2022年に誕生した博報堂Gravityは、ファッション・ラグジュアリー・ライフスタイル領域のブランディングを得意とする広告会社です。博報堂グループ内にあった博報堂マグネットとコスモ・コミュニケーションズの2社が統合し、ノウハウ、スキルを融合することで、ブランド起点の統合マーケティングをワンストップかつ、高クオリティで提供しています。
そんな博報堂Gravityを支える社員へインタビューを実施。今回話を聞いたのは、2024年2月に入社し、コミュニケーションプランナーとして活躍する長澤南帆。彼女のクリエイティブの源泉とは?
▼プロフィール
長澤南帆(ながさわ・みなほ) / 職種:コミュニケーションプランナー / 2024年2月 入社
新卒でクリエイティブブティックへ入社し、美容や食品など、幅広いジャンルでプランナーとして活躍。2024年2月、博報堂Gravityに入社。コミュニケーションプランナーとしてファッション・ライフスタイル領域のブランドのプランニングを務める。
服やコンセプトづくりが好きな学生時代を経て広告業界へ
───長澤さんはいわゆる第二新卒でGravityへ入社されていますよね。まずは、どんな学生時代を過ごしたか教えてください。
長澤南帆(以下、長澤):高校生のときに所属していたバトントワリング部では、生徒が主体的に舞台のコンセプトや演出、衣装まで手がけていました。私は踊るのが苦手だったのもあって(笑)、コンセプトを考えたり、衣装を作ったりする仕事が好きだったんです。授業中もコンセプトシートを書いたり、布を縫っていたり。休みの日は生地屋さんへ行って、ずっと布を見ているような高校生でしたね。作業中はみんなの喜ぶ顔を想像しながら、夢中で作業していました。
そうした経験や、もともとファッションが好きだったこともあり、大学では服飾系の学科に進学しました。授業はすごく楽しかったのですが、本当に服が好きな人たちに囲まれているなかで、生地が好きな人、パターン作りが好きな人など、それぞれ方向性があるんですけど、私はそれとちょっと違うなと思っていたんです。
大学の先生から「学生のうちに本物を見なさい」と言われ、教えてもらった美術館の展示をよく見に行ったのですが、コンセプトがしっかりある現代アートが好きだなと気付き、大学の途中で学芸員の資格もとりました。
───とはいえ、就職先は服飾系やアート系ではないんですよね。なぜ広告業界に?
長澤:大学では広告研究会というサークルに入っていたのですが、広告会社でプランナーやクリエイティブディレクターとして働いている先輩に出会い、企画の作り方の講義を受けたときにすごく楽しかったんです。与えられた課題に対して企画を出し、フィードバックをもらえるような内容でした。高校生のときの舞台づくりとも通ずるような、時間も忘れて夢中になれる日々で、プランナーになりたいなと思って就職活動しました。
新卒で入社したのは、プランナーとデザイナー、プロデューサー、動画を制作するクリエイターがいるようなクリエイティブブティックです。インターンの制度を利用して入社したのですが、自分が会社で働いているイメージがついたのが大きかったです。
───就職後はどのような仕事をしていましたか。
長澤:私はプランニングの部署にいたのですが、クライアントの業種は幅広く、日焼け止めやチューブ調味料、食材宅配など、なんでも受けていましたね。
───そこから転職を考えたのはどういった経緯があったのですか?
長澤:会社の合併があり、広告から大きく事業が変わったんです。尊敬する先輩方が転職しはじめるなか、私はまだまだ広告のプランナーとしてやっていきたかったので、切磋琢磨できる人たちに囲まれて仕事をしたいと、転職を考えるようになりました。
───転職先にGravityを選んだのは?
長澤:実はGravityを転職サイトで見つけて知ったのですが、Gravityはファッション×広告の会社で、大学生のときに勉強していたファッションと、私が社会人で軸としてやってきた広告の両方ができるんだ! って。事例を見てみたら、本当に幅広いファッションブランドを手がけていて、魅力的な案件が多いと思いました。
転職を急いでいたわけではありませんでしたが、「本当にこの会社に入りたいから転職しよう」と、思い切って飛び込みました。
───実際に入社してみていかがでしたか?
