誰かを知るならば、ひとりから話を聞くのではなく、その周りにいるさまざまな人に話を聞いた方がより立体的にその人物像が見えてくる。ならばプロダクトも、さまざまな視点を持つ人から話を聞けば、より深く理解できるのかもしれません。
今回集まっていただいたのは、クレジットエンジンで働く3名のメンバー。入社時期も職種も異なるメンバーに、クレジットエンジンが提供するプロダクトについて、お話を聞きます。
安保 陽祐(あんぼ・ようすけ) Engineerチームでプロジェクトマネージャーを兼務。2019年2月に入社。
奈木 文人(なぎ・ふみと)Productチームでプロダクトマネージャー兼プロジェクトマネージャーを務める。この中で一番最近の2021年4月入社。
向山 裕介(むこうやま・ゆうすけ)クレジットエンジン創業取締役。プロダクト責任者。
その前に、クレジットエンジンが提供するプロダクトをおさらいしましょう。プロダクトは、大きく分けて2つ。CE Loanという融資のサービス、CE Collectionという債権回収のサービスです。今回は、CE Loanを中心としたお話を聞きました。
「“かす”をかえる。“かりる”をかえる。」プロダクト
おさらいを終えたところで、まずはそれぞれのポジションから、プロダクトを紹介していただきましょう。
──クレジットエンジンが提供しているプロダクトは、どんなものなのでしょうか?
安:私たちの会社は、「“かす”をかえる。“かりる”をかえる。」をミッションに掲げています。提供しているプロダクトもこれに沿ったもので、融資を受ける方の申し込みのハードルを下げ、お金を貸す金融機関の業務を効率化し、迅速な融資を可能にするためのプラットフォームです。開発環境としては、フロントエンドはVue.js、サーバーサイドはPythonでSPAを実現するモダンな環境で開発していることを、エンジニアの目線で付け加えておきます。
奈:「お金を貸す金融機関のハードルを下げ、迅速に融資を受ける」とありましたが、どうやって迅速にしているかというと、融資の申し込み手続きをデジタル化することによって実現しています。従来ならば紙で申込書や事業計画書などを準備し、金融機関の担当者と対面で行っていた手続きを、オンライン上で完結させるものです。
プロダクトマネージャーの立場から付け加えるならば、「金融機関業務のデジタル化・金融機関システムとの連携」と、「金融機関職員の方と融資を申し込む方へのわかりやすいUXの提供」という種類の違う2つの目的があるプロダクトだとも言えます。
向:これまでの金融機関のシステムは、開発会社に金融機関が必要なシステムを依頼して作っていくものでしたが、私たちのアプローチは少し異なっています。いかに貸す人、借りる人の体験を変えられるかに注目して自社プロダクトを作り、それを提供しているのです。創業メンバーである僕は、このプロダクトで、貸す人の生産性を高め正しい判断ができるようにし、借りる人のお金に関する本来不要なストレスをなくし、適切なお金の流れを作ることができると考えて、コミットしています。
「“かす”をかえる。“かりる”をかえる。」をミッションに、金融機関と、それを利用する事業者の体験をわかりやすく変えるプロダクト。それぞれのポジションならではのこだわりポイントも見えてきました。
金融機関のターニングポイントを作ってきたプロダクトの歴史
創業時、プロダクトのリリースラッシュの時期、そして昨年。入社時期が異なる3人に、プロダクトの歴史とその時受けた印象を聞いてみます。クレジットエンジンのプロダクトは、どのような変遷を辿ってきたのでしょうか。
──このプロダクトの歩みを教えていただきたいと思います。まず、どのような形で立ち上がったのでしょうか?
向:2017年に、LENDYというプロダクトをリリースしました。これは、日本初のオンライン完結の事業者向けローンで、我々が貸し手として中小事業者にオンライン融資を提供するサービスです。この知見を生かし、2018年に三菱UFJ銀行へ提供を開始したオンライン融資プラットフォームが、CE Loanです。
これを皮切りに、みずほ銀行を始めとした複数の他金融機関にもサービスを提供していきました。メガバンクがオンライン融資サービスを始めたことは大々的に取り上げられ、金融業界のターニングポイントのひとつだったと言えるでしょう。
会社にとってもそれは大きな一歩で、当時の人数は20人前後。オフィスを乃木坂に移し、新たなフェーズが始まった頃と言えると思います。
安:僕はその頃に入社しています。現在メイン事業を担っている2つのプロダクトをほぼ同時にリリースしたので、一番忙しかった時期かもしれません。なるべく早く世に出すことを優先してリリースした後、すぐにその改善も同時に始めました。現在もその改修を続け、プロダクトは日に日にいいものになっています。
向:そこからCE Loanは、融資を受ける方の属性や銀行の課題に合わせて細分化し、サービスの幅が広がっていきました。さらに、融資DXに必要なピースを埋めるように、データ連携、クレジットスコアリング、債権回収とプロダクトを増やして今に至ります。
──奈木さんの入社は、2021年ですよね。プロダクトのラインナップを見て感じられたことはありますか?
