自分が夢中になれるゴールを見つける
今日から当社で一緒に働くこととなった皆さん、入社おめでとうございます。 この場所で、皆さんが一生夢中になれること、熱中できることが見つけて欲しいと思います。夢中になって何かをやるのと嫌々何かをやる、仕方なく何かをやるのでは、人生の満足感は大きく変わってきます。まずは仕事を通じて多くを学び、自分自身のゴールに向かって自分を磨くことを楽しんで下さい。そうする中で、自然と夢中になってくれば理想的な流れです。
当社のルーツとビジョンについて
ここで、皆さんがこれから働く会社についてより明確なイメージを持っていただけるために、当社のルーツとビジョンについてお話したいと思います。 なぜ、株主のために利益を追求すべき株式会社である当社が、日本と世界をつなぐという社会問題に取り組んでいるのでしょうか。なぜ口下手でシャイな、全く営業向きの性格でない私が営業会社の社長をしているのでしょうか。この内気な性格のせいで、自分が考えていることを周りの人々にうまく伝えることが苦手で、沢山の人に迷惑をかけてきました。今日は皆さんに聞いていただくよい機会なのでこの場をお借りしてお話ししたいと思います。私たちがどこからきて、どこへ行こうとしているのかについてのストーリーですが、かなり恥ずかしい話なので、今からお話することは全てこのような公の場で初めて話すことです。少し長くなりますが、聞いてください。
ボーイスカウトでの募金経験
私は、小学生のころボーイスカウトに入っていました。本を読んでばかりで内気な性格の私がたくましく育つように、両親が手配してくれたのだと思います。日曜日にキャンプに行ったり、ボランティア活動をしたりしていました。よく覚えているのが、募金箱を持って駅前に立って道行く人に募金をお願いしたことです。例えば、近くの池の清掃のための募金をしていました。箱にお金を入れて頂ける瞬間は快感なのですが、長時間立ちっぱなしになるので、私には苦痛な時間でした。その時にぼんやりと「募金箱を持って立っている代わりに、自分たちでアルバイトをしてそのお金を募金する方が退屈しなさそう。募金額も多く稼げるかも。」と考えていました。自分たち自身で稼いだお金を原資にして、社会課題解決を目指す。現在の事業モデルにつながる発想ですが、そのころは一日中募金箱を持って、駅前の人を見ている苦痛の中で現実逃避的に考えているだけでした。
大原孫三郎との出会い
学生時代は、活発に育ってほしいとの両親の期待を意識していたこともあり、野球や水球などのスポーツに打ち込みました。相変わらず読書は好きだったので、有り余る時間を背景に色んな本を読み漁りました。その中で出会ったのが、クラレの大原孫三郎の伝記的小説『わしの眼は十年先が見える 大原孫三郎の生涯』です。当時私のお気に入りだった城山三郎さんの小説ですが、そこにはこうありました。「下駄と靴と片足ずつ履いて-その男は二筋の道を同時に歩んだ。地方の一紡績会社を有数の大企業に発展させた経営者の道と、社会から得た財はすべて社会に返す、という信念の道。」 つまりNPO法人的な株式会社、株式会社的なNPO法人。これこそが私の目指す道だと思い、何回も読み返しました。その日以来、私が尊敬し、目標とする人物は、大原孫三郎です。倉敷の大原美術館は何回も行きました。
海外との出会いと就職
その後、大学生の時にバイトで貯めたお金で念願だったオーストラリアに留学しました。たった一年間でしたが、海外の異なる文化と価値観と出会い、日本と日本人を客観的にみる視点を獲得したことも、私の人生に大きな影響を与えました。帰国後、海外向けの営業の仕事が出来る小さな商社を選んで就職しました。小さな会社を選んだのは、間接部門に配属される可能性がなく、確実に日本と世界をつなぐ営業の仕事が出来ると思ったからです。
ビジネスの要諦を教わる
私が入社した会社は、当社と同じ化学品専門商社でした。戦後日本の化学品輸出のパイオニアとしてのプライドを持って、大手商社の向こうを張って自分たちのノウハウとマインドセットだけを武器にガチンコのビジネスをしている会社でした。ノウハウの塊のような野武士集団でした。個性的な先輩たちは、世間知らずで右も左もわからない私にたっぷりの愛情を注いでくれて、惜しげもなくビジネスにおいてゼロからイチを作る様々なノウハウを教えてくれました。私は「どれだけユーザー様に本質的利益を与えるかが勝負」というビジネスの要諦を学びました。毎日、真剣勝負のビジネスをしている先輩たちの姿を横目で見ているうちに、私のマインドセットも変わっていきました。元来私は引っ込み思案でシャイな性格ですが、私にとってオフィスが俳優にとっての大舞台のようなものになり、オフィスに来ると自然にスイッチが入り、いつものシャイな私とは別人格となって振る舞うことが出来るようになっていました。以前、若い社員に「実は私はシャイな一面があって。」と遠慮気味にうちあけたことがあるのですが、即座に「そんなわけはない。」と言われて取り合ってもらえないほどの見事な変わりようです。 その後、その会社の最後の瞬間にも立ち会うこととなり、理念に公共性が無い組織の運営の難しさについても、私なりに理解をすることが出来ました。