長澤:面接のときから感じていましたが、みなさん人柄がよくて。仕事にプライドを持っている方が多いので、ポジティブな影響を与え合えるような仲間がたくさんいます。入社後はクリエイティブディレクターの下につき、半年くらい経ってから一人で任される案件ができてきました。
ファッション系のクライアントが多いので、スタイリストさんやファッション系のアートディレクターなど、今までのお仕事では出会わなかった業界の方々と一緒に仕事できているのがすごく楽しいです。
「ブランドの物語を、アイデアで翻訳する」コミュニケーションプランナー
───コミュニケーションプランナーはどんな仕事ですか?
長澤:ひと言で表現すると「ブランドの物語を、アイデアで翻訳して生活者に届ける」ことだと思っているんですが、クライアントやブランドからいただいた課題に対して、本当にゼロベースでアウトプットを考えるような仕事です。
イベントでもいいし、動画を作るのでも、インフルエンサーを起用するのでもいい。正解がない中から自分で答えを作ります。
───広告って、クライアントの「こういうものが作りたい」が先にあるイメージもあると思うのですが、課題が先にあるんですね。
長澤:クライアントによって違いますね。それこそ「CMを作りたい」と相談がくる場合ももちろんあるのですが、私が担当しているところでいうと、例えば「新しく店舗オープンする予定があり、予算がいくらあるので何かしたい」というような、ざっくりとした相談がくることが多いです。
───どんなクライアントを担当していますか?
長澤:今は若い女性向けのライフスタイルブランドを担当することが多いです。私はクライアントと直接対話をしながらプランを考えたいので、週2回くらいは会っているかもしれません。担当者に同年代の方が多いのもあり、関係性が近くて、和気あいあいとお仕事させてもらっています。一緒にお仕事した方から別の部署を紹介していただいたり、こちらで企画を考えて持ち込んだりして次の仕事に繋がることも。
継続的に依頼をいただけるのは、一緒に仕事をしたいと思っていただけるからなのかな、と。そういう空気感を作れているのだとしたら嬉しいです。
───入社してまだ1年半ほどで、指名されて次の仕事に繋がっているのは、長澤さんの人柄もあるんでしょうね。そういう空気感を作るために心掛けていることはありますか。
長澤:プランナーは何もないところから企画を作っていくので、自分が一番、企画を信じなければはじまらないと思っています。なので私はいつも企画を提案するとき、誰よりも楽しんで話すよう意識しています。
私自身が好きだと思えるような企画を出せるまで考えますし、「自分がやった」と自信を持って言えるように、アウトプットまで責任を持ちたいんです。
───これまで手掛けたなかで、特に手応えを感じた仕事はありますか?
長澤:日本から一度は撤退したライフスタイルブランドの再上陸を手掛けた案件です。最初は「再上陸してお店がオープンする」という情報だけいただき、ターゲットや戦略を練るところから一緒に考えはじめました。
もともとそのブランドが好きな人はたくさんいたのですが、ファンだけに届けるのではなく、これまで知らなかったような新しい層にも届けていこうと、若い世代に向けたプロモーションにしたんです。
オープン時のイベントも担当したのですが、ブランドのモチーフをちりばめたロンドンバスを走らせたり、ノベルティをプレゼントする施策を行ったりしました。
半年以上かけたプロジェクトだったのですが、大枠となる戦略から、細かいノベルティの柄まで、本当に川上から川下まで自分で携わったときに、手応えを感じました。
───お客さんの反応も見られたのでしょうか。
長澤:オープンした当日は一日中お店に立っていたのですが、お客さんが喜んでくれる姿や、店員さんが楽しそうに働いている姿を生で見られました。やっぱりその瞬間が一番嬉しかったですね。
同業他社にいる友人に話を聞いても、担当する業務が細分化されているようなので、こんなに自分で責任を持って案件に取り組める会社はそうそうないと思います。
以前勤めていた会社で担当していた商材だと、最終的に生活者の手に届くことを目的とすることが多かったのですが、ファッションブランドやライフスタイルブランドの場合、手に届いたあとにブランドのファンになってもらえることにも繋がるのはやりがいになっています。
プランナーから見た、Gravityの魅力
───長澤さんは統合プランニング部のコミュニケーションプランニングユニットに所属しているんですよね。コミュニケーションプランナーのみなさんは、どんな方たちなんですか?