奈:2021年4月に入社した時点で、現プロダクト群の構想は既に揃っていました。その派生プロダクトの数に当時は圧倒されましたが、実際にプロダクトを触っていくうちに共通している部分に気付き、どうやってプロダクトの幅を広げてきたのかを理解できました。
また、ウェブアプリとして提供している意味も、よくわかってきました。さまざまな銀行のシステムとの繋ぎ込みが発生することもありますが、クレジットエンジンが高い価値を提供できる部分と、そうではない部分の切り分けをすることで、よりよい体験の提供にフォーカスしているんです。例えば金融機関が持っている自社システムと密に連携をすると複雑化しすぎるので、なるべく簡素な連携をする、などの線引きを行っています。
向:これまでの金融機関のあり方は、基幹システムまで含めてゼロから開発するのが基本でした。けれど、我々は貸す人、借りる人の体験を変えたいので、そこにフォーカスした高度なサービスを提供するように心がけています。LENDYや複数の金融機関に対してオンライン融資サービスを提供し運用してきたノウハウと知見を生かして、導入企業に対して最適なオンライン融資のあり方を提案し、時には考え方を変えていってもらう。そういった点が他社が提供するサービスと大きく異なる点だと思います。
安:銀行からの要望を御用聞きになってそのまま受け入れるのではなく、あるべき機能を議論して追加していく。そうやって、プロダクトそのものも磨かれていくのだと思います。
LENDYの運用で培った知見を生かしたサービスを展開し、独自のやり方で金融機関の課題を解決すること。クレジットエンジンのプロダクトの特性も見えてきました。
それぞれの視点で語る、プロダクトの優位性
ここで気になってくるのが、プロダクトの優位性。それぞれの視点から、「ここがすごい」という点を語っていただきました。少し照れながらも、嬉しそうにお話しいただく様子から、プロダクトへの愛が伝わってきます。
──現在メインで展開しているCE Loanについてお聞きします。それぞれのポジションから見て、プロダクトの強みをどう感じていますか?
安:僕が強みだと感じているのは、やはり何度も改善を重ねてきたUXです。特に、金融機関のバックオフィス向けの管理画面は実際に声を聞かせていただいて、どんな業務フローなのかや、どんな機能、ボタンが欲しいのかまで掘り下げたので、デモを披露するだけで「使いやすそう」という声をいただけるほど洗練されています。
奈:融資を受ける方向けの画面には、特にUX面の配慮がなされています。想定外の入力がなされないように、入力値に制限を設けるなども行っています。これは事業者の入力負荷軽減はもちろん、金融機関担当者の確認業務負担を削減する効果もあります。
また、関連法令に則った本人確認情報取得のフローも完備できているなど、UXを重視しつつも業界ルールに対応できているのは、金融業界出身者の多いクレジットエンジンのプロダクトの強みだと思います。
向:経営の目線では、金融機関のオペレーションを大きく変えることにフォーカスしたプロダクトはこれまでになかったと思います。
プロダクトの構造も優れています。コアとなるプロダクトを開発しながら、金融機関に合わせた設定を反映でき、独自のカスタマイズにも対応できる作りになっています。ソースコードの構造には工夫が散りばめられており、この構造のおかげで新しい価値を提供し続けることができるのです。
拡張していくプロダクトのこれから
これからの機能改善を見据えて構造を考えられているんですね。最後に、クレジットエンジンのプロダクトの未来についてお話いただきたいです。イメージしやすいのは何年後くらいでしょうか。
向:2年後くらいが具体的にお話できる範囲だと思います。2年後に向けて目指したいのは、今のプロダクトの広さと深さを拡大していくこと。
まず、広さの拡大というのは、我々のプロダクトが解決できる部分の幅を増やしていくことです。金融機関が持っている商品の幅やデジタル化できる領域を考えると、まだまだ我々が実現できていない範囲が膨大にあります。機能を増やし、商品自体を増やしていくことで、プロダクトの幅を拡大できればと思います。
深さの方は、金融機関の課題をより深いレベルで解決するということです。現在でも十分に洗練されたプロダクトですが、これまでの知見やデータを活用し、我々のサービス独自の付加価値を金融機関に提供していける余地が沢山あります。単なるオペレーションのオンライン化に留まらず、さらに本質的な課題解決を提供していけるようになると、金融機関にとって我々のプロダクトがなくてはならないものと感じていただけるようになると考えています。
現在既にメガバンクや大手の地方銀行に導入してもらっている状態ですが、2年後には国内のオンライン融資やデジタル債権回収の領域において、我々の提供するサービスが業界のスタンダードになっていると言える状態を作りたいと思っています。
安:僕はエンジニアとして、効率と開発スピードを上げ、その広さを拡大していきたいです。現在は友人などから「(プロダクトが)ニュースになっていたね」と連絡いただくことがあるのですが、それが「実際に使ったよ」と言われるまでになったら、その広さにたどり着けたということなのかな、とイメージしています。
奈:僕は以前銀行に勤めていたので、僕たちのプロダクトが当時経験していたような業務で使われるようにしたいと思っています。現在は金融機関の新商品のためのシステムとして使っていただくことが多いのですが、金融機関の中に今ある普通の仕事の一部としてプロダクトを使ってもらいたいです。銀行員時代は、超が付くほどのアナログなオペレーションで融資を行なっていました。そういった金融機関の業務に深く根差したプロダクトにして、深めていきたいと思います。行なっていた業務を考えれば、自動化させたい業務、デジタルで連携したい部分は必ず出てくるはず。広さも深さも拡張していくこれからのプロダクトの姿を想像すると、楽しみでたまりません。
初めは、一言ずつお互いの意見に耳を傾けるように進んだインタビュー。いつの間にか「そうそう」「僕も同感で」「今出た意見の通り」と共感し合いながらのお話になりました。広さと深さを拡張した、クレジットエンジンのプロダクトの未来が楽しみになります。