【日本人×メキシコ人 社員対談】甑島で出会った日本人シェフとメキシコ人デザイナー。メキシコで日本食文化を発信する魅力について。
ラテンアメリカを舞台に飲食店の運営と広告代理店・制作事業を行うEncounter Japanの社員対談インタビュー!日々一緒に働く、メキシコ人と日本人メンバーの本音に迫ります。
今回対談を実施したのはこの二人!
-現在お二人がどんな仕事をしているか教えてください。
Peru: Encounter JapanのFood & Beverage事業部では現在、ケレタロ市とレオン市に各一店舗ずつある「GOEN/御縁」という本格的な日本食を提供するレストランと、世界遺産の街 グアナファト市にある「Delica Mitsu」ではお惣菜を中心とした家庭的な日本食を提供するレストランの合計3店舗を運営しています。
僕はその3つのレストランを統括する総料理長を務めています。厨房でのオペレーションはもちろん、日本人そしてメキシコ人シェフの教育や新規メニューの考案などを行っています。また新店舗開発に向けても率先して企画・実行する等している他、メキシコ国内の様々な場所で日本食のセミナーやイベントに登壇しています。
Juan: 僕はグラフィック・デザイナーです。各店舗のメニューやフライヤーのデザインは勿論、プロモーション用の写真撮影なども担当しています。レストランの存在、そして魅力をより多くの方々に伝える役割を担っています。
2018年、まだ大学生だった僕はEncounter Japanが運営するレストランでキッチンのアルバイト・スタッフとして料理を実際に調理していました。グアナファト大学デザイン学科を卒業した後、Encounter Japanで新卒のデザイナーとしてキャリアをスタートします。黎明期だったEncounter Japanに入社した当時は、4人ほどの従業員が肩を寄せ合ってPCを叩く、そんな小さなオフィスで勤務していました(笑)。Encounter Japanでの社歴はメキシコ人の中では相当長いと思います。
-お二人の出会いについて教えてください。
Peru: 確か、初めての出会いは鹿児島県の甑島ですね(笑)。当時は日本でEncounter Japanが運営していた飲食店で働いていたのですが、社長である西側の急な提案で鹿児島出張に同行することになったのですが、その最終目的地だった甑島でJuanと出会いました。
Juan: とても偶然で面白い出会いでした。僕は2018年にグアナファト州政府の海外研修プログラムを通じて3ヶ月の間、日本に滞在する機会を頂きましてEncounter Japanと繋がりの深い「東シナ海の小さな島ブランド会社(英称: island company)」で働いていたんです。僕がメキシコに帰国する直前の送別会でペルさんに出会い、二日酔いで翌日一緒にラーメンを食べたことを覚えています(笑)。当時はまさか、メキシコで一緒に働くことになるとは夢にも思っていませんでした!
Peru: そうだね!(笑)。日本で過ごした時間は短かったけど、Juanの印象は強く残っているなぁ。日本中の大半の都市でも同様ですが、甑島に住んでいる方々の大半は英語やスペイン語が話せません。「言語のコミュニケーション」を通じた意思疎通がはっきりと出来ない環境でも、多くの島民の方々に愛されているJuanを見て「この人はきっと優しい人なんだろうな」と感じたのを覚えています。
Juan: 言語を通じたコミュニケーションが取れない点は確かに困りましたが、island companyや島民の方々と「食事」などを通じて同じ時間を共に過ごせたことで、お互いが「感情」を共有できたことが印象深いですね。まさに甑島での日々はメキシコ人である僕にとって「別の世界に住んでいる」感覚でしたが、とても幸せな時間でした。食事だけではなく、色んな方々と共有した時間やアクティビティを通じて、自分の気持ちが甑島の方々にも伝わり、通じ合えたことも感慨深い思い出です。もちろん、Google 翻訳にも頼っていましたけどね(笑)。
-和食や日本文化をメキシコに発信する日々で、どんな想いを抱いて働いていますか?
Peru: 和食や日本文化は日本の四季と根強く繋がっています。メキシコ人に限らず、外国からのお客様に対しても私たちが提供する食事やサービスを通じて「日本の四季」を感じて頂きたい、という気持ちが強いですね。またメキシコに滞在されている日本人の方々に対しても日本を忘れず、日本を感じとって頂きたいと思っています。一方で、メキシコの気候は年間を通じて穏やかであるものの、日が上っている間は暑く、夜は冷え込むというように、日本の四季とは異なります。
また日本では当たり前に手に入る食材が調達できない難しさもあります。ただし「無いもの」を嘆くだけではなく、例えば「この食材を使ってみれば、あの味に寄せられるなぁ」といったように、知恵を絞って工夫することで、提供したい日本食をメキシコ国内で実現することが楽しかったりもしますね。
Juan:「日本」と「メキシコ」はとても異なる国で、文化も違います。僕は日本に行った経験があるので、その違いを他のメキシコ人以上に強く理解できていると思います。だからこそ、日本からメキシコに帰国した際に「日本での素晴らしい経験を、多くのメキシコ人にも体験してほしい」と感じたんです。「日本ではこんな食事を食べるの?」だったり「そんなコミュニケーション方法を取るの?」など殆どのメキシコ人が知らない世界や文化が日本にはあります。多くのメキシコ人が知らない「日本文化」に触れてもらうことで、新たな経験や学びを得てほしいなと思って日々仕事に取り組んでいます。
-メキシコに日本を発信するうえで心がけていることは何ですか?