長澤:それぞれ何か強みがある人が多くて、クライアントにわかりやすく伝わるようなロジックを組むのが得意な人や、映像起点で企画を考えるのが得意な人、ジャンルも幅広いので、ラグジュアリーが得意な人、社会課題に関心があって企画に生かす人など、みなさんがそれぞれの得意なところを生かしていますね。一緒にブレストをしたときなど、得意分野についての解像度の高さにはすごく刺激を受けます。
───経験値も得意分野もある人たちに囲まれているんですね。長澤さんの得意な分野は?
長澤:プランニングメンバーの中で一番若いので、若い女の子の視点や、トレンドみたいなところが求められているのかなと思います。気づいたら、明るくて楽しい、ポジティブな企画が増えているので、そういうのが好きなんだろうなというのは自覚しはじめました。これから、より自分の強みを見つけていきたいです。
───他の部署の人たちと一緒に働くこともありますか?
長澤:たくさんあります。ビジネスプロデューサーや他のセクションのプランナーは、責任を持つ範囲が違うので、言ってみれば背中を預ける仲間ですね。
ビジネスプロデューサーは私の知らない知識を持っているので、私が突飛な企画を出しても、「こうやったら着地するんじゃない?」ってアドバイスをくれることもあり、頼もしいです。
───Gravityの魅力は何だと思いますか?
長澤:さまざまな分野に特化したプロフェッショナルがいるところだと思います。コスメのことわからなければこの人に聞けば解決するし、インフルエンサーのことならこの人、ラグジュアリーブランドならこの人と、知見が集まった場所です。
今って、インターネットで検索すればなんでも出てくる世の中ですが、検索では得られないようなデータベースになっていると感じます。
───それでは、どんな人と一緒に働きたいですか?
長澤:仕事をしているなかで、「条件が合わない」とか、「予算が合わない」と、難しいことがいろいろ出てくるので、「だから無理だよね」と諦めてしまうのではなく、「こう工夫したらできるんじゃない?」ってワクワクして考えられるような人と一緒に働きたいです。
自分が受けたことを、返したい
───すごく楽しそうにお仕事の話をされているのが印象的だったのですが、その源泉にあるものってなんでしょうか。
長澤:人の顔を見ずに、机の上だけで企画を考えるのがあまり得意じゃないんです。企画を考えるとき、「これを提案したらきっとあの人はあんな表情をしてくれるだろうな」って、届ける相手の顔を想像しています。
出された課題に対して、毎回いろんな手段を考えられるのが楽しいんです。
───バトントワリング部の衣装も、着る人の顔を想像しながら作っていたというお話がありました。届けたい人の顔を具体的に思い浮かべるところは、高校生の頃から一貫しているんですね。
長澤:確かにそうですね。せっかく担当するなら、本当に可愛いと自信を持って言えるようなアウトプットにしたいじゃないですか。やっているうちに自分もブランドを大好きになって、「もっとみんなに知ってもらいたい!」って思うんです。それが結果としてこだわりや、私らしさに繋がっているのかもしれません。
私は若い子向けのブランドを担当することが多いのですが、私自身が小さい頃からファッションが好きで、元気を与えてもらってきた側なので、見た人がちょっと元気になるようなクリエイティブや企画を作りたいんです。自分が経験したことを、クリエイティブを見た方や企画を体験した方に返せたら、というのが裏側のテーマにあります。
───入社して1年半経ちますが、この期間を一言で表すと?
長澤:1年前には想像できなかった世界を見ているなと思います。メインプランナーとしてクライアントの前に立った瞬間、責任の重みが変わったなと感じました。質問に対して自分が答えなければならないので、襟を正す思いです。
自分でクライアントの前に立って、自分で考えたことが世の中に届いて、お客さんに喜んでもらえるところまで繋がっている。そんな仕事ができているのが楽しいです。
───今後はどんな仕事がしてみたいですか?
長澤:今まで存在しなかったけれど、「この広告やコピーが生まれたことで、何もなかった余白の時間にちょっと夢を与えられる」、そんな仕事をしたいです。
また、被服学科だったこともあり、ファッションブランドにいる人や、スタイリストをしている友人もいます。そういう学生時代の友人たちと一緒に仕事ができたらと思っています。そのときに備えて、Gravityでもっと力をつけていきたいです。