1995年に創業し、日本初のeラーニング専門ソリューションベンダーとして2,000を越える企業・学校・スクールのeラーニングシステムを立ち上げを支援してきたデジタル・ナレッジ。
コロナ禍により様々な領域でのデジタルシフトが急速に進み、eラーニング領域は学びの「代替」としてではなく、「前提」として活用する時代へと突入しているいま、デジタル・ナレッジは良い知識社会の実現を目指して日々取り組んでいます。
そして国境を超えることができるデジタルだからこそ、デジタル・ナレッジでは日本の教育を輸出すべく、海外事業も展開。2020年1月には、ウズベキスタンの正規大学として、eラーニングで日本の大学の授業を受けられるJDU(Japan Digital University)を設立しました。
そこで今回はデジタル・ナレッジ 代表取締役社長を務める はが弘明さん、JDU学長を務めるラウシャンさん、そしてJD準備室 室長を務める小林千草さんの3人に、あらためてデジタル・ナレッジがどういった会社なのか、また海外事業を展開する理由や現場視点ならではのエピソードなどを語っていただきました。
学びの架け橋となり、より良い知識流通社会を目指す。デジタル・ナレッジが海外事業を展開する理由
―― あらためてデジタル・ナレッジがどういった会社なのか、そして「学びの架け橋となって、育つ喜びをすべての人へ届ける」という理念に込められた想いを教えて下さい。
はが:デジタル・ナレッジではインターネットを “知識流通の基盤” と捉え、インターネットを通じた映像講座だけでなく、デジタルテキストブック、ライブ配信授業、一斉テストシステム、VRによる経験教育など、様々なバリエーションの教材技術を提供している会社です。
「教育はすでに十分行き届いている」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、世界ではいまだに1億人以上の子どもたちが初等教育を受けられていなかったり、日本においても良い教育というのが都会にしかなく、若者が都会へ行くことで産業に地域格差が生まれたりと、いまだ課題が山積みです。
一方でデジタル・ナレッジは教育機関ではなく、あくまでも教育機関の方々が積み上げてきた教育を、デジタルに載せることで受講者に届けるという会社です。
そこで私たちが学びの架け橋となり、「知識」がよりわかりやすく効果的に、地域や時間の制限なく自由に知識が流通する社会の構築を目指し、育つ喜びをすべての人に届けたいという想いを理念に込めています。
―― 現在、デジタル・ナレッジでは海外事業も展開されていますが、あらためてなぜ海外事業を展開するに至ったのかを教えて下さい。
はが:実は、もともと海外事業をやることは考えていませんでした。しかし、以前に海外視察でウズベキスタンを訪問した際、「日本の教育の品質は非常に高い」といったお話を驚くほどよく耳にしたんですね。
価値がないものを届けても意味がありませんが、教育というのが日本の世界に誇れるものの1つであるならば、日本の教育をデジタル化して海外へ届けるということは価値があることですし、私たちの使命であるより良い知識流通社会の実現に繋げていく1つの形だなと。
そこで日本の質の高い教育サービスを海外へ輸出するべく、デジタル・ナレッジではウズベキスタン政府およびJICAと共に同国の教育課題解決に取り組みを開始。2020年にはJDU(Japan Digital Universityという、日本の大学とウズベキスタン国立大学の2つの大学卒業資格を得ることができる大学を立ち上げるなどの展開を行っております。
―― ぜひJDUについて詳しく教えて下さい。
はが:JDUは、ウズベキスタンの首都タシュケントに設置したキャンパスにて、日本の正規大学にオンラインで通学できるウズベキスタンの法律で認められた正式な大学です。
学生はeラーニングおよびファシリテーターの支援をもとに日本語を徹底的に学ぶ他、ITエンジニアとして日本で活躍できるカリキュラムを組んでおり、卒業後は日本の優良企業への就職もサポート。
そして日本でITエンジニアとして高収入で就職・活躍し、そこで得たノウハウと人脈を活かしてウズベキスタンに戻って活躍する、成功する人生を歩むことができることを目指しています。
