2022年に誕生した博報堂Gravityは、ファッション・ラグジュアリー・ライフスタイル領域のブランディングを得意とする広告会社です。博報堂グループ内にあった博報堂マグネットとコスモ・コミュニケーションズの2社が統合し、ノウハウ、スキルを融合することで、ブランド起点の統合マーケティングをワンストップかつ、高クオリティで提供しています。
そんな博報堂Gravityを支える社員へインタビューを実施。今回話を聞いたのは、大手広告会社のグループ企業から2024年5月に転職し、現在はマーケティングプランナー、ストラテジックプランナーとして活躍する内田崇。マーケット環境を分析しながら戦略を練るのは前職から変わらないものの、Gravityに入社してから、数字やロジックだけに頼らなくなったといいます。その理由とは?
▼プロフィール
内田崇(うちだ・たかし) / 職種:マーケティグプランナー、ストラテジックプランナー / 2024年5月 入社
新卒で大手広告会社のグループ企業へ入社し、プランナーとして活躍。2024年5月、博報堂Gravityに入社。マーケティングプランナー兼ストラテジックプランナーに。
大手広告会社のグループ企業からGravityへ
───まずはキャリアについて教えてください。内田さんは大学でどんなことを学び、広告業界へ進んだのでしょうか。
内田崇(以下、内田):大学で専攻した新聞学科ではメディア関連のことを学んでいました。新聞社やテレビ局、広告会社など、メディア業界の方が講演に来てくださったのですが、そのなかで広告を制作している大御所クリエイターのお話がすごく面白かったことをきっかけに、広告業界を目指しました。
新卒では大手広告会社のグループ企業に入社し、幅広い業種を担当しました。営業が持ってきた案件に対して、どのメディアで広告を露出したらいいか、課題に対してどんな施策が有効か、といったことを考える仕事でした。
───そこからなぜ転職を考えるようになったのでしょうか。
内田:仕事自体は好きでしたし、給与面や待遇に不満があったわけではないのですが、学生時代から洋服が好きで、アパレルのセレクトショップや古着屋さんでアルバイトした経験もあったんです。
新卒から6年間勤めるなかで、好きだった洋服の仕事をやってみたいという気持ちがずっとくすぶっていて、勝手に自主提案し、アウトドアブランドの仕事をとってきたこともありました。それがすごく楽しくて、もっと専門的にファッションの仕事に携わりたいと思うようになったんです。
───同じ広告業界から見て、Gravityはどんな印象でしたか?
内田:同じ広告会社なので、やっている仕事の内容はそんなに変わらないかなと思いつつ、クライアントのジャンルが圧倒的に違うと感じていました。また、Gravityのオフィスを紹介するSNS投稿を見たときに、めちゃくちゃかっこいいなと。
───実際に入社してみていかがでしたか?
内田:ファッションの仕事をしたくて入社したので、それが叶っていて嬉しいです。もちろん会社全体で見ると、コスメやアルコールなどもありますが、より自分の興味のある、アメリカやイギリスのトラディショナルアパレルやシューズブランド、ホテル、日本のスーツブランドなどを今は担当しています。
オンボード期間のあとOJTは実施しつつ、プランナー経験者ということもあり、ある程度自由にさせてもらっています。
「数字やロジックだけに頼らないようになった」
───マーケティングプランナー、ストラテジックプランナーはどんな仕事ですか?