Peru: 心掛けていることは、できる限りオーセンティックな日本のものをお届けすることですね。訪日旅行の経験があるメキシコ人のお客様から「日本で食べた味と同じ」と仰って頂けることは、やっぱり嬉しいです。もちろん、メキシコ人の趣向に合わせたフュージョン的な日本料理にも存在意義があり、素敵だとは思いますが、当社には日本人のシェフが4人いるので、私たちは可能な限り日本のオーセンティックなものを再現し、お届けしたいです。
「日本の味」に触れることで安らぎを感じて頂き、日本に在住・訪問経験のあるメキシコ人や日本人の方々に対しては「日本」を思い出して頂きたいですね。このような拘りに関しては今後も曲げずに頑張っていきたいですね。「メキシコにいながら日本を感じてもらう」という顧客体験を実現することを大切にしたいです。
Juanちゃんは日本を発信するうえで何を大切にしているの?
Juan:「発信する側の自分自身が楽しむ、そしてお客様にも楽しんでもらう」ことが大切だと思うね。多くのメキシコ人に和食や日本文化という「新しいもの」を経験して頂き、それを受け入れてもらうためには、新たな経験を楽しむ姿勢が最も重要だと思っています。
日本を発信する僕たち自身も、Encounter Japanで働く日々を通じて新たな日本に関する体験を得ています。僕たち自身がその経験や学びに触れて楽しむことが出来なければ、お客様に「楽しさ」を提供することはできません。まずは僕自身が和食や日本文化という新しい経験に触れ、日々学ぶことで楽しみながら仕事することを心がけています。
-日本文化や日本食を発信する上でのアイデアはどのようにして得ていますか?また何にインスピレーションを受けていますか?
Peru: 僕が大事にしてるのは「その料理を自分が食べたいか」という点ですね。また「自分が恋しい」と思うものが、お客様にとっても「恋しい」と思って頂けるかどうかをしっかりと考えるようにしています。また日本人の従業員やお客様が「あれ食べたいなぁ」とポロッと話していることをヒントに、まずはイベントや期間限定で提供し、反応を見てみることが多いです(笑)。
一方でメキシコ人が求めているものを正確に把握し、形にしていくことは難しいですね。僕の場合は、まずメキシコ人スタッフに対して、僕自ら料理を準備して食べてもらいます。「この料理、めっちゃうまい!」と喜ばれると「この味。この料理が刺さるんだ」というデータが積み上がっていきます。「なんで反応が悪いんだろう?なぜこの味が好きなんだろう?」これを繰り返していくこと、そして試行錯誤することで、おのずとアイデアや知識が増えていきます。
またメキシコ人に対して、素直に聞くこと。そしてその「聞く」姿勢が大切だと思います。例えば調理の過程でメキシコ人スタッフから改善策を受けた際には、僕自身も吸収しています。コミュニケーションの過程で良いアイデアが生まれたりするんですよね。
Juan: 僕はシェフではありませんが、和食や日本の食材からもインスピレーションを受けてアイデアを得るようにしています。Peruが言った通り、日本に存在する食材や調理方法はメキシコのものとは非常に異なります。 その異なる部分をメキシコ人に伝えるために熟考する過程で、日本特有の色鮮やかな表現や、美しい静的な表現などのアイデアが浮かび、新たなデザインが生まれたりします。
時には、日本のデザインから表現の方法を参考にし、自分流のデザインを通してメキシコ人に日本を発信することもあります。またメキシコ人の私だからこそ持ち得る視点で「メキシコ人は日本のこんなモチーフが好きだろうな」という感覚も大切にしています。
Juan が作成した土用の丑の日用のプロモーションイメージ、メニュー
-メキシコに日本を発信する魅力、そして難点について教えてください。
Peru: 「触れたことがない異文化」を発信し、伝えるというのは難しいですよね。
Juan: そうだね。メキシコ人が知らない「本物の日本食」を提供する。そして満足して頂くというのはハードルが高く、とても難しいことだと思います。オーセンティックな和食や日本文化を知らないメキシコ人の方々は沢山いらっしゃるので、容易では無いですよね。以前、私の家族がGOENに立ち寄って刺身や唐揚げを食べた際に、あまり口に合わなかったということがありました。私の家族は日本食レストランで食事をすることで「カリフォルニアロール」のような、メキシコ人にとってもある程度馴染みのあるメニューを期待していたと思います。このように、身近な例をとってもEncounter Japanが実現したい、取り組みたいことが容易では無いことが分かります。
一方で、多くのメキシコ人が本物の和食、そして日本文化に対して興味を抱いていることも事実です。様々な高いハードルがあるものの、色んな社内のメンバーが協力した上で提供する食事やサービスを通じて、メキシコ人の方々が「日本」という彼らにとって「新しいもの」を好きになってくれる姿を見ると嬉しいですね。この仕事の一番の魅力だと思います。
Peru: 確かに、和食を通じて日本文化を体験し、喜んでいらっしゃるお客様やスタッフを見ると楽しいと感じるね。一例ですが、節分の日には日本の風習に則って恵方巻きを提供したんです。すると「それはなんだ?」と集まってくるメキシコ人スタッフたちが皆、同じ方角を見て恵方巻きを食べている。という光景が面白くて、これも良い思い出の一つですね。
最前線で僕らのサービスを支えてくれているメキシコ人スタッフにとっても、和食は「知らない国の料理」なので、日々「これは何だ?」と質問の嵐がとんできます。日本食を通じて「日本ってどんな国なの?」と日本に興味・関心を持ってくれることも嬉しいですね。「この店があって、一緒に働くことができてよかったなぁ」とも思います。
これからも共に働く従業員に日本をもっと好きになってもらいたい。もっと知ってもらいたいと考えています。日々の仕事は厳しいことも多く、驚くようなトラブルも日常茶飯事なので辛いことも多々ありますが(笑)、従業員のメンバーが少しでも成長してくれると嬉しいですし、この仕事の面白さや、やり甲斐を感じますね。日々の苦労を忘れさせてくれます。
-和食、日本文化をメキシコ、ラテンアメリカに発信する上でこれから取り組んでいくことは何ですか?
