「私たちのビジネスは、単なる弁当屋じゃないんです。本質は、ビジネスモデルを創って、それを運営していくこと」。
ワオ株式会社の代表 浦谷明は、穏やかな口調でそう語ります。
しかし、そのキャリアは実に激しいものでした。大手証券会社でトップセールスとして活躍した後、ITバブルの渦中ではベンチャー投資家として奔走 。事業の価値を見極め、時には厳しい交渉も乗り越えながら、ビジネスのダイナミズムを肌で感じてきました 。
そんな彼が全くの偶然から足を踏み入れたのが、「弁当事業」の世界でした 。
一見、畑違いにも思えるこの挑戦が、どのようにして独自のプラットフォーム戦略へと進化し、国内外で成長を遂げているのか。
その軌跡と未来、そして彼がこれから仲間になる人たちへ託す想いに迫ります。
オフィス街の「昼食問題」に光を。デパ地下のワクワク感がヒントだった
意外なことに、代表はもともと「お弁当」とは無縁の生活を送っていました 。外食が当たり前の営業マン時代、オフィスワーカーたちが抱える昼食の問題など、想像もしたことがなかったと言います 。
転機が訪れたのは、金融の世界を離れた後のこと。友人から霞が関ビルのリニューアルの話が舞い込み、当時いた女性社員2人に任せる形で弁当販売を始めたのがきっかけでした 。これが予想外の成功を収めたことで、代表は初めて「昼食難民」という言葉に象徴される社会的なニーズの存在に気づいたのです 。
「もちろん、本当に食べられない『難民』はいないと思っています。でも、そこに大きなビジネスチャンスが眠っていることは明らかでした」
ここから、彼の思考は一気にビジネスモデルの構築へと向かいます。自社で弁当を作るのではなく、様々なお弁当屋さんに声をかけ、一つの場所に集めて販売する「プラットフォーム」を作る 。その原型は、多くの人が心躍らせるデパ地下の惣菜売り場でした 。
この戦略は、まさに「両者よし」の関係を築き上げました。お客様にとっては、その日の気分で自由に選べるデパ地下のような楽しさを。一方、お弁当を提供する事業者にとっては、販売機会が広がるだけでなく、日々の売上管理や請求といった煩雑な業務からも解放されるという、画期的な仕組みだったのです。
「集まっていること」自体が価値になるこのモデルは、リーマンショック後で都心に空き物件が多かったことも追い風となり、わずか1年で10~15店舗という驚異的なスピードで広がっていきました 。
貫いてきた価値と、AIが裏付けたその本質
ワオの事業は、ビルの一角での「屋台デリ」から始まり、お客様の声に応える形で自然と進化を遂げてきました。「前のオフィスで使っていたお弁当屋を、うちの会社にも導入してほしい」という声から「社食デリ」が生まれ、「会議でもっといいお弁当はないの?」という要望が「お弁当デリ」へと繋がりました。
代表は、これらのサービスの根底にあるのは、単なる食事の提供ではなく、「便利さ」や「プチハピネス(小さな幸せ)」といった価値の提供だと理解していました。会社生活の大半を占める中で、唯一と言ってもいい楽しみである昼食を豊かにしたい。その想いが、事業を拡大させてきたのです。
その考えを裏付けるような、興味深い出来事がありました。近年、友人がAIで事業を分析してくれたところ、ワオが実践してきたことの本質が、見事に言語化されたのです。
「AIの分析結果は、『単なる食事提供ではなく、企業の福利厚生を戦略的に活用するためのソリューション』であり、『人材獲得や離職率低下を実現する手段として提供されている』というものでした。自分では無意識にやってきたことが、見事に言語化されて驚きましたよ」
さらにAIは、この事業が「証券会社時代に培った金融の視点と、IT事業で培ったスケールメリットの追求が融合した結果」だと分析。フードサービスという伝統的な業界に、金融とITの論理を持ち込んできたことこそが、ワオが成長を続けてこられた理由なのだと、改めて確信する瞬間でした。
ピンチをチャンスに。世界へ挑むビジネス創造カンパニー
売上が8割以上も減少したコロナ禍は、会社にとって最大の試練でした。しかし、ワオはそれを逆にチャンスへと変えていきます。東京都からの依頼でホテル療養者向けに3食の弁当を提供したり、大規模な国際スポーツイベントで働く多くの警察官への食事提供を担ったりと、多彩な弁当を用意できるプラットフォームの強みを最大限に発揮したのです。