内田:イメージとしては、大枠のストラテジーや戦略と呼ばれるアウトラインを決める役目が一番多いです。
クライアントと話したビジネスプロデューサーから、例えば「3000万円のマーケティング予算で1億円の売上を達成するためにどうしたらいいか」という相談がきて、ターゲットの選定から、彼らのインサイトに対してどんな訴求をしたら効果的か、といた大枠を決めます。それをプランナーチームのところに持って行き、この戦略に沿って、企画を考えていきたいですという相談をしていきます。
───前職のときにもこの領域を担当されていたんでしょうか。
内田:そうですね。ただ、前職では、より数字の話をメインに枠組みしていました。例を出すとGravityでは「この商品を1000個売るためには、5万人のZ世代にかっこいいと思ってもらう必要があります」みたいな話をよくするのですが、前職では「1万人に買ってもらうために、3万人に対して3回ずつ広告を当てましょう」というロジックや数学的な話になります。
Gravityでは「かっこいいと思ってもらう」など、もう少し感性的な話が入ってくるので、厳密に言うと、ちょっと別の仕事ですね。
───クライアントの領域が違うことで、これまでのロジックや手法が通用しないなど、壁にぶち当たったこともありましたか?
内田:入社後まもなくの頃は、前の会社と同じことをやっていたんです。データを引っ張ってきて、「調査結果から、こういうインサイトがありそうだから、それに最適なアクティベーションや、コミュニケーションをとるといいのではないでしょうか」というような話をしていました。しかし競合コンペに2〜3回連続で負けてしまい、ファッションは向いていないのかな……と落ち込みましたね。
───そこからどんなアプローチで巻き返しましたか。
内田:次のコンペでは、データにばかり頼るのをやめてみたんです。すごく好きなブランドへ提案できることになり、いったんデータを忘れて好きなようにやってみようと、自分の感性を信じて、いち消費者としてブランドへの思いを話しました。
それがクライアントにすごく刺さったようで、我々の提案を聞いた時点でコンペを打ち止めにしてくれたんです。それまでのやり方とは違ったんですが、いい意味で転換点になったと思います。
なにより、プランナーチームのアイデアがめちゃくちゃ面白かったので、数字を組み立てた資料よりも、感覚的に「そうだよね、わかるわかる」と思ってもらえるような資料にしたいと考えて作りました。
育ててきた感性と、生活者の目線と
───その後は感覚的なプレゼンに切り替えたのですか?
内田:たまたまそれがクライアントに刺さる提案だっただけで、全部がそうではないのですが、「プレゼン資料はラブレターだ」みたいな話がありますよね。
ファッション領域って感覚的な要素が大きく、クライアントと感性が合うのも大事なので、ブランドへの思いや熱量を意識的に入れるようにしています。
───感性が合うと、クライアントにとってどんなメリットがあるのでしょうか。
内田:それによって、目線を合わせやすくなり、円滑に進行しやすくなると思います。例えば雑誌のタイアップをするときに、「写真のAとBだとどっちがかっこいいですか?」って、ロジックじゃなくて感性の領域ですよね。その感性って、今まで何を見てきたかによるのかなと思うところはあって。
自分が触れてきたカルチャーとか、どういう環境でどんなものを見てきたのか、「これかっこいいよね」という共通言語のようなもの。その時代の映画を見て、その時代の音楽を聴いて、同じ人の格好を真似して、……といったことで、きっと培われてきた感覚だと思うんです。
僕が個人的にも好きなブランドは、担当者もきっと同じような環境を経験していると思うし、感覚で話すときにも解像度が高い。だから、熱をかけて自分の感性で話したときに理解してもらえるんじゃないかなと思うんです。
───逆に、内田さんとは違う感性を求められることもあるのでは?
