9月某日。
北海道・新千歳空港に降り立ちました。
目指すは襟裳岬にある浦賀町。べてるの家という不思議な名前の団体さんです。
ここは、精神に障がいをかかえた方々が、仲間と一緒に生活し、仕事をし、街の人々ともかかわって生きている共同体です。
この在り方に興味を持ち日本全国から集まった人達、そしてゲットイットからは代表の廣田と共に、フィールドワークをさせてもらいにやって来ました。
(廣田のブログもぜひご覧ください ⇒ 前編「Go to North」・後編「安心してサボれる会社」)
空港からはバスで二時間ほど。
気持ちよさそうに草を食む馬や鹿たち、雄大な太平洋を眺めているうちに到着。
名産である日高昆布のなんとも言えないよい香りが街を包んでいます。
まず、べてるの家が運営するカフェでスタッフの皆さんと代表の向谷地さんが我々を迎えてくれました。私達にべてるのあらましを伝えてくれたIさんは、いつも焦って不安にかられてしまうという特性をお持ちの方なのですが、その方に向谷地さんがかけた言葉でわたしは早々に胸がいっぱいになってしまいました。
Iさんはべてるの家が無くなってしまったらどうしようという不安から、訪ねてくれたお客さんに直筆のお手紙やメールをお送りし、そのつながりは6000人を超えるそうです。
そんな彼に「Iさんのおかげで、たくさんの方がべてるのファンでいてくれてそのおかげでべてるは成り立っている、本当にありがたいんだよ、だから治らないでね」
…そのように話されていたと思います。
課題や問題をかかえていても、まずは今の、そのあなたのままでいいんだよ、そのままのあなたが貢献してくれていてとってもありがたい。だから大丈夫だよ…そう言われた気がしたんです。
その後、べてるの皆さんとBBQを囲みながらたくさん話をしたり、お互いに自分のかかえている課題を”研究テーマ”として対話しながら扱い方を模索する「当事者研究」も見学させてもらいました。べてるの皆さんとわたしたち参加者との境界線はどんどん薄くなり、いつの間にか、誰かのユーモアで笑ったり勇気ある発言に涙したりしながら、ゆるっと一つになっていたように感じます。
向谷地さんに、誰かの話を聴く時にどんな事を大切にしているか質問させてもらったのですが
「苦しい状態でも、それでも、その人がその中で生きて行こうとしている生き方、そこにひたすら関心を向ける事、ですかね」
と教えてくださいました。
冒頭のIさんが焦りながらも生き生きと幸せそうだった事。他のべてるの皆さんが、堂々と自分の悩みを言葉にして語ったり、カラオケで自分の愛唱歌を披露してくれた姿を思い出しながら、ああ、こんな風にわたしも誰かに受け入れてもらいたいし、他者を受け入れられるようになりたいな… とまたまた胸がいっぱいになってしまいました。
お別れするときに、一番の長老で販売部長のKさんが言ってくれた言葉、
色々あると思うけど、今ここで日々を生きている…というような前置きの後に
「自分を忘れないでほしいな」
自分を忘れないってどういうことでしょうか。
Kさんがくれた宿題です。
どんな想いで私達にその言葉を贈ってくれたのかな、また会ったら聞きたいです。
▼写真はべてるのお店で購入した「おつまみ昆布」と「日めくりカレンダー」です。両方ともオンラインショップで購入できます。おつまみ昆布、止まらなくなります