ナマステ~いつもご覧いただきありがとうございます。
初来日から一年。インドで寝食を共にし、iTips訓練校で日々学びを重ねてきた卒業生たちが、現在は「特定技能外国人」として、日本の建設現場という新しい環境の中で日々奮闘しながら活躍しています。
特定技能制度では、受入企業は外国人材への生活支援や定期面談などを継続して行う必要があり、多くの企業は登録支援機関と契約し、就労後のサポートを行っています。
iTipsは、インドでの教育・育成に加え、日本では登録支援機関として就労後のサポートまで一貫して対応しています。そのため、企業には人材育成から来日後の支援まで、安心してワンストップでお任せいただけます。私たちが支援するのは、インドでともに過ごし、学びの時間を共有してきた大切な卒業生です。
だからこそ、登録支援として求められる期間はもちろん、その先も見据えながら、彼らが職場で企業の皆さまに信頼され、十分に活躍ができるよう全力でサポートしています。
さて、みなさん、前回の【来日1年を振り返って】たくましく生きる第1期生たちの記事はご覧いただけましたか??
今回は、そんな第1期生の来日後の日本語教育を担当する福井さんに、iTipsの来日後の日本語教育への取り組みについてお話を聞きました。福井さんに話を聞くと、卒業生が現場で活躍してほしいという強い思い、日本語教育に対するこだわり、そして将来を見据えた視点が感じられました。
卒業生の未来に本気で向き合う福井さんの熱い思いを、ぜひ感じていただければと思います。
登録支援機関に求められる支援と、iTipsの取り組み
小西:
まず来日後、日本で働く人は、通常どのような日本語の教育支援を受けることができますか?
福井:
登録支援機関には、「日本語を学習する機会の提供」が義務付けられており、その他に任意的支援として、日本語指導の企画・運営なども奨励されています。
ただ、登録支援機関によって取り組みには違いがあります。
↑引用:出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」について」
iTipsでは、来日後の支援期間中、そしてその先も卒業生が日本で長く活躍できるよう、日本語教育を継続しています。インドでともに学び、成長過程を近くで見てきた卒業生だからこそ、一人ひとりの歩みに責任を持って伴走したいと考えています。
現場で使える日本語をどう教えるか?
小西:
それでは、授業の体制やカリキュラムについて教えてください。
福井:
日本語クラスは先月4クラス目が開講したところで、1クラスあたり10名前後の卒業生が参加しています。授業は毎週1回、1時間のオンライン形式で実施しています。
講師は4名体制です。うち2名は日本語教育の勉強をしてきており、もう2名は日本語教師としてのキャリアはありませんが、研修などを行いながら、私が作成したカリキュラムに沿って授業を担当してもらっています。
各クラスは担任の講師が授業を行い、私自身は日本語教育チーム全体のディレクションをしています。日々の授業の様子は録画で確認しつつ、担当講師との定例の打ち合わせ等で情報共有をしています。時々私自身が授業をすることもあります。
今後さらに卒業生が増えていくことを見据え、誰が担当しても一定の質で授業を提供できるよう、再現性のあるカリキュラムづくりにも力を入れています。
iTipsの日本語教育で大切にしているのは、卒業生との対話を通じて見えてきた課題を解決し、より「現場で使える日本語」を身につけてもらうことです。
実際に卒業生と接していると、インドで短期間に集中的に日本語を学んでいるため、簡単な日常会話は問題なくできる一方で、文法や基礎をもう一度しっかり整理する必要があると感じています。
また、多くの生徒に共通する課題として、「教科書の内容は理解できても、実際の日常会話や現場で使われる自然な表現が分からない」という壁もあります。
そこで、iTipsの日本語クラスでは、次の2つを大きなテーマにしています。
① 文法の再徹底
② 日常会話のフォロー
↑様々な参考書を読み込み、受講者のニーズに合わせた形でオリジナルのカリキュラムを作成。
小西:
ではここからは、2つに大きなテーマ、① 文法の再徹底 ② 日常会話のフォローに対してどのようにアプローチするかについて、深堀りしたいと思います。
福井:
①「文法の再徹底」では、文法ドリルや、当社のオリジナル文法ビデオに取り組んでもらい基礎を固めます。日々の会話はある程度単語を知っていれば問題なくできるかもしれませんが、今後、取引先とのやりとりや書類の確認など、より高度な日本語力に対応していくためには、こうした基礎の積み上げが重要です。
②「日常会話のフォロー」については、まずはOTIT(外国人技能実習機構)が無料提供する教材を活用しながら、主に建設現場における現場の指示を理解するために必要な会話表現を身につけます。
