官公庁と民間との間を人材が行き来する「リボルビングドア」が注目されています。
今回は、NPO法人であるフローレンスから官公庁へ登用され、活躍を期待されている人材の紹介と、フローレンスが社会変革を進めるうえで実際に活用している官民人材往来の事例「リボルビングドア」について、ご紹介します。
―リボルビングドアとは?
「リボルビングドア」とは、リボルビングドア=回転ドアを通るように、人材が官公庁と民間を自由に出入りすることです。
この「リボルビングドア」、官と民の人材が行き来することによって、官公庁は民間が持つ最先端の技術や現場の最新情報を知ることができ、特定の分野における専門知識や技術を持つ人材の確保が可能になります。
また民間にとっては、官公庁とのつながりによって、より公益に資する社会的成果を追求する視点とルートを持つことができる点で企業の事業価値を高めることができます。また、民間とは違う職務経験や人脈をもつ人材を活用できることで、社内に新しい視点やスキルを得ることができます。
官・民どちらにとっても非常にメリットがある「リボルビングドア」に、近年注目が集まっています。
―官民の人材交流の現在地
現在、国は制度として「官民人事交流制度」という任期付きの人材交流システムを設け、積極的に官民交流を進めています。
内閣府によると、令和3年10月1日現在において、民間から国家公務員となったのは、一定期間の人は 4,451人で前年より219人増え、期間を限らない人は 2,828人 でこちらも330人増加となっています。
昨年9月に設置されたデジタル庁は、民間から人材を広く募集し、発足時は職員の3分の1を民間出身の人材が占めるという大規模なリボルビングドア事例となりました。
すでにアメリカでは、政府と民間の研究機関などとの間での「リボルビングドア」が浸透しています。デジタル庁の設立を機に、日本でも民間と官公庁の間で人材の流動性は高まるのか、今後の成り行きが注目されています。
―フローレンスのリボルビングドア
フローレンスは、「政策提言」「事業開発・運営」「ソーシャルアクション」という3つの活動軸を連携させることで、国内の親子領域における社会課題の構造的解決を目指すNPO法人です。
例えば、自社でモデル事業として運営をはじめた「小規模保育所」をロビイングにより国策化して全国の待機児童問題の解決の一翼を担ったように、社会課題を解決する新しい事業モデルを開発し、それを国の制度とすることで国全体での課題解決を推進しています。
また、現場を知る立場から子どもや子育てに関する課題に関する生の声とニーズを政治と行政に届け、制度の設計に直接関わっていくこともフローレンスの主要な活動となっています。
このように、スピード感を持って社会変革を進める上では、官と民の連携が不可欠です。2022年度、フローレンスからも7月に前田が官公庁へ登用されました。
■フローレンスから官公庁へ
前田晃平(まえだ こうへい)
フローレンスで代表室長を務めていた前田は、7月から内閣府こども家庭庁準備室(2023年4月からは「こども家庭庁」)に登用されました。
フローレンス在籍中には、代表室長として政策提言、新規事業開発、人材育成などを行ってきました。
自らの育児経験を公開したnoteが話題となり『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ! ママの社会進出と家族の幸せのために』(光文社)として書籍化。男性の育児参画を訴えてきました。また来年度設置予定の「子ども家庭庁」の立ち上げ時から、「日本版DBS」創設に向けて多くの提言をしてきました。現在、「内閣府こども家庭庁準備室」にて、今までの知見を活かして、政府の立場から、真に子どものための組織・制度になるよう働きかけを行っております。
■官公庁からフローレンスへ
官公庁からNPOであるフローレンスに参画し活躍しているスタッフも複数名います。
米田 有希(よねだ ゆき)
フローレンスで現在代表室長を務める米田は、 厚生労働省で約19年間、主に医薬品や医療機器の承認・輸入、
再生医療等に関する業務に従事し、2020年にフローレンスへ参画。国や自治体への政策提言を進めるチームを組成し、
マネージメントを行っています。
これまで、関係府省や国会議員などに対して、「こども宅食」を始めとする多くの政策提言を行い、実現してきました。厚生労働省の職員として働いていたときには、「変える」ことの難しさを感じていましたが、今は、外から霞が関に働きかけることで「変えられている」実感があると言います。引き続き、すべての親子が笑顔で生きられる新しいあたりまえを社会につくることを目指して、官僚、国会議員、他のNPO等と共により良い政策をつくります。
米田が弊会に加入したことで、主に代表理事の駒崎が行っていた政策提言を、チームで行うことができ、より質の高い提言をスピーディーに進められるようになりました。
他にも、フローレンスには、厚労省・文科省・法務省出身のスタッフもおり、官公庁での経験を存分に生かし、フローレンスの事業を中心となって支える人材となっています。
―民×官の力で、質を高めてよりスピーディーに「よりよい社会」を目指す
認定NPO法人フローレンスは、「いろんな家族の笑顔があふれる社会」を目指し、病児保育事業、認可保育園事業、障害児保育事業、こども宅食などの事業を行っています。
そして、社会課題への「小さな解」を自ら実践しながら、政治や行政と共に制度として広げ、それが全国に広がることで多くの親子が救われるよう、社会課題解決のイノベーションを牽引しております。自らが事業を行っていることで、現場の課題がわかる、現場の声を聞けるという強みをもっています。
2019年に、内閣府と厚生労働省からの国家公務員兼業者の受け入れを行い、官民混成の「政策シンクタンクチーム」を立ち上げました。そして今は、新たに加わった官公庁出身のスタッフらによって、よりスピーディーに質の高い政策提言を行っています。
社会課題の解決には、多数のステークホルダーとの連携が不可欠ですが、特に社会の土台や仕組みとなる制度設計には、国や行政と民間が共に関わることが不可欠です。
国民、市民のニーズや実態を把握し、専門スキルも持つ民間と、制度設計と運営のプロフェッショナルである官公庁がタッグを組むことで、スピード感を持って、社会をより良くアップデートしていくことができます。
フローレンスは引き続き、官民の人材往来を推進し「リボルビングドア」を活用した社会変革に取り組んでまいります。