「理想を描く力」と「現実に落とし込む力」── その両軸を担えるアートディレクターになりたい。
そう語るのは、halfwaytheirでプロデューサーを務めるイム・セミンさん。2026年1月からhalfwaytheirで働く新メンバーです。理想のイメージを形にする側(アートディレクション)と、スケジュールや交渉で成立させる側(プロデュース)。2つの役割を行き来できる人でありたいという思いが、彼のキャリア選択の軸になっています。
PRインターンの伊藤がインタビューを行い、デザイナーとしての視点も活かしながら日本でキャリアを築き、成長し続けるセミンさんの思いに迫りました。
3ヶ月睡眠3時間で日本へ。美大での学びと、制作・イベント現場で培ったキャリア
ー まずは自己紹介をお願いします
韓国の蔚山(ウルサン)から来ました、日本在住5年目のイム・セミンです。
日本の美大でグラフィックデザインを学び、卒業後は広告業界に飛び込みました。
ー日本に来ると決めた「きっかけ」を教えてください
日本を意識し始めたのは、高校1-2年の頃に『IDEA』というデザイン雑誌を通じて、日本と韓国のデザインの違いを知ったことがきっかけです。日本独特のデザインがいいなと思い、「いつか日本に行くかもしれない」という感覚が、その頃からずっとありました。グラフィックやビジュアル表現の領域で、日本は先進国だと思います。
ただ実際には、高校卒業から、日本へ渡航できるかが決まる試験まで『3ヶ月』しかありませんでした。当時は、ひらがな・カタカナも分からない状態。それでも「やる。」と決めて、朝9時に起きて10時から夕方まで自習、夜は授業が終わるのが22時。そこから家に帰って朝5時まで復習して、睡眠は3時間。周りの人が4-5時間寝ていたら、「自分はもっとやらないと終わる」と思って走っていました。
(高校時代の作品)
正直、受かると思っていなかったくらいですが、結果的に合格できて、日本での大学生活が始まりました。
ー 大学では、どんなことを学んでいましたか?
大学では、グラフィックデザインの中でもビジュアルコミュニケーションの領域を学びました。
僕はもともとアートも好きなのですが、デザインは「補足や説明がないと、ただのアートになってしまう」ことがあると思っています。だからこそ、相手にきちんと伝わって、納得してもらえるように、情報や理由を整理して、伝え方まで含めて設計する。その考え方を、大学では特に意識して磨いていました。
ー これまでのキャリアを教えてください
大学卒業後は、まず小さな制作会社でアシスタントプロデューサーとして働きました。社長(クリエイティブプロデューサー)とほぼ2人体制のような環境で、どんな仕事でも答える役職を担当していました。案件数が多い会社ではなかったのですが、その分、社長のつながりで他社の現場を経験できたのが大きかったです。
具体的には、TV CM制作の現場に出向して、企業案件の動き方や、クライアントと制作側がどう意思決定していくのかを間近で見ました。現場で何が起きていて、どこで詰まりやすいのか、どう段取りが組まれているのかを体感できたのは、自分にとってかなり学びでした。
その後は、映画系イベントの会社に移り、会場での運営や、イベントを成立させるための準備・進行に携わりました。今思えば、現場で動く経験と、裏側で整える経験の両方を短い期間で見られたのは、一連の流れを把握できたことにも繋がり良かったです。
なぜ広告なのか。なぜ日本で勝負するのか
ー 韓国に戻るという選択肢はなかったのですか?
