松野 洋希|CTO兼CHRO|2010年f4samurai創業
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M|サーバサイドエンジニアリーダー|2014年f4samurai入社
f4samuraiの創業者の1人であり、CTO・CHROを務める松野と、サーバサイドエンジニアリーダーのM。二人はSIer時代からの同僚。
SIerからゲーム業界への挑戦についてや、今後どんなエンジニアと共に働きたいかを話し合った。
相手がどんな人なのか知りたい
その思いで応募者と向き合う
――お二人は採用面接をご担当されています。
f4samuraiの社員さんにインタビューすると、共通して出てくるのが「他社とは違って、採用面接で人間性を見ようとしてくれていると思った」「スキルだけでなく考え方や人柄を重視していると感じた」というお話です。その辺りは意識されていますか?
松野「ああ、確かにそうかもしれない。『高校時代何考えていましたか?』『友達からなんて言われますか?』とか、そういうことをいつも訊いてますね。それがいいのか悪いのかはわからないけど。採用面接で定型的な質問をしてもしょうがないかなって思ってるところはあるんです。
だって、事前に想定してきてくれてるテーマについて問答するっていうのは、お互いにムダなんじゃないかって思うんですよ。あとはぶっちゃけ、僕が他の会社がどうやって採用面接をしているのか知らないっていうのもある(笑)」
M「ああそうだ。そうですよね。だって松野さんが採用面接を受けたのって、新卒で会社に入ったとき以来ないわけでしょう?」(注:CTO・CHROの松野は新卒で入った野村総合研究所を辞めてからf4samuraiを立ち上げ、以来経営に携わっている)
松野「うん。僕が他の会社の面接を知らないんだよね(笑)」
正解のある質問にはあまり意味がない
松野「志望理由とか、頭の中にある考えを話すっていうのは、言おうと思えばいいことばっかり言えるじゃないですか。未来に関する質問って嘘がつけちゃうのかなって思っていて。『何がしたいですか』『弊社を受けた志望理由はなんですか』っていう質問には、話をふくらませていいことが言えるでしょう。
だから過去のことを訊いているっていうのはあるかな。過去のことについては人間そんなに嘘がつけないから、人柄やその人の考え方が見える」
M「そうそう、結局、面接での技術的な質問にもそういうところがありますよ。
僕はいつも、松野さんが一通り候補者さんの考え方について聞いてくれたあとで、技術についての質問をさせてもらっています。いまの定型の質問をしてもしょうがない、というのはテクニカルな領域にも通じる話ですね。もしあなたが業務でこういうシチュエーションに出くわしたら、どんな方法を選びますか?そのやり方を選んだ理由はなんですか?とか聞いていますが、それで話してくれた理由がその方なりの合理性を持った答えだったら、それでいい。絶対の正解というのはないと思うので、その人の理論に沿ってロジカルに説明してくださっていたら、それでいいと思っています」
松野「そうね。Mさんは応募者のテクニカルなスキルレベルを見てくれますからね。そこのアセスメントは信頼しています。面接としては、忘れた頃に技術の話が来る、みたいなね」
M「自分は正解のない質問しかしないですね。だって技術に関して正解のある質問ってクイズでしかないんですよ。あなたがこういう場面に出くわしたら、何を選びますか。選んだ理由はなんですか。そう尋ねて、それで話してくれた理由がその人なりの正解だったら、その人の理論に沿って証明できてたら、それでいいんです。正解はないんですよ。それが『いま流行ってる技術を使います』とかの回答だとやっぱり途中でつまずくんですよね。『Pythonがいいと思います』って答えてくれて『それはなんでなの?』って尋ねて『なぜならいろんなところで使われてるからです』っていってくれて『じゃあなんで流行っているそれをうちに使おうと思ってくれたの?』で詰まってしまうことが多い。あまり深く考えないで技術を選んでしまうエンジニアって案外いるのかもしれないですね」
松野「そうですね。僕は、ああ意外と難しい質問してるなって思いながら、隣りで静かに聞いてます(笑)」
技術だけじゃなく、自分の仕事が誰に届くのかに興味を持ってほしい