Peru: 将来的にやりたいことについては、日本とメキシコのフュージョン料理を提供する店舗にも興味がありますし、GOENよりもハイクラスで少人数向けの和食店にも挑戦したいですね。品目を絞ってカジュアルな日本食レストランを展開することも社内で協議してますが、いずれにせよ現ブランドとは異なる形態で店舗を立ち上げたいと考えています。これらの詳細は未だ決まっていないのですが、僕個人の想いとしてはメキシコ人がシェフとしてチームのトップに立てるレストランを今後創っていきたいですね。
特にGOENではオーセンティックな日本食に拘り、メニュー数も豊富であることから日本人が責任者の立場としてチームを牽引しているものの「日本人がいないと機能しない」という組織は不健全ですし、中長期的に続けていくことはできません。
日本人とメキシコ人にはお互いに良いところ、悪いところがあります。「日本人だから、メキシコ人だから」といったステレオタイプの価値観でボタンの掛け違いを繰り返していくのではなく、お互いが手を取り合って成長していきたいですね。僕たちが掲げる「ラテンアメリカと日本の新しい歴史を創り、人々の人生を豊かにする」というビジョンの実現にはメキシコ人がもっと輝ける職場作り、そしてメキシコ人が憧れる会社作りをすることが必須だと思います。
Juan: 僕はメキシコの文化やお祭りを日本でプロデュースやオーガナイズする等してみたいですね。2019年にEncounter Japanとしてレオン総領事館と共催で日本文化の発信イベント「Tu y Japon」をグアナファト州レオン市内で実施したのですが、このような文化発信イベントを今後はメキシコ文化にフォーカスして実現してみたい。
僕が日本に滞在した時、日本の祭りやイベントを通して日本酒やお茶、着物など様々な文化に触れることができました。甑島に滞在した際にはトルティージャをAmazonで買って(笑) メキシコ料理を島民の方々に振る舞う機会がありました。
もっとメキシコの素敵なクリエイティブを活かしたり、メキシコの食材を調達する等して、本物のメキシコ文化を多くの日本人の方々に触れて頂ける機会を創出できればと夢見ています。今後も「お互いの国を感じあえる」。そんな意義あることに取り組みたいです。
そういう意味では、Peruが言ったように「国と国との懸け橋になる」ような、本当の意味での異文化交流を実現させることにチャレンジしたいですね。
-Encounter Japanで日本とラテンアメリカの懸け橋になりえる将来の仲間にメッセージをお願いします。
Peru: 僕は日本で働いていた時、自分がやってることに特別な価値を感じていませんでした。メキシコにくると、これまでなんとも思っていなかった技術や料理が、メキシコ人からすると凄い技術や料理であったりします。日本の当たり前がメキシコでは当たり前ではないので、日本で燻ってるくらいなら、メキシコに来て、いろんな夢を一緒に見ましょう!
Juan: メキシコ人・日本人など国籍問わず、Encounter Japanに入社した人々は、新たな経験に触れることができますし、充実した日々が待っていると思います。
またEncounter Japanで働くことで「チームとして仕事をすること」へのモチベーションが高くなるのではないでしょうか。小さな案件、大きなプロジェクトなど幅広い仕事が介在するため、他の会社では得ることのできない経験ができ、人として成長することができる。そんな会社です!Bienvenido!!
今回の対談で、日本をメキシコに発信する二人の情熱が伝わってきました。料理人、デザイナーと異なる立場から、国と国との懸け橋になるということについて知ることができました。
「食」を軸に日本とラテンアメリカの新たな歴史を創ることを目指すEncounter Japanでは、一緒に働く仲間を募集しています。
料理が好きな方、海外で挑戦してみたい方。
少しでもご興味のある方、まずはお話してみませんか?