韓国に戻る選択肢も当然ありました。実際、同じように美大で頑張った友人たちの多くは帰国して、大学院に進学したり、定職につかずにいます。それを見て「せっかく積んだ経験なのにもったいない」と思いました。そういった背景は刺激になりましたし、28歳という年齢的にもまだ自分の限界が分からない状態だったので、あえて日本で勝負してみたいという気持ちが芽生えました。
ー 広告業界を含め、halfwaytheirに入社を決めた理由について教えてください
広告業界を選んだのは、昔から絵を描いたりテレビを見たりするのが好きだった一方で、「ただ作る」よりも誰かに届いて反応が返ってくることに一番やりがいを感じていたからです。広告には「GIVE」があって、それに対する相手の反応が返ってくる。その面白さが自分に合っていると思いました。
その中でhalfwaytheirを選んだのは、転職を考えていた時に、ダイレクトスカウトで見た「日本をワクワクさせる」「We don’t say No」という言葉が強く刺さったから。若い社長が事業を動かしている点も含めて、自分のやりたい方向と一致していると感じました。また、僕自身「普通が嫌い」で。当初は、アートという他の人とは違う興味を持っていましたが、美大に入ったことで周りに馴染んでしまった感覚があったので、再び尖った場所で挑戦したいと思っていました。そんな自分にとって、halfwaytheir の環境が合っているのではないかなと感じて、入社を決めました。
ー 入社前後で、会社の印象は変わりましたか?
正直、ほとんど変わっていないです。いい意味で、事前に感じていた印象のまま。
前職はリモート中心で、社長と話す機会も少なかったのですが、halfwaytheirは距離が近くてフランクです。仕事の話だけじゃなくて、困ったことも相談しやすい。「同僚ができた」感覚がすごく嬉しいですね。
あと、太成さん(弊社代表)の印象ですね(笑)
早いうちから起業している人は、仕事1本のイメージがありました。「社長」という立場で考えることも日々多いと思いますが、実際はとてもフランクに話せますし、面白くて、『仕事』も『人』も大切にする人だなと思いました。
まごころを持って、相手の立場を考えて、仕事する
ー いま担当している業務を、教えてください
今は、Producer業務が主な仕事です。DAY1からプロジェクトに入ってクライアントの仕事を担当させていただいています。
その他にも、新規営業と既存プロジェクトの引き継ぎ、リサーチ、資料作成も行なっています。加えて、グラフィックの経験があるので名刺やカンプ作成など、手を動かす制作も担当しています。
(前職でのお仕事中)
ー 仕事で難しいところは?どう乗り越えていますか?
一番難しいのは、やっぱり言語の壁です。日本語は日常的に使っているので会話はできるんですけど、仕事の場面だと電話対応やミーティングの進め方みたいな「型」や「言い回し」があって、そこが難しいと感じています。特に電話は瞬発力が必要なので、言葉の選び方ひとつで印象が変わるのもプレッシャーですね。
だから帰宅後に、同僚の電話の取り方や、ミーティングのやり方をメモして、声に出して復習しています。恥ずかしいくらい繰り返して練習していますけど、結局それが一番早いと思っています。
あと、これは自分の実感なんですが、日本で生活していると、日本語も韓国語もどっちも少しずつ下手になっていく感覚があります。韓国語で言いたいのに日本語が先に出たり、日本語で言いたいのに「韓国語では分かるけど日本語で何だっけ」ってなったりします。日本に住んでいる韓国人あるあるかもですね(笑)
ー 仕事をする上で、大事にしていることは何ですか?
一番大事にしているのは、「まごころ」です。相手に対して本気じゃないと、結局は伝わらないと思っています。だからまずは、自分がその仕事に本気で向き合っているかを大切にしています。
もう一つは、前職の社長から教わった「相手の立場になって考える」という言葉です。自分が面白いと思う企画やアイデアでも、相手が納得できなければ成立しない。プロデューサーとしては特に、相手の状況や不安を想像して、伝え方や段取りを整えることが重要だと感じています。
あと、仕事を通して自分の中で整理されてきたのが、「デザイン=よくすること」という考え方です。昔は、素敵なもの・綺麗なものを作ることがデザインだと思っていました。でもいまは、フォルダを整理して見やすくしたり、情報を整えてお互いが納得できる状態にしたりすることも含めて、全部デザインだと思っています。デザインは、ビジュアルだけではなく、コミュニケーションの道具として機能させるもの。そういう意識で日々の仕事に向き合っています。
ー 今後のビジョン(将来の目標)を教えてください
将来の目標は、アートディレクターになることです。面接の時にも話したのですが、いま自分はプロデューサーとして動きながら、将来的には理想のイメージを形にしていく側にも関わっていきたいと思っています。
自分の中では、アートディレクターは「理想的なイメージを実現する」役割で、プロデューサーは「スケジュールを組む」「アポを取る」など、現実的な課題を整理して成立させる役割、という捉え方があります。どちらか一方ではなく、両方の軸を実現できる人になれたらいいなと考えています。
その意味で、プロデューサーを志望している理由の一つは、日本のビジネスマナーや仕事の進め方をきちんと身につけたいからです。halfwaytheirは挑戦を大事にしている会社だと感じていて、社内のエナジーからも刺激を受けています。ここで新しい挑戦を重ねながら、自分の幅を広げていきたいです。
番外編 セミンさんを形づくるもの
この先は、仕事の話から少し離れて、セミンさん自身についても聞いてみます。
どんな人になっていきたいのか。休日は何をして過ごしているのか。
halfwaytheirのカルチャーをどう感じているのか。
より人となりが伝わる後半パートです。
ー これから、どんな人になっていきたいですか?