同業他社が体力を失い撤退していく中、むしろアクセルを踏み込み、「会社をでかくしよう」という拡大戦略へと舵を切りました。
その成長戦略は、まず国内の基盤強化から始まります。積極的なM&Aもその一つです。以前ある給食会社にグループへ加わってもらった際には、社長はもちろん、従業員の皆さん全員が「仲間」として安心して新しいスタートを切れることを何よりも大切にしました。だからこそ、社長にはこれまでの経験を活かして引き続きチームを率いてもらい、従業員の皆さんの雇用や働く環境もしっかりと守ることをお約束したんです。
買収という言葉の響き以上に、お互いが「一緒になって良かったね」と心から思える。そんな未来を共に描けるような、ハッピーな関係を築いています。
そして、その挑戦は国外へと広がります。ここで展開するのは、日本のプラットフォーム戦略とは一見、異なる外食事業です。しかし、その根底には「世の中が何を求めているかを捉え、それに応える」という、ワオの徹底した「マーケットイン」の思想が一貫して流れています 。
「僕たちは『俺の料理を食ってみろ』というプロダクトアウト型じゃない。世の中がサプリしか食べなくなったら、すぐにサプリ屋をやりますよ」
この考えに基づき、アメリカ市場のニーズを捉えて始めたのが、カツサンド屋とラーメン屋でした。シアトルで始めたカツサンド屋は、1個2,000円以上でも1時間待ちの行列ができるほどの人気を博しています 。
ただし、ワオが目指すのは単なる飲食店の運営ではありません。最終的なゴールは、成功した店舗モデルを仕組み化し、フランチャイズ(FC)として展開すること 。そのために、飲食チェーンでの海外事業経験が豊富な人材を迎え入れ、準備を加速させています 。
弁当事業で「食のプラットフォーム」を創り上げたように、アメリカでは「成功する飲食店の仕組み(FCパッケージ)」を創り、提供する。事業の形は違えど、その本質は「ビジネスモデルを創造し、運営する会社」というアイデンティティに繋がっているのです 。
こうした国内外での多角的な展開を推進力に、3年後にはグループ連結で売上150億円を目指し、ホールディングスのような形でさらなる成長を描いています 。
「市場価値の高い人間になってほしい」経歴は不問、求めるのは成長への強い意志
ワオが会社として最も大切にしているのは、社員一人ひとりの「自己成長」です 。
「面談では常に社員にこう伝えています。『自己成長とは、市場価値の高いビジネスマンになることだ』と。うちの会社の中だけで通用するやり方に詳しくなっても意味がない。世の中のどこへ行っても通用する普遍的なスキルを身につけてこそ、どんな社会になっても生き抜く力が得られるんです」
その言葉を裏付けるように、社内で活躍している社員の経歴は、元アパレル販売員、マンションの管理人、料理教室の先生など実に様々 。飲食業界の出身者は、実はほとんどいません 。大切なのは過去の経歴ではなく、「成長したい」という強い意志なのです 。会社は挑戦の場を提供し、そのチャンスを掴むことで、社員は自らの価値を高めていくことができます。
会社が成長すれば、社員に提供できるポストも増えていきます。事業部長の次は、子会社の社長へ。そんなキャリアパスを描けることも、急成長を続けるワオならではの魅力です 。
未来の仲間へのメッセージ
「僕たちは、資本主義のど真ん中でダイナミックな挑戦を続けているんです」。代表は自社の姿をそう表現します 。金融とITの世界で培った知見を武器に、「食」という普遍的な市場で、新しいビジネスモデルを創造し続けるワオ株式会社。
ここは、単に弁当を売る会社ではありません。社員の成長を本気で願い、挑戦の機会を提供し続ける「ビジネス創造カンパニー」なのです 。
「なんかやれよ」
代表のこの一言に、全ての想いが詰まっています。変化の激しい未来を生き抜くための、本質的な力を身につけたい。自身の市場価値を高め、会社の成長と共に自分自身も大きく飛躍したい。そんな熱い想いを持つあなたの挑戦を、ワオは待っています。