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ドリーム・アーツ CTO 石田 健亮のインタビュー記事が『Tech Team Journal』に掲載されました。今回は仕事をするうえで大事にしている7つのルールを語っています。ぜひご覧ください。
ドリーム・アーツCTO 石田 健亮の<Professional 7rules>
石田さんは、東京大学大学院在学中の2000年4月に株式会社ドリーム・アーツに入社。製品開発部長、新規事業推進室長、「Shopらん®」事業部長を経て、2015年1月に取締役 執行役員 CTOに就任しています。当時、東大からベンチャー企業へ入社するのは珍しく、テレビ番組の取材も入ったほどです。 人とは違った選択をし、現在はCTOとして活躍する石田さんに、仕事をするうえで大事にしている7つのルールをうかがいました。
Rule1. 「普通」を選ばない
学生のとき、先輩に誘われて楽天(当時:エム・ディー・エム)でシステム開発のアルバイトをしていました。楽天市場がローンチされて、最初の月はほぼ売上のない状態でしたが、そこから数年で急成長し、上場していました。これを目の当たりにしていたのもあり、インターネットの力で社会が劇的に変わると確信していたんです。
当時の東大では普通、卒業後は大企業に就職します。でも、それが「ヤバい」ことのように思えたんです。
学生時代のあるとき、ドリーム・アーツ代表の山本が、社会人として大学に講演しにきていました。わたしの友人が「おもしろそうな人がいる」と、話を聞きに行き、その友人は休学してドリーム・アーツで働きはじめたんです。その後に友人に誘われて、わたしもライターとしてアルバイトで働くようになりました。卒業後、ドリーム・アーツへ入社しました。大企業に入って普通に過ごすより、インターネットのパラダイムシフトが起きていく、伸びしろのある会社で働きたいと思ったんです。
Rule2. 一次情報にあたる
情報収集をするときは、一次情報にあたるようにしています。SNSやブログに書いてあることは参考にはしますが、信用はしません。嘘が書いてあることも結構ありますから、鵜呑みにはしないです。
情報収集しようと能動的に思っているわけではありませんが、Twitterなどで気になるキーワードが入ってくることもあります。そうしたものは、自分で試したい気持ちになるんです。
実際に試せるものであれば試しますし、ソースコードが載っていれば読んでみます。
Rule3. 技術選定は慎重に
当社のプロダクトはエンタープライズ向けなので、長い間使用されます。いま書いたコードや選択した技術が、10-20年後にも使用されている可能性は結構あります。自分がいなくなったあとでも、書いたコードが残るんです。
そう考えると、流行っているから、世の中でいいと言われているからなどの理由で判断はできません。つくるのは簡単だけど、何年後かにすべて書き換える必要があるかもしれません。
動いている状態をキープしながら書き換えるのって、非常に手間がかかります。
なので、技術選定は慎重にします。ベンチマークは絶対取りますし、オープンソースであれば、コードのクオリティや何人が関わっているかも確認しますね。さらに、関わっている人のバックグラウンドまで調べます。そうやって、細かいところまで調べていくんです。
もし新しい技術を試すときは、リスクが限定されるマイクロサービスだけで使うようにしています。個人的には新しい技術が大好きで、ChatGPTも触っています。でも、仕事となる技術選定は慎重にしているんです。
Rule4. 期待を超える
わたしたちはエンタープライズ向けにサービスを展開しているので、商談成立までに時間がかかります。取引先のなかには、実績を求める方も多いです。
実績ゼロのサービスを導入してくれる大企業の人って、確信的にやってくれているんですよね。会社を変革するために役立つと思ってくれる人です。普通、大手のベンダー企業にお願いしていれば安全です。プロジェクトがうまくいかなかったとしても、大手のベンダー企業にお願いしていれば「仕方がないな」と会社は思ってくれます。