会社設立
以前勤めていた会社が2004年に閉鎖されると同時に私は新会社を設立しました。それ以来、日本と世界をつなぐという目標を胸に秘め、愚直にサービスがユーザー目線からずれないように気を配りながら会社を運営してきました。お陰様で日本国内外のお取引先様など、色々な方々に継続的なサポートを頂き、順調に業績も伸び、昨年度は外部環境の良さも手伝い、過去最高益をあげることができました。 現在のところ会社の業績は順調に伸びていますが、これからは、今までと同じやり方では通用しない時代が来ると思っています。今日現在、当社を含めて化学業界やその他のニッチ系B2Bビジネスは、その参入障壁の高さから従来型の人がユーザー様とメーカー様をつなぐビジネスモデルが温存されていますが、昨今テクノロジーの進化は加速しており、いずれ変革の波がやってきて、ビジネスモデルが転換されることが確実だからです。勿論、人の世が続く限り、人の役割がなくなることはなく、特に商社ビジネスでの人の役割は重要であり続けることは間違いありません。
デジタル化への挑戦
昨年度までは、職人的なスキルでユーザー様とメーカー様へサービスを提供してきましたが、今年から私たちが目指すのは、私たちの職人的ノウハウやマインドセットをシステム化して機械が出来る仕事は機械に手伝ってもらい、人は人にしか出来ない面白い仕事に専念することで、今までに比べて格段に利便性の高いサービスを提供するモデルです。ユーザーとメーカーにとって利便性が高く、且つ、安価に使用出来るシステムを構築することが出来ると、今の何千倍ものユーザー様に本質的利益を与えることが出来るようになり、世界の化学業界に新しいトレンドを作ることが出来ると思っています。具体的には、ユーザー様とメーカー様が海を越えて直接技術的なコミュニケーションを容易に出来て、商社の機能も発揮することのできるシステムを作り世の中に普及させることで、化学業界の発展を加速させるとともに、当社も飛躍することを目指していきます。 昨年度まで15期連続で利益を出して来ましたが、今までその利益を配当などで株主に分配したことはありません。このプロジェクトはまだまだ初期段階にあり、長期的にプロジェクトの規模を何千倍にも大きくして世の中の人を幸せにするためには、同じゴールを共有する沢山の同志に参画してもらうことと共に、多くの資金も必要だと考えているからです。そのため、創業時に貴重な資金を提供してくれた株主への配当は一切行わずに、利益はすべて内部留保としてきました。その結果、今現在、当社の自己資本比率は8割を超え、完全無借金経営を実現しています。資金面での準備は着々と整いつつあります。
株式会社的NPOを目指す
ボーイスカウトで募金活動をしていた時にぼんやりと考えた「募金箱を持って立っている代わりに、自分たちでアルバイトをしてそのお金を募金する方が退屈しなさそう。募金額も多く稼げるかも。」そのコンセプトを体現し、株式会社大真は、社会的利益を追求する株式会社的なNPO法人を目指します。日本と世界の相互理解を深め、双方にとって幸せな世界を作ることを目指します。そのために必要な費用、メンバー全員が安心して豊かな生活を送りながらミッション達成を目指すことの出来る費用を自らしっかり稼ぎ、稼ぐプロセスにおいてもよい風を吹かせることを目指します。
なぜ新卒採用を行っているのか
さて、当社は新卒採用を行っています。新卒採用といえば、組織の年齢構成のバランスを重視する大企業で行うことが多い一方、中小企業である当社の専門性やチームバランスを考えると、中途採用で過去に実績のある人材を採用するのが一般的かもしれません。では、何のためにリスクもあり手間のかかる新卒採用を行なっているのでしょうか。当社では、即戦力で当社の方向性に共感していただける経験豊かで優秀な人材をスカウトする一方で、ミッションである日本と世界の相互理解を深めることのできる人材を社内でじっくり育成するために新卒採用を行なっています。当社のユニークなミッション、ビジョンを順繰りにどんどん次の世代に受け継いでいくイメージです。
自分の仕事は何のためにしているのか
今日ここに、素晴らしいスキルとマインドセットを持った有能なメンバーが集まりました。是非、このユニークな組織の中で皆さんが夢中になれることを見つけて、幸せな世界をつくる同志として、一緒に頑張っていきましょう。今後、自分の仕事は何のためにしているのか、この部分を決して忘れないようにして下さい。 皆さんの入社を心から祝福し、私からの歓迎の挨拶と代えさせて頂きます。
(2019年入社式挨拶)