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「よこしまなサービスだ」と言われても、やめない。40歳のコンサバ弁理士がスタートアップの魅力に取り憑かれた結果

最短3分で商標登録出願のための書類を作成できる「Cotobox」を運営している、cotobox株式会社の五味和泰です。

もともとサブコン(ゼネコンから建設作業や設備に関する工事を請け負う企業)で働いていて、猛勉強の末に弁理士資格を取得し、40歳を超えてから会社を立ち上げました。

就職前にバブル崩壊をもろに経験していたこともあり、どちらかといえばコンサバティブな人間です。

「会社を立ち上げたい」とか、「独立して稼ぎたい」とか、そうしたギラギラした思いを持っていないタイプでしたが、キャリアアップを目指したアメリカ留学を機に、起業を決意しました。

私たちが事業を展開するリーガルテック領域は、日本でも市場が急成長していて、今後ますます盛り上がっていくと確信しています。

ハンコを押さなくても契約を締結できたり、スマートフォン一つで行政手続きが完結できたり、私たちの暮らしを猛烈に便利にするのがリーガルテックです。

私もその一助になろうと、奮闘している一人。

今日は自己紹介を兼ねて、cotoboxが今後どのような世界を実現しようとしているのか、お話しさせてください。

安定こそ、キャリアの礎?

私の実家は寿司屋です。

横浜にお店を3つ構えており、経営もうまくいっていて、それなりに裕福な暮らしをしていました。

しかし、バブル崩壊を機に、経営が悪化。

お金の問題で家庭の様子が一変するシーンをありありと目にしたことで、安定志向になりました。

「一発当てよう」みたいな価値観はゼロに等しく、起業を考えたことなんてありません。むしろ、大企業に就職するキャリアだけを考えていました。

ただ、私が就職活動をしていた当時は、いわゆる就職氷河期です。

第一志望だったゼネコンは不採用で、サブコン企業に就職してエンジニアとして就職しました。

とはいえ肉体労働もしていましたし、深夜残業も当たり前です。毎日のように、ブラックな働き方をしていました。

ただ、GWも正月も当たり前に働いていたので、「そろそろプライベートを充実させたい」と思うようになります。

そこで、ホワイトカラーの職種を探し始めました。思いついたのが、知財業界への転職です。


Photo credit:Priscilla Du Preez on Unsplash

もともと勉強は大好きで、忙しい毎日にあっても、資格取得のための時間を確保していました。

新しい知識を身につけていくのが好きだったのです。

当時は知財に関する知識はゼロでしたし、「弁理士って何だろう?」くらいのレベルでしたが、ホワイトな環境で働きたい一心で勉強をスタート。

仕事の合間を縫って勉強に励み、4年かけて弁理士資格を取得しました(転職後に弁理士の仕事も労働集約的でしかないことに気がつくのですが)。

資格はキャリアを守ってくれない

弁理士になったことで、サブコンで働くよりはホワイトな労働環境になりました。

とはいえ、資格の難易度のわりに給与が高いわけではないですし、かなりハードワークです。

専門性や語学力を身につけて扱える案件を増やしたり、より条件のいい事務所に転職したり、そうやってキャリアアップを目指さなければ、給与が高くなることもありません。

むしろ、実務レベルが高くなければ、事務所をクビになる人もいます。

資格があるからといって、キャリアが約束されるわけではないのです。

……ということもあり、キャリアアップのための留学をする決意をしました。

「語学学校でもよかったのですが、どうせ留学するなら、よりユニークなキャリアを目指したい」——そう考えて、留学先はロースクールに。

とはいえロースクールへの留学には、莫大な投資が必要です。留学の準備に2年間を要し、留学中は年間1200万円のお金がかかりなります。

でも、この意思決定が、コンサバな自分の人生を大きく変えることになります。

世界は変えられるんだ

ロースクールで何をやっていたのかといえば、もっぱらスタートアップコミュニティでの活動です。

もちろん法律や語学の勉強もしていましたが、自分が生きてきた世界とは全く異なるコミュニティに刺激を受けてしまい、毎週末は「世界を変えるぞ!」と息巻く若い世代と交流していました。

きっかけは、とあるピッチイベントに誘われたこと。

イベントに参加すれば「0.1ビットコインもらえる」とのことで、何気なく参加してみたところ、突然「じゃあ君も1分間ピッチしてくれ」と言われました。

話したいことなんて、一つもないのに。

なんとか絞り出して話したところ、「残念ながら、君の英語は何を言っているのか分からない」と言われました。

話せといったのは、君たちなのに……。

ただ、ピッチをきっかけに、数人で構成されるチームからプロダクトづくりに誘われました。


Photo credit: Teemu Paananen on Unsplash

そこで見た光景が、あまりに衝撃でした。

だって、とある女性が1分間ピッチした内容が、3日後には形になっているんです。

そして、マーケターのメンバーは、「このサービスは、やがてこのくらいの事業規模になる」みたいなプレゼンを投資家に向けてしている。

たった数日の出来事でしたが、「たった一人のアイデアが、世の中を変えるかもしれない」という未来に心の底から感銘を受け、スタートアップの世界にのめり込むようになりました。

僕はこのとき、もう40歳を超えていましたが。

業界の声ではなく、ユーザーの声を聞け

スタートアップ業界に興味関心の全てが引っ張られた結果、イベントに参加していた審査員の方に「僕はもっとスタートアップ業界のことを知りたい。ほかにプログラムはありませんか?」と詰め寄り、3ヶ月間の起業家育成プログラムを推薦してもらえることになりました。

ロースクールは宿題が山のようにあるのですが、頭の中はスタートアップのことで一杯です。

数日前まで、キャリアアップのことだけを考えていた、コンサバな弁理士だったのに。

立ち上げストーリーはまたの機会で詳しくnoteを書きますが、この出会いが、cotoboxを創業するきっかけです。

年の離れた半袖短パンサンダルの起業家に「君の英語は話にならないから、日本に帰ったほうがいい」と告げられ、「業界の声ではなく、ユーザーの声を聞け」というアドバイスをもらい、「Cotobox」を構想しました。

「Cotobox」は、弁理士として働いていた頃から感じていた「世の中の中小企業を救いたい」という思いを形にしたサービスであり、日本のリーガルテック市場をつくっていくサービスだと自負しています。

日本で商標権を取得するとなると、弁理士に相談するのが一般的です。

しかし、費用が高い。

私が起業した当時は20万円前後の金額を要するため、中小企業や個人事業主の方にとっては、非常に高価な出費なのです。

それゆえ商標登録が後回しになり、ビジネスがうまく回ってきた頃にトラブルに見舞われてしまうケースが多々ありました。

しかし、「Cotobox」なら、1区分あたり5万円程度で商標登録ができます。

伝統的な士業をされている方からしたら、よこしまなサービスだと感じられてしまうかもしれません。

事実、サービスをローンチした当時は「グレーなサービスだ」という声も聞かれました。

しかし、変化していく海外のリーガルテック市場を自分の目で見て、「やるべきだ」と今日まで自分を信じてきました。

2018年には、経済産業省大臣より、「商標登録出願書類等を利用者自らが作成することを支援するソフトウェアの有償での提供」が、弁理士法第75条に該当しないとの回答を得ています。

あの日から2年が経ちましたが、リーガル市場も、商標登録も、まだまだ解決すべき課題がたくさんある。

私たちcotoboxの存在意義は、知財領域のアップデートならびに、リーガル市場の変革です。

私たちが目指す世界に少しでも興味を持っていただけたら、ぜひツイッターや応募フォームよりご連絡ください。

続く・・・

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