ナマステ!iTipsの小西です。
前回の記事では、日本で働く第1期生たちに向けて、基礎を固めながら現場で役立つ日本語教育の取り組みをご紹介しました。(まだ読んでない方はぜひ!舞台はインドから日本へ──現場で活きる日本語を育てるiTipsの教育現場)
来日から1年。iTips訓練校の卒業生たちは、日本での生活や仕事にも慣れ、それぞれの現場で戦力として活躍しています。
そんな彼らが次に見据えるのが、その先のキャリアです。特定技能1号で経験を積んだ先には、例えば次のような道があります。
一つは、特定技能2号へステップアップし、日本でさらに長く活躍していくこと。
もう一つは、日本で培った技術や経験を持ち帰り、母国インドで新たなキャリアを築くこと。
どちらも本人にとって価値ある選択であり、私たちはその意思を尊重しています。
卒業生からは、「日本で長く働き、安定した生活・収入を得たい」という声も少しずつ増えてきました。また、卒業生を受け入れてくださっている企業の皆さまからも、「ぜひ特定技能2号を取得し、長く働いてほしい」という期待の声が寄せられています。
そこで2026年7月から、新たに「特定技能2号評価試験対策講座」をスタートしました。
今回も前回に引き続き、日本語教育を担当する福井さんに、その取り組みについて話を聞きました。
卒業生の次の挑戦を支える、特定技能2号評価試験対策講座
小西:
7月から「特定技能2号評価試験対策講座」が始まりました。まずは概要を教えてください。
福井:
授業は週2回、1回90分。約3か月の対策講座で試験合格を目指します。
授業に参加している生徒たちの姿勢は、真面目で授業態度もとても良いです。日本の現場での一年間の経験もあるため、理解が早いと感じることもあります。特定技能2号に向けて積極的にトライする姿勢を感じます。
特に、今回講座に参加している卒業生が所属する企業は、日本語学習や人材育成への意識が高く、企業の思いとiTipsの教育方針が一致しています。
企業が学びを後押しすることで、本人の成長意欲も高まり、特定技能2号への挑戦や、その先のキャリア形成につながっていると感じています。
小西:
特定技能2号として働くには、どのような知識や役割が求められるのでしょうか。
福井:
建設分野の特定技能2号評価試験(以下、2号試験)では、単に現場での作業内容を理解しているだけではなく、複数の作業員をまとめ、現場を管理する「職長」として必要な知識が身についているかが問われます。監督・指導する立場として理解しておくべき現場管理や安全管理、図面の理解など、より高度な知識が求められます。
日本語能力そのものを測る試験ではありませんが、試験問題やテキストの内容を正確に理解するためには、日常会話に加え、専門用語や複雑な文章を読み取る日本語力(JLPT N2程度)が必要になります。
なお、建設分野で在留資格「特定技能2号」を取得するには、試験合格に加え、班長としての所定の実務経験などの要件を満たす必要があります。この講座では、そのステップの一つである試験合格に向けた学習を支援しています。
福井さんに聞く、合格に向けた授業づくりのこだわりとは
小西:
授業づくりで特にこだわっていることはありますか。
福井:
受講生が仕事と学習を両立しながら、短期間で2号試験の合格を目指せるよう支援しています。 そのために意識していることは主に2つです。
・試験を徹底的に分析し、合格につながる質の高い教材を提供すること。
・試験合格に必要な日本語のスキルを効率よく身につけられるよう支援すること。
カリキュラムを作成するにあたり、まずは、建設分野の特定技能評価試験を実施しているJAC(一般社団法人 建設技能人材機構)が公表しているサンプル問題を徹底的に分析しています。
2号試験の出題範囲は、合計約300ページにわたるテキストです。職長の立場を前提に現場で必要とされる知識が幅広く扱われているため、重要なポイントを整理しながら学習を進めることが大切です。