現地法人の代表として、ウズベキスタン政府機関との調整であったり、現地での様々なやり取りを進めているのが、ウズベキスタン出身のラウシャンです。
ラウシャン:私は日本の教育をウズベキスタンへ輸出するというJICAのプロジェクトがキッカケで、デジタル・ナレッジに入社しました。
ウズベキスタンは30年前の1991年にソビエト連邦から独立した国家ですが、教育の現場ではソ連時代の教材がベースになっていたり、また教員の給与も多くはないため、優秀な教員が集まらないなど、質の高い授業ができているとは言い難い状況です。
しかし、国家の発展のためには教育は非常に重要ですから、日本のような先進国の教育をウズベキスタンの学生が学んだら、国の発展に繋がっていきますし、やはり私自身、自国がもっと発展してほしいと思っています。
そのため、JDUはいままでウズベキスタンになかった大学で、これからの時代に向けて必要な教育を提供することはもちろん、学費を払えない学生のために奨学制度を設けたり、卒業後も就職先を支援するなど、その人の人生を支援する大学となっています。
はが:ウズベキスタンは人口の約40%が16歳未満と若い人が非常に多い国。そして人口は3,000万人と日本の1/4あるのに対して、大学の数は80程度しかありません。そこでJDUを通じて日本の質の高い教育を輸出し、ウズベキスタンの国の発展に寄与できればと考えています。
ウズベキスタンで就職支援も行う正規大学を設立。「学生らの重要な人生が私たちに託されている」
―― 小林さんは、もともとデジタル・ナレッジにいらっしゃったとのことですが、どういった経緯でJDUに携わることになったのでしょうか?
小林:もともとはeラーニングの運用を担当する部署におりまして、ウズベキスタンとはゆかりもない状況でした。しかし「運用の知見があるから」と、はじめはJDUが立ち上がる前の事業企画のためのリサーチ担当にアサインされたことがキッカケでした。
そしてリサーチを通じてある程度知識があったことから、現地調査にも呼ばれまして、そこから本格的にJDU事業のメンバーにならないかと声がかかりました。
当然ながらJDUのメンバーとなれば、ウズベキスタンに行く機会も増えるでしょうし、苦労する場面も多々あるでしょうから、生半可な気持ちで受けてはいけないと感じたのを覚えています。
しかし、そういったプロジェクトに関われることはとても貴重なことですから、少なくとも最初に学生が入学して卒業するまでの4年間は頑張ろうという気持ちでJDUに関わることを決意しました。
そして現在は、eラーニングで日本の教育を届けるための環境づくり、具体的には入学試験や教材などのコンテンツの仕入れ、そして提携先大学の拡大などを担当しています。
―― 実際にJDUに携わることになり、大変であったことや苦労したことがあれば教えて下さい。
小林:やはり日本とウズベキスタンでは文化の違いがありますから、日本では想像もし得ないことが起こったりします。
たとえば何も拠点がないところからのスタートし、でしたから、現地でのJDUキャンパスをつくっていったわけですが、工事が遅れて入学式当日にも完成していなくて。そこで授業初日までには教室だけ使えるようにしてもらったのですが、新入生の学生たちは焦った様子もないんですね。
後から聞くと、そういった工事の遅れというのはウズベキスタンではよくあることのようで、日本人の私たちだけが焦っているという状況でした(笑)。
また21年度の入学式では、もともと開催を予定していた会場が大統領選挙のための会議があるということで、急遽当日まで利用できるかどうか確約ができないという状況になったこともありました。
ウズベキスタンでは大統領に関することはすべて第一優先という具合でしたので、もちろん別会場の手配なども同時に行いつつ、もし別会場となった場合に集まった学生たちの移動手段をどうするかなど、ギリギリまで頭を悩ませていました。
そして入学式の2時間前にもともと予定していた会場で開催できるとわかったのですが、そういった日本では起きないことの連続のため、胃が痛くなることもありますし、その日の夜は熱を出しましたね(笑)。
―― そういった様々な苦悩もありながらも、小林さんはどういった部分にJDUに携わるやりがいを感じられていますか?
