2025年4月、emole株式会社のCFOに澤田風雅が就任しました。2024年10月に取締役COOである水谷が加わって以降、代表・澤村ひとりの経営体制から、経営“陣”へと変化しているemole。本記事では、澤村との対談形式で、澤田のキャリアやemoleに参画したきっかけ、経営“陣”としてどのような事業・業界発展を目指していきたいかなど今後の展望をお届けしますーー。
澤田 風雅(さわだ ふうが)
2017年3月 東京大学 卒業
2017年4月 YCP Solidiance 入社
2021年3月 Eight Roads Ventures Japanに入社
2025年4月 emole 入社
上場を目指したエクイティストーリーを作る。
澤田がCFOに就任するまで
ーーはじめに、澤田さんのこれまでのキャリアについてお聞かせください。
澤田:私は若いうちから経営者としての経験/キャリアを積みたいと考え、大学卒業後に戦略コンサルティング及びPE投資を手掛けるYCP Solidianceに入社しました。入社直後から、外食業界でのロールアップ投資や投資先に常駐しての経営実務等を経験してきました。投資先の経営陣は一回りも二回りも年齢が上でしたが、そうした経営陣と共に様々な苦難や逆境に立ち向かい、乗り切っていった経験は今の自分の基礎となる貴重な財産だと思っております。
YCPで3年ほど働いたころ、ちょうどコロナが流行し、投資先業界を含めた世の中全体が変わっていくなかで、自分のキャリアについても見つめ直しました。アメリカでも日本でも、創業間もないスタートアップが急激な成長を遂げ、人々の生活や経済の仕組みそのものを急激に変えていく様子を見て、自分もこうしたテクノロジーセクターに携わりたいと考えました。そこで、グローバルでテクノロジー関連のスタートアップに投資をしており、かつハンズオンで投資先と近い距離で関われるEight Roads Ventures Japanに転職しました。
Eight Roadsでの仕事は毎日が新鮮でしたし、いい時間を過ごさせてもらいました。そもそも、澤村さんをはじめ優秀な起業家さんと会える機会も、若いころから業界や企業の変化の瞬間に立ち会えることも少ないと思うんです。世の中や産業が変わっていく様子を近い距離で見続けられることに日々ワクワクしていました。
ーーVC時代は投資家という立場で起業家と関わる機会が多かったと思います。澤田さんがVC時代に培ったスキルは、どのようにemoleに活かされていると感じていますか?
澤田:VC業界では起業家さんと対等な立場での議論が求められるぶん、専門性も必要になります。僕は起業家さんよりも若い立場として接する機会が多かったこともあって、専門性を磨くのと同時に、常に自分が素人であるという自覚を持ち、そんな自分だからこそできる議論を意識していました。
たとえば相手がemoleなら、エンタメの市場やクリエイティブについては澤村さんのほうが詳しいので、その部分においては素人という意識を持ち、謙虚に接し、学んでいく。一方でファイナンス面や、他業界のベンチマーク等については私が貢献したり還元出来ることも多いはずですし、業界の中の人間ではないからこそ出せるアングルからの論点提起等も出来るかと思っています。常に相手へのリスペクトを持ちながら、丁寧に対話し、議論を重ねていくことを心掛けておりましたし、そうしたマインドセットは、現在でも非常に活きていると思います。
ーー一方で、澤村さんにお聞きします。emoleでは2024年10月に新取締役COOとして水谷誠也さんを迎え、“経営者”から“経営陣”と、さらに仲間を増やしています。このタイミングでCFOを迎えようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。
澤村:理由はふたつあります。
ひとつ目の理由は、今後ミドルステージ以降のファイナンスを行なっていくにあたり、よりファイナンスに強い人に入ってもらった方が大きな調達をしやすいと考えたからです。僕はファウンダーとしてビジョンを語り、事業の可能性を示していくことは得意ですが、ファイナンス視点からemoleを語れる人と出会いたいと思っていました。これまで以上にIPOを実現するまでのエクイティストーリーの解像度を上げていく必要があると感じていたからです。
ふたつ目の理由は、BUMPのコンテンツを制作するプロダクション事業の拡大と、この先のステージでのファイナンスの両方を自分のリソースだけで回していくことに限界を感じていたからです。
BUMPの中でも自社で制作した作品のヒット率や回収率は全体の中で見ても高く、ヒットコンテンツの輩出が事業全体の数値に大きく影響します。自分が制作体制の改善や拡大にコミットしていくことが事業成長を最大化する上で重要であると考えていました。一方で、ファイナンスもしっかりと行なっていかなければいけない事業モデルなので、片手間な状態で次のファイナンスに進むのはかなり危ういと感じていました。
こうした背景から、自分よりもファイナンスにおいて大きな結果を出せると自信を持って託せるCFOを探していました。
「この人になら安心して背中を預けられる」。
マインド面とスキル面を両方持ち合わせたCFOの誕生
ーーでは、澤田さんがCFOに就任することになったきっかけをお聞かせください。
澤田:もともと1社目/2社目共に入社理由として「経営に携わりたい」という想いが根幹にありました。Eight Roads時代に数々のスタートアップと接するなかで、「自分も実際にスタートアップに飛び込みたい」という気持ちが抑えられなくなり、転職活動をすることを決めました。そのなかで、emoleがCFO採用をしていると聞き、面談をしました。
実はEight Roadsとして参加していたIVSで澤村さんの入賞ピッチを見たことがあって、emoleの存在を知ってはいたんです。むしろ個人の投資先として興味を持って連絡をしたこともあるくらいだったので、運命を感じました。
