こんにちは!ボーディングスクールコンサルティング株式会社の佐藤 迅です。
2025年2月に横山社長とともに約1週間、イギリスに出張してまいりました。現地ではボーディングスクールの視察と、ボーディングスクールカンファレンスに参加いたしました!
本記事は、ボーディングスクール視察編として、イギリスでの学校訪問やその特徴についてご紹介させていただきます!
イギリス出張 2つの目的 今回、イギリスに出張をした目的は2つです!
イギリスのボーディングスクールを訪問するため “ボーディングスクールの教育と環境をできる限り多くの日本人に届ける”という弊社のミッションのもと、生徒により多くの進学先の選択肢を提供するべく、今回はイギリスのボーディングスクールへ訪問させていただきました。
今回、私が実際に訪問させていただいたボーディングスクールは、
Cheltenham College, Bishopstrow College, Leighton Park School, Sevenoaks School, ACS International School, Whitgift School, TASIS England (訪問順)
の全7校です。
今回の学校訪問で私が感じたのは、“伝統と革新を兼ね備えた教育環境を一貫して提供している”のがイギリスのボーディングスクールの最大の特徴であるということです。私が昨年の11月に訪問したアメリカのボーディングスクールとはまた異なる教育制度や雰囲気を持った学校群を実際に目にして、日本人生徒に紹介できる国や学校の幅を広げ、より多くの日本人にボーディングスクールを知っていただきたいと思いました。
ボーディングスクールカンファレンスに参加するため アメリカとカナダから46校のボーディングスクールの入学担当者、そして27か国から集まった48社の留学コンサルタントが一堂に会するカンファレンスが、イギリスで開催されました。2日間にわたるこの完全招待制のカンファレンスでは、各学校とコンサルタントが意見を交わし、交流を深める貴重な機会が設けられました。
カンファレンスの内容は、続編として後日公開予定でございますので、少々お待ちください!!
イギリスのボーディングスクール訪問 今回私たちが訪問した学校は大きく分けると下記の3種類に分類することができます。
(1)伝統的なボーディングスクール
(2)インターナショナルスクール
(3)ボーディングスクール進学準備校
イギリスのボーディングスクールを訪れた感想として、「最高峰の教育を提供する点は共通しているものの、国によって教育環境にはそれぞれ独自の特徴がある」と感じました。
今回は、この3つのジャンルに分けて、訪問した学校を紹介させていただきます!
(1)伝統的なボーディングスクール 皆様は、イギリスにある伝統的なボーディングスクールと聞いて何を想像しますでしょうか?言われてみると、明確なイメージをぱっと思い浮かべることは難しいと思います。しかし、実は私たちの身近には伝統的なボーディングスクールを描いた有名作品があるのです!
そうです。 ハリー・ポッター です。
イギリスにある伝統的なボーディングスクールは、まさにハリー・ポッターが在学するホグワーツ魔法魔術学校を彷彿とさせる存在です。
(Cheltenham Collegeの校内)
①ハウスシステム
このハウスシステムは、『ハリー・ポッター』でいうグリフィンドール、スリザリン、レイブンクロー、ハッフルパフにあたります。ホグワーツに在籍する生徒がそれぞれのハウス(寮)に所属し、寮ごとに競い合ったり協力し合ったりするのと同じように、実際のボーディングスクールでも、生徒たちはいくつかの名前が付けられたハウスに振り分けられ、学校生活を共にします。
各ハウスには独自の伝統や文化があり、生徒たちはその一員としての誇りを持ちながら、学業やスポーツ、課外活動などさまざまな場面で協力したり、時には競い合いながら成長していきます。
各学校の担当者にどうやってハウスを振り分けているのかと聞くと、「少なくともこの学校には組み分け帽子はないよ」と言われました(笑)
②制服
アメリカのほとんどのボーディングスクールでは、生徒は服装規定を遵守した私服で日々を過ごします。対して、イギリスのほとんどの学校は制服を着用していました。これは生徒にコミュニティ意識を持ってもらい、生徒一人一人が学校の生徒を代表している意識形成をしてもらうという目的もあります。
③バランスが良い教育環境
アメリカのボーディングスクールでは、平日は毎日、授業が終わった後に学校でスポーツに参加します。一方のイギリスでは、スポーツは週に3回程度であり、スポーツをしない日にはクラブ活動などに参加します。このようにイギリスは勉強、スポーツ、クラブ活動といったバランスが良い教育環境を提供しているとも言えます。
イギリスのボーディングスクールでは、学校の伝統に沿った学習環境を大切にしており、そこにいる生徒もその伝統を尊重した振る舞いを行います。
Cheltenham Collegeでは、生徒が身に着けるネクタイに関する伝統があります。この学校では学問やスポーツにおいて優れていたり、良い成績を残したら、学校からそれぞれの成果を表すネクタイが進呈されます。生徒にとってこれは非常に名誉なことであり、中には複数のネクタイを持っている生徒もいるそうです!