小林:大学の設置許可や提携大学との協定など含め、何もないところから一歩一歩 “学校” に近づいていったときは非常に大きなやりがいを感じます。
また、JDUの入学試験はオンラインで行われるため、入学式の日に初めて学生や保護者の方々とお会いしたのですが、学生らの顔を見たときに、「この学生たちの重要な人生が私たちに託されているのだ」と感じ、とても気が引き締まる思いになりました。
はじめはまったく日本語を話せなかった学生らが、いまでは少しずつ日本語を話せるようになり、日本で活躍する日が近づいていっている様子を見ると嬉しく思います。
現場メンバーが主体的となってチャレンジできる環境。DX化が進む教育領域には様々な可能性に満ちている
―― ラウシャンさん、小林さんおふたりの今後の展望を教えて下さい。
ラウシャン:ウズベキスタンの発展には、留学経験のある人材や海外での勤務経験がある人材が非常に重要であると考えています。一方で日本では少子化問題によって労働者不足の課題を抱えています。そこでJDUでは多くの学生がITエンジニアとして日本企業へ就職し、日本企業に貢献しながら、そこで得たノウハウを持って将来的にはウズベキスタンの発展のためにも成長していってほしいと思っています。
私自身、日本に10年以上住んでいましたが、日本は素晴らしい文化を持った国。そんな国で働いて成功するためにも、JDUでは学生の夢を実現するためのサポートを今後も続けていきたいですし、ウズベキスタン発展のための礎を築いていき、ゆくゆくはJDUをウズベキスタンでナンバーワンの大学にしていきたいと思っています。
小林:JDUはウズベキスタンにいながら、日本へオンライン留学ができて金銭的な負担やリスクを軽減できる一方、日本人がたくさんいる環境ではありません。そこで学生たちが日本でのインターンシップに参加したり、修学旅行のような形で日本へ来る機会の創出をしていきたいと考えています。
そうすることで日本語を学習するモチベーションにも繋がりますし、将来的に日本で働くイメージを具体的に抱くことで、学生たち自身のJDUでの学びの質や方法も変わってくるでしょう。
―― 最後に読者の方へメッセージをお願いいたします。
はが:ラウシャンや小林然り、デジタル・ナレッジでは「教育を届けていきたい」という想いを持った現場のメンバーが主体的となって、チャレンジできる環境を用意しています。
そして昨今のコロナ禍により教育領域というのは急速にDXが進んでおり、長年品質の高い教育を積み上げている教育機関のDX化のニーズも非常に高まっています。DX化によって、今まで届けられなかったところに良質な教育を届けられるようになっていくいま、学びの架け橋となり、育つ喜びをすべての人へ届けるという想いに共感いただける方はぜひ、お待ちしております。
ラウシャン:ウズベキスタンと日本での人材交流が活発化しているものの、両国が相互に利益があり、関係強化のためにできる機会や可能性はいまだ多く存在します。
そうした様々な可能性を、将来的に現実のものとしていく皆さんと一緒に仕事ができることを楽しみにしています。
小林:JDU自体もまだ設立したばかりの大学ですし、デジタル・ナレッジも常に新たなことに取り組む会社のため、自身のアイデア次第で様々なチャレンジができる環境です。
「海外に日本の文化・教育を届けたい」と思う方は多くいらっしゃると思いますが、文化の違いを認め、それぞれの国の良さを活かしていく寛容さがあれば、どの国へ行ってもきっと日本人の誠実な仕事を信頼してもらえるはずです。そういったマインドで働くことに興味がある方と、ぜひご一緒できれば幸いです。