澤村:いただいたメールに気づかなくて、お返事ができていないままだったんですよね(笑)。
澤田:そうそう(笑)。VCや投資家という立場だと、連絡して返事を頂けない企業のほうがある意味めずらしいのでとても印象に残っていて(笑)。それからしばらくの間いちユーザーとしてBUMPを利用していました。初回の面談でようやくその話ができましたね。
ーーそんな出会いがあったのですね。続いて、澤田さんをCFOとして迎え入れることを決めた理由を教えてください。
澤村:こう言っては何ですが・・・1つは、バイブスです。笑
澤田さんと出会うまでは、経験も実力もお持ちで、emoleの社風に合うCFOって存在するのだろうか?と思っていたので、相当な長期戦になるだろうと思っていました。
澤田さんとの面談前に職務経歴書を見ていた時、学歴やキャリアがかなりしっかりされていたので、お話しするのが楽しみだなと思った一方で、どんな方なんだろう、事業について詰められるかな?とか考えて身構えながら面談に参加したのを覚えています(笑)。
ただ、お話ししてみるとすごくフランクな方で、エンタメに対する興味が強かったり、実現したいビジョンに共感していただいて、楽しくお話ししました。「一緒に働く人がどんな人なのかを知りたい。チームや仲間を大切にしたいと考えている」と強調していた点も印象的でしたし、上場時のバリュエーションなど定量的な目標に関しても自分と同じ目線感を持ってこの先のステージに挑戦していけるなと感じました。
澤田:前職であるEight Roadsに転職したのも、投資先の経営に近い距離で関わりたいと考えていたからなんです。ただファイナンスの機能や経験を還元するといった外部の専門家として関わるだけのような立場ではなく、同じ船に乗る仲間として一緒に会社を大きくしていきたいという考えを受け止めてもらえて、嬉しかったです。
澤村:起業家本人がファイナンスを担当することの最大の強みって「会社や事業への想いを1番強く持ってる」ことだと思うんです。強い想いを持っているからこそ、相手も「この人を応援したい」と感情を乗せてくれる。でも澤田さんの人柄なら、起業家である僕の大切な“想い”を受け取って、伝えてもらえると感じました。ロジカルにエクイティストーリーを組み立て投資家に納得していただくことに加えて、この人と事業を応援したいと思ってもらえそうだなと思いました。
ーーCFOの採用にあたって、印象的だったことをお聞かせください。
澤村:僕は大学卒業後そのままemoleを創業して、この事業で初めてエクイティファイナンスを経験しているというのもあって、採用すべきCFO像の解像度も高く持ててないところからのスタートでした。面談で見極めるべきポイントについても試行錯誤していたというのが実際です。
結局、一番スキルを見極める上で良いなと思った方法は、実際にVCとして普段投資を行なっている株主との面談をしてもらうことだったり、次のラウンドの資金調達を想定したピッチをやってもらうということでした。
最も印象的だったのは、僕とCOOと株主の前で次ラウンドを想定したピッチをしていただいた時のエクイティストーリーの作り方です。
一週間で準備をしてもらい、ピッチをしていただきましたが、ショートドラマ事業の経験もない中で、本業をやりながら1週間で作ったとは思えないほどの完成度であることに感銘を受けました。何より自分とは全く異なるアプローチでストーリーを組み立てていて、あぁVCが求めているのってこういうことだよな、と思いました。
ピッチをやっていただく前の会食の際に、僕がコンテンツファンドを組成したいという話をしたのですが、そこにもすごい共感してもらって、ピッチしていただいたストーリーの中には、コンテンツファンドの構想も綺麗に組み込まれていました。
これは自分には作れないピッチデックだなと思い、「この人になら安心して背中を預けられる」と確信しました。
ーー今後澤田さんがCFOとして描いている構想をお聞かせください。
澤田:emoleのビジョンにも通じる話ですが、クリエイターの挑戦に対して直接還元していくビジネスは、資金需要が非常に高いと思うんです。一方で、当社の事業はあまり類を見ないモデルということもあり、資本市場に対して適切に成長可能性を示していくことが必要だと思っています。それこそ、emoleのビジョンに共感し、かつ、ファイナンスのバックグラウンドがある私が参画することの意味だと思います。
またさらに大きな構想として、産業全体のお金の流れをデザインしていきたいとも考えています。
emoleは、クリエイターが挑戦していくたびに生まれる収入を還元していく挑戦をしています。これはまさに“産業を作る”挑戦です。大きなことをやるためには、大きな資金が必要なので、これをファイナンス面からしっかり支えていきたいと思っています。
少し話がそれますが、実は僕は名前に「風雅」(※楽曲形式の「フーガ」由来)とあるように、親が音楽家という出自があって。そんな背景もあり、いつかこの人生で「クリエイター」に関わることがあるのかなと考えていました。クリエイターエコノミーを創造するこの事業をファイナンス観点から牽引していく、というこの機械は、「まさに自分のための場」と感じています。
ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。
澤田:澤村さんには人を惹きつける力がありますし、emoleを体現する“バイブス”を大切にする人です。まさにご自身でもおっしゃったように、澤村さんがクリエイターとしての視線を持ち続け、仲間集めの前線に立ち続けることが、会社の成長や業界の発展につながるとも感じてます。それができるよう、貢献していきたいですし、安心して背中を預けてもらいたいです。
澤村:とても心強いです。誰もが挑戦し続けられて、収益化もできる。さらにはバズったらいろんな人に知ってもらえる……。emoleでは、そんないい循環を生めています。新しい産業を通して市場を盛り上げていけるよう、今後はファイナンス面をさらに強化し、パワーアップした姿をお見せしたいです。