M「一エンジニアっていうよりは、求めてることが一段上なのかなって。ゲームの人でも、他業界の人でもいいんだけど、全体を把握せずにパーツだけつくってる人にはあんまり興味がないんですよ。ちゃんと全体を見ててほしい。自分のつくったものが全体としてどうなって働いて、誰に届いて、どんなふうに感じてもらいたいのか。僕らはゲームをつくってますけど、例えば『これは銀行のシステムと同じだな』って部分はあるわけですよ。課金のところなら、見た目上はゲームの画面上のボタン押されてるだけでも、そこからAppleなりGoogleなりへ飛んでいって、決済してまた戻ってきてっていう処理をしているわけで、裏ではお金が動いてるわけでしょう。だから、自分のつくってるパートについてしか興味ないよっていうのはどうかなって思うんです。まあその部分についての知識があれば実際つくることはできるんでしょうけどね。でもそれじゃつまんなくないですか? 楽しくないでしょう? そういう感覚を持ってる人に来てほしいんですよね」
松野「たしかに、そういう意味ではゲーム業界の人かどうかってのは関係ないですよね。ネイティブエンジニアはともかく、フロントとかサーバは他の業界から中途で来てくれてる人がたくさんいますからね。うちの会社としては、前職がゲーム業界かどうかってのにはこだわりはないですね」
M「そのこだわりは全然ないですね。逆にゲーム業界から『ゲームでサーバエンジニアやってました』って来るパターンってあんまりないかもしれませんね(笑)。全然違うところから来てくれる人が多いですよ。他業界からだと入りづらいかもしれませんけどね。自分のやってきたことはゲームじゃ役に立たないんじゃないかとかね。でもゲームっていっても中身はただのWebシステムってところありますから。もう、全然役に立ちます。来てください!」
松野「ぜひ来てください!」
高校の帰り、毎日寄り道しては
アーケードゲームに打ち込んでいた
M「『もともとゲームは好きで興味あったけど、やっぱりゲーム業界とか不安定かなとか思って新卒のときにSIer入っちゃった』みたいな人、いると思うんですよね。いないかなぁ。そういう人、来てほしいですね」
松野「はははは。いるかな。いるのかな。ああ、でも、Mさん、もともとアーケードゲームやってたんでしょ?」
M「やってました、やってました。学校行かずにやってた。オンラインゲームとかない頃からですよ。高校のときに自宅から電車乗って通ってて、帰りの電車をですね、自宅の最寄駅では降りずにずっと乗ってるとなんば駅に着くんですよ。そこでゲームをするんです。寄り道ですね」
松野「それは寄り道っていうの? ほら、乗り過ごしてるわけでしょ」
M「そうです。定期外なんですよ。だから電車代がかかる。高校時代の僕は電車代をかけてでもなんばのゲームセンターに行きたかったわけです。なけなしの昼食代を交通費に回して、そんな思いをしてでもゲーセンに通ってたんですね。で、ご飯代も交通費に回しちゃってお金がないから100円でゲームし続けるには、勝つしかないんですよ。負けるわけにはいかないんです。わざわざお金かけて定期外に遠征しているわけですからおめおめとすぐ帰るわけにはいかない。そんなシビアな状況で戦ってきたんです」
松野「なるほど。自分をそうやって追い込んでたわけね」
M「しかもね、その頃やってたのはセガさんのゲームでしたよ。ゲーセンも、セガさんのゲーセンでしたよ。(注:f4samuraiはセガにとって持分法適用会社にあたります)でも就職するときにゲーム業界に入りたいって感覚はなかったな。ゲームが仕事になるって発想はなかった。そんなこと考えたこともなかったですね。学校出たら当然働くとは思っていたんで、『お金を稼ぐってどういうことなんだろう』って感覚で、まあ普通に就職したんですよ」
地元・大阪で就職したつもりが
研修で東京に来てそのまま十数年
松野「最初は開発会社に入ったの?」
M「そうです。SES(システム開発・保守・運用などの技術者を派遣するサービス)をやっているような開発会社に入って、僕は大阪支社採用だったんですけどね。入社して『3ヶ月間だけ研修で東京本社に行ってきてね。向こうに寮があるから大丈夫』っていわれて、荷物持って東京に来たら、そのまま10年戻れなかったんですよ」
松野「ひどい(笑)。Mさんは大阪で就職したつもりだったの?」
M「そうですよ。地元で就職して……。東京に来る気はなかったんですよ」
松野「そうだったんだ。それで、僕と出会ったのはいつ頃なの?」
M「入社4年目ですかね。さっきいったように、自分は何がしたいとか、志はないままに就職したから仕事が全然面白くなくて。ただ、もともと親がPCソフトの会社やってたり、兄2人が理系だったので、実家に住んでた頃(1990年代後半)、家族全員1人1台ずつPC持ってたんですよね。当時はまだ大卒でもPCのことよく知らないよって時代だったんですよ。だからそういう意味ではPC関連の情報についてはアドバンテージあったのかもしれないですね。でも、それでというか、だからこそなのか『つまんねーな。つまんねーな』って毎日思って仕事してて、そしたら前職の会社に引き抜かれたんですよ。『お金たくさんあげるよ。やりたいこともやらせてあげるよ』っていわれて。