デザインだけに閉じないで、いろいろな分野からインプットできる人でいたいと思っています。建築や音楽も好きですし、本屋に行ったり、ポップアップに足を運んだりすることも多いです。そういう場所で担当者の方の考え方や空気感に触れると、それがそのままデザインや企画のアイデアにつながる感覚があります。
逆に、他の分野に興味がないと、技術だけを持っている「面白くない人」になってしまって、プロデューサーとしては生き残れないと思っています。
ー セミンさんは、自分の性格をどう捉えていますか?
ゆるいところもあるんですけど、たまに変なところに厳しいタイプだと思います。デザイナー気質なのか、細かい部分が気になってしまうことがあって。あと個人的には、もっと賑やかになりたいという気持ちもあります。
ー 休日はどんなふうに過ごしていますか?
建築や美術館が好きなので、「どこかの美術館を目的地に決めて、その周辺のカフェや食事もセットで楽しむ」ことが多いです。美術館って、周りにいいお店が集まっていることが多いので。あとはカフェ巡りも好きで、特にチーズケーキとコーヒーはよく探しに行きます。
(香川県にある東山魁夷せとうち美術館)
ー いいですね。どこかおすすめの美術館はありますか?
都内だと、上野の国立西洋美術館は好きです。ル・コルビジェの設計は、建築としても見応えがあって、日本で味わえる西洋建築の頂点だと思っています。
もう一つは、清澄白河の東京都現代美術館。展示ももちろんですが、周辺に個人経営のカフェが多くて、ゆっくりできる場所が多いのでおすすめです。
ー 建築や美術館の話が出ましたが、作品から受ける影響も大きいですよね。映像作品だと、何か好きなものはありますか?
ジブリの『海がきこえる』が好きで、多分20回以上観てました。(笑)セルアニメーション特有の質感や色味が好きなのと、若い人の感情の描き方が魅力的だと思っています。
もう一つは新海誠さんの『言の葉の庭』。短編なんですけど、とにかく綺麗で印象に残っています。
海がきこえる(スタジオジブリ、1993)
言の葉の庭(新海誠、2013)
ー halfwaytheirのカルチャーを、セミンさん目線で言うと?
フランクで、仲間とチームが一緒に挑戦していく雰囲気だと思います。仕事のことでもプライベートのことでも、困ったことがあれば相談できる「繋がり」がありますね。今のこの小規模な感じが好きなのですが、こういう話やすく明るいカルチャーが根付いているので、人数が増えても、きっとこの雰囲気は守られていくのだろうなと感じています!
(チームディナーの帰り道)
【インタビューを通じて感じた事】
インタビュアーの伊藤です。
今回は1月に入社したセミンさんにインタビューをさせていただきました。
韓国クライアントさんとの会議で、韓国語を喋っている声が聞こえて、改めて2言語を使いこなしているセミンさん凄いな!と思いました。
いつも優しく話してくださり、オフィスの雰囲気を明るくしてくださるセミンさん、お忙しい中、どうもありがとうございました。