(Cheltenham Collegeが進呈するネクタイ)
また、ボーディングスクールでは科目ごとに建物が分かれていることが多く、Cheltenham Collegeでは、各科目ごとに専用の図書館が設けられており、それぞれの学問分野に特化した資料やリソースが整っています。これにより、生徒は自分の学びたい分野に関連する資料に簡単にアクセスでき、理解をより深めることができます。
(Cheltenham Collegeの図書館)
イギリスのボーディングスクールで一番初めにIB(国際バカロレア)を導入し、それに特化した教育を提供する最難関のSevenoaks Schoolは、イギリスで3番目に歴史のあるボーディングスクールとして知られています。1473年から現在に至るまで長い歴史があり、現在は既に塞がれておりますが、第二次世界大戦中の空襲から身を守るための防空壕が校内に存在していたとのことです。
(防空壕から出てくるSevenoaksの生徒)
学校訪問中に学校のツアーを担当してくださった先生曰く、「学習環境としては、復習に重きをおかずに、どんどん学習を進めていきます。」とのことでした。それほどにそこにいる生徒は、自身が最難関の学校にいてその学習環境に適応しなければならないという自覚ができているのだと感じました。
実際に学校を訪問しても、自習している生徒は静かに一人で勉強をしており、ガラス張りの教室から見える授業は生徒が活発に議論している様子を見ることができました。しっかりと学校生活においてオンオフの切り替えをすべき場所やタイミングを分かっている大人びた生徒が活躍している印象でした。
(Sevenoaks Schoolの校舎)
Whitgift Schoolは、イギリスにある伝統的な男子校で、学業だけでなくスポーツでも高い実績を持つボーディングスクールです。校内には8つのグラウンドが存在し、ラグビー、クリケット、ホッケーの強豪校としても知られています。
歴史を感じる建物に囲まれた中庭には、日本庭園があり、そこを悠々自適に孔雀が歩いています!(この孔雀たち、不思議なことに学校の敷地外に出ることはないとのことです。)
また、Whitgift Schoolの文化として、食事の際にJunior Year (10歳から12歳)は、他の生徒が食事を終えるまで席を立たずに座って待つという習慣があります。この習慣は、学年の結束力を高めると同時に、相手を思いやる心を育み、協調性や礼儀を自然と身につける機会となっています。
(Whitgift Schoolの中庭)
Leighton Park Collegeは、音楽に特化している学校として知られています。音楽の先生は27名も在籍し、60%の生徒は楽器を学んでいます。アカペラでも、作曲部門でも国内一位の実績があります。さらに、この学校は、世界でたった3校のみが認定されている、日本のヤマハ株式会社の「Yamaha Education Partner」の1校として、特別な教育パートナーシップを結んでいます。ヤマハから学校へ楽器やソフトウェアの提供を行っているため、音楽室にある楽器は全てヤマハ製でした。
(Leighton Park Schoolの校舎)
(Leighton Park Schoolの音楽室)
このように、長い歴史を持つボーディングスクールの伝統は、生徒たちの生活に深く根付き、いずれは習慣として定着していきます。こうした価値観や習慣は、卒業後も生徒たちの行動や考え方に影響を与え続け、社会での活躍においても重要な役割を果たします。学校で培った精神や礼儀、チームワークなどの学びは、卒業後も周囲に良い影響を与え、他の人々を巻き込みながら、共にさらに成長をしていくことを考えると、決して卒業がゴールではないと改めて考えるようになりました。
(2)インターナショナルスクール 次にイギリスにあるインターナショナルスクールについて、ご紹介させていただきます。
イギリスはヨーロッパの様々な国に近いということもあり、留学生の国際色はかなり豊かだという特徴があります。
