現在、2000以上の日系企業がインドネシアに進出していると言われています。それらの日系企業を惹きつけている要因とは、具体的に何なのでしょうか。「投資ブーム」「日系企業進出ブーム」と言われている今日、インドネシアが抱える人口の豊富さが、投資や企業進出を促す要因の一つになっていると言えます。
「経済発展=人口増加」と決めつけるのは、やや早計かもしれません。日本の行動成長期においても、人口増加率は僅か1.1%ほどでした。インドネシアにおいても、人口増加率のピークは、1970年頃の2.6%ほどであり、その後は低下し続け、2013年には僅か1.2%です。(世界銀行より)
しかし、母数が大きいだけに、1%の増加でも、増える人数には大きな差があります。インドネシアの経済発展が、その労働人口や消費者人口の拡大から得ている恩恵は大きいのです。
人口増加により発生する「キャパシティ不足」
インドネシアの街を歩くと、インドネシアが今、空前の建設ラッシュの最中にあることが分かります。特に首都ジャカルタでは、競うように高層ビルの建設が行われており、1年も見なければ、その風景はすっかり様変わりします。
人口が増えるということは、その人口に対応できるだけの施設が必要になることを意味します。現在のインドネシアでは、海外からの企業進出や投資が、その流れに拍車をかけています。「人口増加により不足したキャパシティを補う」ということが、一つの需要であると言えるでしょう。
では、具体的にどのような需要があるのでしょうか。例を挙げればキリがないですが、その一つとして「学生用ドミトリー」の問題があります。若年層が多く、人口ボーナスが2044年まで続くと言われているインドネシアでは、当然、大学で学ぶ学生も多く存在します。国の将来を担うことになるであろう彼らですが、その学生数に対応し切れていないのが、「学生寮」です。最高学府の一つであるインドネシア大学を例に挙げれば、学生専用の寮は用意されてはいるものの、その実態は、学部1年生限定というもの。入寮できないその他多くの学生は、キャンパス近くの「コス」と呼ばれる建物内に部屋を借り、そこから大学に通うこととなります。若年層の増加により、キャパシティ不足が起きている一例です。
以上のような学生寮の建設に、日本の企業が取り組んでいこうとする動きも見られます。また、建設以外に限らず、環境やインフラといった面で、様々な不足が散見されます。「どこでキャパシティが不足しているか」を考えることは、「どこに需要があるか」を考えることにつながると言えるでしょう。
購買意欲を加速させる「中間層の増加」
インドネシアの経済発展を語るうえで欠かせないのが、「中間層」というワードではないでしょうか。「中間層(middle-class)」という単語の定義は、あまり明確ではありません。所得水準による定義もあれば、「車を持っているか否か」というような漠然としたものもあります。そして、この中間層と呼ばれる人々の増加が、消費市場の拡大を意味すると考えられています。
インドネシアの中間層の現状を理解するために、ここでは中間層を「娯楽費や食費を含まない世帯支出が200~500万ルピア(18800~47000円)である人々(Boston Consulting group)」と定義します。この定義を用いると、2020年には、ジャカルタの中間層が3000万人越え、インドネシア全体だと1億4000万人にまで達すると予測されています。
そして、所得水準の上昇により、具体的に恩恵を受けるのが、ファッションやメイクのような「日用品」「自己投資」分野です。特に、化粧品のような、日常的に使う商品には進出可能性が残っています。この場合、「固定観念を打ち破る」ことも、非常に重要なプロセスとなっています。例を挙げれば、乾燥肌用のクリームなどがあります。気温と湿度が共に高いインドネシアの気候に、乾燥肌用クリームは相性が悪いように思われるかもしれません。しかし、屋外の気候とは対照的に、屋内は冷房により気温も低く、空気も非常に乾燥しています。そういった環境で、上記の製品に対する需要は、少なからず存在していると言えるでしょう
今日を生き延びなければならい状態(=何とかして今日食べるものを得なければならない状態)から抜け出すと、人は日用品に投資を行い始めます。富裕層をターゲットに、自動車や家・その他高級品を扱うビジネスと、中間層をターゲットに、単価の安い日用品を扱うビジネス。優劣をつけることはできないですが、中間層の増加により、日常的に使うことが可能な製品に対する需要が生まれていることは確かです。東南アジア最大のマーケットであるインドネシアでのビジネスを考えるうえで、中間層は非常に重要な、無視できない存在になっています。
インドネシアにおけるビジネス可能性について、「キャパシティ不足」「中間層の増加」という二つの観点から見ていきました。インドネシアの市場としての可能性は未知数であり、今後もさらなる経済発展、市場規模の拡大が見込まれています。
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