また、社会人として、社内外で良好な関係を構築していくために「敬語」の指導にも力を入れています。「お願いする」「報告をする」「あやまる」など場面別の敬語表現を学び、ロールプレイも取り入れながら、社会人としての実践的な日本語を身につけてもらうようにしています。
オンライン授業は1クラス約10名で行うため、待ち時間が長くならないようテンポよく進行し、全員が主体的に参加できる工夫をしています。漢字や単語などは事前に学習してきてもらい、授業では小テストをおこない、その結果をもとに指導しています。そうすることによって授業外でも自習する習慣を身につけてもらうことを目指しています。一方、クラス内ではアプリを使用して、新しく習った表現を使った例文づくりやフリートーク等、双方向な時間を取り入れるようにしています。
来日1年目で不安がある一方で、日本語を積極的に学ぼうとする意欲が高く、授業にも前向きに取り組んでいる生徒が多いです。
↑アプリ内では、生徒同士が文章を作り合い、お互いにツッコミを入れながら楽しく学習している様子が見られます。上の写真は「~によると」というイディオムを使った例文づくりの様子。ある生徒さんは、「ともだちによるとミトゥンさんはまいにち10っこのたまごをたべるそうです」という文章を作成!なかなかセンスを感じます(笑)
↑現場で役立つ「縮約形」を説明した教材
実際に、「車に積んどいて」という指示の意味が分からず、資材を捨ててしまったという事例があったことから、縮約形の学習を授業に取り入れています。(1枚目のスライドはOTITの「げんばのにほんご」の教材)
↑現場でよく耳にする「オノマトペ」を学ぶ教材
学習者からのリクエストで取り入れられたオノマトペ(擬音語・擬態語)の授業。一般的な教科書では学ぶ機会が少ない一方で、日本人との会話では頻出する表現ばかりです。
一年後に目指す、日本語教育のゴールとは?
小西:
実践的かつ楽しい授業の様子がよくわかりました。生徒からの疑問には、新たな気づきがありそうですし、それを授業に反映できる柔軟さが、iTipsの日本語教育の強みであると感じました。
それでは、一年間の日本語教育を通して、目指しているゴールを教えてください。
福井:
一般的に日本語能力の評価はJLPT(日本語能力試験)でどのレベルかというところで評価されることが多く、実際、彼らに提供している教材等はN3取得レベルのものを使用しています。しかし、私たちはJLPT合格そのものをゴールにはしていません。
もちろん資格も大切ですが、それ以上に重視しているのは、協働的学びを通じて、現場で本当に使える実践的な日本語を身につけ、信頼を得られるようになることです。
日本語能力試験は、日本語能力に関連した幅広い知識や能力が求められる試験ですが、私たちが卒業生に身につけてほしいのは、職場で円滑なコミュニケーションが取れ、周囲から信頼されるための日本語です。
また、インド訓練校で同じ時間を過ごし、同じ不安を抱えながら日本へ挑戦した仲間だからこそ、お互いに助け合い、刺激し合いながら成長できる。
こうした生徒間の関係性も、iTipsの大きな特徴の一つだと考えています。
今後の目標、そして特定技能2号へ
小西:
最後に今後に向けた目標を教えてください。
福井:
iTipsの卒業生が初めて来日してから1年が経ちました。同時に、登録支援機関として日本語教育をスタートしてからも1年になります。
この1年間は、生徒たちの様子を見ながら試行錯誤を重ね、カリキュラムを改善し続けてきました。もちろん現場では様々なトラブルや困難もあったとは思いますが、慣れない生活環境の中でも、日本語を使って職場でしっかりとコミュニケーションをとり、信頼関係を構築していき、皆が無事に日本での2年目のスタートを迎えることができたことを、とてもうれしく思っています。
また、「この授業がとても助かっています」という生徒たちの言葉は、我々にとって何よりの励みであり、日々の仕事の原動力になっています。
一般的に、日本語学習者と一言でいっても、学力の違いはもちろん、モチベーションや学習態度等も本当に様々ですが、iTipsの卒業生は本当に努力家で、真面目で、素直な方ばかりです。
だからこそ、彼らがこれからも日本で安心して働き、長く活躍できるよう、一人ひとりに寄り添いながら全力でサポートしていきたいと思います。
さらに、彼らの歩むその先には「特定技能2号(SSW2)」という新たな可能性があります。これから多くの可能性を秘めた彼らが、それぞれの人生を実現していけるよう、熱意を持って支えていきたいと思います。
最後に
福井さんの熱い思いに触れ、教育は「人の気持ちの上に成り立つもの」だと改めて感じました。次回は、そんな福井さんが見据える「特定技能2号(SSW2)」に向けたカリキュラムの挑戦についてお伝えする予定です。