兼業・副業の広がり
ランサーズ株式会社が実施した「フリーランス実態調査2017年版」によると、日本における広義のフリーランス数は1122万人と推計され、今後ますます増えていくとされています。
モデル就業規則の改定も控え、間違いなく2018年は副業元年になるでしょう。企業は副業解禁する会社とそうでない会社に大別が進み、優秀層の人材獲得の可否にも影響が出てくるかもしれません。
エッセンスでは、「新しい、仕事文化をつくる」をミッションに掲げ、企業には「雇用から活用へ」、個人には「自立した生き方を」提唱しています。まもなく平成が幕を閉じ、新たな元号を迎えようとする昨今、副業解禁やフリーランス人材の拡大の流れを中心に大きく企業と個人の関係性が変わろうとしています。
老舗印刷会社のプロ活用
エッセンスでは、「プロパートナーズ」という経営課題に対して1,000名のプロフェッショナル人材から最適なプロ活用を提案し、プロジェクトの創出・推進を行うサービスを提供しています。プロの方々はフリーランスや経営者を中心した兼業ワーカーが中心で、会社の承認を得て副業として活動される方が一部いらっしゃいます。
私が担当した企業に、創業60年を誇る下町の印刷会社がありました。社員30名を率いる2代目社長からのご相談を受け、悩みをお聞きすると、ただでさえ斜陽産業で顧客の母数も減るなか、ネット印刷に顧客が流れ、かつ、新規開拓への社員のモチベーションが低い、とのこと。
一方で、社員の方にお話を聞くと、既存企業のフォローもあるなか、戦略なしに売上アップだけ叫ばれても、時間もないし、やる術もないという意見を持たれていました。
私は、具体的な営業施策と営業管理の不在に問題を感じ、展示会やイベントのブース制作を手掛けるある上場企業の現役の常勤監査役の方を提案しました。
その方は営業の統括や新規事業の推進を経験後、全社の人事評価制度の策定にも関わった方で、まさに新たな戦略づくりとその実行のための組織づくりに長けた方です。
この印刷会社ではまず社長と社員のベクトル合わせの必要性を説き、社長とともに60年の歴史の中で初めての社員総会の準備を進めながら、営業の戦略づくりと社員の営業プロセスの改善活動を進めていきました。
週に1回の出社の中で、営業会議に出席し、社長とのミーティングを行うスタイルで上記の支援を行って頂き、当初はコンサルは信用できないと導入を渋った社長も、その方の活動に絶大な信頼を寄せるようになりました。
昔ながらのスタイルの企業であっても、その企業の伝統を踏襲しながら、たしかなノウハウと情熱を持ったプロとの共闘で、新たな組織に生まれ変わることができることを実感させられました。
大手放送会社のプロ活用
大企業でも週1日のプロ活用はますます広がってきています。ある会員制の放送会社では、新規事業のプロをマッチングさせて頂きました。
NetflixやHuluなどの動画のネット配信サービスに押され、ユーザーの落ち込みに悩んでいたこの会社では、経営陣からの要望で新規事業開発に力を入れることに。早速、全社からアイデアが公募され、多くのアイデアが集まったものの、これをどう形にすればいいのか考えあぐねておられました。
そこで、大手リサーチ会社で事業開発を幾度も行ったプロに参画いただき、アイデアの精査と先鋭化をしながら、事業計画への落とし込みを共同で行っていただきました。
このプロの方が得意とされていた「あまねくステークホルダーを納得させるプラン作り」の本領を発揮していただき、既にある中期経営計画のビジョンに紐づくメッセージを掲げた新規事業プランが出来上がり、会議の場で担当の方が「これは是非やりたいです」の力強くおっしゃっていたのが印象的でした。
鳥取・高知がプロ活用に積極的な理由
近年では、地方でのプロ活用も広がりを見せています。地元ではなかなか採用のできないハイスキルな人材も、東京からの出張またはリモートでのプロ活用により獲得が可能になるからです。
意外なことに、特にご相談が多いのは鳥取や高知なのですが、両県は県別のGDPでも低迷しており、「このままでは生き残れない」という危機感が自治体、金融機関、企業のそれぞれで強く持たれていることが背景にあります。
このように、今後、規模やエリアを問わず、広く兼業・副業ワーカーを受け入れ、イノベーションを起こそうと考える企業は増えていくのではないかと思っています。
越境が、イノベーターを産む
昨年は、次世代リーダーの開発事業も新たにスタートさせました。週に4日(7割)は本業を行いながら、週に1日(3割)はベンチャーで修行する他社留学研修「ナナサン」の提供を行っています。
これまで以上に曖昧模糊としたビジネス環境において、座学で行う能力開発だけでは必要なスキルやリーダーシップは育たないというのが、大企業人事の中で異口同音に唱えられはじめています。これからはマネジメント環境にない中で、自ら意思決定を行えるリーダーが求められ、そのための機会開発が必要とされています。
ナナサンでは、わざと日々の仕事の中にタフな経験を織り込み、それを3ヶ月間(90日間)完遂することで、一過性ではないベンチャーに順応した自分を手に入れてもらいます。
今の組織とは違う環境にいる自分をつくることで、元の組織に違う空気を送り込んでもらうのです。
プロデューサーが組織にエッセンスをもたらし、イノベーションを創出する
エッセンスでは、プロパートナーズサービスや人材紹介事業において「企業と個人」をマッチングする人、また、ナナサンサービスにおいて「研修者の送り手企業と受け手企業」をマッチングする人を「プロデューサー」と呼んでいます。
イノベーション創出のためのダイバーシティ(多様性)推進が鍵を握るこれからの時代、組織にどのようなエッセンスをもたらすかは大きな課題であり、我々プロデューサーは重要な役割を担うものと思っています。
あらゆる領域・地域を越えた価値あるマッチングを通して、ポスト平成の企業と個人の成長に貢献するプロデューサーとなれるよう、邁進して参ります。