですね……繰り返しになりますが、「本気で医療を変えたい」と思っているメンバーがいることだと思います。単にお金儲けのためだけじゃなくて、医療の世界を少しでも変えていきたいから知恵を出し合ってプロダクトと向き合っている人たちがたくさんいる場所、それがカケハシです。いまでも「カケハシっていいな」と思えるほど。同じ志の仲間がたくさんいるのは、本当に心強いですね。
—— カケハシで活躍できる人材の共通項があるとしたら何でしょう?
まずは自分から動けること。指示待ちではなく、自分で考えて行動できるひとですね。リモートの時代だからこそ、自己管理できることはすごく大切だと思います。
もうひとつは、周囲からの指摘を素直に受け止めて、感謝できるひと。自己防衛感が低いというか。普通に謝ることができ、指摘してくれた相手に正しく感謝できる。当たり前のことが当たり前にできるということが大切だと思います。
—— 医療領域のエンジニアならではの喜びや達成感とは?
大きく分けて2つあります。1つはユーザーからの反応です。「使いやすい」「『Musubi』によって薬剤師さんと患者さんにコミュニケーションが生まれた」「患者さんが健康を意識するようになった」といった声を聞くことができるのはすごく嬉しいですね。今、多くの薬剤師さんが、医者と患者さんの間で大変な毎日を送っています。そんな薬剤師さんたちの業務効率化に貢献できるのなら、「Musubi」をつくった甲斐があるというものです。僕自身、子どもの頃は体が弱く、病院や薬局のお世話になることが多かったので、医療業界に恩返ししたい思いは強いです。
もう1つは、他のBtoCのプロダクトと比較して、セキュリティや法制度に関して求められるレベルが高いことです。言葉を選ばずにいうと古い業界ならではのしがらみのようなものもありますが、だからこそハックしていくおもしろさもあるんですよね。制約の多い環境下で、いかに新しい技術を取り入れていくか。そのあたりはすごくワクワクするポイントです。
—— では最後に、どういう方と一緒に働きたいと思っているのかを教えてください。
やはり「これからの社会に貢献したい」という気持ちのある方にお越しいただきたいですね。医療費の問題は、日本が抱えるさまざまな課題の本丸のような気がしていて。そこに何かしら貢献できるということは、自分の人生を振り返ったときに胸を張れることだと思うんですよね。僕自身、若い頃は「社会貢献」と言われてもピンとこなかった。でも家族ができ子を持つ親となって、いま改めて考えてみると、次の世代に影響を与えうる仕事に携わるというのはやっぱり嬉しいことだと思います。
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