だけど、聞いたこともないような会社に依頼して失敗したら、選んでくれた方の責任はとても大きくなってしまいます。それでも選んでくれる方に対しては、期待されているレベルは超えていきたいです。そういう想いがあれば、信頼関係ができていきます。信頼関係があれば、多少のトラブルがあっても一緒に解決に向けて頑張れます。
ソフトウェアを作れる能力って、特殊だと思うんです。この能力をどこに使うかを考えると、喜んでくれる人がいるところで社会的に役立つものをつくりたいです。
Rule5. 自問自答する
会社によってCTOのやっていることは違いますが、人材採用や組織づくりが大きな役割だと思います。ソフトウェアづくりやシステムの設計をする技術が他人よりできるから、CTOになっていると思うんです。
なので、なにかしらのトラブルが起きたときでも、自分で手を動かして修正できます。でも、それでうまくいっても全然ダメで、そういう状況になっている時点で負けなんです。
任せっぱなしにはしませんが、社員に任せられるように、環境を整えることに時間や意識を割いていきたいと思っています。
一方で、社員のみんなが楽しそうにやっているけれど、ある部分についてはストップする決断も必要な場合があります。働いているエンジニアからしてみれば、「なんで?」と思うこともあるかもしれません。わたしも、根っこのところではエンジニアなので、気持ちはよくわかります。でも、違った視点を意識的に持つようにしています。
目の前で起きていることを、エンジニアリング以外の観点からも考えなければなりません。事業的な観点や財務的な観点など、いろいろな観点で考える必要があります。「はたして本当にこれでいいのか?」と、自問自答するように意識しています。
Rule6. 自分の役割を意識する
わたしたちの会社は、モードチェンジのタイミングです。わたしが前任からCTOを引き継いだ2015年には、会社は結構大きくなっていました。
エンジニアリングのことを組織的・構造的に考えて、ミッションクリティカルも含めて組み立てていく。わたしがCTOを任されたのには、そういう役割を期待された経緯があります。
自分が最前線で活躍して、新しいプロダクトの立ち上げを求められているわけではありません。自分自身はやりたいんだけど、そこが役割ではないと意識するようにしています。
わたしたちはテクノロジーの会社です。価値創造の源泉を組織的に継続可能な形で組み立てていき、わたしがいなくなっても普通に成長していく仕組みを作り上げるのが役割です。
Rule7. 逆算する
いまの時代、仕事はどこからでもできます。エンジニアリングは頭の中で考えることも仕事なので、PCがなくてもできるんです。散歩しているときや意識していないときでも考えています。ワークライフバランス的にはあまりよくないのかもしれませんが、好きでやっているんですよね。
むしろ、PCを閉じている間のほうが考えるので、意外と楽しいかもしれません。キーボードを打っている瞬間は、頭の中にあるものをアウトプットしているんです。指のスピードが頭で考えるスピードより遅いから、なんとかならないかなと思っています。
さきほども言いましたが、ソフトウェアをつくる能力は特殊だと思っています。なにもないまっさらな状態からなにかを作れる人は、まれです。きっと、訓練して身につけられる人と身につけられない人がいます。その能力を持っているのであれば、役に立つことに活かしたいです。
わたしたちの会社やプロダクトである「SmartDB(スマートデービー)」を例に挙げます。もともと世の中になかったプロダクトが生まれて、最初の1行目のコードを書いてからユーザー数は何百万人にも増えていきました。300人くらいの社員がいて、パートナー企業を含めたら1000人くらいです。その家族を含めたら、さらに多くの人が会社に関わっていますよね。
自分のアウトプットが増幅されて、社会にこれがあってよかったと思われる。そういうものにつながっていけばと思います。
作品として残るようなストックになることに、個人的にも組織的にも力を入れていきたいです。地図に残る仕事のソフトウェア版というイメージです。
Professional 7rules
Tech Team Journalより転載
※本記事は、2023/5時点でpaiza(株)の外部メディアに公開された記事を許可を得て転載しています。