そこで、サンプル問題を一問ずつ分析し、どのようなテーマや知識が繰り返し問われているのかを整理したうえで、授業に反映しています。限られた学習時間の中で、受講生が効率よく合格に必要な力を身につけられるよう、学習すべきポイントに優先順位をつけることを意識しています。
同時に、教材や指導方法の標準化にも取り組んでいます。担当する講師によって教え方や指導の質にばらつきが出ないよう、誰が担当しても一定の質を保って指導できる仕組みをつくり、講座全体として安定した学習環境を提供できるようにしたいと考えています。
試験合格を目指すことはもちろんですが、その先にある日本の建設業を担っていく人材を育てることも、私たちが大切にしている目的の一つです。
そのため、日本の建設現場を担う人材として、どのような知識を身につけてほしいのかという視点も大切にしながら、カリキュラムや指導内容を考えています。
試験に必要な知識を身につけるだけでなく、実際の現場でしっかりと活躍できる人材へと成長してもらえるよう、指導していくことを心がけています。
小西:
もう一つのテーマである「必要な日本語のスキルの習得」についてはどのようなことをされているのでしょうか。
福井:
先ほどお伝えしたように、2号試験の合格には、JLPTのN2レベルに相当する、特定技能1号取得時よりもさらに高い日本語力が求められます。
一般的な試験勉強では、知識や解き方を身につけることが中心になりますが、当試験の場合は、ベースとなる日本語力が、テキストの内容理解や専門用語の暗記など、試験勉強全体の効率に大きく影響します。
そのため、先述した分析などを踏まえ、テキストやサンプル問題によく登場する語彙や文法表現を抽出したうえで、内容を正確に理解するために必要な日本語の知識を効率よく身につけてもらえるようにしています。
その際、特に大切にしているのが、一人ひとりの理解度に寄り添いながら学習を進めることです。専門的な内容を理解してもらうだけでなく、漢字の意味や、分かりにくい言い回しについても、できるだけシンプルにかみ砕いて説明するようにしています。
また、受講者は来日してから一年間、我々の日本語クラスを受講しています(前回の記事参照)。そのクラスでも、2号試験対策として重要な語彙や文法項目を取り入れ、対策講座受講前から段階的に学習を積み上げていける体制を、現在少しずつ整えています。
現在は、日本で働くiTips卒業生を対象とした講座が中心ですが、今後は卒業生以外にも対象を広げていきたいと考えており、さらに将来的には、特定技能1号で来日を目指す訓練校の在校生が、来日前から2号試験を見据えた学習をスタートできる体制も作っていきたいと考えています。
来日後に2号試験対策を始めるのではなく、より早い段階から必要な日本語力や専門知識を少しずつ積み上げていくことで、2号試験合格への道筋をより明確にしていければと考えています。
来日前の「特定技能2号評価試験対策」というビッグチャレンジへ!
小西:
インドにいる段階から、つまり来日前から特定技能2号試験対策を支援する取り組みは、おそらく業界でも初めての大きな挑戦ではないでしょうか。
訓練校で集中的に学ぶ期間を活かし、彼らが早い段階から日本語力や専門知識を積み重ねることで、生徒たちが将来の選択肢を広げ、自分の望むキャリアに向かって歩んでいけるよう支えたいと考えています。その一人ひとりの成長が、結果として、受け入れてくださる企業の力にもつながっていくのだと思います。
私たちは、遠い日本へ、人生を懸けて来日する仲間たちをずっと見てきました。
oyakataスキルトレーニングセンターを卒業して日本で働く仲間の中には、結婚している方、インドに家族を残して日本で働く方もいます。
一人ひとりが大切にしている思いや、家族との将来にも向き合いながら、本人が望むキャリアを歩めるよう支えていきたいと考えています。
だからこそ、この特定技能2号評価試験対策講座は単なる試験対策講座ではありません。
一人ひとりの人生に伴走し、日本でのキャリアを一緒につくっていく。
そんな思いで、この取り組みを続けています。