内田:ありますね。例えば僕が担当しているブランドで、若い女性をターゲットにした商材を売りたいとき、自分と異なる感性が必要になります。ただ、「Z世代の女の子の意見を取り入れたい」となったときに、Z世代だったら誰でもいいわけではなく、ターゲットユーザー像を明確にする必要があります。どんな感性を持っている人から意見を聞くべきなのか、まず僕とクライアントの目線が合っていることが重要だと思うんです。
そこをクライアントと握ることが、マーケティングプランナーの仕事です。
───広告を制作するにあたり、生活者の目線も必要だと思うのですが、意識的に取り入れていることはありますか。
内田:ファッションやカルチャーに対しては日常的にインプットしているのですが、今って、SNSを見ていても自分の好きな情報しか出てこないじゃないですか。生活者の目線を持つためには、もっと広く情報に接していかなければならないと思うんです。
なので、仕事と関係ないこともインプットするために、夜、妻と一緒にニュースを見ながらお酒を飲む時間をとるようにしています。
また、類は友を呼ぶので、自分のまわりには似たような考えや感性を持った人が多いのですが、僕と同じようなエリアに住み、日比谷の広告会社勤めするような人は日本に1%もいない、ごく少数派なんだと意識するようにしています。そうしないと、それが世間だと思い込んでしまい、生きている範囲でしか想像できなくなってしまいそうなので。
自分とは違う幅広い人の生活も想像できるようにすることは、マーケターとして意識しておかないといけないと思います。
Gravityならではの成長環境とは
───自分を成長させる場としてのGravityはどうですか?
内田:すごく成長環境が整っていると感じます。Gravityでは自分が望めば、領域を超えて任せてもらえるんです。
他社では、自分の領域外のことに挑戦してみたいと思っても、「そこは俺の仕事の領域だから」みたいな話があるとよく聞くのですが、Gravityでは「このクライアントの案件をやりたいです」「企画を考えたいです」「アウトプットまでやりたいです」と言えば挑戦させてもらえる。自分の職域以外も経験できれば、さらに拡張して成長していけるので、すごくいいなと思っていて。
───内田さんの場合、数字に強いので、そちらを専門的にやるように言われそうなものですよね。
内田:はい、でもGravityでは自分の希望したことを任せてもらえるので、成長できる環境が整っていると思います。
逆に言うと、成長意欲がなく、「ここだけやってればいい」って考えている人にとっては、何も起こらない環境なのかもしれません。
───それはGravityならではの社風なのでしょうか?
内田:今第一線で活躍されているクリエイティブディレクターたちも、過去にじわじわとできることを広げてきたから、挑戦したい人を応援するカルチャーが根付いているんだと思います。
そうしたスタープレイヤーと一緒に働いていますが、彼らが独りよがりかというと全くそんなことなくて。入社してすぐくらいのときにクリエイティブディレクターと一緒に仕事したのですが、プランについて「どう思う?」と聞かれて、無邪気に意見したら、次のミーティングまでに修正されていて。
あのクラスの人が「そっちの方がいいんだったら」と素直に受け入れてくれるのはすごいなと思いました。
───チームや個人のことを信頼しているからこそかもしれませんね。支援制度も充実していますが、内田さんも利用していますか?
内田:大学と共同でオリジナル研修プログラムを開発していて、マーケティングを学ぶために大学に通わせてもらったりしています。また学び支援金制度というものがあり、宣伝会議の講座を受けたり、広告のカンファレンスへ参加する際に利用したりしていますね。
以前の会社ではグループ会社を集めた研修などはありましたが、各個人の必要な学びを受けさせてもらえるのはGravityならではかもしれません。
───今後の展望はありますか?
内田:ひとつひとつの仕事が楽しくできて、「いい仕事だったね」と言えるものが増えていけばいいなと思います。
あとは、今年から社内で「コンテンツエディトリアルユニット」というプロジェクトが始動して、僕も参画しています。ファッションや音楽、映画など、業界の潮流に思い切り飛び込んで、カルチャー分野におけるキーマンや、最先端の人と接していこう、というプロジェクトです。
Gravityという組織自体が現在進行形で成長していることもあり、スタートアップ的に「繋がりで仕事をつくっていこう」という思いがあります。それを軌道にのせたいですね。
───最後に、どんな人がこの会社に合いそうかを教えてください。
内田:洋服やコスメが好きな人は合うと思いますが、チームプレーが好きな人にもおすすめですね。自分一人で全部決めるよりも、みんなでいいもの作ってこうぜっていう人の方が合うかなと思います。成長環境も整っているので、自分の得意領域を増やしていきたい人にもおすすめです。