でも、やらせてもらえなかったんですよ」
松野「だはははは。Mさん、つくづくだまされてる(笑)」
起業してすぐ声をかけたかったけど
給料が出せなくて呼べなかった
M「そうですよ。頑張ったら社員にもなれるよっていわれて」
松野「ははは。その方って僕の前職時代の元上司のことじゃないですか?」
M「そうです。でもね、そこで松野さんに会ったんですよ。だから人生どこで何があるかわからないですよ。それで25歳とかで松野さんに会って、そこから12年来の」
松野「12年か、長いね。もうそんなになるんだ。うん、長い」
M「それでほどなく松野さんが辞めて、この会社をつくって」
松野「なんかその後も定期的にコンタクト取ってましたよね」
M「うん。当時のお客さんを介してかな、たまに会ってたじゃないですか。でもそんなに回数はないですよね。ただ、風の噂に松野さんたちがなにをやってるかは聞いてたんですよ。びっくりするくらいしょうもないゲームつくってるって噂を」
松野「だははははは(笑)。そうね。しょうもなかった、確かにしょうもなかったですよ。
僕としては、すぐにでもMさんに早く来てほしかったんですけどね。給料出せないから呼べなくて」
M「ああ、そうですよね。サーバエンジニアって、相対的に人件費が高いは高いんですよね」
松野「うん、サーバエンジニアってなると、ゲーム業界だけじゃなくてどこにおいても必要な人材ですからね。一般的なビジネスの会社と採用面で競っちゃうから、単価が高くなるんですよ」
ゲーム業界でもイケるんじゃないか、
ダメならSIerに戻ればいいかって
M「それで、松野さんの噂も耳にはしてたし、なんか僕、ゲーム会社でも食っていけるんじゃないか?ってふと思って。最悪、ダメなら SIerに戻ればいいやって思って。多分オルサガつくってるときですかね。2012年、3年の頃かな。7年前? Fさん(f4samuraiの同じくサーバエンジニア)に電話かけて『僕、ゲームつくったことないけどつくれんの?』って訊いたんですよね。なんでかFさんの電話番号だけ携帯に入ってて、かけてみた。これほんまにFさんかな、番号変わってんちゃうかなと思いながらかけてみたら、Fさんが出た。『f4ってどうなんですか?エンジニアいりませんか?』って。そのときは僕、自分がサーバエンジニアだとはそんな自覚はしてなかったですね。だから単にエンジニアって名乗ってました」
松野「ああ、そうだったんだ」
M「そしたらFさんに『エンジニア?うん、多分要ると思いますよ』っていわれて松野さんに会って」
松野「そうだ。あの頃まだ神田のオフィスだっだよね。それであの辺にワニとかダチョウとか出すお店があって、そこで会って」
M「そうですよ。ワニとかダチョウとか食いながら」
松野「そうそう。ワニとか食べながらお金の話したんだ」
M「僕はね、半信半疑でした。松野さんと会って、そういう条件面の話をしてもらってもまだ、ゲームとかできんのかね、本当にそんなんで仕事になるのかね、って内心思ってました」
松野「やっぱわかんないですよね。外から見たゲームって、そういうイメージありますよね。特にソーシャルゲームは」
異業種のゲームだと身構えていたら
知っているWebと変わらなかった
M「わかんなかったですね。僕の中のゲームのイメージは、やっぱりソシャゲだといっても何かしらアーケードとかコンシューマの流れを汲んでるのかなと予想してたんです。それがまあ、入ってみたら Webでしたね。フルでWebでした。まあ、オルサガからネイティブがちょっとずつ入ってはきてたけれども、『こりゃ、これまで僕が仕事でつくってきたものとあんま変わんねえぞ』ってびっくりした覚えはあります。かつ、つくりがね。創業3人の出自(f4samuraiの経営の3名は野村総合研究所の新卒同期)からして、Webで仕事してきたのが長くて、それがベースになってるから不利だろって思うことはありましたね」
松野「不利って?」
M「性能ですね。性能上これじゃあ不利だろって。結局、そこで使われてる技術って自分がそれまでやってきたものと同じだったから、わかるといえばわかるし、弱いところも見える。それで入社してまずPvPをつくったのかな。で、性能テストやって。当時は僕の上にリーダーが1人いて、その人に『何ができそう?』って訊かれて、リーダーがGvG(Guild Versus Guild)受けたりインターフェイスの部分をつくって、僕がバトルを1個受け取って動かす、保存する、っていうのをつくって。とにかくできそうなところから手をつけていった。まあ、そんな感じでも大丈夫なので、ある程度プログラムに興味ある人はもうどうぞゲーム業界来てくださいって感じです」