ACS International Schoolは、IB(国際バカロレア)プログラムやアメリカン・カリキュラムなど、多様な教育プログラムを提供し、世界中の生徒が集まるグローバルな学校です。周辺に転勤してきたアメリカ人のご家族が多いため、生徒の半数はアメリカ国籍とのことです。
また、ここに転校してきた日本人生徒が「この学校は国際色が豊かで、それぞれが取り組みたいことに取り組むことができる。でも国籍やルーツで固まっていることはなく、生徒は全員仲が良い環境です。」という話をしてくれました。
(ACS International School Cobhamの校舎)
TASIS Englandは、イギリス・サリー州のエクセター近郊にある私立のインターナショナルスクールで、アメリカン・カリキュラムを提供しながら、IB(国際バカロレア)プログラムも実施している学校です。イギリスキャンパスはその国際的な教育の伝統を受け継ぎ、グローバルな視野を持った生徒の育成を目指しています。
(TASIS Englandの校内)
イギリスにあるアメリカンスクールなので、アメリカン・カリキュラムを学習する環境が提供されていると同時に、全体的な学校の雰囲気はイギリスを感じることができます。校内にはイギリス特有の電話ボックスや長い歴史がある寮が存在しています。
(TASIS England校内にある電話ボックス)
イギリスのボーディングスクールは、地理的な位置関係からアメリカのボーディングスクールに比べるとヨーロッパの様々な国から生徒が集まります。そこで最高峰の教育を受けながら、様々な国から来た生徒と関わることにより、様々な価値観や文化に触れることができます。
(3)ボーディングスクール進学準備校 ボーディングスクール進学準備校とは、生徒自身の学習面や能力を引き出し、ボーディングスクールへの進学準備を幼少期から行う学校のことを指します。
私たちが訪問したBishopstrow Collegeは2006年に設立され、イギリスの主要なボーディングスクールへの入学を目指す留学生のためのボーディングスクールです。本校では、世界中から生徒が集まっており、英語力をはじめとするボーディングスクールに入学するために必要な能力を伸ばしてくれます。この学校に在籍する50%の先生は英語の先生で、留学生がいち早く英語の環境に適応できるようにサポートをし続けています。
比較的低学年の生徒が多い学校にもかかわらず、寮や生徒のロッカーはきちんと整理整頓されています。生徒たちは学習に真摯に取り組み、進学したい学校へ向けて努力している様子でした。
(Bishopstrow Collegeの校舎)
イギリスのボーディングスクールに見る、教育の多様性とその未来 イギリスのボーディングスクールでは、生徒自身が思い描く未来像に近づくことができるように、ありとあらゆる機会の提供を行っております。また、それらの学校は伝統が根幹にあり、その上で時代の変化に柔軟に対応し、積極的に進化しています。現代の生徒が直面する課題やニーズを見据え、学業面だけでなく、社会性や創造性を育むための充実した学生生活を提供しています。
さらにその学校にいる生徒も、伝統をしっかりと受け入れて尊重しつつも、自分や周りの変化にしっかりと適応しながら成長をし続けます。適応力や柔軟性がある幼い時期に、充実した学習環境にいることによって、さらに生徒が思い描く将来像に近づくことができるでしょう。
今回のイギリス出張で、大きな成果を得ることができたと考えております。それは私たちコンサルタントが、生徒の未来を考えた時に、どこの国のどのような教育環境であれば、彼らの将来像をより明確にできるかと検討できる選択肢が増えたためです。そのため、私たちコンサルタントができることは、生徒やご家族の想いに耳を傾け、その上で豊富な選択肢の中から最善を提示することだと改めて強く思いました。
次回は、イギリスで開催された全48校のボーディングスクールと、世界中全46社の留学コンサルタントが一堂に会する大規模なボーディングスクールカンファレンスの様子をお届けします!