松野「はははは(笑)。まあね、それで2014年の新作開発からはMさんにリーダーしてもらって、アーキテクチャ選定から考えてもらったり、インフラ含めてお任せして」
M「そうですね。そのころからはクラウドですね。クラウドが絶対的によいのかっていうと別にそうとも限らないって思うんですけど、そのくらいの年代からはクラウドのほうが運用コストを見ても妥当になってきたんですよね」
枯れた技術で信頼性とコストメリットを担保しつつ、
新たなチャレンジを仕込む
M「うちの伝統なのかわからないですけど、率先してめちゃめちゃ新しいものを導入するってことはないですよね。ベースとして、比較検討して、安いもの、安定しているもの、信頼のおける枯れた技術を使う。それが基本方針だと感じてます。例えば『クラウドが流行ってきて、クラウドにしたいから、する』だと、手段が目的になっちゃってるから、そうなるとだいたい失敗する。クラウドにしたほうがこういうメリットがあるからする、ならいいんだけど」
松野「ま、そうだね。VR使ってみたい!何々使ってみたい!で使うと失敗するよね。そういう技術の罠にはまらないように気をつけてる部分はある。それが古くさいって感覚を持たれたりすることもあるけれど。
でも別に、うちの最新作を見ても、他社よりわざわざ技術的に古いものを使ってるって部分はないけどね。新旧の技術のいいとこ取りをしていっているつもり」
M「それでも、どっちでも目的を達成できる場合、松野さんは古いほうを選ぶタイプでしょう?」
松野「うーん(苦笑)、そこはメリット・デメリットそれぞれだと思うけど。エンジニアである以上、どこかにテクニカルのチャレンジを入れたい、って気持ちはあるよ? ワガママだけどどこかには入れたい、新しい手段を試したい。古い技術を好む人もいれば、新しいものを好む人もいて、その両方の人がいて、バランスを取っていくんじゃないかな」
M「そうですね。ただ、サーバにおいて革新っていうのが……うーん、これから先、起きるのかな」
松野「そうですね、ロジックはもうFIXしてるからね。だから、サーバがやる領域を広げてくしかないよね」
プランナーの出す要件に対して技術的なNOはいいたくない
松野「うちの会社のエンジニアの合言葉として、『プランナーの出してきた要件に対して技術的なNOはいわない』というのがあるじゃない。もっとこうしたら、という提案で返すことはあるかもしれないけど、できないってあきらめることは絶対にしたくないでしょ。そういう矜持は持ちつつも、堅く保つところは手堅く固めて、その一方でAIとか機械学習とか新たに広げていくところは広げていきたいよね。安い・早い・うまいじゃないけどさ、そういうバランスの良さをサーバエンジニアが支えられるところは支えられるんじゃないかな」
求む!
ゲームの先にいるユーザーさんの姿を想像できる人
M「この先、どんなメンバーに来てほしいっていうのはあります?」
松野「あんまり年齢とか経歴はこだわりないな。どんな業界にいた人でも、何歳くらいの人でも。
僕、Mさんが技術的に見られる範囲の深さと広さは信頼しているので、お任せしたいと思っているんです。テクニカルな部分ではもう、僕よりも高いスキルの人たちが社内にいると思っているし」
M「スキル以外の面ではありますか?」
松野「視野の広い人、視点の高い人がいいですね。全体が見られる人、つくっているものの先にいるユーザーさんの姿が見えてる人。Mさんもさっきいってたけど、技術にしか興味がないんじゃなくて」
M「ああ、自分のつくってるものについてしか興味ないっていう人は困るっていうか、そういうんじゃ楽しくないだろうって思いますね」
松野「そうそう。つくったものの先に誰がいるのかわかった上で仕事してくれる人がいいよね。僕らのつくってるものってBtoCだからつくって終わりじゃなくて、ユーザーさんがゲームに出会って、体験してくれて、喜んでくれて。そういうところまで想像して仕事してくれる人が来てくれるとうれしいよね」
M「ですね。なので、他業界からだと入りづらいかもしれませんけど、やってきたことがゲームじゃ役に立たないんじゃないかとか、もう全然思う必要ないんで。もう、全然役に立ちますので。ご興味のある人は、来てください!(笑)」
松野「ぜひ来てください!(笑)」